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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1409221 
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-07-03 
確定日 2024-04-02 
意匠に係る物品 包装用袋 
事件の表示 意願2021− 28448「包装用袋」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、令和3年(2021年)12月24日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年(2022年) 4月26日付け:拒絶理由通知の送付
同 年 6月 3日 :意見書の提出
令和5年(2023年) 4月13日付け:拒絶査定
同 年 7月 3日 :審判請求書の提出

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「包装用袋」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠
原審の拒絶理由通知に基づく原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「この種物品分野において、袋収容部とは別の非溶着部に種々形状の孔を形成することは本願出願前から行われ(例えば意匠1ないし意匠3参照)、矩形状の袋の内容物充填用の開口部を、開封用のノッチが形成された側と反対側の短辺に形成することも本願出願前から行われているところ(例えば意匠4ないし意匠7参照)、この意匠登録出願の意匠は、本願出願前から知られる意匠8の包装用袋の収容部とは別の非溶着部の大きい方に意匠3に見られる傾斜した楕円の孔を形成し、本願出願前から見られるように内容物充填用の開口部をノッチ側と反対側の短辺に形成したものといえ、創作が容易にできたものといえます。

意匠1(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1218536号の意匠

意匠2(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1520175号の意匠

意匠3(当審注:別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1534632号の意匠

意匠4(当審注:別紙第5参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1280436号の意匠

意匠5(当審注:別紙第6参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1661986号の意匠

意匠6(当審注:別紙第7参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1694703号の意匠

意匠7(当審注:別紙第8参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2010−036969
【図1】に表された包装用袋の意匠

意匠8(当審注:別紙第9参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1520173号の意匠」

第2 当審の判断

本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、電子レンジ加熱用食材等の内容物を密封包装するための「包装用袋」であって、電子レンジによる加熱に伴って本物品の収容空間内の圧力が高まった際に、本物品外側端部から収容空間側に張り出したシールが剥離して、収容空間内の蒸気を未シール部から逃がすことができるものである。

(2)本願意匠の形状等
ア 全体は、2枚のシート状の部材を重ね合わせ、その上辺及び左右辺にシール(以下「シール部」という。)を設け、その内側に収納部分(以下「収納部」という。)を形成した、下辺の部分が開口した袋体であり、シール部は、全体として略逆凹状に表れるものである。
イ 袋体全体の形状等は、正面視において、その縦横比を約1.3:1とする、略隅丸長方形状としたものである。
ウ シール部の形状等は、袋体の上辺に沿って袋体全体の横幅の約1/16の幅の帯状のシール(以下「上辺シール部」という。)を配し、袋体の右辺に沿って、上から約2/7までの範囲に袋体全体の横幅の約1/13の幅の帯状のシールと、それより下方に袋体全体の横幅の約1/22の幅の帯状のシールからなる連続する一体的なシール(以下「右辺シール部」という。)を配し、袋体の左辺に沿って、上から順に、約1/6までの範囲が袋体全体の横幅の約1/13の幅の帯状のシール、次の約2/7までの範囲が袋体全体の横幅の約1/65の幅の略コの字状の細幅シール(以下「コの字状シール部」という。)、それより下方の部分が袋体全体の横幅の約1/22の幅の帯状のシールからなる連続する一体的なシール(以下「左辺シール部」という。)を配したものである。
エ コの字状シール部の左側にあたる左辺シール部の外側部分には、正面視縦長長方形状の未シール部分(以下「左未シール部」という。)を設けている。
オ 左未シール部の中央部分には、正面視楕円形状の大きな貫通孔(以下「貫通孔部」という。)を1つ、左未シール部の対角線上に右に傾けて形成している。
オ コの字状シール部と相対する右辺シール部の外側部分には、正面視細幅帯状の未シール部(以下「右未シール部」という。)を設けている。
カ 左辺シール部及び右辺シール部の上から約1/11の箇所には、開封用に形成された僅かな切り込み部分(以下「切り口部」という。)を外側端部から内側に向かって水平に形成している。
キ 収納部の形状等は、シール部の形状等と相関する略縦長長方形の袋状であり、上辺は横方向の直線状とし、右辺は上から約1/4の範囲が収納部内側に張り出した略斜めクランク状であり、左辺は、上から約3/25の範囲が収納部内側に張り出し、コの字状シール部に相当する部分が更に内側に張り出した、縦方向の略ハット形状であって、下辺全体を一様な直線状の開口部としたものである。

