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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 K0 |
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管理番号 | 1402844 |
総通号数 | 22 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-03-17 |
確定日 | 2023-09-19 |
意匠に係る物品 | セラミックス製ヒーター |
事件の表示 | 意願2021− 26494「セラミックス製ヒーター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和3年(2021年)12月2日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年(2022年) 6月21日付け :1回目の拒絶理由の通知 同年 8月 1日 :拒絶理由通知(1回目) に対する意見書の提出 同年 10月 4日付け :2回目の拒絶理由の通知 同年 11月17日 :拒絶理由通知(2回目) に対する意見書の提出 同年 12月26日付け :拒絶査定 令和5年(2023年) 3月17日 :審判請求書の提出 同年 6月30日付け :審尋 同年 7月14日 :回答書提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「セラミックス製ヒーター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものであって、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分、つまり補助部材の周側面が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の令和4年11月17日付けの拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願出願前から公知の下記引用意匠1は試料加熱装置であり、略円板形状の板状セラミック体と略円筒形状のセラミック筒状支持体を接合部を介して接合したもので、接合部は外観上、細線状に表れると推認され、セラミック筒状支持体上部のフランジ部と接合部はほぼ同径です。また、同じく本願出願前から公知の下記引用意匠2は、シリコン単結晶ウエハーなどを支持し、加熱するためのサセプターであり、支持管のフランジ部と背面板の突起との間には略細幅帯状の周側面を有するリング状の断熱材が接合層によって接合されることで介在しています。 そうすると、下記引用意匠1の接合部について、下記引用意匠2のリング状の断熱材に置き換えることで介在させれば、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分である略細幅帯状の補助部材の周側面部分に想到できると言え、本願意匠は、この種物品の当業者であれば容易に創作することができたものと言えます。 なお、この種のセラミックヒーターにおいて、素材の持つ色彩として白灰色〜黒灰色はごく普通に知られていると言え、本願意匠の補助部材の濃灰色を選択することに当業者の格別の創意があったとは言えず、また、この種の機能的な物品において、各部の径や厚みを機能に基づいて好適なサイズとすることも、当業者の通常の設計手法と言え、当業者が本願意匠の補助部材の周側面の態様に想到することについても、特段の困難を要したとは言うことができません。 (中略) 引用意匠1 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2000−021957 【図6】及び関連する記載から導き出される「試料加熱装置」の意匠 引用意匠2 特許庁発行の公開特許公報記載 平成11年特許出願公開第343571号 【図5】及び関連する記載から導き出される「サセプター」の意匠」 第4 当審の判断 以下、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、本願意匠が、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。 1 本願意匠 (1)本願意匠について 本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「セラミックス製ヒーター」である。 (2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能 本願部分の位置、大きさ及び範囲は、プレートとシャフトの間に介在する補助部材の周側面部であり、プレート下面に直に接する位置に設けられる。そして、本願部分は、プレートとシャフトを接合させるものであり、令和5年7月14日の回答書の記載を踏まえると、その接合性を補助するという用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の形状等 本願部分の形状等は、全体を、略リング形状の補助部材の周側面部とし、濃灰色の色彩が表れているものである。 2 引用意匠1 (1)引用意匠1(別紙第2参照)について 引用意匠1の意匠に係る物品は、「試料加熱装置」である。 (2)引用の部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能 引用意匠1の本願部分に相当する部分(以下「引用部分1」という。)は、板状セラミック体とセラミック筒状支持体の接合部であり、板状セラミック体下面に直に接する位置に設けられる。そして、引用部分1は、板状セラミック体とセラミック筒状支持体を接合し熱応力を低減するという用途及び機能を有するものである。 (3)引用部分1の形状等 引用部分1の形状等は、全体を、略極薄リング形状の周側面部とし、色彩は表されていないものである。 3 引用意匠2 (1)引用意匠2(別紙第3参照)について 引用意匠2の意匠に係る物品は、「サセプター」である。 (2)引用の部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能 引用意匠2の本願部分に相当する部分(以下「引用部分2」という。)は、面状伝熱層(基体)と支持管の間に接合層を介して設けられる断熱材である。そして、引用部分2は、熱流を制限するという用途及び機能を有するものである。 (3)引用部分2の形状等 引用部分2の形状等は、全体を、略リング形状の周側面部とし、色彩は表されていないものである。 4 本願意匠の創作容易性 セラミック製ヒーターの分野において、プレートとシャフトの間に介在する略リング形状の熱応力を低減するための部材をプレート下面に直に接する位置に設けることは、引用部分1に見られるように、ごく一般的に行われているといえる。また、略リング形状の周側面を本願部分のように一定の厚みを持たせて形成することも、引用部分2に見られるように、ごく一般的なものである。 しかし、本願部分は、プレートとシャフトとの接合性を補助する補助部材を配したものであって、熱応力を低減する、または熱流を制限するための引用部分1及び引用部分2とはその用途及び機能が異なるから、当業者が引用部分1及び2に接したとしても、本願意匠の創作を容易になし得るとはいうことはできない。 そうすると、本願意匠は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。 なお、令和5年3月17日提出の審判請求書にて主張された本願部分を濃灰色に彩色することに創意が必要との主張については、本願部分には素材の持つ色彩がそのまま表れているにすぎないため、これに特段の創作性は認められず、この主張は採用することはできない。 5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないので、原査定における拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 ![]() ![]() ![]() ![]() |
審決日 | 2023-09-06 |
出願番号 | 2021026494 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(K0)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
尾曲 幸輔 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-10-06 |
登録番号 | 1755440 |
代理人 | 弁理士法人アイテック国際特許事務所 |