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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1404869 |
総通号数 | 24 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-05-26 |
確定日 | 2023-10-31 |
意匠に係る物品 | 自動車用サイドアンダースポイラー |
事件の表示 | 意願2022− 11187「自動車用サイドアンダースポイラー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 本願は、令和4年5月25日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和4年 9月29日付 :拒絶理由通知書 11月11日 :意見書の提出 令和5年 2月20日付 :拒絶査定 5月26日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「自動車用サイドアンダースポイラー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものと認められるため、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は次のとおりである(別紙第2参照)。 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1415637号 (意匠に係る物品、自動車用サイドスカート)の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠 本願意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によると、以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用サイドアンダースポイラー」であり、自動車の車体底面への空気の流れ込みの抑制や車体の美感向上等を目的として車体側面の下端に取り付けられる物品であると認められる。 (2)本願意匠の形状等 〔A1〕全体は、薄板を折り曲げて形成した大略L字状断面の長尺体であり、左側端部は板で塞がれ、右側端部及び上部は大きく開放されているが、正面側から連続する端部にのみ細幅帯状の折り曲げ縁部が形成されている。 〔A2〕正面視での全体形状は、縦横比を約1対21とした細長略矩形状であり、長辺を構成する上下二辺は、下辺が水平、上辺は車体の前方側(図面左側)から後方側(図面右側)に掛けてごく僅かに上昇傾斜している。 〔A3〕細長略矩形状を呈する正面視輪郭内には、左端から逆台形状の区画部を経て上辺の左から約7分の6の範囲まで刀剣状に伸びる上側外縁、上側外縁と略等幅で右端から台形状の区画部を経て下辺の右から約7分の6の範囲まで刀剣状に伸びる下側外縁、及び、それら上下外縁の間に細長略平行四辺形状の中央凹部が形成されている。 〔A4〕側面視では、左右端部の正面側の辺がやや下向きに傾斜しており、左右端部間の中間部には山状の隆起部が形成されている。 〔A5〕上側外縁の立体構成は、斜視図を含む各図の内容を総合すると、左端から逆台形状の区画部を経て刀剣状に伸びる全体が、やや下向きの傾斜角度をもって一つの連続面を形成しており、奥行き方向では、刀剣状に伸びた先端部付近で僅かに背面側に窪んだ起伏形状を有していると認められる。 〔A6〕下側外縁の立体構成は、斜視図を含む各図の内容を総合すると、右端から逆台形状の区画部を経て刀剣状に伸びる全体が、上側外縁よりも大きな下向きの傾斜角度をもって一つの連続面を形成しており、奥行き方向では、逆台形状から刀剣状に切り替わる位置付近を頂点として、刀剣状の連続傾斜面が正面側に隆起した起伏形状を有していると認められる。 〔A7〕中央凹部の立体構成は、斜視図を含む各図の内容を総合すると、上側外縁と下側外縁の略中間位置に屈曲線が現れるV字状断面の凹陥形状であって、凹陥の深さは平面視した際に背面側には現れない程度のごく浅いものであり、正面視で右側に位置する中央凹部の上方端及び左側に位置する下方端のいずれも開放構造となっている。 2 引用意匠 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用サイドスカート」であり、自動車の車体底面への空気の流れ込みの抑制や車体の美感向上等を目的として車体側面の下端に取り付けられる物品であると認められる。 (2)引用意匠の形状等 〔B1〕全体は、薄板を折り曲げて形成した大略L字状断面の長尺体であり、左側端部及び右側端部は板で塞がれ、上部は開放されている。 〔B2〕正面視での全体形状は、縦横比を約1対13とした細長略矩形状であり、長辺を構成する上下二辺は、下辺が水平、上辺は車体の前方側(図面左側)から後方側(図面右側)に掛けてごく僅かに上昇傾斜している。 