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審決分類 審判    E3
管理番号 1409210 
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-12-15 
確定日 2024-03-18 
意匠に係る物品 バーベル 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1641845号「バーベル」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯

本件意匠登録第1641845号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、平成31年(2019年)3月18日に意匠登録出願(意願2019−5684)されたものであって、令和1年(2019年)7月17日付けで登録査定がなされ、同年8月30日に意匠権の設定の登録がされた後、同年9月24日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。

令和4年(2022年)12月15日付け 審判請求書の提出
令和5年(2023年) 9月 7日付け 請求書副本の送達通知
同年 12月 6日付け 書面審理通知
令和6年(2024年) 1月23日付け 審理終結通知

第2 請求の趣旨及び理由

請求人は、令和4年12月15日付けで審判請求書を提出し、「意匠登録第1641845号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と請求し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため、甲第1号証から甲第4号証を提出した。

1 請求の理由

(1)手続の経緯
出 願 平成31年 3月18日
登 録 令和 1年 8月30日

(2)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、意匠登録出願前に、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証の画像に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

(3)本件意匠登録を無効とすべき理由
イ 本件登録意匠の説明(要旨等)
本件意匠は、物品名を「バーベル」とし、その形態は次のとおりである。
【バーベルとしての基本的構成態様】
(態様1)中央に連結棒を有し、
(態様2)連結棒の左右にダンベルが取付けられるバーベル。
本件登録意匠についての意匠登録第1641845号公報の【意匠に係る物品の説明】欄には、「本意匠に係る物品は、正面図の中央に表されている連結棒を取り外すことで、二つのダンベルとしても使用することが可能なバーベルである。ダンベルとして使用する際には、連結棒を取り外すと表れるスクリュー式のシャフトの先端に構成パーツのリングとキャップを取り付けて使用する。」と記載されている。すなわち、本件意匠に係る物品は「バーベル」であっても、その構成態様は、ダンベルとしての構成態様を除くと、連結棒としての構成態様となる。
【バーベルとしての具体的構成態様】
(態様3)連結棒は、一様な太さであり、
(態様4)連結棒は、ダンベルの錘リング間の間隔よりも長く、スクリューを含む各シャフトの長さよりも短いバーベル。
したがって、本件意匠の物品名は「バーベル」であるけれども、ダンベルとしての意匠が重要な構成要素となる。
【ダンベルとしての基本的構成態様】
(態様5)4枚の錘リングが、ダンベルのシャフトの両側にそれぞれ取付けられ、
(態様6)シャフトには、錘リング間の間隔を維持する握り部が設けられ、
(態様7)シャフトは、錘リングが取り付けられる握り部の両側に、スクリューが延びる形状であり、
(態様8)シャフトの一方側で錘リングから突出するスクリューには平リングとキャップとが取付けられ、
(態様9)シャフトの他方側は、連結棒を取り付けるために、錘リングからスクリューが突出する形態であるダンベル。
【ダンベルとしての具体的構成態様】
(態様10)ダンベルの各錘リングは、12角形の外形部を有し、
(態様11)各錘リングは、シャフトの取付け部に円形の襟部を有し、
(態様12)錘リングの外形部および襟部は、赤色であり、
(態様13)錘リングの外形部と襟部との間は、黒色であり、
(態様14)錘リングの黒色部分には、白色の文字が表示され、
(態様15)シャフトの握り部は、中央が膨らみ、いったん細くなってから端部で膨らむ形状である。

ロ 甲第1号証の意匠の説明(要旨等)
甲第1号証は、2017年から、下記中国サイトで販売しているダンベルの意匠が表れる画像である。
https://detail.tmall.com/item_o.htm?spm=a230r.1.14.48.68c2389fwnNyhr&id=608188227580&ns=1&abbucket=14&sku_properties=3344920:54449917
このうち、第2ページ右上には、「上市時間:2017年冬季」の表記が認められる。
第1ページ、第4ページ、第6ページおよび第7ページで示されている赤色のダンベルの形態は次のとおりである。
【ダンベルとしての基本的構成態様】
(態様5‘)3枚の錘リングが、ダンベルのシャフトの両側にそれぞれ取付けられ、
(態様6‘)シャフトには、錘リング間の間隔を維持する握り部が設けられるダンベル。
【ダンベルとしての具体的構成態様】
(態様10‘)ダンベルの各錘リングは、12角形の外形部を有し、
(態様11‘)各錘リングは、シャフトの取付け部に円形の襟部を有し、
(態様12‘)錘リングの外形部および襟部は、赤色であり、
(態様13‘)錘リングの外形部と襟部との間は、黒色であり、
(態様14‘)錘リングの黒色部分には、白色の文字が表示され、
(態様15‘)シャフトの握り部は、中央が膨らみ、いったん細くなってから端部で膨らむ形状である。

