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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 N3 |
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管理番号 | 1406772 |
総通号数 | 26 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-07-10 |
確定日 | 2024-02-07 |
意匠に係る物品 | フォークリフト情報表示用降車床面投影画像 |
事件の表示 | 意願2022− 11184「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、画像の部分について意匠登録を受けようとする令和4年5月25日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和5年 2月 6日付 : 拒絶理由通知書 3月13日 : 手続補正書の提出 3月13日 : 意見書の提出 4月18日付 : 拒絶査定 7月10日 : 審判請求書の提出 2 本願意匠 (1)意匠に係る画像の用途 願書の意匠に係る物品の欄の記載によると、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る画像の用途を「フォークリフト情報表示用画像」とした画像の意匠であって、願書の意匠に係る物品の説明の欄には、その画像の具体的な使用の目的や使用の状態等について、「本画像は、フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像である。例えば、参考図のとおり、オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されることにより、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるものである。」と記載されていたものである。 その後、令和5年3月13日に提出された手続補正書においては、意匠に係る物品及び意匠に係る物品の説明の記載が、それぞれ、「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」及び「本画像は、フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像である。参考図のとおり、オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されることにより、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるものである。」と変更されている。 (2)意匠登録を受けようとする部分及びその形態 本願意匠の意匠登録を受けようとする部分及びその形態は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりであって、願書の意匠の説明の欄には、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている。(以下、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。) 3 原査定の拒絶の理由及び引用した画像 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的な判断の理由は以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠登録を受けようとする部分(以下、本願部分といいます)は、長方形状の太枠によって構成されるフォークリフト情報表示用画像であって、当該太枠上には右下がりの斜め縞模様が表され、当該斜め縞模様は濃淡の異なる2色の色面によって構成されています。 これに対し、下記の引用画像1に見られるとおり、フォークリフト情報表示用画像として投影される長方形状の画像は、本願出願前より公然知られています。また、濃淡の異なる2色の色面からなる斜め縞模様が表された長方形状の太枠によって構成される画像も、下記の引用画像2などに見られるとおり、本願出願前から公然知られています。さらに、引用画像3などから、斜め縞模様の向きを右下がりとすることは、本願出願前からごく一般的に行われていたものと認められます。 