〔B3〕細長略矩形状を呈する正面視輪郭内には、上側部分を前方側から後方側にかけて漸次縮幅する極細に、下側部分を上側よりも太幅かつ等幅に構成した、全体が一つの連続面から成る外縁部、及び、その外縁部によって周囲を囲繞された、左右両端部付近までの長さを有する細長略三角形状の中央凹部が形成されている。 〔B4〕側面視では、左右端部の正面側の辺がやや下向きに傾斜しており、左右端部間の中間部には山状の隆起部が形成されている。 〔B5〕外縁部の上側部分を構成する面の立体構成は、斜視図並びに端面図及び断面図を含む各図の内容を総合すると、その全体がやや下向きの傾斜角度を維持したまま左右端部間に連続しており、奥行き方向では、全体長さの約8割を占める中間部分が正面側にやや隆起した起伏形状を有していると認められる。 〔B6〕外縁部の下側部分を構成する面の立体構成は、斜視図並びに端面図及び断面図を含む各図の内容を総合すると、その全体が、上側部分よりもやや大きな下向きの傾斜角度をもって左右端部間に連続しており、奥行き方向では、全体長さの約8割を占める中間部分が略一様に正面側に隆起した起伏形状を有していると認められる。 〔B7〕中央凹部の立体構成は、斜視図並びに端面図及び断面図を含む各図の内容を総合すると、上下方向の中間部に屈曲線が現れないU字状断面の凹陥形状であって、凹陥の深さは平面視した際に背面側には現れない程度のごく浅いものであり、正面視で右側に位置する中央凹部の上方端及び左側に位置する下方端のいずれも閉鎖構造となっている。 3 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下、これらを合わせて「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、具体的な表記は異なるものの、いずれも、自動車の車体底面への空気の流れ込みの抑制や車体の美感向上等を目的として車体側面の下端に取り付けられる物品であることから、意匠に係る物品の用途及び機能が共通すると認められる。 (2)形状等 両意匠の形状等を対比すると、主として以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 ア 共通点 〔共通点1〕全体は、薄板を折り曲げて形成した大略L字状断面の長尺体であり、左側端部は板で塞がれている。 〔共通点2〕細長略矩形状を呈する正面視の上下二辺は、下辺が水平、上辺は車体の前方側から後方側に掛けてごく僅かに上昇傾斜しており、これらの間に形成される正面視輪郭内には、上下外縁部及び浅い中央凹部が設けられている。 〔共通点3〕上側外縁部はやや下向きの傾斜角度をもって、下側外縁部は上側外縁部よりも大きな下向きの傾斜角度をもって左右方向に連続面を形成しており、下側外縁部の中間部には正面側への隆起部がある。 イ 相違点 〔相違点1〕右側端部及び上部の態様について、本願意匠ではいずれも折り曲げ縁部を除き開放されているのに対して、引用意匠では右側端部が板で塞がれ上部は全開放されている。 〔相違点2〕正面視の縦横比について、本願意匠は約1対21であるのに対して、引用意匠は約1対13である。 〔相違点3〕外縁部における正面視の具体的態様について、本願意匠では、左端から逆台形状の区画部を経て上辺の左から約7分の6の範囲まで刀剣状に伸びる上側外縁、上側外縁と略等幅で右端から台形状の区画部を経て下辺の右から約7分の6の範囲まで刀剣状に伸びる下側外縁が、それぞれ分離独立的に形成されているのに対して、引用意匠では、外縁部全体が一つの連続面であり、上側部分は漸次縮径する極細に、下側部分は上側よりも太幅かつ等幅に形成されている。 〔相違点4〕中央凹部の正面視形状について、本願意匠は細長略平行四辺形状であるのに対して、引用意匠は細長略三角形状である。 〔相違点5〕上側外縁における奥行き方向の立体構成について、本願意匠では刀剣状に伸びた先端部付近で僅かに背面側に窪んだ起伏形状を有しているのに対し、引用意匠では全体長さの約8割を占める中間部分が正面側にやや隆起した起伏形状を有している。 〔相違点6〕下側外縁における奥行き方向の立体構成について、本願意匠では正面視で逆台形状から刀剣状に切り替わる位置付近を頂点として連続傾斜面が正面側に隆起した起伏形状を有しているのに対し、引用意匠では全体長さの約8割を占める中間部分が略一様に正面側に隆起した起伏形状を有している。 〔相違点7〕中央凹部の立体構成について、本願意匠は上側外縁と下側外縁の略中間位置に屈曲線が現れるV字状断面の凹陥形状であって上方端及び下方端のいずれも開放構造であるのに対して、引用意匠は上下方向の中間部に屈曲線が現れないU字状断面の凹陥形状であって上方端及び下方端のいずれも閉鎖構造となっている。 4 判断 以上の共通点及び相違点を評価、総合し、両意匠の類否について判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠は、意匠に係る物品が同一であると認められる。 (2)形状等 ア 前提 両意匠の意匠に係る物品は、自動車の車体底面への空気の流れ込みの抑制や車体の美感向上等を目的として車体側面の下端に取り付けられる物品であることから、この種物品の需要者は、周囲からの視界に入りやすく、機能面及び造形面の特徴が現れやすい、正面及び斜め方向から観察した際に看取される形状等に強い関心を持って両意匠に係る物品を観察するものといえる。 以下、両意匠の形状等の類否判断に際しては、上記前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が及ぼす影響を評価することとする。 イ 共通点の評価 〔共通点1〕ないし〔共通点3〕は、いずれも両意匠の基本形状を概括的に捉えた際の共通点であり、特に、車体底面への空気の流れ込みの抑制といった機能上の要求を満たす上で必然的なものといえる部分もあるため、意匠に係る物品の需要者は、意匠の選択において、これらの基本形状にとどまることなく、意匠に係る物品の更なる機能面及び造形面の特徴が現れる具体的な構成態様により強い注意を引かれるものと認められる。 よって、両意匠の基本形状における共通点が類否判断に及ぼす影響はいずれも限定的なものにとどまり、これらを合わせて勘案しても、両意匠の類否を決定付けるほどのものということはできない。 ウ 相違点の評価 まず、〔相違点1〕にいう右側端部及び上部の態様の違いについて、両意匠の意匠に係る物品がいずれも車体側面の下端に取り付けられる物品であることに照らすと、車体に装着した際には、上部は他のボディパネル等によって覆い隠され、右側端部は車体の後方側に向けられ、いずれも視認又は注視されにくくなると認められるため、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はごく限定的なものにとどまる。 次に、〔相違点2〕ないし〔相違点4〕に摘示した両意匠の正面視態様の違いについて、上側外縁と下側外縁とを分離独立的に形成し中央凹部を略平行四辺形状とした本願意匠と、外縁部全体を一つの連続面とし中央凹部を略三角形状とした引用意匠とでは、基礎とする造形の方向性が大きく異なっているといえる。また、全体のプロポーションにおいてより細く長い本願意匠が上下外縁の双方をいずれも細く略等幅に形成している点は、全体のプロポーションにおいてより太く短い引用意匠が下側外縁部をより太く形成していることとの対比において、異なる美感を創出するものとなっている。 そして、〔相違点5〕ないし〔相違点7〕に摘示した両意匠各部の立体構成の違いについて、本願意匠と引用意匠とでは、上下外縁の正面側への隆起の態様の違いに加え、中央凹部の谷部に明確な屈曲線が現れるか否か、上方端及び下方端が開放構造か閉鎖構造かという点においても異なっており、これらの起伏形状の違いは、両意匠を斜め方向から観察した際の視覚的な印象に大きな相違をもたらすものとなっている。中でも、中央凹部について、本願意匠では開放された端部間を空気が流れていくような動的なフォルムであるのに対し、引用意匠では帯状区画内部に閉鎖された凹部がとどまるような静的なフォルムとなっている点で相違しており、需要者に対して与える視覚的印象を大きく異ならしめるものとなっている。 よって、〔相違点2〕ないし〔相違点7〕に示す両意匠の具体的態様は、これら全てが相まって両意匠をそれぞれ独自に特徴付け、その相違点は需要者の注意を極めて強く引くものといえるため、これらの相違点が類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。 エ 小括 上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、両意匠の形状等の共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく、これら相違点の存在によって需要者に別異の美感を与えるというべきものであるため、両意匠の形状等は、類似するとは認められない。 (3)両意匠の類否 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるものの、その形状等は類似するとは認められない。 よって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえない。 第5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-10-18 |
出願番号 | 2022011187 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
伊藤 宏幸 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-11-21 |
登録番号 | 1758481 |
代理人 | 弁理士法人牛木国際特許事務所 |