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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 K0
管理番号 1400541 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-25 
確定日 2023-07-25 
意匠に係る物品 ヒータ台座 
事件の表示 意願2021− 17451「ヒータ台座」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、2021年(令和3年)2月12日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う令和3年8月12日の意匠登録出願である。
また、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「ヒータ台座」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものである(別紙第1参照)。

第2 手続の経緯
1 概要
本願に係る手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和3年 8月12日 :意匠登録出願
12月14日付 :拒絶理由通知書
令和4年 3月22日 :意見書の提出
3月22日 :手続補正書の提出
3月23日付 :拒絶理由通知書
6月29日 :期間延長請求書の提出
8月29日 :意見書の提出
8月29日 :手続補正書の提出
10月12日付 :拒絶査定
令和5年 1月25日 :審判請求書の提出

2 各手続の詳細
(1)令和3年12月14日付の拒絶理由通知書
令和3年12月14日付で原審審査官が本願出願人に送付した拒絶理由通知書(以下「第1拒絶理由通知書」という。)は、拒絶の理由を「この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められますので、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当します。」としたものであり、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は次のとおりである(別紙第2参照)。
「米国特許商標公報 2020年 5月19日
ヒーター台座(登録番号US D884855S
Heater pedestal)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RH02311725号)」
(2)令和4年3月22日に提出された意見書及び手続補正書
上記第1拒絶理由通知書を受け、本願出願人は、令和4年3月22日提出の意見書(以下「第1意見書」という。)において、「今般、審査官殿が引用された意匠は本願意匠の出願人と同一の出願人により出願された米国意匠出願(29/711,377;US D884855S)に係るものであり、当該米国意匠出願の優先権を主張した日本意匠出願(意願2020−008775;登録第1689809号)が存在しています。この拒絶理由に対して、出願人は、本意見書と同日に提出した手続補正書にて、本願意匠を意願2020−008775の関連意匠とする補正をいたしました。当該補正により、拒絶理由は解消されたものと思料いたしますので、再度審査され、登録査定を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。」と述べつつ、同日提出の手続補正書(以下「第1手続補正書」という。)により、願書に「意願2020−008775」を【本意匠の表示】として追加する手続補正を行った(以下、「意願2020−008775;登録第1689809号」の意匠を「暫定本意匠」という。別紙第3参照)。
(3)令和4年3月23日付の拒絶理由通知書
上記第1意見書及び第1手続補正書の提出を受け、原審審査官は、令和4年3月23日付で、拒絶の理由を「この意匠登録出願の意匠は、願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められませんので、意匠法第10条第1項の規定に該当しません。」として、その判断の理由を記載した拒絶理由通知書(以下「第2拒絶理由通知書」という。)を本願出願人に送付した。
また、原審審査官は、この第2拒絶理由通知書のなお書きとして「なお、前送の拒絶理由通知において引例したのは、引用した米国特許商標公報記載のヒータ台座の意匠における本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分です。」と付記した。
(4)令和4年8月29日に提出された意見書及び手続補正書
上記第2拒絶理由通知書を受け、本願出願人は、令和4年8月29日提出の意見書(以下「第2意見書」という。)において、「今般、出願人は、本願意匠を意登第1689809号<略>の関連意匠とする本意匠の表示を削除しました。これにより、ご指摘の拒絶理由は解消したと思料します。」と述べつつ、同日提出の手続補正書(以下「第2手続補正書」という。)により、願書の【本意匠の表示】の欄を削除する手続補正を行った。
また、本願出願人は、この第2意見書において、「なお、審査官殿は、令和3年12月14日付(起案日)の拒絶理由通知書において、本願意匠登録出願の意匠と登録番号US D884855Sの意匠とは、類似するものと認められるため、登録要件を満たさない理由があると認定されております。これについて以下意見を申し述べます。<以下略>」として、本願意匠と引用意匠は類似しない旨を述べつつ、「上述した補正及び説明によって、意匠法第3条第1項第3号の拒絶理由も含め、拒絶理由は全て解消したと思料します。したがいまして、速やかに登録査定を賜りますように宜しくお願い申し上げます。」と述べた。
(5)拒絶査定
上記第2意見書及び第2手続補正書に係る手続の後、原審審査官は、令和4年10月12日付で、「この意匠登録出願については、令和4年3月23日付けで通知した理由により、拒絶をすべきものとします。」として拒絶査定を行った。
また、原審審査官は、この拒絶査定において、「この意匠登録出願の意匠と引例の意匠を全体として比較した場合下記のように判断され、この意匠登録出願の意匠は、引例の意匠に類似するものと認められますので、意見書を提出して述べられた非類似である旨の主張は、採用することができません。

