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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L3
管理番号 1401742 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-03-14 
確定日 2023-08-23 
意匠に係る物品 オフィスの内装 
事件の表示 意願2021− 5838「オフィスの内装」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)年3月22日の特願2021−24812を原出願として、意匠法13条1項の規定により特許出願から意匠登録出願に変更し、内装の部分について意匠登録を受けようとする令和3年(2021年)3月22日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年(2022年) 3月31日付け 通知書(第1回目)
同年 3月31日付け 拒絶理由通知書
同年 5月16日 意見書の提出
同年 12月 8日付け 通知書(第2回目)
同年 12月 8日付け 拒絶査定
令和5年(2023年) 3月14日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願は、店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾」を「内装」という。)を構成する物品及び建築物(以下「内装を構成する物品及び建築物」を「内装意匠」という。)について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の内装意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の意匠に係る物品の欄の記載を「オフィスの内装」とし、その形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであり、本願意匠において、当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「点線で表示した部分を除いた実線で表示した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠に係る「オフィスの内装」の分野においては、内装を構成する家具を床の区画の内側に余白を設けて配置することは、例えば、下記の実施例1において見られるように、本願出願前よりごく一般的に行われています。
そうすると、内装を構成する家具の基本形状を本願出願前に公然知られたと認められる下記の意匠1とし、当該家具を床の区画の内側に余白を設けて配置したものの、支柱の中程より下部を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎない本願意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものと認められます。

実施例1:
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2004−68311
図1及び関連する記載から導きだされる「ブース」の実施例

意匠1:
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2017−25516
図5の1、4、5、8C及び関連する記載から導きだされる「フレーム構造体」の意匠」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠

(1)本願意匠について
本願意匠は、オフィス内の床面と休憩スペース用のフレームからなる「オフィスの内装」である。

(2)本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分の用途及び機能は、床の上に設置した基台付きの休憩スペース用のフレームであって、位置、大きさ及び範囲は、底面を除いた床に配置した基台とフレームの脚のうち下から約3/5の部分である。

(3)本願部分の形状等
本願部分は、略正方形薄板の床の上面中央に、床面より二回り程度小さい平面視略隅丸正方形の基台を設置し、その四隅に略縦長丸棒状の脚を垂直に取り付けたものである。

2 引用意匠の認定

(1)実施例1(別紙第2参照)
実施例1は、床に展示した展示ブースであって、その形状等は、略長方形状の床の上面中央に、設置面積が床面より二回り程度小さい底面が略長方形状の展示ブースを設置したものである。

(2)意匠1(別紙第3参照)
意匠1は、オフィスのフロアー等に設置して使用するフレーム構造体の意匠であって、その形状等は、平面視略隅丸正方形の基台の四隅に、真ん中より上が内側に湾曲した略縦長丸棒状の脚を垂直に取り付け、その先端に略リング状の枠を取り付けたものである。

3 特許出願からの出願変更の適否について

本願が原特許出願のときに出願したものであるとみなされるためには、原特許出願の願書の記載及び願書に添付の図面中に、本願部分が明確に認識し得るような具体的な記載がなされていることを要件とするから、以下、当該要件について検討する。
なお、特許出願からの出願変更に際し、これ以外の形式的要件はすべて満たされている。

(1)本願の原特許出願
本願は、前記第1のとおり、特願2021−24812を原出願として、意匠法13条1項の規定により特許出願から意匠登録出願に変更したものであるが、原特許出願について詳述すると、原特許出願は、令和元年(2019年)6月20日出願の特願2019−114518(原原出願)からの分割出願で、さらに、この特願2019−114518は、平成27年(2015年)7月17日出願の特願2015−143063(原原原出願)からの分割出願である。

(2)本願、原特許出願及び意匠1の関係
原査定における拒絶の理由として掲げた意匠1は、前記第3のとおり、特開2017−25516の図5に記載の意匠であるが、この公開特許公報は、特願2015−143063(原原原出願)の公開公報であるから、前記(1)のとおり、本願について原特許出願からの出願変更が認められれば、引用意匠である意匠1は、本願出願前に公然知られていた意匠には該当しないこととなり、原査定の拒絶の理由は解消することになる。
なお、特許出願の原出願、原原出願、原原原出願のいずれにも、意匠1は、図5として同一の意匠が記載されており、当該図の変更等はない。

(3)原特許出願における意匠
原特許出願における意匠については、前記2(2)において示した意匠1の認定のとおりである。すなわち、オフィスのフロアー等に設置して使用するフレーム構造体の意匠であって、その形状等は、平面視略隅丸正方形の基台の四隅に、真ん中より上が内側に湾曲した略縦長丸棒状の脚を垂直に取り付け、その先端に略リング状の枠を取り付けたものである。ただし、当該フレーム構造体が設置される床の開示はない。
一方、原特許出願における願書の【発明の詳細な説明】の【0001】の記載によると、「本願発明は、オフィスに独立した状態で設置できるフレーム式ブース状家具に関するものである。」との記載があり、また、同【0045】の記載においても、「本実施形態のフレーム式ブース状家具は、例えばオフィスのフロアーにリフレッシュエリアとして設置される。」と記載されていることから、原特許出願における意匠は、オフィスのフロアー(床)に設置した状態のものであって、単に、床を省略したものであることは明らかである。

(4)床の評価
本願部分の床は、前記1(3)のとおり、基台より二回り程度大きい略正方形薄板であるのに対し、原特許出願の願書の【発明の詳細な説明】には、床の形状等について具体的な説明はされていない。
しかしながら、本願部分は、オフィスの内装であることを表現するために、便宜上、基台の周縁に沿って床を描いたものであることが推認されるから、本願部分の床は、原特許出願において説明されるオフィスのフロアー(床)を表しているに過ぎず、両者は、実質的に同一の意匠が表されたものと認定して差し支えないものである。

(5)小括
以上のとおり、本願は、意匠法13条1項の規定に基づき、特許出願から意匠登録出願への変更が適法になされたものであるから、本願に係る出願日の遡及は認められる。

4 意匠1が本願出願前に公然知られているか否かの判断

そうすると、意匠1は、本願の出願日以降に公開されたものであるから、意匠1は、本願出願前に公然知られた意匠には該当しない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

















審決日 2023-08-08 
出願番号 2021005838 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 尾曲 幸輔
内藤 弘樹
登録日 2023-09-04 
登録番号 1752825 
代理人 渡辺 隆一 
代理人 西 博幸 

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