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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1409225 |
総通号数 | 28 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-09-11 |
確定日 | 2024-04-09 |
意匠に係る物品 | 火ばさみ |
事件の表示 | 意願2022− 14771「火ばさみ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、令和4年(2022年)7月8日に出願した意匠登録出願(意願2022−14771)であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 5年(2023年)1月18日付 拒絶理由の通知 同年 2月10日 意見書の提出 同日 手続補足書の提出 (甲第1号証〜甲第5号証) 同年 6月26日付 拒絶査定 同年 9月11日 審判請求書の提出 同年 同月12日 手続補足書の提出 (甲第6号証〜甲第8号証) 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「火ばさみ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) この意匠登録出願前、下記ウェブサイトに掲載された薪ばさみの意匠 掲載者の名称 Amazon.com,Inc. 表題 Amazon _ ロゴス(LOGOS) LOGOS 薪ばさみ 81064158 _ ロゴス(LOGOS) _ スポーツ&アウトドア 掲載箇所 添付資料(当審注:当審決の別紙第2)1枚目左上 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2017年1月18日 検索日 [2023年1月13日] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス https://www.amazon.co.jp/dp/B01N23NOJR?th=1 第4 当審の判断 以下において、両意匠が類似するか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、主にキャンプ時に、炭や薪を挟んで位置を変更等することで火力調整等を行う目的で使用される「火ばさみ」である。 (2)本願意匠の形状等 基本的構成態様 ア 本願意匠は、全体形状が略「へ」の字状の棒状体(以下「への字棒部」という。)と、全体形状が略「I」字状の棒状体(以下「I字棒部」という。)とが、X字状に中央やや持ち手側寄りの位置で交差し(以下、交差している箇所を「交差部」という。)、その交差部で開閉自在に軸支されて本体をなしている。 具体的態様 ア I字棒部において、持ち手側とはさみ側が約1対2となる位置でへの字棒部と交差しており、への字棒部においては、持ち手側とはさみ側が約5:8となる位置でI字棒部と交差している。 イ I字棒部の持ち手側の大部分には略円柱状で、交差部側に1本、端部側に3本の円環状突条部を有したグリップ(以下、単に「グリップ」という。)を配し、グリップの端部に紐状のストラップを配しており、はさみ側端部には内側に折り曲げられた部分(以下「折り曲げ部」という。)を形成している。 ウ への字棒部の持ち手側交差部寄りは外側に緩やかに膨らむ弧状に、持ち手側端部寄りは略直線状に形成し、持ち手側の中央付近にいわゆる変曲点を有しており、はさみ側端部には折り曲げ部を形成して、持ち手側端部には小円環が3つ、大円環が1つの計4つの円環からなる連結リング部を配している。 エ I字棒部とへの字棒部の持ち手側の交差部寄りにスプリングを配することで、火ばさみが開状態で維持され、一方において連結リング部にグリップの後端を挿入することで火ばさみを閉状態にも維持可能にしている。 2 引用意匠 (1)引用意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は、炭や薪を挟んで位置を変更等することで火力調整等を行う目的で使用される「薪ばさみ」である。 (2)引用意匠の形状等 基本的構成態様 ア 引用意匠は、への字棒部とI字棒部とが、X字状に中央やや持ち手側寄りの位置で交差し、その交差部で開閉自在に軸支されて本体をなしている。 具体的態様 ア I字棒部及びへの字棒部において、持ち手側とはさみ側がそれぞれ約1対2となる位置で交差している。 イ I字棒部の持ち手側の大部分にはグリップを配し、グリップの端部に紐状のストラップを配しており、はさみ側端部には折り曲げ部を形成している。 ウ への字棒部の持ち手側全体は外側に湾曲する弧状に形成し、はさみ側端部には折り曲げ部を形成している。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「火ばさみ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「薪ばさみ」であり、名称は異なるが、共に炭や薪を挟んで位置を変更等することで火力調整等を行う目的で使用されることが明らかであるから、両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)形状等 両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (共通点1) 両意匠は、への字棒部とI字棒部とが、交差部において開閉自在に軸支されて本体をなし、当該交差部は、I字棒部において、持ち手側とはさみ側が約1:2となる位置である点、 (共通点2) I字棒部の持ち手側の大部分にはグリップを配し、グリップの端部に紐状のストラップを配し、はさみ側端部は折り曲げ部を形成している点、 (共通点3) への字棒部のはさみ側端部は折り曲げ部を形成している点において共通している。 