意見書において、上面部中心の小円孔の有無、上面部全体の放射状溝部の数、並びに上面部全体の突起の数、大きさ及び形態の差異について指摘され、これらの構成は意匠の要部となり得るもので、需要者にとって有意に注意を引く部分と主張され、本願意匠と令和3年12月14日付拒絶理由通知書における引用意匠とは非類似である旨述べられました。しかし、<中略>両意匠を意匠全体として観察した場合には、両意匠は類似するものと言わざるを得ません。」と付記した。
(6)審判請求書
上記拒絶査定を受け、本願出願人は、【請求の趣旨】を「原査定を取り消す、本願の意匠は登録すべきものとするとの審決を求める。」とする令和5年1月25日の審判請求書(以下、単に「審判請求書」という。)を提出した。
審判請求書においては、「2.拒絶査定の理由の要点」として、「令和4年10月12日付(起案日)の拒絶査定における拒絶理由は、本願意匠登録出願の意匠<略>は、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するため登録することができないというものです。<中略>
以上のとおり、本願意匠は意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではありません。したがいまして、拒絶理由は解消したものと思料致しますので、本願の意匠は登録すべきものとする、との審決を賜りますように宜しくお願い申し上げます。」と述べられている。

第3 当審の判断
1 原査定における拒絶の理由
上記第2「2 各手続の詳細」(5)のとおり、原査定における拒絶の理由は「令和4年3月23日付けで通知した理由」、すなわち、第2拒絶理由通知による、本願意匠が願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないため意匠法第10条第1項の規定に該当しない、との理由によるものである。よって、以下、当審において、本願意匠の意匠法第10条第1項に係る拒絶の理由の該当性について判断する。
また、上記した審査段階における手続の全経緯及び審判請求書の記載内容を踏まえると、本願意匠については、原審審査官が第1拒絶理由通知によって提示した意匠法第3条第1項第3号に係る拒絶の理由が解消していない状態であると認められるため、本願意匠の意匠法第3条第1項第3号に係る拒絶の理由の該当性についても、当審において併せて判断する。

2 意匠法第10条第1項に係る拒絶の理由の該当性について
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「ヒータ台座」である。
イ 意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願意匠の意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、意匠に係る物品全体のうち、円盤状の台座部の上面に現れる同心円状の4本の細溝及び3つの貫通孔並びに台座部の下面中央に設置された略円柱状の支持部を除く、台座部の上下面及び外周面に係る位置、大きさ及び範囲であって、加熱の対象となる半導体ウェハの載置台としての用途及び機能を有するものと認められる。
(2)暫定本意匠
ア 意匠に係る物品
暫定本意匠の意匠に係る物品は「ヒータ台座」である。
イ 意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
暫定本意匠の意匠登録を受けようとする部分(以下「暫定本意匠部分」という。)は、意匠に係る物品の全体に係る位置、大きさ及び範囲であって、円盤状の台座部及びその下面中央に設置された二段円柱状の支持部を含むヒータ台座としての全ての用途及び機能を有するものと認められる。
(3)本願意匠と暫定本意匠の対比及び類否判断
ア 意匠に係る物品の対比
本願意匠と暫定本意匠は、意匠に係る物品が同一である。
イ 意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能の対比
本願部分は一部の細溝及び貫通孔を除く台座部の上下面及び外周面のみに係る位置、大きさ及び範囲であるのに対し、暫定本意匠部分は全ての溝と孔を含む台座部及び支持部の全体であり、意匠に係る物品の全体に占める位置、大きさ及び範囲が異なるとともに、台座部のほかに支持部を含むか否かの点において用途及び機能が大きく異なると認められる。
類否判断
本願意匠と暫定本意匠は、意匠に係る物品が同一ではあるものの、本願部分と暫定本意匠部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能が大きく異なり、類似するとは認められないため、本願部分と暫定本意匠部分の形状等の類否について判断するまでもなく、本願意匠は暫定本意匠に類似するとはいえない。
(4)本願意匠の意匠法第10条第1項該当性
本願意匠は暫定本意匠には類似しないものであり、上記第2「2 各手続の詳細」(4)のとおり、本願においては、暫定本意匠に係る願書の【本意匠の表示】の欄を削除する手続補正が既に適法になされている。
よって、本願意匠が意匠法第10条第1項に規定する拒絶の理由に該当するとはいえない。