ハ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との対比
(1)本件登録意匠と甲第1号証の意匠の意匠に係る物品の対比
本件登録意匠は、意匠に係る物品はバーベルであるけれども、ダンベルとして使用することも可能な構成を有している。ダンベルとしては、甲第1号証に表されているダンベルも同一物品である。
(2)本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
意匠の形態の共通点は、上記ダンベルとしての基本的構成態様では、次の点にある。
(態様6)と(態様6‘)
意匠の形態の共通点は、ダンベルとしての具体的構成態様では、次の点にある。
(態様10)と(態様10‘)
(態様11)と(態様11‘)
(態様12)と(態様12‘)
(態様13)と(態様13‘)
(態様14)と(態様14‘)
(態様15)と(態様15‘)
意匠の形態の差異点は、ダンベルとしての基本的構成態様で、次の点にある。
(態様5)と(態様5‘)
(態様7)、(態様8)および(態様9)に相当する甲第1号証のダンベルの態様が不明
(3) 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
ダンベルについての本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態は、具体的構成態様が共通する。基本的構成態様は、必ずしも共通していないけれども、明確の差異点は、錘リングの枚数についての(態様5)と(態様5‘)のみである。本件登録意匠での錘リングの枚数は4枚で、甲第1号証での錘リングの枚数は3枚である。ダンベルという物品は、錘リングを1枚または複数枚使用して重さを調整することが重要であり、(態様5)および(態様5’)は、各ダンベルで最大限に錘リングを取り付けている状態かもしれない。いずれにしても、錘リングの枚数の違いは、顕著な差異点とはならないと思料する。(態様7)、(態様8)および(態様9)に相当する甲第1号証のダンベルの態様は不明であるが、ダンベルのシャフトで握り部の両側にスクリューが突出することは、錘リングを着脱して重さを調整する機能から見て、甲第1号証のダンベルも当然備えていると想定される。また甲第1号証に、赤色ダンベルとともに示されている黒色ダンベルに関して、甲第1号証の第5ページに、握り部の両側にスクリューが突出するダンベルのシャフトが表されている。このことからも、赤色ダンベルのシャフトも同様であると容易に推定されるはずである。
したがって、本件登録意匠のダンベルの意匠と、第1号証のダンベルの意匠とは、基本的構成態様に差異点が存在するけれども、その形態に与える印象は強いものではなく、共通する具体的構成態様が意匠としての形態に強い印象を与え、ダンベルとしては同一の意匠とみなすことができると思料する。
(4)本件登録意匠と甲第1号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく創作容易性の結論
本件登録意匠は、意匠に係る物品が「バーベル」であり、甲第1号証の意匠に係る物品が「ダンベル」である点で相異している。しかしながら、本件登録意匠のバーベルのように、連結棒の両側にダンベルを取り付けてバーベルとして使用することは、本件登録意匠についての意匠登録第1641845号公報の末尾に【参考文献】として番号が記載されている甲第2号証および甲第3号証の登録意匠、甲第4号証の実用新案の三つの文献で公知化されている。
上記バーベルとしての連結棒に関する基本的構成態様である(態様1)および(態様2)は、三つの文献で公知である。連結棒についての具体的構成態様である(態様3)は、甲第2号証で公知である。(態様4)について、連結棒は、ダンベルの錘リング間の間隔よりも長い点は、三つの文献で公知である。連結棒の長さが、スクリューを含む各シャフトの長さよりも短い点は、三つの文献には示されていないけれども、スクリューの部分は外観に表れないので、意匠としての差異点として看者に強い印象を与えることはないはずである。
したがって、本件登録意匠のバーベルの意匠は、その意匠登録出願前の2017年から、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証の画像に基づいて、きわめて容易に意匠の創作をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、バーベルについての本件登録意匠は、甲第1号証に表されているダンベルの意匠に基づき、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証で公知の事項に基いて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が意匠登録出願前に、きわめて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号に該当し、本件登録意匠は無効とすべきである。