そうすると本願部分は、引用画像1のようなフォークリフト情報表示用画像に対して、引用画像2に見られる形態を適用したうえで、引用画像3にみられる手法に基づいて斜め縞模様の向きを右下がりに変更したものに過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 <引用画像1> 欧州特許出願公開 EP2754584 A2 Fig.4、段落【0043】に表されたフォークリフト情報表示用画像 (当審注、公開日:2014年7月16日) <引用画像2> 以下のウェブサイトに掲載された画像 (書誌的事項) ・著者の氏名 DMVector ・表題 「警告縞模様のフレーム 注意する警告 潜在的な危険性 斜めの黄色と黒の縞模様 ベクトルテンプレートの記号の境界線黄色と黒の色 工事警告境界 ストックベクター DMVector #270629040」 ・掲載箇所 当該画像 (https://st4.depositphotos.com/18270392/27062/v/1600/depositphotos_ 270629040-stock-illustration-warning-striped-frame-warning-careful.jpg) ・媒体のタイプ [online] ・掲載年月日 2019年5月21日 ・検索日 2023年2月6日 ・情報の情報源 インターネット ・情報のアドレス https://jp.depositphotos.com/270629040/stock-illustration-warning-striped-frame-warning-careful.html <引用画像3> 以下のウェブサイトに掲載された画像 (書誌的事項) ・著者の氏名 rootstocks ・表題 「警告ストライプ フレーム. ストックベクター rootstocks #291639562」 ・掲載箇所 当該画像 (https://st4.depositphotos.com/3298369/29163/v/1600/depositphotos_ 291639562-stock-illustration-warning-stripes-frame.jpg) ・媒体のタイプ [online] ・掲載年月日 2019年8月4日 ・検索日 2023年2月6日 ・情報の情報源 インターネット ・情報のアドレス https://jp.depositphotos.com/291639562/stock-illustration-warning-stripes-frame.html」 また、原審審査官は、拒絶査定において以下を付記した。 「先の拒絶理由通知に対して令和5年3月13日付で手続補正書と意見書を提出されました。手続補正書では、意匠に係る物品の記載を「フォークリフト情報表示用画像」から「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」に変更し、意匠に係る物品の説明における参考図に関する記載冒頭から「例えば、」の語を削除して、画像の用途及び機能を限定的なものとされました。そのうえで意見書では主に以下の二点について指摘し、本願意匠が当業者であれば容易に創作できたものではない旨主張されました。具体的には、第一に、本願意匠はオペレータがフォークリフトから降りる際にその足元に表示される画像であるところ、引用意匠1では画像が路面に投影されることは開示されているものの画像が投影される位置はフォークリフトの前方及び後方であり、本願意匠のようにフォークリフトの側方に投影されることは開示及び示唆されていない旨述べられました。第二に、本願意匠はオペレータに対して車両のエラー等を注意喚起するものであり、このような用途及び機能を発揮することは引用意匠1から3のいずれにも開示及び示唆されていない旨述べられました。 しかしながら、車両側方の路面に画像を投影することは、下記の<参考意匠>等に見られる通り、画像を含む意匠の分野において本願出願前から既に行われているため、本願意匠の投影位置には特段の創作性を認めがたいと言わざるを得ません。また、引用意匠1が警告装置を備えたフォークリフトから路面に投影する警告表示用画像であり、警告表示と注意喚起に本質的な違いがないことを踏まえると、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起する本願意匠の用途及び機能は、本願意匠特有の用途及び機能とまでは認められません。なお、本願意匠と引用意匠1の間には、当該表示が、画像を投影している車両に乗車しているオペレータのみに向けられているものか、周辺車両のオペレータにも向けられているものかという点に違いはありますが、この種の画像はその表示態様からして創作者の意図に関わらず周辺車両のオペレータにも視認されるのが通常であることを踏まえると、この点のみを以て本願意匠の用途及び機能に着想の新しさや独創性を認めることもやはり難しいと言わざるを得ません。 以上のことから、意見書の主張は採用することができず、本願意匠は当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 <参考意匠> 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2017―81249 (発明の名称:車両用照明システム)の【図12】においてLt及びRtとして表された、車両情報表示用路面投影画像」 (当審注、公開日:2017年5月18日) 第2 請求人の主張 請求人は、令和5年7月10日提出の審判請求書において、要旨以下のとおり主張した。 1 創作非容易性の判断 (1)各引用意匠等の開示及び示唆 ア 引用画像1には、画像が路面に投影されることは開示されているものの、フォークリフトの前方及び後方の床面に投影されており、本願意匠のように、オペレータが降車する床面であるフォークリフトの側方に投影されることは開示及び示唆されていない。 イ 引用画像2及び3には、フォークリフトの周辺に投影されることは何ら開示及び示唆されていない。 