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審決分類 |
審判 査定不服 意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1409220 |
総通号数 | 28 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-06-29 |
確定日 | 2024-03-19 |
意匠に係る物品 | Earphone charging case |
事件の表示 | 意願2021−502887「Earphone charging case」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 本願は、2021年(令和3年)3月17日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴った、国際登録日を2021年9月16日とする国際意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和4年 4月27日付 :拒絶の通報 8月 5日 :意見書の提出 令和5年 3月17日付 :拒絶査定 6月29日 :審判請求書の提出 6月29日 :手続補足書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「Earphone charging case」(参考訳:「イヤホン用充電ケース」、以下日本語訳で示す。)とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願の日前の他の意匠登録出願であってその出願後に意匠法第20条第3項又は同法第66条第3項の規定により意匠公報に掲載された下記の意匠登録出願の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似するものと認められるため、意匠法第3条の2の規定に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は次のとおりである(別紙第2参照)。 <引用意匠> 以下の意匠に含まれる、イヤホン用ケースの意匠 出願日 2021年 6月23日 出願番号 意願2021−013574 優先日 2020年12月23日 登録日 2021年11月29日 登録番号 意匠登録第1702458号 公報発行日 2021年12月20日 権利者の氏名/名称 アップル インコーポレイテッド 権利者の住所/居所 アメリカ合衆国 95014 カリフォルニア州 クパチーノ アップル パーク ウェイ ワン 第4 当審の判断 1 本願意匠 本願意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によると、以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「イヤホン用充電ケース」であり、左右一対のワイヤレスイヤホンを内部に収容した状態で当該イヤホンを充電及び携帯等するために用いられる物品であると認められる。 (2)本願意匠の形状等 〔A1〕全体は、イヤホンを収容する下側の本体部と上側の蓋部とをヒンジを介して接続してなる一体型の容器体である。 〔A2〕閉蓋時における容器体全体の概略形状は、奥行き方向が最も短い扁平横長直方体を基に、その全ての角部を大径円弧状に面取りした態様のものであり、正背面、平底面、左右側面のどの視点から見ても、四隅は全て略対称形状となっている。 〔A3〕閉蓋時における正面視形状は、縦横比が約3対4の略隅丸長方形状であり、上下辺及び左右辺の中央部は、いずれも曲率半径が非常に大きな緩弧状である。 〔A4〕閉蓋時における側面視形状は、縦横比が約2対1の略トラック形状であり、左右辺の中央部には若干の直線部分が見られる。 〔A5〕閉蓋時における平面視形状は、縦横比が約3対8の略トラック形状であり、上下辺の中央部には若干の直線部分が見られる。 〔A6〕本体部と蓋部との分割線は、閉蓋時における容器体を前下がりの傾斜面で切断した態様のものであり、左右端部(側面図の左右方向中央)では、容器体全体の約5分の3の高さに位置している。 〔A7〕開蓋時における本体部の内側には、平面視で横一直線状に配された一対の略卵形の凹陥部及びそれらの間にやや隆起した隔壁が形成されている。 〔A8〕開蓋時における蓋部の内側には、左右に連なる1つの凹部が形成されている。 〔A9〕本体部の外表面には、正面中央の上寄りの位置には小円形のパイロットランプ、底面中央には小トラック形のUSBタイプCメス型コネクタ、その隣には円形の操作ボタンとそれぞれ推認される各区画部が設けられている。 2 引用意匠 引用意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載に基づくと、以下のとおりである。なお、原審審査官による引用意匠は、意匠に係る物品を「イヤホン付イヤホンケース」とした意願2021−013574の意匠の一部、すなわち、そこからイヤホンを除いた「イヤホン用ケース」の意匠である。また、引用意匠が記載された図面には、開蓋時におけるイヤホンを収納した状態のイヤホン用ケースの形状等のみが表されているため、閉蓋時における引用意匠の形状等については、図面各図の記載内容を総合して認定することとする。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「イヤホン用ケース」であるが、引用意匠の願書及び願書に添付した図面には、イヤホン用ケースが充電機能を有する旨の明記はない。しかしながら、願書に添付した図面からは、ケース内に収容されているのが個々に独立した一対のワイヤレスイヤホンである(通常この種物品は充電式である。)