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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1403722 |
総通号数 | 23 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-04-26 |
確定日 | 2023-10-26 |
意匠に係る物品 | 車用テールランプ |
事件の表示 | 意願2022− 10899「車用テールランプ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 本願は、2022年(令和4年)4月19日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う令和4年5月20日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和4年 5月25日 :電子的交換による優先権書類の取得 9月22日付 :拒絶理由通知書 11月11日 :意見書の提出 令和5年 1月19日付 :拒絶査定 4月26日 :審判請求書の提出 4月26日 :手続補足書の提出(補足の内容:委任状) 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「車用テールランプ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものと認められるため、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は次のとおりである(別紙第2参照)。 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1673300号 (意匠に係る物品、自動車用リヤコンビネーションランプ)の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠 本願意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によると、以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「車用テールランプ」であり、自動車の車体の後方(以下、取り付ける車体の向きに合わせて「後方」及び「前方」の語を用いる。)に取り付けられ、運転手の操作に応じて対応する点灯表示部内の光源を点灯させ、後続の車両等に対する合図や注意喚起等を行うための物品であると認められる。 (2)本願意匠の形状等 〔A1〕本願意匠は、左右一対で用いられるもののうち、車体の右側に取り付けて使用されるもののみが図面に表されていると認められる。 〔A2〕平面視の全体形状は、頂角を約120度とする略二等辺三角形状であり、三角形の底辺(長辺)に相当する車体取付け基端部が進行方向に対して約45度傾斜し、三角形の二等辺(短辺)に相当する位置には、それぞれ、点灯表示部の後方面及びテールランプ筐体の側面が形成されるものである。 〔A3〕点灯表示部の後方面の具体的態様は、 〔A3−1〕立体構成として、全体が透明カバーで覆われ、正面視では、航空機の垂直尾翼を横倒しにしたような略倒台形状、側面視では、後方の端面がフラットな傾斜面形状であり、 〔A3−2〕正面視での発光部態様として、透明カバー内には、下から順に、略逆L字状の発光部、該逆L字の内側に位置する三本の略帯状発光部、及び、これら両者の上方を跨ぐ一本の細幅帯状発光部が設けられていると認められ、 〔A3−3〕そのうち、正面視略逆L字状の発光部は、発光面を後方に正対させた計11のブロック状発光体を縦横に連ねて成るものであり、立体的には、各発光体の後端面(発光面)を左下から右上にかけて順次奥行方向にずらして配すことで、全体を連続的な段差構造とした態様のものである。 〔A4〕テールランプ筐体の側面の具体的態様は、前方の端部を尖らせた矢じり状の形状であり、その先端部付近には二つの略砲弾形状突起が、当該突起の後方には筐体の側面形状と呼応する三角形状の発光部が設けられていると認められる。 〔A5〕点灯表示部内の各発光部には、略逆L字状発光部に薄赤色、三本の略帯状発光部に上から薄赤色、赤色、赤色、細幅帯状発光部に黄色の色彩がそれぞれ表されている。 2 引用意匠 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用リヤコンビネーションランプ」であり、自動車の車体の後方に取り付けられ、運転手の操作に応じて対応する点灯表示部内の光源を点灯させ、後続の車両等に対する合図や注意喚起等を行うための物品であると認められる。 (2)引用意匠の形状等 〔B1〕引用意匠は、左右一対で用いられるもののうち、車体の左側に取り付けて使用されるもののみが図面に表されていると認められる。 