ウ 参考意匠には、画像が車両の側方の路面に投影されることは開示されているものの、車両周囲の後続車両のドライバ等に報知するものであって、本願意匠のように、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、フォークリフトのオペレータに対して報知する画像であることは開示及び示唆されていない。 エ 本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、願書に記載された「意匠に係る物品の説明」及び参考図のとおり、フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像であって、オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されることにより、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるものであり、本画像のように、フォークリフトに対する特定の位置に投影されて、特定の用途に用いられることは、引用画像1〜3及び参考意匠には開示及び示唆されていない。 (2)審査基準 ア 本願意匠の画像は、意匠審査基準6.3.2.1「画像を含む意匠の分野におけるありふれた手法の例」のいずれにも該当しない。 イ 意匠審査基準5.2「当該分野においてありふれた手法等であることの提示」との関係において、本願意匠の画像が、オペレータがフォークリフトから降りる足元に表示されるというように、フォークリフトに対する特定の位置に投影されて、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるという特有の用途及び機能を有するものであることが、当該分野におけるありふれた手法や、軽微な改変などにすぎないものであることを示す具体的な事実が提示されていない。 ウ 意匠審査基準4.3「当業者の立場から見た意匠の着想の新しさや独創性について」との関係において、審査官は、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分が、オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されるというように、フォークリフトに対する特定の位置に投影され、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるという独自の創意工夫に基づく当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を考慮していない。 (3)創作の原点 本願意匠の創作は、意匠に係る物品の説明の通り、フォークリフトのオペレータに対して報知することを原点としているのに対して、引用画像1及び参考意匠は、フォークリフトのオペレータ以外の者に対して報知するもので、本願意匠の創作の着眼点が、引用画像1及び参考意匠のそれとは大きく異なる。 (4)創作非容易性の判断 従って、本願意匠の画像は、引用画像1のようなフォークリフト情報表示用画像に対して、引用画像2に見られる形態を適用したうえで、引用画像3にみられる手法に基づいて斜め縞模様の向きを右下がりに変更し、さらに、参考意匠のような自動車の側方の路面に画像を投影したものに過ぎないもの、とは認定することができないことは明らかである。その結果、本願意匠の画像は、当業者であれば容易に創作できたもの、と認定されることは誤りであると言わざるを得ない。 2 むすび 本願意匠は、独自の創意工夫に基づく当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性が認められ、ひいては意匠の創作の手法が、当該分野におけるありふれた手法ではない上、当業者の立場に立って見ても、創作上の相違が顕著に認められることは言を待たないものである。 第3 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項該当性、すなわち、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に創作をすることができた意匠か否かについて、以下検討し、判断する。 1 本願意匠の認定(別紙第1参照) (1)意匠に係る画像の用途 上記、第1 2(1)のとおり、本願意匠における願書の意匠に係る物品の欄の記載は、令和5年3月13日に提出された手続補正書において、出願当初の「フォークリフト情報表示用画像」から「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」へと、「降車床面投影」の語を追加する変更がなされている。また、同意匠に係る物品の説明の欄の記載も、出願当初の「本画像は、フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像である。例えば、参考図のとおり、オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されることにより、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起することができるものである。」から、第二文目冒頭の「例えば」の語を削除する変更がなされている。 