2 原査定の拒絶の理由における引用意匠の認定
原査定の拒絶の理由で引用された、本願意匠の出願前に公然知られた意匠1ないし意匠8の意匠に係る物品及びその形状等の要旨は、概要以下のとおりである。
なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、意匠1ないし意匠8にもあてはめて記載する。

(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1は、特許庁発行の意匠公報(発行日:平成16年(2004年)9月27日)に記載された意匠登録第1218536号の「包装用袋」の意匠であって、貫通孔部の形状等は以下のとおりである。
ア 左辺シール部の上方右側から収納部に大きく張り出して形成された略コの字状のシール部に囲まれた略縦長長方形状の未シール部の右側部分に、縦長長円形状の小さな貫通孔部を1つ形成した形状である。

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は、特許庁発行の意匠公報(発行日:平成27年(2015年)3月30日)に記載された意匠登録第1520175号の「包装用袋」の意匠であって、貫通孔部の形状等は以下のとおりである。
ア 左辺シール部の上方右側から収納部に僅かに張り出して形成されたコの字状のシール部の左側にあたる左辺シール部の外側部分に設けられた、略縦長長方形状の未シール部の略中央部分に、円形状の貫通孔部を1つ形成した形状である。

(3)意匠3(別紙第4参照)
意匠3は、特許庁発行の意匠公報(発行日:平成27年(2015年)10月5日)に記載された意匠登録第1534632号の「包装用袋」の意匠であって、貫通孔部の形状等は以下のとおりである。
ア 収納部内の左上方部分に形成された細幅な円形帯状のシール部により囲まれた円形状の未シール部に、扁平な楕円形状の貫通孔部を1つ、右に傾けて形成した形状である。

(4)意匠4(別紙第5参照)
意匠4は、特許庁発行の意匠公報(発行日:平成18年(2006年)9月4日)に記載された意匠登録第1280436号の「包装用袋」の意匠であって、袋体及びシール部の形状等は以下のとおりである。
ア 全体は、正面視略隅丸長方形の上辺及び左右辺に沿って帯状のシール部を設け、その内側に収納部を形成した、下辺の部分が開口した袋体であり、シール部は、全体として略逆凹状に表れるものである。
イ 左辺シール部上端部付近に、略矢印形状の切り口部を外側端部から内側に向かって水平に形成し、左辺シール部中央やや上方に、滴状の貫通孔部を1つ、横向きに形成している。

(5)意匠5(別紙第6参照)
意匠5は、特許庁発行の意匠公報(発行日:令和2年(2020年)6月22日)に記載された意匠登録第1661986号の「包装袋」の意匠であって、袋体及びシール部の形状等は以下のとおりである。
ア 全体は、正面側の略中央部分に、正面上部と正面下部のフィルムを合掌状に張り合わせたシール(以下「合掌シール部」という。)を形成し、袋体の上辺及び左右辺に沿って帯状のシール部を設け、その内側にチャック付きの収納部を形成した、下辺の部分が開口した正面視略隅丸長方形状の袋体であり、シール部は、全体として略逆凹状に表れるものである。
イ 左辺シール部及び右辺シール部の上方部分に、開封用に形成された僅かな切り欠き部からなる一対の切り口部を外側端部から内側に向かって水平に形成している。

