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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3
管理番号 1401732 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-11 
確定日 2023-08-23 
意匠に係る物品 引手 
事件の表示 意願2020− 4993「引手」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:欧州連合知的財産庁、2019年 9月13日)を主張する、令和2年(2020年)3月13日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年(2021年) 3月19日付け 拒絶理由通知書
同年 8月23日 意見書
令和4年(2022年)10月 7日付け 拒絶査定
令和5年(2023年) 1月11日 審判請求書

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「引手」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。
特許庁が昭和62年(1987年)4月8日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第702140号(意匠に係る物品、扉の把手)の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。

第4 対比
本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。例えば、引用意匠において、「正面図」「平面図」「右側面図」をそれぞれ左に90°回転させた図を、「正面図」「左側面図」「平面図」として認定する。
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも扉に取り付けられる引手であるから、用途及び機能が共通する。

2 両意匠の形状等の対比
(1)形状等の共通点
(共通点1)両意匠は、略細長円柱状の把手本体部の上端寄り及び下端寄りに、それよりも径の小さい短円柱状の支持部が直角に交差するように設けられ、把手本体部には、上部及び下部を除いた部分に一回り拡径した滑り止めが形成されている。
(共通点2)把手本体部の態様
把手本体部の滑り止め部には、縦筋状の凸条が周方向に等間隔に設けられている。
(2)形状等の相違点
(相違点1)把手本体部の形状
(相違点1−1)凸条の数と形状
平面から見て、本願意匠では、凸条は周方向に36本表されており(支持部に隠れている凸条を含めれば44本と推認される)、凸条の形状は略コ字状であるが、引用意匠では、凸条は19本表されており(同様に24本と推認される)、凸条の形状は略蒲鉾状である。
(相違点1−2)上端及び下端の突起部の有無
本願意匠では、把手本体部の上端及び下端に、正面視略扁平台形状の突起部が設けられ、突起部の上面又は下面には、略六角形状の凹みが形成されている。これに対して、引用意匠では、把手本体部の上端及び下端はフラット面に表されている。
(相違点2)支持部の形状
(相違点2−1)フランジの有無
本願意匠の支持部の端部には、薄い円形板状のフランジ部が設けられているが、引用意匠にはそのようなフランジ部はない。
(相違点2−2)支持部の長さ
本願意匠の支持部の長さは、把手本体部の径の2倍以上であるが、引用意匠のその長さは、把手本体部の径とほぼ同じである。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、表記は異なるが、用途及び機能が共通するから、同一である。

2 形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は扉に取り付けられる引手であり、需要者が直接手で触れるものであるから、需要者は引手の細部の形状等に注目するというべきであり、特に、実際に握る部分である把手本体部の形状等については子細に観察することとなり、また、引手の扉への取り付け方に関わる支持部の形状等についても注意を払うこととなる。したがって、両意匠の形状等の類否判断に当たっては、把手本体部や支持部の形状等の細部にわたって評価をすることが必要になる。
(1)形状等の共通点
両意匠の形状等の共通点について、略細長円柱状の把手本体部の上端寄り及び下端寄りに、それよりも径の小さい短円柱状の支持部が直角に交差するように設けた意匠(参考意匠1:特許庁意匠課公知資料番号HH14030378の「建具用取手」の意匠。別紙第3参照。)が本願の出願前に既に見受けられ、また、上部及び下部を除いた把手本体部に縦筋状の凹凸を形成して僅かに肉厚とし、凹凸を周方向に等間隔に設けた意匠(参考意匠2:特許庁意匠課公知資料番号HC18026176の「建具用取手」の意匠。別紙第4参照。)も本願の出願前に既に見受けられるから、需要者がこれらの共通点に注目するとはいい難い。したがって、両意匠の形状等の(共通点1)及び(共通点2)が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(2)形状等の相違点
まず、平面から見た把手本体部の凸条が36本であるか(本願意匠)、19本であるか(引用意匠)の相違、及び略コ字状であるか(本願意匠)であるか略蒲鉾状であるか(引用意匠)の相違は、需要者が実際に握る部分の形状等の相違であって、約2倍の本数であって角張った略コ字状の本願意匠の凸条に対して需要者が抱く視覚的印象は、引用意匠の凸条に対して抱く視覚的印象とは異なるというべきであるから、需要者はこの相違に注目することとなる。したがって、(相違点1−1)が両意匠の形状等の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、上端及び下端の突起部の有無の相違(相違点1−2)と、フランジの有無の相違(相違点2−1)については、引手の細部の形状等に注目し、引手の取り付け方に関わる形状等についても注意を払う需要者が一見して気が付く相違であるというべきであるから、これらの相違点が両意匠の形状等の類否判断に及ぼす影響も大きい。
他方、支持部の長さが把手本体部の径とほぼ同じであるか(本願意匠)、把手本体部の径の2倍以上であるか(引用意匠)の相違(相違点2−2)は、両意匠を観察する需要者が抱く美感を異にするほどのものとはいい難いので、(相違点2−2)が両意匠の形状等の類否判断に及ぼす影響は小さい。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、共通点はいずれも両部分の類否判断に及ぼす影響が小さく、(相違点2−2)が両意匠の形状等の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、それ以外の相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいので、相違点は共通点を凌駕するというべきである。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であるものの、両意匠の形状等については相違点が共通点を凌駕するから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2023-08-07 
出願番号 2020004993 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 小林 裕和
成田 陽一
登録日 2023-09-15 
登録番号 1753859 
代理人 安部 光河 
代理人 村山 靖彦 
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