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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2 |
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管理番号 | 1402845 |
総通号数 | 22 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-04-06 |
確定日 | 2023-09-05 |
意匠に係る物品 | エーシーアダプタ |
事件の表示 | 意願2022− 12910「エーシーアダプタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、意匠登録第1707019号を本意匠とする令和4年(2022年)6月16日の関連意匠の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年(2022年) 9月27日付け :拒絶理由の通知 同年 11月11日 :意見書の提出 令和5年(2023年) 1月17日付け :拒絶査定 同年 4月 6日 :審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「エーシーアダプタ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 中華人民共和国意匠公報 2022年 3月 15日に公開された 充電器(公開番号CN307168996S)の意匠 第4 対比 以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、願書の【意匠に係る物品の説明】欄の記載によれば、USBケーブルを介して、携帯用記録媒体等の周辺機器に電力供給するためのエーシーアダプタである。 一方、引用意匠の意匠に係る物品は、前記中華人民共和国意匠公報の記載によれば、携帯電話やその他のデジタル製品の充電に使用される「充電器」である。 そうすると、両意匠の意匠に係る物品は、表記は異なるが、いずれもエーシーアダプタと認められる。 2 両意匠の形状等の対比 両意匠の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。 (共通点1)全体の基本構成について、側面視において略隅丸正方形となる扁平な略直方体形状で構成される点 (共通点2)側面視四周全体に等幅の面取り加工が施される点 (共通点3)正面視下方に略長円形状の端子部が設けられる点 (共通点4)背面視下半部にプラグが格納される点 (共通点5)本体部のプラグ部寄りの位置に溝が全周にわたって施される点 (相違点1)引用意匠の面取り部の各稜線に二重の分割線が表れ、また、正面、背面、平面及び底面視において上下曲面部と中央の平面部の境界に分割線が表れ、左右側面視において当該分割線が面取り部分まで延設される点 第5 判断 1 意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、一致すると認められるから同一である。 2 両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、携帯電話等の電子機器に電力供給するための「エーシーアダプタ」であり、当該物品分野の需要者は、主に、使用者、製造業者、販売業者及び取引業者が含まれる。そして、エーシーアダプタは手に持って使用されるものであるから、需要者は、全体的な形状等に着目するものといえ、この形状等について評価し、かつ、それ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価することとする。 (1) 共通点の評価 ア 共通点1及び2について ここで、審判請求書に示された第1号証から第12号証を検討すると、第1、2、4及び5号証に記載された意匠は、共通点1及び2、すなわち、側面視において略隅丸正方形となる扁平な略直方体形状であって、側面視四周全体に等幅の面取り加工が施される形状、を具有するものと認められる。 さらに、第1、2、4及び5号証の記載に基づいて、これら意匠が公知となった日付を当審にて調査したところ、以下各参考意匠に示すように、これら意匠は、本願意匠の出願日以前に公知であったものといえる。 そうすると、共通点1及び2は、この種物品分野においてよく見られる類型化された形状といって差し支えなく、これらの共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえる。 参考意匠1(第1号証に掲載された製品と同じ製品、別紙第3参照) 掲載日:2019年8月14日 参考意匠2(第2号証に掲載された製品と同じ製品、別紙第4参照) 発売月:2019年8月 参考意匠3(第4号証に掲載された製品と同じ製品、別紙第5参照) 掲載日:2020年1月10日 参考意匠4(第5号証に掲載された製品と同じ製品、別紙第6参照) 発売日:2017年5月11日 イ 共通点3及び共通点4について この種物品分野の端子部やプラグ部は、規格化されたものであって、形状自体に特徴はなく、様々な位置に設けることも一般的であるので、これらの共通点は格別需要者の注意を引くものともいえず、これらの共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 ウ 共通点5について この種物品分野において、プラグ部を交換できるように本体部が分割可能に構成することは一般的に行われていることを鑑みると、本体部のプラグ部寄りの位置に溝が表れることは、格別需要者の注意を引くものともいえず、この共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (2) 相違点の評価 ア 相違点1について 本願意匠は、分割線がないことにより全体が継ぎ目なく構成され滑らかな印象を与えるのに対し、引用意匠は、分割線の存在により複数のパネル部材が接合して形成されたような印象を与え、需要者は注目するところであるから、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (3)両意匠の形状等の類否判断 共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を、全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)から(共通点5)は、この種物品分野において、にごく普通に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、格別、需要者の注意を引くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、(相違点1)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は類似しない。 3 小括 以上のとおり、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等においては、相違点の類否判断に与える影響が共通点のそれを凌駕しており、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第6 本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠として記載された意匠登録第1707019号(別紙第7参照)は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定する本意匠の要件を満たしている。 また、本願意匠の意匠登録出願の日は、本意匠の意匠登録出願の日以後であって、本意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前であるから、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 そして、本願意匠と本意匠は、意匠に係る物品が同一であり、形状等については、面取り部の角度において相違がみられるものの、僅かな角度の相違にすぎず、共通点が意匠の基調を成して看者に共通した印象を与えるのに対して、これを凌駕するほどのものとは考えられず、両意匠を意匠全体として対比した場合、類似するものと認められる。 したがって、本願意匠は、意匠登録第1707019号の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2023-08-22 |
出願番号 | 2022012910 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H2)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
尾曲 幸輔 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-09-29 |
登録番号 | 1754934 |
代理人 | 弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |