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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 L4 |
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管理番号 | 1399457 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-12-20 |
確定日 | 2023-07-04 |
意匠に係る物品 | 換気口 |
事件の表示 | 意願2022− 4322「換気口」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 令和 4年(2022年) 3月 3日 意匠登録出願 同年 5月27日付け 拒絶理由通知 同年 7月12日 意見書の提出 同年 10月27日付け 拒絶査定 同年 12月20日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「換気口」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「各図において薄赤色を施した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。内部機構を省略したA−A線断面図において、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。」としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定における拒絶の理由及び引用した意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠に係る「換気口」の分野においては、開閉する可動蓋部の形状を、種々の形状に置き換えることは、本願出願前よりごく一般的に行われており、例えば下記の意匠1と意匠2においてみられるように、角部を丸くすることは本願出願前に公然知られています。 そうすると、本願出願前に公知となった下記の意匠3の蓋部の外形状を、本願出願前に公知となった下記の意匠1や意匠2の蓋部の形状に置き換えたにすぎない本願の意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものです。 意匠1 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1003547号の意匠 意匠2 特許庁意匠課が2005年11月11日に受け入れた [なるほど防音BOOK] 2005/7 第22頁所載 室内換気口の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC17048629号) 意匠3 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1592790号の意匠」 第4 当審の判断 以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願の意匠に係る物品は、建物の室内の換気を行うために、壁面に取り付けて使用する「換気口」である。 (2)本願部分 願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容から、本願部分の用途及び機能、位置、大きさ及び範囲、並びに形状等は、以下のとおりである。 ア 本願部分の用途及び機能 本願部分の用途及び機能は、換気口正面の空気取り入れ口(以下「開口部」という。)周縁の枠体及び開口部を開閉するための蓋体である。 イ 本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分の位置、大きさ及び範囲は、枠体の正面及び正面から続く周側面の一部並びに蓋体の正面、背面及び周側面の一部である。 ウ 本願部分の形状等 (ア)基本的構成態様 全体は、正面において、枠体と蓋体からなる略正方形の垂直面で、真ん中に略隅丸正方形の開口部を設け、開口部を塞ぐように略同形の蓋体を取り付けたものであって、枠体と蓋体の間に等幅のごく細い隙間を形成している。 各部の態様として、 (イ)枠体 枠体は、開口部に沿って内壁を形成し、内縁に小さな斜めの面取りを施している。 (ウ)蓋体 蓋体は、正面の略薄板状のプレート及びその背面中央に突設した略細幅円環帯状の台座からなるものであって、蓋体は、前方に突出可能としている。 また、プレートの一辺の長さは全体の約9割の長さで、台座の直径はプレートの一辺の約8割の長さである。 2 引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由で引用された意匠1ないし意匠3について、以下のとおり認定する。 なお、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして、認定する。 (1)意匠1(別紙第2参照) ア 意匠に係る物品 意匠1の意匠に係る物品は「換気口」である。 イ 意匠1の形状等 (ア)基本的構成態様 全体は、正面において、枠体と蓋体からなる略隅丸正方形の垂直板で、真ん中に略隅丸正方形の開口部を設け、開口部を塞ぐように略同形の蓋体を取り付けたものであって、枠体と蓋体は密着し、蓋体の前面は枠体よりやや後方に位置している。 (イ)枠体 枠体は、外側に弧面状に面取りを施し、内縁に小さな斜めの面取りを施し、開口部に沿って背面側に略円筒形に延出して管を形成している。 (ウ)蓋体 蓋体は、正面の略薄板状のプレート及びその背面中央に突設した略円柱状の台座からなるものであって、蓋体は、前方に突出可能としている。 また、プレートの一辺の長さは全体の約7割の長さで、台座の直径はプレートの一辺の約1割5分の長さである。 (2)意匠2(別紙第3参照) ア 意匠2は「室内換気口」である。 イ 意匠2の形状等 全体は、枠体と蓋体からなる正面視略隅丸正方形の垂直板で、枠体の開口部に略隅丸正方形の薄板を着脱可能に取り付けて蓋体とし、枠体は外側に弧面状に面取りを施し、背面中央に略円筒形の管を取り付け、開口部に略円形の防塵フィルターを取り付けている。 (3)意匠3(別紙第4参照) ア 意匠に係る物品 意匠3の意匠に係る物品は「換気口」である。 イ 意匠3の形状等 (ア)基本的構成態様 全体は、正面において、枠体と蓋体からなる略正方形の垂直板で、真ん中に略正方形の開口部を設け、開口部を塞ぐように略同形の蓋体を取り付けたものであって、枠体と蓋体は密着している。 (イ)枠体 枠体は、開口部に沿って背面側に略円筒形に延出して管を形成している。 (ウ)蓋体 蓋体は、背面に風向き調整板を備えた略薄板状で、その背面中央に略円柱状の台座を密着したものであって、蓋体は、前方に突出可能としている。 また、蓋体の一辺の長さは全体の約9割の長さである。 3 本願部分の創作性の検討 この意匠の属する分野において、全体を、枠体と蓋体からなる略正方形の垂直板としたもの(意匠3)や、真ん中に略隅丸正方形の開口部を設け、開口部を塞ぐように略同形の蓋体を密着して取り付けたもの(意匠1及び意匠2)は、本願の出願前に公然知られているものである。また、枠体の開口部に沿って内壁を形成し、内縁に小さな斜めの面取りを施したもの(意匠1)も、本願の出願前に公然知られているものである。 しかしながら、正面において、全体を略正方形とし、真ん中に略隅丸正方形の開口部を設け、当該開口部を塞ぐように略同形の蓋体を取り付けたものであって、枠体と蓋体の間に等幅のごく細い隙間を形成したものは、本願部分の他には見られないから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。 そうすると、本願部分の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形状等に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-06-20 |
出願番号 | 2022004322 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(L4)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 尾曲 幸輔 |
登録日 | 2023-07-06 |
登録番号 | 1748685 |
代理人 | 伊達 研郎 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 松井 重明 |