〔B2〕平面視の全体形状は、頂角を約120度とする略二等辺三角形状であり、三角形の底辺(長辺)に相当する車体取付け基端部が進行方向に対して約45度傾斜し、三角形の二等辺(短辺)に相当する位置には、それぞれ、点灯表示部の後方面及びテールランプ筐体の側面が形成されるものである。 〔B3〕点灯表示部の後方面の具体的態様は、 〔B3−1〕立体構成として、正面視では、航空機の垂直尾翼を横倒しにしたような二重の略倒台形状、側面視では、二重区画の内側を外側よりも一段凹陥させた傾斜面形状であり、 〔B3−2〕正面視での発光部態様として、略逆「コ」字状の外側発光部、該逆「コ」字内に位置する略逆「フ」字状の内側発光部、及び、該逆「フ」字内に点在する四個の小円形状発光部が構成されていると認められ、 〔B3−3〕そのうち、略逆「コ」字状の外側発光部は、より詳細には、最外周に等幅で連続的に設けられた細幅帯状の略逆「コ」字状発光部、及び、それに内接するように設けられた太幅帯状の略L字状発光部から成るものである。 〔B4〕テールランプ筐体の側面の具体的態様は、前方の端部を尖らせた矢じり状の形状であり、その先端部付近には二つの略砲弾形状突起が、当該突起の後方には筐体の側面形状と呼応する三角形状の発光部が設けられていると認められる。 〔B5〕点灯表示部内の各発光部には、形状を特定するための濃淡が付されているのみであり、特定の色彩は表されていない。 3 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下、これらを合わせて「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、具体的な表記は異なるものの、いずれも、自動車の車体の後方に取り付けられ、運転手の操作に応じて対応する点灯表示部内の光源を点灯させ、後続の車両等に対する合図や注意喚起等を行うための物品であることから、意匠に係る物品の用途及び機能が共通すると認められる。 (2)形状等 両意匠の形状等を対比すると、主として以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 ア 共通点 〔共通点1〕平面視の全体形状は、頂角を約120度とする略二等辺三角形状であり、三角形の底辺(長辺)に相当する車体取付け基端部が進行方向に対して約45度傾斜し、三角形の二等辺(短辺)に相当する位置には、それぞれ、点灯表示部の後方面及びテールランプ筐体の側面が形成されるものである。 〔共通点2〕点灯表示部の後方面は、正面視では、航空機の垂直尾翼を横倒しにしたような略倒台形を基本形状としている。 〔共通点3〕テールランプ筐体の側面は、前方の端部を尖らせた矢じり状の基本形状であり、その先端部付近には二つの略砲弾形状突起が、当該突起の後方には筐体の側面形状と呼応する三角形状の発光部が設けられている。 イ 相違点 〔相違点1〕図面に記載された形状等について、本願意匠は、車体の右側に取り付けて使用されるものが表されているのに対し、引用意匠は、車体の左側に取り付けて使用されるものが表されている。 〔相違点2〕点灯表示部の後方面の形状について、本願意匠は、全体が透明カバーで覆われ、正面視では略倒台形状、側面視では後方の端面がフラットな傾斜面形状であるのに対し、引用意匠は、全体を覆うカバーはなく、正面視では二重の略倒台形状、側面視では二重区画の内側を外側よりも一段凹陥させた傾斜面形状である。 〔相違点3〕発光部の正面視の態様について、本願意匠には、略逆L字状の発光部、該逆L字の内側に位置する三本の略帯状発光部、及び、これら両者の上方を跨ぐ一本の細幅帯状発光部が設けられているのに対し、引用意匠には、略逆「コ」字状の外側発光部、該逆「コ」字内に位置する略逆「フ」字状の内側発光部、及び、該逆「フ」字内に点在する四個の小円形状発光部が設けられている。 〔相違点4〕点灯表示部の下辺及び外周を構成する発光部の態様について、本願意匠では、下側の略逆L字状の発光部と上側の細幅帯状発光部とが分離しており、略逆L字状の発光部は計11のブロック状発光体を順次奥行方向にずらして配すことで全体を連続的な段差構造とした態様のものであるのに対し、引用意匠では、細幅帯状の略逆「コ」字状発光部を最外周に等幅で連続的に設け、それに内接するように太幅帯状の略L字状発光部を設けた態様のものである。 〔相違点5〕色彩について、本願意匠では、点灯表示部内の略逆L字状発光部及び各帯状発光部に赤色、薄赤色又は黄色の色彩が表されているのに対し、引用意匠では、形状を特定するための濃淡が付されているのみであり、特定の色彩は表されていない。 4 判断 以上の共通点及び相違点を評価、総合し、両意匠の類否について判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠は、意匠に係る物品が同一であると認められる。 (2)形状等 ア 前提 両意匠の意匠に係る物品は、自動車の車体の後方に取り付けられ、運転手の操作に応じて対応する発光部を点灯させ、直進、停止、右左折等の各種状況に応じた合図や注意喚起等を後続の車両等に対して行うための物品であり、この種物品の意匠創作においては、物品全体の輪郭形状に加え、点灯表示部における立体構成や各発光部の配置構成態様等にも相応の創意工夫が凝らされるものと認められる。 