3 意匠法第3条第1項第3号に係る拒絶の理由の該当性について
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「ヒータ台座」である。
イ 意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分は、意匠に係る物品全体のうち、円盤状の台座部の上面に現れる同心円状の4本の細溝及び3つの貫通孔並びに台座部の下面中央に設置された略円柱状の支持部を除く、台座部の上下面及び外周面に係る位置、大きさ及び範囲であって、加熱の対象となる半導体ウェハの載置台としての用途及び機能を有するものと認められる。
ウ 本願部分の形状等
〔A1〕本願部分の台座部は、全体が円盤状であり、直径と厚さの比は、約20:1である。
〔A2〕台座部の上面は、最も高い外枠部、そこから一段下がった平面部、更に一段下がった溝部、及び、溝部よりも深さのある中心孔という高さ構成を有しており、
〔A2−1〕外枠部は、等幅環状であり、その幅は台座部半径の約15分の1である。
〔A2−2〕溝部は、計8本が放射状かつ等間隔に配されており、それら全てが中央で交わることで、略円形状の中央凹部が形成されている。
〔A2−3〕中央凹部の中心には、小孔が形成されている。
〔A2−4〕平面部は、細溝によって扇状の8区画に均等分割されており、その表面には、中心部を始点に全てが同心円状の配列とされた計180の小突起が形成されており、当該小突起の形状は、頂部を円形平面とした極薄円板状である。
〔A3〕台座部の下面、すなわち、支持部との接合部及び3つの貫通孔を除く部分は、台座部直径に占める外側約5分の4の範囲であり、全面が平坦面である。
(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「ヒーター台座」である。
イ 本願部分に相当する部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分に相当する引用意匠の部分(以下「引用部分」という。)は、引用意匠の意匠に係る物品のうち、円盤状の台座部の上面に現れる同心円状の4本の細溝及び3つの貫通孔並びに台座部の下面中央に設置された二段円柱状の支持部を除く、台座部の上下面及び外周面に係る位置、大きさ及び範囲であって、加熱の対象となる半導体ウェハの載置部としての用途及び機能を有するものと認められる。
ウ 引用部分の形状等
〔B1〕引用部分の台座部は、全体が円盤状であり、直径と厚さの比は、約20:1である。
〔B2〕台座部の上面は、最も高い外枠部、そこから一段下がった平面部、及び、更に一段下がった溝部という高さ構成を有しており、
〔B2−1〕外枠部は、等幅環状であり、その幅は台座部半径の約16分の1である。
〔B2−2〕溝部は、計12本が放射状かつ等間隔に配されており、それら全てが中央で交わることで、略円形状の中央凹部が形成されている。
〔B2−3〕中央凹部は、凹凸のない平坦面である。
〔B2−4〕平面部は、細溝によって扇状の12区画に均等分割されており、その表面には、中心部を始点に全てが放射状の配列とされた計48の小突起が形成されており、当該小突起の形状は、浅い周辺凹部に囲繞された円孔から球面が表出する態様のものである。
〔B3〕台座部の下面、すなわち、支持部との接合部及び3つの貫通孔を除く部分は、台座部直径に占める外側約2分の1の範囲であり、全面が平坦面である。
(3)本願意匠と引用意匠の対比
ア 意匠に係る物品
具体的な表記は一部異なるものの、本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品は実質的に一致すると認められる。
イ 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分と引用部分は、いずれも、意匠に係る物品全体のうち、円盤状の台座部の上面に現れる細溝及び貫通孔並びに台座部の下面中央に設置された支持部を除く、台座部の上下面及び外周面に係る位置、大きさ及び範囲であって、加熱の対象となる半導体ウェハの載置台としての用途及び機能を有するものと認められるため、本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能は、いずれも共通すると認められる。
ウ 本願部分と引用部分の形状等
本願部分と引用部分の形状等を対比すると、主として以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
(ア)共通点
〔共通点1〕本願部分の台座部は、全体が円盤状であり、直径と厚さの比は、約20:1である。
〔共通点2〕台座部の上面は、最も高い外枠部、そこから一段下がった平面部、及び、更に一段下がった溝部という高さ構成を有している。
〔共通点3〕溝部は放射状かつ等間隔に配されており、それら全てが中央で交わることで、略円形状の中央凹部が形成されている。
〔共通点4〕平面部は細溝によって扇状の区画に均等分割されており、その表面には、中心部を始点とする配列で多数の小突起が形成されている。
〔共通点5〕台座部の下面は平坦面である。
(イ)相違点
〔相違点1〕台座部上面の外枠部の幅について、本願部分は台座部半径の約15分の1であるのに対して、引用部分は同約16分の1である。
〔相違点2〕台座部上面の中央凹部について、本願部分は更に深さのある中心孔が形成されているのに対し、引用部分は平坦面であり中心孔はない。
〔相違点3〕台座部上面の溝部の数について、本願部分は8本であるのに対し、引用部分は12本である。