2 証拠方法

(1)甲第1号証 中国販売サイトのWebページ画像

(2)甲第2号証 意匠登録第732205号公報

(3)甲第3号証 意匠登録第1544332号公報

(4)甲第4号証 登録実用新案第3197878号公報

なお、(1)は、原本で、(2)から(4)は、写しである。

第3 答弁の趣旨及び理由

審判長は、被請求人に対し、審判請求書の副本を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。

第4 書面審理及び審理終結

当審は、本件審判について、両当事者に対し、令和5年12月6日付けで書面審理に付する旨を通知し、令和6年1月23日付けで審理を終結する旨を通知した。

第5 当審の判断

1 本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1641845号)は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「バーベル」とし、意匠に係る物品の説明を「本意匠に係る物品は、正面図の中央に表されている連結棒を取り外すことで、二つのダンベルとしても使用することが可能なバーベルである。ダンベルとして使用する際には、連結棒を取り外すと表れるスクリュー式のシャフトの先端に構成パーツのリングとキャップを取り付けて使用する。」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した写真に現されたとおりとしたものであり、具体的な形状等は、以下のとおりである。(別紙第1参照)

(1)基本的構成態様
本件登録意匠は、略横棒状のバーの両端に大きさの異なる略正12角環板状の錘(おもり)を4枚ずつ挿通してなるダンベルを、略横長円形棒状のシャフトの両側に1つずつ連結してバーとシャフトが同軸となるよう形成したバーベルであって、その両端中央に略短円柱形のキャップを取り付けている。

各部の態様として、
(2)各部の長さの比率
正面視における縦(錘の最大径)横の長さの比率は、約1:6で、両側のダンベルとシャフトの長さの比率は、約1:0.8:1である。

(3)ダンベル
錘は、内側の錘を最大径とし、外側に向かって一回りずつ縮径している。また、各錘は、両板面の外縁及び内縁を除いた内側の面を僅かに窪ませ、板面に数値の表示を施している(なお、表示は、板の両面に施したものであるか否かは不明。)。
バーは、両端寄りから中央まで緩やかに膨らんで両端寄りから両端まで略円錐台形に拡径している。
両側の錘とバーの長さの比率は、約1:1.25:1で、バーの長さと径の比率は、中央値において約15:4で、錘の径と厚みの比率は、外側から順に約8:3、約15:3、約17:3、約20:3で、各錘の厚みはすべて同じである。

(4)シャフト
シャフトの長さと径の比率は、約11:1で、両端近くに周方向の浅溝を等間隔に3本形成している。

(5)キャップ
キャップの長さと径の比率は、約4:5で、先端中央に略短円柱形の突起を形成している。

(6)色彩
正面視において、錘は赤色で、バー及びキャップは黒色で、シャフトは金属色(銀色)である。また、錘の両板面は、外縁及び内縁は赤色でそれ以外は黒色で、表示は白色である。

2 無効理由の判断
請求人は、前記第2の1(4)に示すとおり、「バーベルについての本件登録意匠は、甲第1号証に表されているダンベルの意匠に基づき、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証で公知の事項に基いて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が意匠登録出願前に、きわめて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号に該当し、本件登録意匠は無効とすべきである。」と主張しているから、以下、本件登録意匠が、甲第1号証の意匠から甲第4号証の意匠に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものであるか否かについて検討する。

(1)証拠の説明
ア 甲第1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)
甲1意匠は、甲第1号証の第2頁の記載(日本語訳)によれば、発売時期を2017年(平成29年)冬とする、競駕(JINGJIA)がインターネット通販サイト「天猫」に掲載した「ゴムカバー付きPUダンベル スチールダンベル」(商品番号:2019111666)の意匠である(別紙第2参照)。
なお、本審決において、甲1意匠は、甲第1号証の第1頁の画像(サムネイルの左端の画像)、第4頁の画像、第6頁の画像(下側の画像)及び第7頁の画像から導き出される意匠を甲1意匠として認定する。
(ア)意匠に係る物品
甲1意匠の意匠に係る物品は、筋肉を鍛錬するために用いる「ダンベル」である。
(イ)形状等
甲1意匠の認定に際し、本件登録意匠の向きに合わせて認定する。
a 基本的構成態様
甲1意匠は、略横棒状のバーの両端に、大きさの異なる略正12角環板状の錘を3枚ずつ挿通してなるものであって、両端中央に略円板状のワッシャーを取り付け、その上に先端に小さな突起を形成した略短円柱形のキャップを取り付けている。