(6)意匠6(別紙第7参照)
意匠6は、特許庁発行の意匠公報(発行日:令和3年(2021年)9月13日)に記載された意匠登録第1694703号の「包装用袋」の意匠であって、袋体及びシール部の形状等は以下のとおりである。
ア 全体は、正面側上方部分に合掌シール部を形成し、袋体の上辺及び左右辺に沿って帯状シール部を設け、その内側に収納部を形成した、下辺の部分が開口した正面視略隅丸長方形状の袋体であり、シール部は、全体として略逆凹状に表れるものである。
イ 左辺シール部及び右辺シール部の上方部分に、開封用に形成された一対の切り口部を外側端部から内側に向かって水平に形成している。

(7)意匠7(別紙第8参照)
意匠7は、特許庁発行の公開特許公報(公開日:平成22年(2010年)2月18日)の特開2010−36969に記載された【図1】に表された「包装用袋」の意匠であって、袋体及びシール部の形状等は以下のとおりである。
ア 全体は、正面側下方部分に合掌シール部を形成し、袋体の下辺及び左右辺に沿って帯状シール部を設け、その内側に収納部を形成した、上辺の部分が開口した正面視長方形状の袋体であり、シール部は、全体として略凹状に表れるものである。
イ 左辺シール部及び右辺シール部の下方部分に略正三角形状の一対の切り口部を外側端部から内側に向かって水平に形成している。

(8)意匠8(別紙第9参照)
意匠8は、特許庁発行の意匠公報(発行日:平成27年(2015年)3月30日)に記載された意匠登録第1520173号の「包装用袋」の意匠であって、袋体及びシール部の形状等は以下のとおりである。
ア 全体は、正面視略隅丸長方形の下辺及び左右辺に沿って帯状シール部を設け、その内側に収納部を形成した、上辺の部分が開口した袋体であり、シール部は、全体として略凹状に表れるものである。
イ シール部の形状等は、袋体の下辺に沿って帯状の下辺シール部を配し、袋体の右辺に沿って、上方が幅広の帯状のシール、それより下方が幅の狭い帯状のシールからなる連続する一体的な右辺シール部を配し、袋体の左辺に沿って、上から順に、幅広の帯状のシール、略コの字状の細幅シール及び幅の狭い帯状のシールからなる連続する一体的な左辺シール部を配したものであり、下辺シール部と左右シール部の角部は隅丸になるように接続している。
ウ コの字状シール部の左側にあたる左辺シール部の外側部分には、正面視縦長長方形状の左未シール部を設け、コの字状シール部と相対する右辺シール部の外側部分には、正面視細幅帯状の右未シール部を設けている。
エ 左辺シール部及び右辺シール部の上方部分には、開封用に形成された一対の切り口部を外側端部から内側に向かって水平に形成している。
オ 収納部の形状等は、シール部の形状等と相関する略縦長長方形の袋状であり、下辺は横方向の直線状とし、右辺は上方部分が収納部内側に張り出した略斜めクランク状とし、左辺は、上方部分が収納部内側に張り出し、その下のコの字状シール部に相当する部分が更に内側に張り出した、縦方向の略ハット形状であり、上辺全体を一様な直線状の開口部としたものである。

3 本願意匠の創作容易性の判断
(1)意匠法第3条第2項の判断手法について
意匠法第3条第2項の規定は、意匠登録出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られた形状等に基づいて容易に創作をすることができた意匠である場合には、その意匠については、排他独占的な権利を与えるべき意匠の創作的な価値を見出せないから、登録できないとするものである。
すなわち、意匠法第3条第2項の規定は、先行する意匠を全体として直接的に対比することに止まらず、その先行する意匠を構成する各部位の形状等を構成要素として抽出したり、物品を離れた形状等そのものをモチーフとして判断のための材料として使用したりして、出願された意匠が、それら先行する形状等に基づいて容易に創作することができたものか否かを、当業者が行う意匠の創作という観点から判断するものである。