〔相違点4〕台座部上面の平面部について、本願部分は分割区画数が8であり、表面の小突起は頂部を円形平面とした極薄円板状のものが全て同心円状に計180配されているのに対し、引用部分は分割区画数が12であり、表面の小突起は円孔から球面が表出する態様のものが全て放射状に計48配されている。
〔相違点5〕台座部下面の平坦面の範囲について、本願部分は台座部直径に占める外側約5分の4の範囲であるのに対して、引用部分は同約2分の1である。
(4)判断
以上の共通点及び相違点を評価、総合し、本願意匠と引用意匠の類否について判断する。
ア 意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が同一であると認められる。
イ 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分と引用部分は、意匠に係る物品全体に占める位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能が共通する。
ウ 本願部分と引用部分の形状等
(ア)共通点の評価
まず、本願意匠及び引用意匠のような、半導体用のヒータ台座という高度に機能的な物品の意匠においては、意匠に係る物品の需要者は、意匠の選択において、使用時の機能面を左右する構成態様、すなわち、構成各部における個々の形状等のみならず、それらが相互に又は全体としてどのように関連し、機能し得るのかといった観点から、十分に意匠を観察するものと認められる。
〔共通点1〕ないし〔共通点5〕は、本願部分及び引用部分の形状等の基礎となる共通点である。しかしながら、台座部の基本形状を円盤状とすること、載置面となる台座部上面に放射状の溝部や多数の小突起を施すことは、半導体ウェハを載置し加熱するという意匠に係る物品の機能的要求に基づく一般的なものであると認められるため、これらの共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的なものにとどまるといえる。
(イ)相違点の評価
これに対し、〔相違点2〕ないし〔相違点4〕にいう台座部上面における具体的構成態様、すなわち、中央凹部における中心孔の有無、溝部及び分割区画数、並びに、小突起の形状、配置密度及び配列態様は、これら全ての協同作用によって所要の目的に応じた半導体ウェハの載置及びガス流を用いた加熱がなされることを勘案すると、本願部分の形状等は、それら全ての態様が相まって、引用部分とは異なる本願部分独自の特徴を構成するものとなっているといえる。
なかでも、〔相違点4〕にいう小突起は、個々の大きさ自体は小さいものの、載置する半導体ウェハとの接点としてその頂部形状の違いは大きく、また、その配列態様(全てが同心円状か放射状か)及び配置密度(個数)と溝部の配設数との相関による視覚的な効果として、本願部分は全方位的に規則的かつ均等な配列であることを印象付けるものである一方、引用部分は規則的ではあるもの不均等な配列であることを印象付けるものとなっている。
よって、これら〔相違点2〕ないし〔相違点4〕に摘示した台座部上面の具体的な構成態様における相違は、需要者の注意を強く引くといえ、当該部位におけるこれら相違点が類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
〔相違点1〕及び〔相違点5〕、すなわち、台座部上面の外枠部の幅及び台座部下面の平坦面の範囲の違いについては、部分限定的なもの又は他の部分に比して注意を引きにくい部位に係るものであるため、いずれも類否判断に及ぼす影響は小さい。
(ウ)小括
上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、本願部分と引用部分の形状等の共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく、これら相違点の存在によって需要者に別異の美感を与えているというべきものであるため、本願部分と引用部分の形状等は、類似するとは認められない。
エ 本願意匠と引用意匠の類否
以上のとおり、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が同一であり、本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能が共通しているものの、本願部分と引用部分の形状等は類似するとは認められない。
よって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、引用意匠をもって本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

第4 結び
以上のとおりであって、原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲







審決日 2023-07-11 
出願番号 2021017451 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (K0)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
伊藤 宏幸
登録日 2023-08-16 
登録番号 1751565 
代理人 園田・小林弁理士法人 
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