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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C1
管理番号 1402830 
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-23 
確定日 2023-10-06 
意匠に係る物品 一組の運輸機器セット 
事件の表示 意願2021− 24430「一組の運輸機器セット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)11月9日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年(2021年)12月 1日 :新規性の喪失の例外の規定を
受けるための証明書の提出
令和4年(2022年) 3月25日付け:拒絶理由通知書の送付
同 年 5月10日 :期間延長請求書の提出
同 年 7月11日 :意見書の提出
同 年 10月21日付け:拒絶査定
令和5年(2023年) 1月23日 :審判請求書の提出

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「一組の運輸機器セット」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様又は色彩の結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する、というものである。
拒絶理由通知書の記載内容及び拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、以下のとおりである(別紙第2参照)。

「本願意匠と引用意匠を比較すると、共に全体皿状の運転席用フロアマット及び助手席用フロアマットと、板状のセンター用フロアマットから構成されるものであって、運転席用フロアマットの平面視形状につき、右上角が矩形状に凹んでいると共に、その右下から右辺の輪郭形状が左右鏡像の「ノ」字状とされている点や、左辺上部が「ノ」字状とされている点、下辺の左右両端が矩形状に凹み、結果として下辺から細帯状の突出部が下方に延設されている点等が共通しており、また、運転席用フロアマットの全体形状について、平面視右上部分がスロープ状に持ち上がっている点や、左上部分がスロープ状に持ち上がると共に、該スロープ状の部分に沿ってその右側に細長い凸部が設けられている点、下端の左右両端に矩形状の隆起部が形成されている点等においても共通しています。
さらに、助手席用フロアマットの平面視形状についても、右辺上部が左右鏡像の縦長「ノ」字状とされている点や、左上隅部が上下に連なる「ノ」字状とされている点、下辺の左右両端が矩形状に凹み、結果として下辺から細帯状の突出部が下方に延設されている点が共通しているほか、助手席用フロアマットの全体形状について、下端の左右両端に矩形状の隆起部が形成されている点も共通しています。
加えて、センター用フロアマットについて、全体が平板状で、長手方向の長さの半分強がやや細幅とされている点も共通しています。
上記共通点は、相まって意匠の骨格をなすものであって、類否判断に与える影響は極めて大きいといえます。
一方、両意匠は、主として運転席用フロアマット及び助手席用フロアマットについて、本願意匠は外側の端から僅かに内側に位置する部分に凸条が設けられているのに対し、引用意匠には凸条がなく、代わって浅い垂壁が外縁に沿って設けられているとの点等において相違していますが、これは意匠全体からすると部分的な箇所におけるもので、加えて、前記の平面視の輪郭形状における共通点と比べると、通常需要者に観察される、平面方向から見た際にはとりたてて目立たないものであるから、看る者に想起させる美感に与える影響は小さく、意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的であるといえます。
したがって、全体観察すると両意匠は類似するものと認められます。

(引用意匠)
著者の氏名 ハロウィン
表題 車種別専用立体マット ラバータイプ のパーツレビュー | ステップワゴン(ハロウィン) | みんカラ
掲載箇所 (添付画像参照)
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2018年 5月 10日
検索日 [2022年 3月 23日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://minkara.carview.co.jp/userid/403572/car/2405261/9195128/parts.aspx
に掲載された、3枚の自動車用フロアマットからなる一組の運輸機器セットの意匠」

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「一組の運輸機器セット」であるから、一致するものである。

