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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1406773 
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-08-15 
確定日 2023-12-19 
意匠に係る物品 炊飯器 
事件の表示 意願2022− 13982「炊飯器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は、意匠法第14条第1項の規定により意匠を12ヶ月秘密にすることを請求する、令和4年(2022年)6月29日の関連意匠に係る意匠登録出願であって、意匠登録第1730139号の意匠を本意匠とし、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 5年(2023年)1月5日付け 拒絶理由の通知
同年 2月27日 意見書の提出
同年 5月15日付け 拒絶査定
同年 8月15日 審判請求書の提出
同年 8月16日 手続補正書の提出
同年 9月14日 早期審理に関する事情説明書

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「炊飯器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1704443号
(意匠に係る物品、炊飯器)の意匠

第4 当審の判断
以下において、両意匠が類似するか否かについて検討し、判断する。
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。
(2)本願意匠の形状等
基本的構成態様
ア 本願意匠は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、背面中央やや上寄りに容体と一体状に設けた略横長長方形板状のヒンジ(以下「ヒンジ部」という。)によって開閉可能に形成し、上面を正面側下にやや傾斜状とし、その傾斜面をほぼ平坦面とし(以下「平坦面」という。)、平面視中央の下方寄りに、略角丸横長長方形状の表示パネルを設け(以下「表示部」という。)、その周囲に8つの略角丸四角形状の操作ボタンを配し、さらにその下方に操作ボタンよりやや大きめの略角丸横長長方形状の開蓋用ボタンを1つ設け、中央上方に、略角丸横長長方形状の蒸気孔を設けたものである。
具体的態様
ア 容体
(ア)容体の縦横及び奥行きの長さの比率は、正面から観察した場合、約1:1.1:1.3であり、上から約1/3を蓋としている。
(イ)平面視において、平坦面の周縁に沿って外側に、下方及び左右をやや細く、上方を太くした略太帯状の面取りを施している。
(ウ)正面視において、周側面は上下に緩い弧面状に形成し、蓋と本体の境界に、周側面に沿って細帯状の枠(以下「細帯状枠部」という。)を形成している。
イ 操作ボタン
操作ボタンは、表示部の左側に縦に3つ、右側の中央と下側に縦に2つ、下側に横に3つ、それぞれ等間隔に配している。
2 引用意匠(別紙第2参照)
意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。
(2)引用意匠の形状等
基本的構成態様
ア 引用意匠は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、背面中央の上端寄りから下端にかけて、略角丸縦長長方形箱状の部材(以下「箱状部」という。)を取り付け、その上方寄りに略横長矩形状のヒンジ部を形成し、ヒンジ部によって開閉可能に形成し、上面を正面側下にやや傾斜状の平坦面とし、平面視中央の下方寄りに表示部を設け、その周囲に7つの略角丸四角形状の操作ボタンを配し、更にその下方に操作ボタンよりやや大きめの略角丸横長長方形の開蓋ボタンを1つ設け、中央上方寄りに、略角丸横長長方形状の蒸気孔を設けたものである。
具体的態様
ア 容体
(ア)容体の縦横及び奥行きの長さの比率は、正面から観察した場合、約1:1.1:1.5であり、上から約1/3を蓋としている。
(イ)平坦面の周縁に沿って外側に、同幅の細帯状の面取りを施している。
(ウ)正面視において、蓋は弧状に、本体は下方に向け、直線的に窄まって形成し、さらに本体部下方に僅かな段差を設け、蓋と本体の境界に、周側面に沿って細帯状枠部を形成している。
イ 操作ボタン
操作ボタンは、表示部の左側に縦に2つ、右側に縦に2つ、下側に横に3つ、それぞれ等間隔に配している。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、共に「炊飯器」であるから、両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 共通点
(共通点1)全体
両意匠は、全体が本体と蓋からなる、平面視略角丸直方体の容体であって、上面が、正面側下にやや傾斜状とし、正面視上から約1/3を蓋とし、平坦面周縁に沿って外側に面取りを施し、蓋と本体の境界に細帯状枠部を形成している点、
(共通点2)表示部、操作ボタン及び蒸気孔
両意匠は、平坦面に表示部を設け、その周囲に略角丸四角形状の操作ボタンを配し、さらに表示部下方に操作ボタンよりやや大きめの開蓋用の略角丸横長長方形状の開蓋用ボタンを1つ配し、中央上方寄りに、略角丸横長長方形状の蒸気孔を設けた点において共通している。
イ 相違点
(相違点1)全体
全体の縦横及び奥行きの長さの比率について、正面から観察した場合、本願意匠は、約1:1.1:1.3であるのに対し、引用意匠は、約1:1.1:1.5であり、引用意匠の方が平面視においてやや縦長である点、
(相違点2)外形状
(ア)平坦面周縁に沿って外側に施された面取りについて、本願意匠が平面視下方及び左右をやや細く、上方を太く施されているのに対し、引用意匠は同幅で細帯状に施されている点、
(イ)背面について、本願意匠は、背面中央やや上寄りに容体と一体状にヒンジ部を配しているのに対し、引用意匠は、背面中央の上端寄りから下端にかけて、箱状部を取り付け、その上方寄りに略横長矩形状のヒンジ部を配している点、
(ウ)本体の周側面について、本願意匠は、正面視において本体を下端まで緩やかな弧状に段差なく形成しているのに対し、引用意匠は本体が下方に向け、直線的に窄まって形成し、さらに、本体部下方に僅かな段差を設けている点について異なっている点、
(相違点3)操作ボタン
本願意匠の操作ボタンは、表示部の左側に縦に3つ、右側の中央と下側に縦に2つ、下側に横に3つ、それぞれ等間隔に配しているのに対し、引用意匠は、表示部の左側に縦に2つ、右側に縦に2つ、下側に横に3つ、それぞれ等間隔に配しており、引用意匠の操作ボタンの方が、表示部との間の距離が広く取られている点において相違している。