これらの補正の適法性について検討するに、願書の意匠に係る物品の説明の欄には出願当初から「本画像は、フォークリフトにおいて、・・・した状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像である。・・・」と記載されており、参考図にも出願当初から路面(床面)に投影された画像を表す図が示されていたことからすれば、これらの補正は、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するものではないと認められる。 そうすると、本願意匠の意匠に係る画像は、「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」、より詳しくは、「フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像」であって、「オペレータがフォークリフトから降りる足元に本画像が表示されることにより、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起すること」をその具体的な用途とするものと認められる。 なお、請求人は、審判請求書において、本願意匠は「フォークリフトの側方」に投影されるものである旨を主張している箇所があるが、本願の願書及び願書に添付した図面の記載の内容を総合すると、本願意匠の投影位置については、「オペレータがフォークリフトから降りる際の足元の床面」であることまでは特定されているものの、「フォークリフトの側方」とまでは特定されていないものと認められる。その理由は、(a)本願意匠は、画像の意匠として、フォークリフトの図示を伴わない画像図によって表されたものであること、(b)願書及び願書に添付した図面には、フォークリフトの車体に対する投影位置(方向)を具体的に特定する記載はないこと、(c)「例えば」の記載如何にかかわらず、参考図は、本願意匠そのものではなく、本願意匠の理解を助けるための図にとどまるものであること、及び、(d)フォークリフトには様々なタイプがあり、オペレータの乗降位置はフォークの向き又は進行方向に対して側方のみとは限らないこと、である。 (2)本願部分の用途及び機能、位置、大きさ及び範囲並びに形態 「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」との説明の記載及び図面の記載に基づくと、本願部分は、画像図中に表された横長長方形状の太枠線の部分であると認められる。 ア 本願部分の用途及び機能 画像図中には、横長長方形状の太枠線のみが実線で表され、それ以外は画像全体の輪郭を示す破線が表されているのみであるから、実線で表された本願部分は、本願意匠に係る画像と同様、「フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像」であって「オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起する」という用途及び機能を有すると認められる。 イ 本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願意匠である画像の全体に対する本願部分の位置及び範囲は、破線で表された画像全体の輪郭に対して、左右両端部には細幅かつ等幅の、上下両端部には太幅かつ等幅の余白部を設けた、画像全体の中央部の位置及び範囲であり、参考図の記載を参酌すると、床面に投影される際の本願部分の大きさ(横方向の長さ)は、オペレータの身長又はフォークリフト車体の前後長と同等の大きさ(長さ)であることが想定されているものと認められる。 ウ 本願部分の形態 (ア)本願部分は、縦横比を約1対2とした横長長方形状の太枠線である。 (イ)太枠線の幅(太さ)は、全周に掛けて均一であり、本願部分全体の縦幅(長方形の短辺長)の約14分の1である。 (ウ)太枠線の表面は、濃淡二階調の等幅斜線を交互に配することで形成される縞模様状を呈している。 (エ)当該縞模様状を呈する斜線の傾斜角度は、右下がり45度である。 2 原審引用意匠等の認定 (1)引用画像1(別紙第2参照) 引用画像1は、欧州特許庁が2014年7月16日に発行した欧州特許出願公開公報のFig.4及び段落【0043】に表された、フォークリフト情報表示用画像として引用されたものである。 ア 引用画像1の用途及び機能 引用画像1は、Fig.4の図及び段落【0043】の記載を参酌すると、フォークリフトの車体の前方及び後方に投影される警告領域という用途及び機能を有するものと認められる。 イ 引用画像1の形態 引用画像1は、外縁の縦横比が約2:3の長方形を二つ、フォークリフトの前後に縦長に配した態様であり、外縁の区画を示す以外の要素は表されていない。 (2)引用画像2(別紙第3参照) 引用画像2は、2019年5月21日にインターネットのウェブサイトに掲載された画像として引用されたものである。 その掲載ページにおける「ストックイラストレーション」の語、及び、同「利用情報」の項における「このロイヤリティフリーのベクター画像・・・は、標準ライセンスまたは拡張ライセンスに従って、個人的および商業的な目的で使用できます。標準ライセンスは、広告、UIデザイン、製品デザインなど、ほとんどのユースケースをカバーし、最大500,000部の印刷を許可します。