ことが認められ、後述する底面中央の小トラック形(USBタイプCメス型コネクタの輪郭形状と推認される。)を初めとした意匠に係る物品の操作表示等に関わる各種インターフェイスの存在に照らすと、引用意匠の意匠に係る物品である「イヤホン用ケース」も、当然に充電機能を有するものと認められる。 そうすると、引用意匠の意匠に係る物品は、左右一対のワイヤレスイヤホンを内部に収容した状態で当該イヤホンを充電及び携帯等するために用いられる「イヤホン用ケース」であると認められる。 (2)引用意匠の形状等 〔B1〕全体は、イヤホンを収容する下側の本体部と上側の蓋部とをヒンジを介して接続してなる一体型の容器体である。 〔B2〕閉蓋時における容器体全体の概略形状は、奥行き方向が最も短い扁平横長直方体を基に、その全ての角部を大径円弧状に面取りした態様のものであり、正背面、平底面、左右側面のどの視点から見ても、四隅は全て略対称形状となっている。 〔B3〕閉蓋時における正面視形状は、縦横比が約2対3の略小判形状であり、上下辺の中央部は曲率半径が非常に大きな緩弧状であるが、左右辺は中央部の曲率半径が小さく、上下辺まで一様に連続して半円弧状を呈する態様である。 〔B4〕閉蓋時における側面視形状は、縦横比が約2対1の略トラック形状であり、左右辺の中央部は曲率半径が極めて大きな極緩弧状である。 〔B5〕閉蓋時における平面視形状は、縦横比が約1対3の略トラック形状であり、上下辺の中央部は曲率半径が極めて大きな極緩弧状である。 〔B6〕本体部と蓋部との分割線は、閉蓋時における容器体を水平面で切断した態様のものであり、左右端部(側面図の左右方向中央)では、容器体全体の約7分の5の高さに位置している。 〔B7〕開蓋時における本体部の内側には、平面視で逆ハ字状に配された一対の略卵形の凹陥部及びそれらの中間位置に平坦面とヒンジ部とが形成されている。 〔B8〕開蓋時における蓋部の内側には、左右に分離独立した2つの凹部が形成されている。 〔B9〕本体部の外表面には、正面中央の下寄りの位置には小円形のパイロットランプ、底面中央には小トラック形のUSBタイプCメス型コネクタ、本体部内側の平坦面には円形の操作ボタンとそれぞれ推認される各区画部が設けられている。 3 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下、これらを合わせて「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、具体的な表記は異なるものの、いずれも、左右一対のワイヤレスイヤホンを内部に収容した状態で当該イヤホンを充電及び携帯等するために用いられる物品であることから、意匠に係る物品の用途及び機能は共通する。 (2)形状等 両意匠の形状等を対比すると、主として以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 ア 共通点 〔共通点1〕全体は、イヤホンを収容する下側の本体部と上側の蓋部とをヒンジを介して接続してなる一体型の容器体である。 〔共通点2〕閉蓋時における容器体全体の概略形状は、奥行き方向が最も短い扁平横長直方体を基に、その全ての角部を大径円弧状に面取りした態様のものであり、正背面、平底面、左右側面のどの視点から見ても、四隅は全て略対称形状となっている。 〔共通点3〕本体部には、小円形のパイロットランプ、小トラック形のUSBタイプCメス型コネクタ、円形の操作ボタンに相当する各区画部が設けられている。 イ 相違点 〔相違点1〕閉蓋時における正面視形状について、本願意匠は、縦横比が約3対4の略隅丸長方形状であり、上下辺及び左右辺の中央部は、いずれも曲率半径が非常に大きな緩弧状であるのに対して、引用意匠は、縦横比が約2対3の略小判形状であり、上下辺の中央部は曲率半径が非常に大きな緩弧状であるが、左右辺は中央部の曲率半径が小さく、上下辺まで一様に連続して半円弧状を呈する態様である。 〔相違点2〕閉蓋時における略トラック形状の側面視形状について、本願意匠は、左右辺の中央部に若干の直線部分が見られるのに対して、引用意匠は、左右辺の中央部が曲率半径の極めて大きな極緩弧状である。 〔相違点3〕閉蓋時における略トラック形状の平面視形状について、本願意匠は、縦横比が約3対8であり、上下辺の中央部には若干の直線部分が見られるのに対して、引用意匠は、縦横比が約1対3であり、上下辺の中央部が曲率半径の極めて大きな極緩弧状である。 〔相違点4〕本体部と蓋部との分割線について、本願意匠は、容器体を前下がりの傾斜面で切断した態様のものであり、左右端では容器体全体の約5分の3の高さに位置しているのに対して、引用意匠は、容器体を水平面で切断した態様のものであり、左右端では容器体全体の約7分の5の高さに位置している。 〔相違点5〕本体部の内側の態様について、本願意匠は、一対の凹陥部が横一直線状に配され、それらの間にやや隆起した隔壁が形成されているのに対して、引用意匠は、一対の凹陥部が逆ハ字状に配され、それらの中間位置に平坦面とヒンジ部とが形成されている。 〔相違点6〕蓋部の内側の態様について、本願意匠は、左右に連なる1つの凹部が形成されているのに対して、引用意匠は、左右に分離独立した2つの凹部が形成されている。 〔相違点7〕円形の操作ボタンの配置箇所について、本願意匠は本体部外表面の底部であるのに対し、引用意匠は本体部内側の平坦面である。 4 判断 以上の共通点及び相違点を評価、総合し、両意匠の類否について判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠は、意匠に係る物品が同一であると認められる。 (2)形状等 ア 前提 両意匠の意匠に係る物品は、左右一対のワイヤレスイヤホンを内部に収容し、当該イヤホンを充電及び携帯等するために用いられる、比較的小型の物品であることから、この種物品の需要者は、携帯することを念頭においた利便性及び嗜好性の観点から閉蓋時における物品全体の形状等に着目するとともに、充電やイヤホンの出し入れに際しての利便性及び操作性の観点から、蓋の開閉構造や開蓋時に現れるケース内部の形状等及び各種インターフェイスの態様にも強い関心を持って両意匠に係る物品を観察するものといえる。 以下、両意匠の形状等の類否判断に際しては、上記前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が及ぼす影響を評価することとする。 イ 共通点の評価 〔共通点1〕ないし〔共通点3〕は、いずれも両意匠の基本形状を概括的に捉えた際の共通点であり、特に、一対のワイヤレスイヤホンを内部に収容して携帯するという使用法を考慮すると、扁平直方体の全ての角部を円弧状に面取りしたような基本形状は、物品全体の小型化や携帯時における破損防止等の観点から、この種物品においてよく見られるごく普通の態様であるといえるため、意匠に係る物品の需要者は、これらの基本形状にとどまることなく、意匠に係る物品の更なる利便性や嗜好性の特徴が現れる具体的な構成態様により強い注意を引かれるものといえる。 よって、両意匠の基本形状における共通点である〔共通点1〕ないし〔共通点3〕が類否判断に及ぼす影響はいずれも限定的なものにとどまり、これらを合わせて勘案しても、両意匠の類否を決定付けるほどのものということはできない。 ウ 相違点の評価 〔相違点1〕にいう閉蓋時の正面視形状は、視認される面積が大きく、両意匠の形状等の特徴を最も強く表すものであるが、本願意匠と引用意匠とでは、縦横の構成比率に大きな違いはないものの、左右辺における湾曲の曲率に顕著な違いがあり、左右辺及び上下辺をいずれも緩弧状としたことにより略隅丸長方形状との視覚的印象を与える本願意匠の正面視形状からは、引用意匠から看取される、より丸みの強い略小判形状の視覚的印象を看取することはできない。 また、〔相違点2〕及び〔相違点3〕にいう閉蓋時の側面視及び平面視形状について、縦横の構成比率に大きな違いはないものの、各辺中央部における直線部分の有無は、立体的には、容器体の正面及び背面の中央部が平坦面(本願意匠)か膨出面(引用意匠)かの違いを意味するものであり、本願意匠では、略隅丸長方形状と捉えられる正面視形状とも相まって、本願意匠の形状に平面と曲面からなるコントラストを与えるものとなっている一方、同部が緩やかな膨出面として構成されている引用意匠では、より丸みの強い略小判形状と捉えられる正面視形状とも相まって、引用意匠の全体が曲面的であることをより強く印象付けるものとなっている。 よって、容器体全体の視覚的印象を大きく左右する〔相違点1〕ないし〔相違点3〕は、携帯時の利便性及び嗜好性の観点から需要者の注意を強く引くものであり、両意匠の美感に大きな影響を及ぼすものといえる。 〔相違点4〕及び〔相違点5〕にいう本体部と蓋部との分割線及び本体部の内側の態様について、これらは、充電時及びイヤホンの出し入れ時の利便性や操作性の観点から需要者の注意を強く引く箇所であり、特に、分割線が前下がりの傾斜面となっている本願意匠では、開蓋時における蓋部正面の指掛け面が幅広く取られ、蓋を開けやすい印象を与えること、そして、開蓋した際には内側の凹陥部をより広く見通せることから、分割の態様を単純な水平面としている引用意匠と比べて、需要者に対して与える視覚的印象を大きく異ならしめるものとなっている。よって、この〔相違点4〕及び〔相違点5〕が両意匠の美感に及ぼす影響は大きい。 〔相違点6〕及び〔相違点7〕にいう蓋部の内側の態様及び円形の操作ボタンの配置箇所については、充電時及びイヤホンの出し入れ時の利便性や操作性に関わる部分ではあるものの、前者は、必ずしも目立つ箇所ではないこと、後者は、円形という形状自体は同じであることから、これらが需要者の注意を強く引くとまではいえない。よって、この〔相違点6〕及び〔相違点7〕が両意匠の美感に及ぼす影響は小さい。 以上を総合すると、〔相違点1〕ないし〔相違点7〕に示す両意匠の具体的態様は、中でも、〔相違点1〕ないし〔相違点5〕に摘示した形状等の全てが相まって両意匠をそれぞれ独自に特徴付け、需要者の注意を強く引くものといえるため、これらの相違点が類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。 エ 小括 上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、両意匠の形状等の共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響は非常に大きく、これら相違点が相まって需要者に別異の美感を与えるというべきものであるため、両意匠の形状等は、類似するとは認められない。 (4)両意匠の類否 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるものの、その形状等は類似するとは認められない。 よって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえない。 第5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条の2の規定に該当するということはできないから、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-03-06 |
出願番号 | 2021502887 |
審決分類 |
D
1
8・
16-
WY
(H7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
伊藤 宏幸 江塚 尚弘 |
登録日 | 2024-04-03 |
登録番号 | 1768076 |
代理人 | 弁理士法人三枝国際特許事務所 |