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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3
管理番号 1401741 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-22 
確定日 2023-08-14 
意匠に係る物品 キャスター 
事件の表示 意願2022− 452「キャスター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和4年(2022年)1月13日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年(2022年) 7月29日付け :拒絶理由の通知
同年 12月 7日付け :拒絶査定
令和5年(2023年) 2月22日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「キャスター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
中華人民共和国意匠公報 2021年 5月11日
キャスター(公開番号CN306527318S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RH03002461号)

第4 対比
以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。

1 意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、ともに「キャスター」であって、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

2 両意匠の形状等の対比
両意匠の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。
(共通点1)全体の基本的構成態様について、板体部の下面に略半円柱状の軸受部を設け、当該軸受部に車輪部を嵌合させて構成した点。
(共通点2)軸受部について、底面に車輪を収容するための凹部、正面と背面の中央下部に車軸を嵌めるための凹部が設けられた点。
(共通点3)車輪部について、略円柱状の軸部、当該軸部よりやや大径のリング部、及び最外径の車輪がそれぞれ段状に形成された点。

(相違点1)板体部について、本願意匠は、平面視略隅丸長方形状であり、上面に略長方形の薄板状部材が付設されるのに対し、引用意匠は、平面視略トラック形状であり、上面に略長方形状の浅い凹部、中央に略小半球状の凹部が設けられ、両端部付近に円形状の貫通孔が設けられる点。
(相違点2)軸受部正面視について、本願意匠は、板体部の長手方向の側面と軸受部外側面が継ぎ目なくつながる構成であるのに対し、引用意匠は、軸受部の幅が板体部の幅より小さいため、軸受部が板体部から奥まって配置される点。
(相違点3)軸受部側面視について、本願意匠は、軸受部が車輪部の上部約1/2をカバーするのに対し、引用意匠は、軸受部が車輪部の上部約1/4をカバーする点。
(相違点4)車輪について、本願意匠の最外径部の直径と幅の比は、約4:3であるのに対し、引用意匠は約2:1である点。

第5 判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。

2 両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、重量物等を移動させやすくするために取り付けて使用する「キャスター」であり、当該物品分野の需要者は、主に、使用者、製造業者、販売業者及び取引業者が含まれる。そして、需要者の注意を引く部位は、基本的な構成要素である板体部、軸受部及び車輪部といえ、これら形状等について評価し、かつ、それ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価することとする。

(1) 共通点の評価
(共通点1)の基本的構成態様について、キャスターの分野において、両意匠のように、板体部、略半円柱状の軸受部及び車輪部から構成されるものは、例えば、意匠登録第1653322号(参考意匠、別紙第3参照)にみられるように、この種物品の分野において、本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点2)の軸受部の態様及び(共通点3)の車輪部の態様についても、上記参考意匠にみられるように、この種物品の分野において、本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

(2) 相違点の評価
(相違点1)について、板体部は、物品全体に占める割合が大きい部分であり、需要者が、キャスターを取り付ける際等に注目するところであるから、当該部における形状等の相違は、両意匠の類否判断に与える影響が大きい。
(相違点2)について、本願意匠の軸受部正面視の構成は、板体部と軸受部が一体的に形成された印象を与えるのに対し、引用意匠は、両部が個別に形成された印象を与え、需要者は注目するところであるから、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点3)について、本願意匠の軸受部側面視の構成の相違により、本願意匠と引用意匠の車輪部の露出の程度が相違することとなり、別異の印象を与えるものであるから、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点4)について、本願意匠の車輪は、引用意匠の車輪よりも幅広で安定感のある印象を与え、需要者は注目するところであるから、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両意匠の形状等の類否判断
共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を、全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)から(共通点3)は、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、(相違点1)から(相違点4)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は類似するものである。

3 小括
以上のとおり、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等においては、相違点の類否判断に与える影響が共通点のそれを凌駕しており、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。








審決日 2023-07-28 
出願番号 2022000452 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 尾曲 幸輔
江塚 尚弘
登録日 2023-08-28 
登録番号 1752337 
代理人 坂野 史子 
代理人 野末 寿一 
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