(2)形状等の対比
両意匠の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の図の表示及び向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(ア)組物の意匠全体について
(共通点1)両意匠は、全体の構成を、自動車の運転席の足元に敷くフロアマット(以下「運転席用マット」という。)、助手席の足元に敷くフロアマット(以下「助手席用マット」という)、及び運転席と助手席の間のセンター部分に敷くマット(以下「センター用マット」という。)の3種類のフロアマットからなる構成とした点が共通する。
(イ)運転席用マットについて
(共通点2−1)両意匠は、運転席用マットの形状等を、マット底面部分の平坦な板状体からなる部分(以下「底板部」という。)の右辺部の大部分を除いた周囲に、垂直若しくは傾斜した板状体からなる部分(以下「壁板部」という。)を形成し、全体を略トレイ状にした点が共通する。
(共通点2−2)両意匠は、底板部の形状等を、平面視において、上辺部左側部分を略倒L字状に切り欠き、下辺部中央部分を略矩形状に突出させた略変形矩形状の板状体とした点が共通する。
(共通点2−3)両意匠は、壁板部の形状等を、平面視において、底板部の左辺部及び下辺部の外周部分に沿って、略垂直な帯状の壁板部を形成し、底板部の上辺部左側約1/4の部分に,略長方形状の傾斜面及び略平行四辺形状の垂直面からなる略アングル状の傾斜した壁板部を形成し、上辺部の右側約3/4の部分に、その左上角部を略ノの字状に切り欠いた略L字状の傾斜した壁板部を形成し、この略L字状の壁板部の右側に突き出た部分を、平面視ゴルフクラブヘッド状の湾曲凸面状に形成した点が共通する。
(共通点2−4)両意匠は、底板部上面の上方右側部分に、その表面部分に縦筋模様を9条形成した平面視略隅丸長方形状のヒールパットを1つ配設した点が共通する。
(共通点2−5)両意匠は、底板部上面の左右下角部分に、略矩形状の板状突出部を1つずつ形成した点が共通する。
(ウ)助手席用マットについて
(共通点3−1)両意匠は、助手席用マットの形状等を、底板部の左辺部の大部分を除いた周囲に、垂直若しくは傾斜面からなる壁板部を形成し、全体を略トレイ状に形成した点が共通する。
(共通点3−2)両意匠は、底板部の形状等を、平面視において、上辺部を水平な直線状とし、下辺部中央部分を略矩形状に突出させた略変形矩形状の板状体とした点が共通する。
(共通点3−3)両意匠は、壁板部の形状等を、平面視において、底板部の右辺部及び下辺部の外周部分に沿って、略垂直な帯状の壁板部を形成し、底板部の上辺部分に、その左上角部を斜めに切り欠き、さらにその下方の左辺部分を平面視略J字状に切り欠いた、底板部よりやや小さい略矩形板状の傾斜した壁板部を形成した点が共通する。
(共通点3−4)両意匠は、底板部上面の左右下角部分に、略長方形状の板状突出部を1つずつ形成した点が共通する。
(エ)センター用マットについて
(共通点4)両意匠は、センター用マットの形状等を、平面視において、略縦長長方形状板状体と、それより横幅のある略正方形状板状体を、その中心軸を揃えて一体的になるように上下に接合した、略凸状の平坦な板状体とし、この板状体の上辺部を僅かに湾曲した略凹弧状に形成した点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願意匠の運転席用マット及び助手席用マットの壁板部の傾斜面における傾斜角度が大きく、マット全体を深いトレイ状としているのに対し、引用意匠の運転席用マット及び助手席用マットの壁板部の傾斜面における傾斜角度は小さく、マット全体が浅いトレイ状としている点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の運転席用マットにおける底板部の右辺部の形状等が、上から約1/6の部分を下に向かって外側に拡がる斜線状とし、残りの約5/6の部分を斜線状部分と連続する略垂直な直線状に形成しているのに対し、引用意匠の運転席用マットにおける底板部の右辺部の形状等は、上から約1/4の部分を下に向かって外側に拡がる斜線状とし、残りの約3/4の部分を斜線状部分と連続する略垂直な直線状に形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の運転席用マットにおける底板部の左辺部の形状等が、上から約2/3の部分を下に向かって外側に拡がる斜線状とし、残りの約1/3の部分を斜線状部分と連続する略垂直な直線状に形成しているのに対し、引用意匠の運転席用マットにおける底板部の左辺部の形状等は、上から約1/3の部分を下に向かって外側に拡がる略ノの字状とし、残りの約2/3の部分を略ノの字状部分と連続する略垂直な直線状に形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠の運転席用マットにおける底板部の下辺部突出部分の形状等が、平面視略横長長方形状としたものであるのに対し、引用意匠の運転席用マットにおける底板部の下辺部突出部分の形状等は、平面視略横長等脚台形状としたものである点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本願意匠の運転席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等が、底板部右辺部の略垂直な直線状の部分にのみ略直線状の凸条部を1条配設しているのに対し、引用意匠の運転席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等は、底板部右辺部に略倒ノの字状の凸条部を1条形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点6)本願意匠の運転席用マットにおける鳩目加工を施したマット固定用の円孔部が、底板部の下方部分に間隔をあけて2つ並設しているのに対し、引用意匠の運転席用マットにおける鳩目加工を施したマット固定用の円孔部マット固定用の円孔部は、底板部の下方中央部分に1つ配設している点で、両意匠は相違する。
(相違点7)本願意匠の助手席用マットにおける底板部の右辺部の形状等が、上から約2/3の部分を下に向かって外側に拡がる斜線状とし、残りの約1/3の部分を斜線状部分と連続する略垂直な直線状に形成しているのに対し、引用意匠の助手席用マットにおける底板部の右辺部の形状等は、上から約2/5の部分を下に向かって外側に拡がる略逆ノの字状とし、残りの約3/5の部分を略逆ノの字状部分と連続する略垂直な直線状に形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点8)本願意匠の助手席用マットにおける底板部の左辺部の形状等が、略垂直な直線状に形成しているのに対し、引用意匠の助手席用マットにおける底板部の左辺部の形状等は、上から約1/5の部分を下に向かって外側に拡がる斜線状とし、残りの約4/5の部分を斜線状部分と連続する略垂直な直線状に形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点9)本願意匠の助手席用マットにおける底板部の下辺部突出部分の形状等が、平面視略横長長方形状としたものであるのに対し、引用意匠の助手席用マットにおける底板部の下辺部突出部分の形状等は、平面視略横長等脚台形状としたものである点で、両意匠は相違する。
(相違点10)本願意匠の助手席用マットにおける略矩形状の傾斜した壁板部の左辺部には、側面視略横長等脚台形状の垂直な壁板部を形成しているのに対し、引用意匠の助手席用マットにおける略矩形状の傾斜した壁板部の左辺部には、壁板部を形成していない点で、両意匠は相違する。
(相違点11)本願意匠の助手席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等が、底板部右辺部の上端部分を除いた直線状の部分に略直線状の凸条部を1条配設しているのに対し、引用意匠の助手席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等は、底板部右辺部に沿って、略倒逆ノの字状の凸条部を1条形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点12)本願意匠のセンター用マットの上端部付近の形状等は、上方に向かって左右に拡がる略等脚台形状に形成しているのに対し、引用意匠のセンター用マットの上端部付近の形状等は、略長方形状に形成している点で、両意匠は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するものであるから同一である。