4 両意匠の類否判断
意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」であるから、同一である。
(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠は、「炊飯器」であるから、当該物品分野の需要者は、主に、炊飯器の購入者の外、製造業者、販売業者及び取引業者が含まれる。
したがって、需要者が注意して観察する容体の外形状や上面の操作ボタン等が、需要者の注意を引く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。
ア 共通点の評価
(共通点1)及び(共通点2)は、両意匠の形状全体に関わる共通点であり、需要者の目につきやすい大きな範囲を占める部分ではあるものの、いずれも当該炊飯器の分野においては以下の参考意匠1に見られるとおり、本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
参考意匠1(別紙第3参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 令和3年(2021年)8月8日
受入日 令和3年(2021年)9月17日
掲載者 日立アプライアンス株式会社
表題 仕様:ふっくら御膳 RZ−W100EM:炊飯
器:日立の家電品
掲載ページのアドレス
https://kadenfan.hitachi.co.jp/kitchen/lineup/rzw100em/spec.html
に掲載された「電気炊飯器」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RJ0302271000)
イ 相違点の評価
(相違点1)全体
構成比率について、本願意匠より、引用意匠の方が平面視においてやや縦長であるが、その差は僅かであって、さほど目立つものではないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点2)外形状
(ア)平坦面周縁に沿って外側に施された帯状の面取りの幅の違いについて、平面視下方及び左右をやや細く、上方を太くした本願意匠と、同幅で細帯状の引用意匠とは、視覚的印象が大きく異なっており、また、本願意匠は引用意匠に比べて、全体的に幅が太く、蓋全体が大きく3面に形成しているように見えるのに対し、引用意匠は2面に形成している印象を与えており、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(イ)背面について、背面は、正面や平面と比して需要者に観察されにくい部分ではあるものの、ヒンジ部を容体と一体状に配した本願意匠と、箱状部を取り付け、その上方寄りにヒンジ部を配した引用意匠とは視覚的印象が異なっており、需要者に与える美感は異なるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(ウ)炊飯器本体の周側面における違いについて、正面視において本体を下端まで緩やかな弧状に段差なく形成しているか、本体が下方に向け、直線的に窄まって形成し、下方において段差を有して形成しているかの違いは認められるものの、参考意匠1及び以下の参考意匠2に見られるとおり、これらは本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1579637号
(意匠に係る物品、炊飯器)の意匠
(相違点3)操作ボタン
操作ボタンの違いについて、当該部は需要者が操作する際に注視する部分であるから、表示部の左側に配した操作ボタンの数の違いは、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるといえ、また、表示部下方に横に3つ配した操作ボタンについて、表示部からの距離及び、ボタン同士の距離を引用意匠よりも近く配していることから、操作ボタンを、より表示部周囲に集めて配している印象を与え、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、当該違いが相まって、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。
ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)及び(共通点2)が、類否判断に与える影響は小さいのに対して、(相違点1)及び(相違点2)の(ウ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(相違点2)の(ア)、(イ)及び(相違点3)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであることから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。
したがって、両意匠を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。
(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、その形状等においても類似するから、両意匠は類似する。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲











審決日 2023-12-04 
出願番号 2022013982 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
成田 陽一
登録日 2024-01-19 
登録番号 1762513 
代理人 弁理士法人磯野国際特許商標事務所 

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