そうすると、この種物品の需要者は、後続の車両等からの視界に入りやすく、テールランプとしての機能面及び造形面の特徴が現れやすい点灯表示部の後方面の態様、すなわち、両意匠の正面に正対する方向及び筐体側面を含めて斜め方向から観察した際に看取される形状等に強い関心を持って、両意匠に係る物品を観察するものといえる。 以下、両意匠の形状等の類否判断に際しては、上記前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が及ぼす影響を評価することとする。 イ 共通点の評価 〔共通点1〕ないし〔共通点3〕の前段にいう意匠に係る物品全体の基本形状は、セダンやスポーツタイプといった車高が比較的低い乗用自動車用のテールランプにおいて本願出願前から多用されている基本形の一といえるものであるため、意匠に係る物品の需要者は、意匠の選択において、これらの基本形状にとどまることなく、意匠に係る物品の機能面及び造形面の特徴がより現れやすい、点灯表示部の後方面の具体的な構成態様に強い注意を引かれるものと認められる。 両意匠においては、〔共通点3〕の後段にいうとおり、テールランプ筐体の先端部付近に二つの略砲弾形状突起が、当該突起の後方には三角形状の発光部が設けられている点においても共通しているものの、これらの共通点は面積的に限られていることに加え、上記アに照らすと、後続の車両等からの視界に入る割合も少ないものと認められる。 よって、両意匠の基本形状及び筐体側面における態様の共通点が類否判断に及ぼす影響はいずれも限定的なものにとどまり、これらを合わせて勘案しても、両意匠の類否を決定付けるほどのものということはできない。 ウ 相違点の評価 〔相違点1〕にいう取付け方向の左右の違いについて、自動車用のテールランプは、その用途及び機能上、鏡像関係にある対称形状のランプを左右一対で用いることが通例であることに照らすと、図面上に表されたものが車体の右側用か左側用かの違いは、意匠の造形的な特徴の把握及び対比に影響することはないため、この相違点は、両意匠の類否判断に何ら影響を及ぼさない。 〔相違点2〕にいう点灯表示部の後方面の立体構成について、後方の端面をフラットな傾斜面形状とした本願意匠と、二重区画の内側を外側よりも一段凹陥させた傾斜面形状とした引用意匠とでは、特に斜め方向から観察した際の視覚的な印象に大きな相違をもたらすため、この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きい。 〔相違点3〕及び〔相違点4〕にいう各発光部の具体的態様について、本願意匠と引用意匠とでは、外周を構成する発光部が一体的か分離的か、内部に配置された発光部が帯状か点状か等、各発光部における具体的な造形の方向性が大きく異なっており、中でも、両意匠の点灯表示部の中で最も大きな面積を占める下辺部の略逆L字状(引用意匠は略L字状)発光部について、本願意匠が計11のブロック状発光体から成る段差状の立体構造としている点は、当該部分の全体を連続面として構成している引用意匠との対比において、極めて大きな美感の相違を創出するものとなっている。 よって、〔相違点3〕及び〔相違点4〕に摘示した発光部の具体的態様における相違は、需要者の注意を強く引くといえ、また〔相違点2〕とも相まって両意匠をそれぞれ特徴付けるものとなっているため、これらの相違点が類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。 〔相違点5〕にいう色彩の有無に係る相違について、本願意匠に表された赤系色及び黄色による彩色は、車両用尾灯の点灯表示部の機能上、通常用いられる色彩の範囲のものと認められるため、この相違点は類否判断に特段の影響を及ぼさない。 エ 小括 上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、両意匠の形状等の共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく、これら相違点の存在によって需要者に別異の美感を与えるというべきものであるため、両意匠の形状等は、類似するとは認められない。 (3)両意匠の類否 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるものの、その形状等は類似するとは認められない。 よって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえない。 第5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-10-11 |
出願番号 | 2022010899 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
伊藤 宏幸 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-11-01 |
登録番号 | 1757174 |
代理人 | 藤井 健一 |