各部の態様として、
b 錘
錘は、内側の錘を最大径とし、外側に向かって一回りずつ縮径している。また、各錘は、両板面の外縁及び内縁を除いた内側の面を僅かに窪ませ、板面に数値の表示及び外縁に沿って「FITNESS JA SPORTS」の文字列を施している(なお、文字列及び表示は、板の両面に施したものであるか否かは不明。)。
c バー
バーは、両端寄りから中央まで緩やかに膨らんで両端寄りから両端まで略円錐台形に拡径している。
d 色彩
正面視において、錘は赤色でバー及びキャップは黒色である。また、錘の両板面は、外周縁及び孔周縁は赤色でそれ以外は黒色で、文字列及び表示は白色である。

イ 甲第2号証の意匠(以下「甲2意匠」という。)
甲2意匠は、昭和63年(1988年)5月12日に発行の日本国特許庁意匠公報に記載の意匠登録第732205号の意匠(意願昭60−23597)である(別紙第3参照)。
(ア)意匠に係る物品
甲2意匠の意匠に係る物品は、筋肉を鍛錬するために用いる「バーベル」であって、意匠に係る物品の説明によれば、螺合された中央のバー(シャフト)を外すと両端の部分がダンベルとなるものである。
(イ)形状等
甲2意匠は、略円形棒状のバーの両端を略角丸短円柱形の塊状に形成して錘としたダンベルを、バーと同径の略横長円形棒状のシャフトの両側に1つずつバーとシャフトが横一列となるよう連結してバーベルとしたものであって、その両端中央を略短円筒形にくり抜いて内周面に雌ねじを形成している。

イ 甲第3号証の意匠(以下「甲3意匠」という。)
甲3意匠は、平成28年(2016年)2月22日に発行の日本国特許庁意匠公報に記載の意匠登録第1544332号の意匠(意願2015−13818)である(別紙第4参照)。
(ア)意匠に係る物品
甲3意匠の意匠に係る物品は、腹筋等の筋肉を鍛錬するために用いる「トレーニング機器」である。
(イ)形状等
甲3意匠は、周方向に多数の凹凸を形成した略横長棒状のシャフトの両端に、2つのホイールの間に車軸を取り付けたローラー部材を形成したものであって、両端に円孔を上下方向に形成したキャップを取り付け、各ホイールに小さな車輪を取り付けている。また、シャフトは、弾力性を有している。

ウ 甲第4号証の意匠(以下「甲4意匠」という。)
甲4意匠は、平成27年(2015年)6月4日に発行の日本国特許庁登録実用新案公報に記載の実用新案登録第3197878号の図1等に掲載の「多機能トレーニングマシン」の意匠(別紙第5参照)であって、その形状等は、周方向に多数の凹凸を形成した略横長棒状のシャフトの両端に、2つのホイールの間に車軸を取り付けたローラー部材を形成したものであって、両端に円孔を上下方向に形成したキャップを取り付け、各ホイールに小さな車輪を取り付けている。また、シャフトは、弾力性を有している。

(2)本件登録意匠の創作性の判断
請求人の無効理由における主張は、本件登録意匠は、甲1意匠から甲4意匠に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が意匠登録出願前に容易に創作することができたというものであるから、以下、本件登録意匠が、当業者によって容易に創作できたものであるかについて検討し、判断する。

