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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1409224 
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-08-10 
確定日 2024-03-05 
意匠に係る物品 炊飯器 
事件の表示 意願2022− 7872「炊飯器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は、令和4年(2022年)4月11日に出願した意匠登録出願(意願2022−7872)であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年(2022年) 11月28日付 拒絶理由の通知
5年(2023年) 2月22日 意見書の提出
同年 5月22日付 拒絶査定
同年 8月10日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「炊飯器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1598212号
(意匠に係る物品、炊飯器)の意匠

第4 当審の判断
以下において、両意匠が類似するか否かについて検討し、判断する。
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

(2)本願意匠の形状等
基本的構成態様
ア 本願意匠は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、背面中央やや上寄りに容体と一体状に設けた略横長長方形板状のヒンジ(以下「板型ヒンジ部」という。)によって開閉可能とし、上面を正面側下にやや傾斜状とし、その傾斜面をほぼ平坦面とし(以下「平坦面」という。)、平面視中央に、略角丸横長長方形状の表示パネルを設け(以下「表示部」という。)、その下方に3つの略角丸四角形状の操作ボタンを配し、さらにその下方に、操作ボタンよりやや横長の略角丸横長長方形状の開蓋用ボタンを1つ設け、中央上方に、略角丸横長長方形状の蒸気孔を設けたものである。
具体的態様
ア 容体
(ア)容体の縦横及び奥行きの長さの比率は、正面から観察した場合、約1:1.1:1.4であり、上から約1/3の部分を蓋としている。
(イ)平面視において、平坦面の周縁に沿って外側に、細帯状の面取りを施している。
(ウ)正面視において、周側面は上下に緩い弧面状に形成し、蓋と本体の境界に、周側面に沿って細帯状の枠(以下「細帯状枠部」という。)を形成している。
(エ)左右両側面の下端中央に略台形状切り欠きを形成している(以下単に「切り欠き部」という。)。
(オ)底面四隅に円柱状の脚を配している。
イ 操作ボタン
表示部の下側に、やや間隔を空けて、角丸矩形状で中央上方に小円模様を配した操作ボタンを3つ横方向に配し、かつ、表示部と同じ幅となるよう等間隔に配している(以下「角丸矩形ボタン部」という。)。

2 引用意匠(別紙第2参照)
意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

(2)引用意匠の形状等
基本的構成態様
ア 引用意匠は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、背面中央上寄りに、二つの略砲弾型筋部(以下「砲弾型ヒンジ部」という。)を配し、当該部をヒンジとして開閉可能に形成し、上面を僅かに上方に膨出する面とし(以下「膨出面」という。)、平面視中央下に表示部を設け、その周囲に9つの操作ボタンを配し、更にその下方に操作ボタンよりやや大きめの略角丸横長長方形の開蓋ボタンを1つ設け、中央上方寄りに、略角丸横長円形状の蒸気孔を設けたものである。
具体的態様
ア 容体
(ア)容体の縦横及び奥行きの長さの比率は、正面から観察した場合、約1:1.2:1.4であり、上から約1/3の部分を蓋としている。
(イ)膨出面の周縁に沿って外側に、僅かに細帯状の面取りを施している。
(ウ)正面視において、周側面は上下に緩い弧面状に形成し、蓋と本体の境界に、周側面に沿って細帯状枠部を形成している。
(エ)左右両側面の下端中央に切り欠き部を形成している。
(オ)底面四隅に略円錐台形状の脚を配している。
イ 操作ボタン
操作ボタンは、表示部の下側に、間隔を空けずに、円形のボタンを3つ横方向に配し、表示部の横幅より少し広くなるよう等間隔に配し、表示部の左右には、略角丸横長長方形の操作ボタンを縦に3つずつ縦方向に配し、かつ表示部と同じ高さとなるよう等間隔に配している。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、共に「炊飯器」であるから、両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 共通点
(共通点1)全体
両意匠は、全体が本体と蓋からなる、平面視略角丸直方体の容体であって、正面視上から約1/3の部分を蓋とし、上面周縁に沿って外側に面取りを施し、蓋と本体の境界に細帯状枠部を形成し、左右両側面の下端中央に切り欠き部を形成し、底面四隅に脚を配している点、
(共通点2)表示部、操作ボタン及び蒸気孔
両意匠は、上面に表示部を設け、その周囲に操作ボタンを配し、さらに表示部下方に操作ボタンよりやや大きめの開蓋用の略角丸横長長方形状の開蓋用ボタンを1つ配し、中央上方寄りに、略角丸横長長方形状の蒸気孔を設けた点において共通している。
イ 相違点
(相違点1)全体
全体の縦横及び奥行きの長さの比率について、正面から観察した場合、本願意匠は、約1:1.1:1.4であるのに対し、引用意匠は、約1:1.2:1.4であり、引用意匠の方が正面視においてやや横長である点、
(相違点2)外形状
(ア)本願意匠は、上面をほぼ平坦に形成しているのに対し、引用意匠はわずかに上方に膨出して形成している点、
(イ)本願意匠は、上面を正面側下にやや傾斜状としているのに対し、引用意匠は、膨出面全体を水平に形成している点、
(ウ)本願意匠は上面の周側面において、正面側の傾斜が強く、背面側の傾斜を緩く形成し、平面視において四隅を緩やかな角丸に形成しているのに対し、引用意匠は全体的に同じ傾斜で形成し、平面視において正面側と比べ、背面側の角をやや角張って形成している点、
(エ)上面の周縁に沿って外側に施された面取りについて、本願意匠が細い帯状を形成しているのに対し、引用意匠は極めて細い帯状で形成している点、
(オ)背面について、本願意匠は、背面中央やや上寄りに容体と一体状に設けた略横長長方形板状のヒンジ部を配しているのに対し、引用意匠は、背面中央上寄りに、二つの略砲弾型筋部を配し、当該部をヒンジとして開閉可能に形成している点、
(カ)本体の脚部について、本願意匠は底面四隅に円柱状の脚を配しているのに対し、引用意匠は底面四隅に略円錐台形状の脚を配している点、
(相違点3)表示部及び操作ボタン
(ア)本願意匠の表示部は、ほぼ上面中央に配しているのに対し、引用意匠は上面中央よりやや下方に配しており、蒸気孔との距離を大きく形成している点、
(イ)本願意匠は、表示部の下側に、角丸矩形状で中央上方に小円模様を配した操作ボタンを3つ横方向に配し、かつ、表示部と同じ幅となるよう等間隔に配しているのに対し、引用意匠は、表示部の左右に略角丸横長長方形の操作ボタンを縦に3つずつ縦方向に配し、かつ表示部と同じ高さとなるよう等間隔に配し、さらに下側に円形のボタンを3つ横方向に配し、表示部の横幅より少し広くなるよう等間隔に配している点において相違している。

