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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 D7
管理番号 1401739 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-24 
確定日 2023-07-25 
意匠に係る物品 チャイルドシート 
事件の表示 意願2021− 26405「チャイルドシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、2021年6月1日の中華人民共和国への出願に基づく、パリ条約による優先権の主張を伴う、令和3年(2021年)12月1日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年(2022年) 4月22日付け 拒絶理由通知書
同年 7月22日 意見書提出
同年 11月17日付け 拒絶査定
令和5年(2023年) 2月24日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「チャイルドシート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当せず、意匠法9条1項の規定に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
意匠登録第1708931号の意匠
(出願番号 意願2021−018008)

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「チャイルドシート」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「チャイルドシート」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。

ア 共通点
全体は、座面と背もたれが一体となったキャリータイプのシートであって、
(ア)基本的構成態様
本体は、上面の外形を略縦長隅丸長方形とする肉厚の器状で、正面視及び背面視において、略逆隅丸等脚台形の上辺を凹孤状に形成し、下辺中央を略矩形状に大きく切り欠いたものとし、側面視において、上辺はやや正面側に傾斜した略湾曲扁平M字状に形成し、下辺は真ん中付近を横長の凸弧状とし、その両端から斜め上方に延出して上辺の両端と弧状に繋がったものとし、底面視において、中央上端近傍から下端寄りまで略縦長隅丸長方形に開口し、本体側面の中央上端寄りに略U字状に湾曲した略丸棒状のハンドルを取り付けている点、

各部の態様として、
(イ)周側面の上端に沿ってやや太幅の縁取りを施している点、
(ウ)上面中央の正面寄りにシートベルト用のバックルを設けている点、
(エ)両側面の上端中央正面寄りに略横長長円形板状のシートベルト用留め具を取り付けている点、
(オ)ハンドルの上端中央に略短円筒形の持ち手を設け、両端に略円板状の係止具を取り付けている点において、共通する。

イ 相違点
(ア)本体の上面内側(インナー)の態様について、本願意匠は、上面全体に上面視略縦長長円形シート状の中敷きを取り付け、その真ん中より上側に上辺を弧状に形成した略扁平縦長箱状のヘッドレストを設けたものであるのに対し、引用意匠は、中敷きは取り付けておらず、中央上端寄りの左右に略横長長円形模様を形成し、真ん中から下側にかけて略帯状十字模様を上下幅一杯に配し、その四つ角に沿って上に4個ずつ下に3個ずつ合計14個の円孔を形成している点、
(イ)本体の底面の態様について、引用意匠は、中央やや下側に略横長長円形模様を6個形成しているのに対し、本願意匠は、何も形成していない点において、相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠は、幼児を乗せて移動するためのチャイルドシートであるから、需要者は、主にチャイルドシートの使用者である購買者及び販売業者等の取引者であって、当該需要者は、幼児を安全かつ快適に移動させるため、特に幼児を収容するインナーの態様に注視して観察するものといえる。

ア 共通点の評価
この種物品の分野において、全体を座面と背もたれが一体となったキャリータイプのシートであって、その基本的構成態様を、共通点(ア)に掲げた態様としたものは、本願の出願前からごく普通にみられる態様であることから(参考意匠1:意匠登録第1154559号(意匠に係る物品「チャイルドシート」)、別紙第3参照)、需要者が特段注目するものではなく、また、各部の態様として掲げた共通点(イ)から共通点(エ)についても、参考意匠1に見られるとおり、本願の出願前からごく普通にみられる態様であり、さらに、共通点(オ)については、参考意匠2(別紙第4参照)に見られるとおり、本願の出願前からごく普通にみられる態様であることから、格別、需要者の注意を引くものとはいえず、これらの共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
まず、相違点(ア)について、すなわち、本体上面のインナーの態様についてであるが、当該インナーは、需要者にとって、幼児を収容する最も関心の高い部位であるところ、中敷きを取り付け、上辺を弧状に形成した略扁平縦長箱状のヘッドレストを設けた本願意匠と、中敷きは取り付けず、本体のインナーが剥き出しのままで、さらに、その表面に多数の孔や各種模様を施した引用意匠とは、単に中敷きの有無という違いのみならず、全く異なる視覚的効果を需要者に与えているというべきであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
一方、相違点(イ)については、底面側で、ほとんど目立たない箇所における相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を全体として総合的に観察し、判断した場合、両意匠は、共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものであるから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両意匠の形状等全体を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(5)小括
そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形状等において類似しないから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法9条1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないものということはできないから、原査定における拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲







審決日 2023-07-11 
出願番号 2021026405 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (D7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 尾曲 幸輔
内藤 弘樹
登録日 2023-08-21 
登録番号 1751756 
代理人 弁理士法人坂本国際特許商標事務所 
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