イ 相違点 (相違点1) 本願意匠のへの字棒部においては、持ち手側とはさみ側が約5:8となる位置でI字棒部と交差しているのに対し、引用意匠のへの字棒部は、持ち手側とはさみ側が約1対2となる位置でI字棒部と交差している点、 (相違点2) 本願意匠のへの字棒部の持ち手側端部に連結リング部を配しているのに対し、引用意匠の当該部には連結リング部を配していない点、 (相違点3) 本願意匠のI字棒部とへの字棒部の持ち手側の交差部寄りにスプリングを配し、当該スプリングにより火ばさみが開状態に維持されるのに対し、引用意匠にはスプリングを配していない点、 (相違点4) 本願意匠は、「正面図」に表されるとおり、通常開状態で維持されている火ばさみを、「ロック状態を示す正面図」に表されるとおり、連結リング部にグリップを挿入することで閉状態にも維持可能にしているのに対し、引用意匠には連結リング部を配しておらず、閉状態を維持する機能が示されていない点、 (相違点5) 本願意匠のへの字棒部の持ち手側交差部寄りは、外側に緩やかに膨らむ弧状に、持ち手側端部寄りは略直線状に形成し、持ち手側の中央付近にいわゆる変曲点を有するのに対し、引用意匠のへの字棒部の持ち手側全体は外側に湾曲する弧状に形成している点において相違している。 4 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、共に炭や薪を挟んで位置を変更等することで火力調整等を行う目的で使用されることが明らかであるから、両意匠の意匠に係る物品は同一である。 (2)形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠における需要者は、主に製造業者、販売業者及び取引業者の外、キャンプ等を行う者が含まれる。 したがって、需要者が注意して観察する持ち手部、先端部、スプリング部が、需要者の注意を引く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)〜(共通点3)は、両意匠の形状全体に関わる共通点であり、需要者の目につきやすい大きな範囲を占める部分ではあるものの、当該火ばさみの分野においては、共通点1は甲第6号証(令和5年9月12日に手続補足書により提出された参考意匠2。別紙第4参照)に、共通点2は甲第5号証(令和5年2月10日に手続補足書により提出された参考意匠1。別紙第3参照)に、共通点3は甲第5号証及び甲第6号証に見られるとおり、本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1) への字棒部における交差部の比率の相違については、本願意匠が引用意匠よりも持ち手側が長く構成されており、これはスプリングがあることにより開状態が維持されている火ばさみを、より閉状態にしやすいよう、持ち手側を長く形成しているものと推認され、使用感に直接影響を及ぼす部分における相違であることから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (相違点2) 連結リング部は小円環が3つ、大円環が1つの計4つの円環から形成しており、このような形状等は従来見られないものである上、への字棒部の持ち手側端部に配されており需要者の通常の使用に際し目立つ部分であることから、連結リング部の有無の相違が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (相違点3) 本願意匠の持ち手側の交差部寄りに配したスプリングにより、火ばさみが開状態で維持されるのに対し、引用意匠にはスプリングを配していないため、自力で火ばさみを開く必要があるところ、本願意匠のスプリングは機能や使いやすさに関わる注目すべき部分であるといえるので、スプリングの有無の相違が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (相違点4) 本願意匠は、連結リング部をグリップに挿入することによって通常開状態で維持されている火ばさみを閉状態に維持することができるという機能を有しており、当該機能は通常の使用に際して収納や運搬時等において特に注目するものであるから、当該機能を発揮させる部分である連結リング部の有無の相違が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (相違点5) への字棒部の持ち手部の形状の相違は、外見上目立ちにくい相違ではあるものの、需要者の通常の使用に際し、常に接触している部分における相違であり、使用感に大きく影響を及ぼす部分であることから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)〜(共通点3)が、類否判断に与える影響は小さいのに対して、(相違点1)〜(相違点5)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであることから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 したがって、両意匠を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。 (3)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるものの、その形状等において類似しないから、両意匠は類似しない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-03-25 |
出願番号 | 2022014771 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D4)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
立木 林 成田 陽一 |
登録日 | 2024-04-16 |
登録番号 | 1769052 |
代理人 | 大西 正夫 |