(2)形状等についての判断
両意匠の意匠に係る物品は、自動車のフロアパネルに敷いて使用される一組のフロアマットであって、この物品の需要者は、これを購入する一般消費者であるところ、この物品の需要者は、使用時(乗車時)にフロアマットがずれたり捲れたりしないように、自己の自動車の床の形状にフィットするようにして形成された部分の形状等を特に注視して観察することとなる。
したがって、両意匠の類否判断にあたっては、フロアマットがずれたり捲れたりしないように考慮して形成されたフロアパネルと接触する底板部や壁板部の具体的な形状等が、需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)の全体の構成については、この種物品においてごく普通に見られる自動車用フロアマットの組合せにすぎないものであり、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2−1)の運転席用マットの形状等、(共通点2−2)の底板部の形状等、(共通点2−3)の壁板部の形状等、及び(共通点2−4)のヒールパットの形状等については、これらの各部位の形状等は、例えば、以下の参考意匠1に示すように本願意匠の出願前に類似する形状等が既に見られるものであるから、これらの形状等からなる運転席用マットの形状等は、両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえず、この(共通点2−1)ないし(共通点2−4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
【参考意匠1】特許庁意匠課公知資料番号RJ03023946(公知日:令和3年(2021年)8月30日)


(共通点2−5)の板状突出部の形状等については、特に目に付く部分ではないため、この(共通点2−5)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点3−1)の助手席用マットの形状等、(共通点3−2)の底板部の形状等、及び(共通点3−3)の壁板部の形状等については、まず、底板部の縁部分に略垂直な壁板部を形成して全体を略トレイ状とすることは,この種物品においてごく普通に見られる特段特徴のないものであり、両意匠の底板部の形状等も、以下の参考意匠2に示すように本願意匠の出願前に既に見られるものであることから、両意匠のこれらの形状等は、両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえず、この(共通点3−1)ないし(共通点3−3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
【参考意匠2】意匠登録第1542920号(公報発行日:平成28年(2016年)2月1日)


(共通点3−4)の板状突出部の形状等については、特に目に付く部分ではないため、この(共通点3−4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点4)のセンター用マットの形状等については、この種物品において既に見られるものであるから(上記参考意匠2参照)、特段の特徴であるとはいえず、この(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)の運転席用マット及び助手席用マットの壁板部の傾斜面における傾斜角度等の相違については、本願意匠のものは、全体が深いトレイ状に形成されたものであって、車体のフロアパネルの窪んだ部分にしっかり嵌まり込んで固定されるものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、全体が浅い略トレイ状のものであって、フロアパネルの窪んだ部分にずれない程度に敷設されるものとの印象を与えるから、需要者が注視して観察するフロアパネルと接触する底板部や壁板部の形状等に係る相違点である(相違点1)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点2)ないし(相違点4)の運転席用マットにおける底板部の右辺部,左辺部及び下辺部突出部分の形状等の相違については、比率等の相違にすぎないものであるが、これらの相違は、フロアパネルの形状に合わせて加工された細かな部分の形状等を注視して観察する需要者に対して別異のものとの印象を与えるから、この(相違点2)ないし(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点5)の運転席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等の相違については、さほど大きな相違ではないものの、本願添付図面の【運転席用フロアマットの装着状態の参考図】にあるように、乗車の際には目に付く部位であることから、この(相違点5)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点6)の運転席用マットにおける固定用の円孔部の配置態様の相違については、この種物品において本願意匠のものも引用意匠のものもごく普通に見られるものであるから、この(相違点6)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(相違点7)ないし(相違点9)の助手席用マットにおける底板部の右辺部,左辺部及び下辺部突出部分の形状等の相違については、僅かな比率等の相違にすぎないものであるが、これらの相違は、フロアパネルの形状に合わせて加工された細かな部分の形状等を注視して観察する需要者に対して別異のものとの印象を与えるから、この(相違点7)ないし(相違点9)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点10)の助手席用マットにおける傾斜した壁板部の左辺部の垂直な壁板部の有無の相違については、さほど大きな部位に係る相違ではないが、本願意匠のものは、車体のフロアパネルの窪んだ部分にしっかり嵌まり込んで固定されるものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、フロアパネルの上に単に敷設されるものとの印象を与えるから、需要者が注視して観察する形状等に係る相違点である(相違点10)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点11)の助手席用マットにおける断面視略半円状の凸条部の形状等の相違については、さほど大きな相違ではないものの、本願添付図面の【助手席用フロアマットの装着状態の参考図】にあるように、乗車の際には目に付く部位であることから、この(相違点11)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点12)のセンター用マットの上端部付近の形状等の相違については、僅かな部位に係る相違であるが、本願意匠のものは引用意匠のものと異なり、運転席用マットと助手席用マットとの間に配置した際に、隙間なく敷設できるものとの印象を与えるから、この(相違点12)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき、全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両意匠は、需要者が注視して観察する運転席用マット及び助手席用マットの壁板部の傾斜角度等の相違が意匠全体の美感に与える影響は大きく、(相違点6)を除くその他の相違点も意匠全体の美感に一定程度影響を与えるのに対し、両意匠の共通点が意匠全体の美感に与える影響はいずれも小さいものであり、上記の相違点によって両意匠は需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠を全体として観察した場合には、両意匠の形状等は類似しないものである。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形状等において類似しないから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲






審決日 2023-09-20 
出願番号 2021024430 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2023-10-11 
登録番号 1755654 
代理人 永田 元昭 

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