・・・」の記載に基づくと、引用画像2は、意匠法第2条第1項に規定する画像には該当せず、画像として用いることが使用法の一として想定された図柄(モチーフ)であるものと認められる(便宜上、本審決においては引き続き「引用画像2」の語を用いる。)。 ア 引用画像2の用途及び機能 引用画像2の掲載ページにおける「警告縞模様のフレーム、注意する警告、潜在的な危険性、斜めの黄色と黒の縞模様、ベクトルテンプレートの記号の境界線黄色と黒の色。」の記載を参酌すると、引用画像2は、警告又は注意喚起の目的で用いることが想定された図柄であるものと認められる。 イ 引用画像2の形態 (ア)引用画像2は、縦横比を約1対2とした横長長方形状の太枠線である。 (イ)太枠線の幅(太さ)は、全周に掛けて均一であり、引用画像2全体の縦幅(長方形の短辺長)の約14分の1である。 (ウ)太枠線の表面は、黒色と黄色による二階調の等幅斜線を交互に配することで形成される縞模様状を呈している。 (エ)当該縞模様状を呈する斜線の傾斜角度は、右上がり45度である。 (3)引用画像3(別紙第4参照) 引用画像3は、2019年8月4日にインターネットのウェブサイトに掲載された画像として引用されたものである。 その掲載ページにおける「ストックイラストレーション」の語、及び、同「利用情報」の項における「このロイヤリティフリーのベクター画像・・・は、標準ライセンスまたは拡張ライセンスに従って、個人的および商業的な目的で使用できます。標準ライセンスは、広告、UIデザイン、製品デザインなど、ほとんどのユースケースをカバーし、最大500,000部の印刷を許可します。・・・」の記載に基づくと、引用画像3は、意匠法第2条第1項に規定する画像には該当せず、画像として用いることが使用法の一として想定された図柄(モチーフ)であるものと認められる(便宜上、本審決においては引き続き「引用画像3」の語を用いる。)。 ア 引用画像3の用途及び機能 引用画像3の掲載ページにおける「警告ストライプフレーム」の記載を参酌すると、引用画像3は、警告の目的で用いることが想定された図柄であるものと認められる。 イ 引用画像3の形態 (ア)引用画像3は、縦横比を約2対3とした横長長方形状の太枠線であり、外周角部が隅丸となっている。 (イ)太枠線の幅(太さ)は、全周に掛けて均一であり、引用画像3全体の縦幅(長方形の短辺長)の約11分の1である。 (ウ)太枠線の表面は、黒色と黄色による二階調の等幅斜線を交互に配することで形成される縞模様状を呈している。 (エ)当該縞模様状を呈する斜線の傾斜角度は、右下がり45度である。 (4)参考意匠(別紙第5参照) 参考意匠は、日本国特許庁が2017年5月18日に発行した公開特許公報である特開2017―81249(発明の名称:車両用照明システム)の【図12】においてLt及びRtとして表された車両情報表示用路面投影画像、として提示されたものである。 ア 参考意匠の用途及び機能 参考意匠が示された公報中における「発明の名称:車両用照明システム」、【図12】及び段落【0133】の「例えば、図12に示すような、前方に位置する所定範囲Ft、右側方の所定範囲Rt、左側方の所定範囲Lt、後方の所定範囲Btのそれぞれに対応するように複数の路面照射装置18を備えていてもよい。」の記載を参酌すると、参考意匠は、車両の左右側方に投射される照明の照射範囲という用途及び機能を有するものと認められる。 イ 参考意匠の形態 参考意匠は、外縁の縦横比が約2:1の隅丸長方形を二つ、車両の下端部を含む左右の側方に縦長に配した態様であり、外縁の区画を示す以外の要素は表されていない。 3 本願意匠の創作非容易性についての判断 (1)意匠法第3条第2項の規定 意匠法第3条第2項は、意匠登録出願前に、当業者が、公知となった形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠については意匠登録を受けることができない旨を規定している。すなわち、出願前に公知となった構成要素や具体的態様を基礎として、これらをほとんどそのまま又は軽微な改変を加えたのみで、当該分野におけるありふれた手法などによって創作したにすぎない意匠は、創作容易な意匠に該当する。また、出願の意匠が物品や画像等の部分について意匠登録を受けようとするものである場合には、その意匠登録を受けようとする部分の形態、用途及び機能、並びに、物品や画像等全体に対して占める位置、大きさ及び範囲についても考慮した上で、当業者が容易にその意匠の創作をすることができたか否かを判断する必要がある。 (2)本願意匠の当業者及び原審による引用画像等 ア 本願意匠の当業者 本願意匠の意匠に係る画像の用途は「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」であるから、本願意匠の当業者とは、情報表示に関するユーザーインターフェースの設計・製作等を行う者であって、画像を含む意匠に関する通常の知識に加え、フォークリフト等の作業用車両の運用に関する通常の知識も有する者であるといえる。 イ 原審による各引用画像及び参考意匠について 意匠法第3条第2項は、物品との関係を離れた抽象的なモチーフを基準として、それから当業者が容易に創作することができる意匠でないことを登録要件としたものであると解されるから、「フォークリフト情報表示用降車床面投影画像」に係る本願意匠については、画像の意匠の創作に用いることが想定されている図柄である引用画像2及び同3に加え、フォークリフト用の警告領域(投影面)を示す引用画像1についても、本願意匠の創作非容易性について判断する際の資料として用いることができるといえる。