(2)本願意匠に対する意匠法第3条第2項の適用について
本願意匠における当業者とは、包装用容器や包装用袋の開発・設計等を行うパッケージに関する専門家であり、特に本願意匠の場合には、電子レンジを用いた加熱による蒸気の放出等についての専門的な知識も有する者であるといえる。
したがって、上記のような専門的な知識を有する当業者の観点から、本願意匠の創作容易性について以下考察することとする。

まず、本願意匠の全体の構成は、正面視略隅丸長方形状の袋体の上辺及び左右辺に沿って帯状のシール部を設け、その内側に収納部を形成した、下辺が開口した袋体であり、シール部は、全体として略逆凹状に表れるものであるが、これと同様に、開口部以外の3辺を略逆凹状又は略凹状のシール部とする構成態様を有する包装用袋は、本願意匠の出願前に公然知られているから(意匠4ないし意匠8参照)、本願意匠の全体の構成には着想の新しさないし独創性があるということはできない。
次に、本願意匠のシール部の形状は、袋体の上辺に沿って帯状の上辺シール部を配し、袋体の右辺に沿って、上方が幅広の帯状のシール、それより下方が幅の狭い帯状のシールからなる連続する一体的な右辺シール部を配し、袋体の左辺に沿って、上から順に、幅広の帯状のシール、略コの字状の細幅シール及び幅の狭い帯状のシールからなる連続する一体的な左辺シール部を配したものであるが、上辺シール部はありふれた形状のものにすぎず(例えば、意匠登録第1218538号、意匠登録第1659110号参照)、右辺シール部及び左辺シール部も、意匠8に示すように本願意匠の出願前に公然知られているものであるから、本願意匠のシール部の形状に着想の新しさないし独創性があるということはできない。
また、本願意匠の左未シール部及び右未シール部の形状についても、意匠8に示すように本願意匠の出願前に公然知られているものであるから、本願意匠の未シール部の形状に着想の新しさないし独創性があるということはできない。
さらに、本願意匠の左辺シール部及び右辺シール部の上方部分に形成された切り口部の形状についても、意匠3、意匠6及び意匠8に示すように本願意匠の出願前に公然知られているものであるから、本願意匠の切り口部の形状に着想の新しさないし独創性があるということはできない。
そして、本願意匠の収納部の形状についても、上辺を横方向の直線状とし、下辺の部分を開口部としたものはありふれた形状のものにすぎず(例えば、意匠登録第1218538号、意匠登録第1659110号参照)、右辺を上方部分が収納部内側に張り出した略斜めクランク状とし、左辺を上方部分が収納部内側に張り出し、その下のコの字状シール部に相当する部分が更に内側に張り出した、縦方向の略ハット形状としたものも、意匠8に示すように本願意匠の出願前に公然知られているものであるから、本願意匠の収納部の形状に着想の新しさないし独創性があるということはできない。
しかしながら、本願意匠の左未シール部に形成された貫通孔部は、蒸気の抜け道を複数の方向に分けることでその勢いを分散させることを意図して、できるだけ大きな貫通孔部を形成するために、左未シール部の枠いっぱいの大きな楕円形状の貫通孔部を、左未シール部の対角線上に右に傾けて形成した態様のものであって、このような蒸気の勢いを分散させるための独自の創意工夫を施した形状のものは、意匠1ないし意匠8を含む公然知られた意匠に見ることはできず、本願意匠の貫通孔部の形状及びその配置態様には着想の新しさないし独創性があるから、当業者が意匠1ないし意匠8に接したとしてもその創作を容易になし得るものとはいえない。
そうすると、蒸気の排出に係る貫通孔部の形状やその配置態様に特徴的な創作が認められる本願意匠の形状等には、着想の新しさないし独創性があることから、当業者が容易に本願意匠の創作をすることはできないものである。
よって、本願意匠は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。

第3 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

















審決日 2024-03-21 
出願番号 2021028448 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 伊藤 宏幸
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2024-04-08 
登録番号 1768270 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 

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