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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1405867 |
総通号数 | 25 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-04-27 |
確定日 | 2023-12-19 |
意匠に係る物品 | 複合建築物 |
事件の表示 | 意願2021− 15704「複合建築物」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、建築物の部分について意匠登録を受けようとする、令和3年(2021年)7月19日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年(2022年) 7月28日付け 拒絶理由通知書 同年 9月 9日 意見書の提出 令和 5年(2023年) 1月30日付け 拒絶査定 同年 4月27日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る建築物を「複合建築物」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「黒色実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。橙色実線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである(以下、本願意匠において建築物の部分として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照) 第3 原査定における拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 著者の氏名 Facebook 表題 安城建築 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2021年6月10日 検索日 2022年7月28日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL: https://www.facebook.com/anjokenchiku/photos/3847293505396523 に掲載された建築物の意匠の本願意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 以下、本願意匠と引用意匠の対比において、引用意匠の左側の面を正面、右側の面を右側面として、本願意匠と対比する。 (1)意匠に係る建築物 本願意匠の意匠に係る建築物は「複合建築物」であり、引用意匠の意匠に係る建築物も「建築物」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る建築物は、一致する。 (2)本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能 本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、建物の屋根の軒及び軒を支える持ち送りの部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲 ア 位置 両部分は、軒は正面及び左右側面の屋根下に位置しており、持ち送りは軒下の四隅の角に位置しているから、両部分の位置は、一致する。 イ 大きさ及び範囲 本願部分は、正面における軒の高さは建築物全体の約1/15で、持ち送りの高さは軒とほぼ同じであるのに対し、引用部分は、軒の高さは約1/11で、持ち送りの高さは軒とほぼ同じであるから、両部分の大きさ及び範囲は、ほぼ一致する。 (4)両部分の形状等 両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (ア)全体 全体は、平面視略縦長倒「コ」字状に屈曲した平屋根において、略横長帯状の軒を垂直に配置し、その四隅の角に持ち送りを取り付けている点、 (イ)軒 軒は、上端に略横長凸条を形成している点、 (ウ)持ち送り 持ち送りは、角材を略「L」字状に屈曲し、その内寄りに斜めに添え木を取り付けたアングルブラケットであって、軒下の正面に2個、右側面に2個ずつ取り付けている点において、共通する。 イ 相違点 (ア)軒 a 本願部分は、正面中央左寄りが略クランク状に凹んでいるのに対し、引用部分は、凹みはない点、 b 引用部分は、右側面の背面寄りが略クランク状に突出しているのに対し、本願部分は、突出していない点、 c 本願部分は、凸条の下側は平坦な垂直面であるのに対し、引用部分は、中央付近に略横長帯状の浅い凹条を形成している点、 d 本願部分は、上端が平面においてパラペット(凸条)を成しているのに対し、引用部分は、平面及び背面から見た図の開示がないため不明である点、 (イ)持ち送り 本願部分は、縦横の長さの比率がほぼ同じであるのに対し、引用部分は、横の長さが縦の長さの約2倍の長さである点において、相違する。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る建築物の類否判断 両意匠の意匠に係る建築物は、同一である。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、同一である。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、両部分の大きさ及び範囲は、同一である。 (4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価 以下、両部分の形状等について検討する。 ア 両部分の形状等の共通点の評価 この種、建築物の分野において、平屋根の軒正面を略横長帯状の垂直面とし、その上端に略横長凸条を形成したものが、両部分の他にも一般に見られる態様であることから(例えば、ケイミュー株式会が2014年2月18日に発行した内国カタログ「2014総合カタログ 外壁材 SIDING MATERIALS 寒冷地域用」第68頁に所載の「組立て家屋」の意匠(公知資料番号HC26600464)。参考意匠、別紙第3参照)、この共通点は、両部分のみに共通する態様とはいえず、また、軒の補強のため軒下に持ち送りを取り付けることや、支持部材としてアングルブラケットを用いることは、当該分野において広く知られており、格別、需要者が注意を払うものではないから、これらの共通点が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。 イ 両部分の形状等の相違点の評価 相違点(ア)について、まず、a及びbの略クランク状の凹みや突出の有無についてであるが、これらの相違は、意匠全体に関わる基本構成における相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。次に、cの中央付近の凹条の有無については、最も目立つ軒の垂直面における相違であり、需要者に与える視覚的印象は大きく異なるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。一方、dのパラペットについては、この種、建築物の分野においては、防水対策の一環として平屋根の周縁にパラペットを形成した建築物はごく普通に見られることから、軒の上端がパラペットを成す本願部分の態様は、本願部分独自のものとはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 相違点(イ)について、持ち送りは、軒下を見上げた際に、比較的目に付くものであるところ、本願部分は、縦横の長さの比率が同じで、全体的にこぢんまりしているのに対し、引用部分は、大ぶりで奥行きが長く、本願部分と比較すると、目を引くものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 両部分の形状等の評価 以上のとおり、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)のdが両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(ア)のaからc及び相違点(イ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 3 小括 したがって、両意匠は、意匠に係る建築物は同一で、両部分の用途及び機能が同一で、位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-12-04 |
出願番号 | 2021015704 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 吉田 英生 |
登録日 | 2023-12-28 |
登録番号 | 1761212 |
代理人 | ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人 |