また、本願意匠の属する分野におけるありふれた創作の手法について検討する上では、車両周辺の路面への照明表示方法を示す参考意匠も考慮することができるといえる。 (3)本願部分の評価 ア 本願部分の形態 上記1(2)ウで認定した本願部分の形態については、画像の意匠の創作にも用いることが想定された警告又は注意喚起用の図柄である引用画像2の形態とほぼ共通しており、両者の相違点となる色相(黄色の色味)の有無及び縞模様の傾斜方向の違いについても、引用画像3も併せて考慮すれば、いずれも軽微な改変の範囲にとどまるものといえ、当業者であれば容易に創作することができたものといえる。 イ 本願部分の位置及び範囲 画像全体に対する本願部分の位置及び範囲については、本願意匠は輪郭が破線で記載されていること、そして、参考図に示された使用時の画像は本願部分のみであることに照らすと、画像全体に対する本願部分の位置及び範囲は本願意匠の創作において特段の意味を有していないものと理解され、そこに独自の創意工夫を伺わせる事情はない。 ウ 本願部分の用途及び機能並びに大きさ まず、本願部分は、上記1(2)アのとおり、「フォークリフトにおいて、車両にエラーがあったり、何らかのスイッチを切り忘れたり、パーキングブレーキをかけ忘れたりした状態でオペレータが降車すると、画像投影装置を備えるフォークリフトから路面に照射される画像」であって「オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起する」という用途及び機能を前提として創作されたものである。 (ア)画像の投影位置及び大きさについて 本願部分に係る画像は、オペレータがフォークリフトから降りる際の足元の床面に投影されるものであることが願書及び願書に添付した図面において特定されており、そのような意図の下に創作されたものと認められるが、その特徴は、原審が示した引用画像1及び参考意匠のいずれにも現れていない。すなわち、引用画像1も参考意匠も、降車時におけるオペレータ(運転手)の足元に投影・照射されるものとは認められない。 従前、自動車に乗降する際の運転手又は乗客の足元を照らすドア照明に加飾の要素を含む小型の投影画像を用いる例や、人の足元に様々な情報表示用の画像を投影する例が本願出願前から多数存在することに照らしても、フォークリフトのような作業用車両において、オペレータの身長と同等の大きさの画像をオペレータの足元に投影するという点は、本願部分に係る画像に見られる独自の特徴であるといえる。 (イ)画像の投影目的及び対象者について 本願部分に係る画像は、オペレータに対して車両のエラー等を注意喚起するためのものであることが願書及び願書に添付した図面において特定されており、そのような意図の下に創作されたものと認められるが、その特徴は、原審が示した引用画像1及び参考意匠のいずれにも現れていない。すなわち、引用画像1も参考意匠も、警告又は注意喚起の対象は、当該車両の周囲の第三者又は後続の車両の運転手であって、当該車両のオペレータ(運転手)ではない。 従前、自動車等の車両においては、車両のエラー等を運転手やオペレータに対して注意喚起する際には、車内の運転席周りにある計器盤(インストルメントパネル)やヘッドアップディスプレイ等への情報表示を通じて行うことが通例であることに照らしても、降車時における車外への画像投影をオペレータ(運転手)に対する注意喚起の目的で用いるという点は、本願部分に係る画像に見られる独自の特徴であるといえる。 (ウ)小括 そうすると、画像の投影位置、投影目的及び対象者の観点を含む本願部分の具体的な用途及び機能並びに大きさには、当該分野におけるありふれた手法によるものとはいえない、独自の着想による創意工夫が表されているものといえる。 (4)本願意匠の創作非容易性 上記(3)のとおり、引用画像2に見られる警告又は注意喚起のための公知の図柄(モチーフ)に軽微な改変を加えたにとどまる本願部分の形態、そして、画像全体に対する本願部分の位置及び範囲については、様々なユーザーインターフェースについての設計・製作を行う当業者であれば、格別の困難もなく容易に創作することができたといえる。しかしながら、本願部分の用途及び機能並びに大きさの評価に基づくと、本願意匠は、当業者が、引用画像1ないし3、すなわち、出願前に公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて、容易にその意匠の創作をすることができたということはできないものである。 第4 結び 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-01-22 |
出願番号 | 2022011184 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(N3)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
伊藤 宏幸 江塚 尚弘 |
登録日 | 2024-02-09 |
登録番号 | 1763855 |
代理人 | 弁理士法人みのり特許事務所 |