ア 本件登録意匠の形状等
この物品の属する分野においては、略横長円形棒状のシャフトの両側に1つずつダンベルを連結してバーベルとしたものは、甲2意匠に見られるものであり、また、ダンベルにおいて、バーの両端に大きさの異なる略正12角環板状の錘を複数枚ずつ挿通したもの、錘を外側に向かって一回りずつ縮径したもの、各錘の両板面の外縁及び内縁を除いた内側の面を僅かに窪ませ板面に数値の表示を施したもの、バーの両端寄りから中央まで緩やかに膨らんで両端寄りから両端まで略円錐台形に拡径したもの、両側にキャップを取り付けたもの、錘を赤色と黒色に塗り分け、バーを黒色、表示を白色に着色したものは、甲1意匠に見られるものである。
一方、ダンベルの錘の枚数について、本件登録意匠は、錘を左右に4枚ずつ取り付けているものであるのに対し、甲1意匠は、3枚ずつ取り付けているものである点において相違するが、当該物品の分野においては、錘の枚数を適宜増減してトレーニングを行うことは一般に知られているものであるところ、片側4枚と3枚は僅か1枚の差であって、錘を左右に4枚ずつ取り付けた本件登録意匠の態様に格別の創作性を見出すことはできない。
また、シャフトの両端近くに周方向の浅溝を等間隔に3本形成した本件登録意匠の態様についても、甲2意匠から甲4意匠のシャフトには見られないものであるが、当該浅溝は比較的浅いものであってさほど目立つものではなく、仮にシャフトの握り位置の目安として設けた溝であるとしても、当業者であれば、格別の困難もなく容易に想到し得るものといえるから、当該物品の分野において、独自の着想によって創出したものということはできない。
そうすると、本件登録意匠は、甲2意匠に見られるとおり、略横長円形棒状のシャフトの両側に1つずつダンベルを連結してバーベルとしたものであり、また、当該ダンベルについても、バーの両端に大きさの異なる略正12角環板状の錘を外側に向かって一回りずつ縮径しながら複数枚ずつ挿通したものであって、各錘の両板面の外縁及び内縁を除いた内側の面を僅かに窪ませ、板面に数値の表示を施し、バーの両端寄りから中央まで緩やかに膨らんで両端寄りから両端まで略円錐台形に拡径し、両側にキャップを取り付け、錘を赤色と黒色に塗り分け、バーを黒色、表示を白色に着色したものが、甲1意匠に見られるとおりであるから、本件登録意匠の形状等は、甲1意匠及び甲2意匠の形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものといわざるを得ない。

(3)甲1意匠が、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠であるか否かについて

ア 証拠の成立について
甲第1号証は、請求人が、原本として特許庁に提出した証拠であるが、審判合議体が原本の成立の真正について確認を行ったところ、特段、疑わしい点は見当たらなかったことから、甲第1号証は、その存在及び成立については、疑義のないものと認定して差し支えないものである。

イ 甲第1号証が公開された日付について
甲第1号証が公開された日付については、甲第1号証の第2頁に、発売時期として、「2017年冬」との記載があり、また、審判請求書の「6 請求の理由(3)ロ 甲第1号証の意匠の説明(要旨等)」においても、甲第1号証は、2017年から、中国サイトで販売している旨主張し、その根拠として、甲第1号証の第2頁右上に「上市時間:2017年冬季」の表記が認められる点を挙げている。
しかしながら、証拠の公開日の特定に際しては、特許庁が発行した各種公報や新聞、雑誌等に掲載された意匠のように、公開日に疑義がない証拠の場合を除き、その証拠単体では、証拠力を担保できない場合は、これに加え、例えば、確定日付の付与を行う公証役場が発行した証明書類、公的機関等にカタログ寄託して取得したタイムスタンプ、インターネットサイトのアーカイブ閲覧サービスを利用した日付の特定、当該意匠が確認できる画像付きのカスタマーレビュー記事の日付等、その証拠が公開された日付を直接的かつ客観的に証明する証拠の提出が不可欠であるところ、こうした補強的証拠の提出がないときには、その証拠は、証拠力を著しく欠くものということができる。
この点を踏まえて甲第1号証について検討すると、甲第1号証には、甲1意匠の発売時期が「2017年冬」であるとの記載があるのみで、甲第1号証が、現実に本件登録意匠の出願前に公然知られていたとする直接的かつ客観的な証拠の提出はないから、甲第1号証は、その公開時期において、証拠力を欠くものといわざるを得ない。
なお、甲第1号証の第7頁から第9頁のカスタマーレビュー記事は、年月日が記載されているものは、いずれも本件登録意匠の出願後の2021年以降のものである。

ウ 結論
したがって、甲第1号証について、証拠としての成立は認めるが、公開された時期については、「2017年冬」の記載があるとしても、甲第1号証が、現実に、2017年に公然知られたとの心証を得るまでには至らないものである。

3 小括
上記のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠及び甲2意匠の形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものといえるが、請求人が提出した甲第1号証は、その公開された時期に疑義があるものであり、更に、甲第1号証に記載の甲1意匠が、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠であるとする客観的な証拠はないから、本件登録意匠は、甲1意匠によっては、意匠法第3条第2項の規定に該当しない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由に係る理由及び証拠方法によっては、本件登録意匠の登録は無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。



































審理終結日 2024-01-23 
結審通知日 2024-01-25 
審決日 2024-02-07 
出願番号 2019005684 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (E3)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
吉田 英生
登録日 2019-08-30 
登録番号 1641845 
代理人 瀬戸 麻希 
代理人 新保 斉 
代理人 廣瀬 峰太郎 

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