4 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、主に米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」であるから、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は「炊飯器」であるから、この種物品を購入し、使用する一般消費者がこの種物品の需要者であるといえる。
したがって、需要者が注意して観察する容体の外形状や上面の表示部及び操作ボタン等が、需要者の注意を引く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。
ア 共通点の評価
(共通点1)は、両意匠の形状全体に関わる共通点であり、(共通点2)は通常の使用に際し、需要者の目につきやすい注意を引く部分における共通点ではあるものの、いずれも当該炊飯器の分野においては本願出願前から公然知られており(参考意匠1、2 別紙第3、4参照)、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の美感に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
(相違点1)全体
構成比率について、本願意匠より、引用意匠の方が正面視においてやや横長であるが、その差は僅かであって、さほど目立つものではないから、両意匠の美感に与える影響は小さい。
(相違点2)外形状
(ア)容体上面における形状の違いについては、需要者が通常の使用に際し、特に注視する部分における形状の違いであるから、両意匠の美感に与える影響は大きい。
(イ)容体上面の傾斜の有無については、需要者が通常の使用に際し、特に注視する部分における形状の違いであるから、両意匠の美感に与える影響は大きい。
(ウ)容体上面の周面の傾斜および角部の丸みの違いについては、需要者が通常の使用に際し、特に注視する部分における形状の違いであるから、両意匠の美感に与える影響は大きい。
(エ)上面の周縁に沿って外側に施された帯状の面取りの幅の違いについて、本願意匠に対し、引用意匠の当該部の方が細く形成している点に違いがあるものの、その幅の違いは僅かであり、需要者に異なる美感を起こさせるほどの違いとまでは言えないから、両意匠の美感に与える影響は小さい。
(オ)背面におけるヒンジ部において、本願意匠は背面中央やや上寄りに容体と一体状に設けた略横長長方形板状のヒンジ部を配しているのに対し、引用意匠は、背面中央上寄りに、二つの略砲弾型筋部を配し、当該部をヒンジ部として開閉可能に形成している点に違いが見られるものの、当該部の違いは背面における違いであり、需要者が通常の使用に際し特に注意を引く部分ではなく、また、ヒンジ部は両意匠共に容体と一体状に形成していることから、需要者に異なる美感を起こさせるほどの違いとまでは言えず、両意匠の美感に与える影響は小さい。
(カ)本体の脚部の違いについて、本願意匠は底面四隅に円柱状の脚を配しているのに対し、引用意匠は略円錐台形状の脚を配している点が異なっているが、当該部は底面における違いであり、需要者が通常の使用に際し特に注意を引く部分ではなく、需要者に異なる美感を起こさせるほどの違いとまでは言えないから、両意匠の美感に与える影響は小さい。
(相違点3)表示部及び操作ボタン
(ア)本願意匠の表示部は、ほぼ上面中央に配しているのに対し、引用意匠は上面中央よりやや下方に配していることから、蒸気孔との距離を大きく形成している点が異なり、当該違いは単なる距離の違いだけでなく、表示部及び操作ボタンを上面の中央に全体的に配しているか、あるいは正面側に寄せて配しているか、というまとまり感の違いを生じ、加えて、需要者が通常の使用に際し、特に注視する部分における違いであるから、両意匠の美感に与える影響は大きい。
(イ)本願意匠と、引用意匠の操作ボタンの配置の違いについて、表示部の下方に3つの操作ボタンを表示部と同じ幅に整列して配すること、当該操作ボタンを略角丸矩形に形成すること、表示部の左右に略角丸横長長方形の操作ボタンを縦に3つずつ縦方向に配し、かつ、表示部と同じ高さとなるよう等間隔に配することについては、いずれも当該炊飯器の分野においては本願出願前から公然知られていることから(上記参考意匠1、2)、それぞれの配置や形状に新規な創作性は見られないものの、上面全体としてのまとまりとして観察した場合、前記(ア)とも合わさって、需要者に別異の印象を与えるものであるから、両意匠の美感に与える影響は大きい。
ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)及び(共通点2)が、類否判断に与える影響は小さいのに対して、(相違点1)及び(相違点2)の(エ)ないし(カ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(相違点2)の(ア)ないし(ウ)及び(相違点3)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであることから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。
したがって、両意匠を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるものの、その形状等において類似しないから、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲









審決日 2024-02-21 
出願番号 2022007872 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 成田 陽一
江塚 尚弘
登録日 2024-04-01 
登録番号 1767746 
代理人 岡崎 博之 
代理人 大塚 雅晴 
代理人 川本 真由美 

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