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審決分類 |
審判 補正却下不服 図面(意匠の説明を含む) 取り消す D7 |
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管理番号 | 1409227 |
総通号数 | 28 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-04-26 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2023-07-11 |
確定日 | 2024-01-09 |
意匠に係る物品 | チャイルドシート |
事件の表示 | 意願2021− 26432「チャイルドシート」の意匠登録出願に係る、令和5年1月6日の手続補正についてされた却下の決定に対する補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2021年6月1日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、令和3年12月1日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和3年12月 3日 : 電子的交換による優先権書類の取得 令和4年 4月22日付: 拒絶理由通知(1)の送付 (理由:意匠法第7条(意匠ごとの出願)) 7月22日 : 意見書(1)の提出 7月22日 : 手続補正書(1)の提出 (対象書類:図面、補正内容:全図変更) 8月 8日付: 拒絶理由通知(2)の送付 (理由:意匠法第3条第1項第3号) 11月 7日 : 期間延長請求書の提出 令和5年 1月 6日 : 意見書(2)の提出 1月 6日 : 手続補正書(2)の提出 (対象書類:図面、補正内容:全図変更) 4月 5日付: 補正の却下の決定 7月11日 : 審判請求書の提出 7月11日 : 手続補足書の提出 (補足内容:委任状) 原審審査官は、初めに、令和4年4月22日付の拒絶理由通知(1)において、本願は、経済産業省令で定めるところにより意匠ごとにされているものとは認められず、意匠法第7条に規定する要件を満たしていないとして、「この意匠登録出願は、願書の記載及び添付された図面によると、一組の6面図及び斜視図によって表されたチャイルドシートの意匠と、日よけを取り付けた状態を示す一組の6面図及び斜視図によって表されたチャイルドシートの意匠の、合計2つの意匠に係るものです。」と述べた。 この拒絶理由通知(1)を受け、出願人(請求人)は、令和4年7月22日に意見書(1)及び手続補正書(1)を提出し、願書に添付した図面の全図を変更する補正を行った。 その後、原審審査官は、令和4年8月8日付の拒絶理由通知(2)において、掲載年月日を2021年10月28日とするインターネット動画に表されたチャイルドシートの意匠を引用しつつ、本願の意匠は、その出願前(我が国への現実の出願日である令和3年(2021年)12月1日以前)に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するとして、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとし、併せて「なお、この意匠登録出願は、2021年6月1日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴うものですが、優先権証明書には、本願意匠と形状が異なる設計1の意匠と、本願意匠と明暗調子の有無及び形状が異なる設計2の意匠が表されており、いずれもこの意匠登録出願の意匠と同一の意匠ということができません。よって、この意匠登録出願については、上記の出願を基礎とした優先権主張の効果は認められません。」と述べた。 この拒絶理由通知(2)を受け、出願人(請求人)は、令和5年1月6日に意見書(2)及び手続補正書(2)を提出し、願書に添付した図面の全図を再度変更する補正を行った。 原審審査官は、この手続補正書(2)による令和5年1月6日の手続補正について、「上記手続補正書により添付図面の全図を変更されましたが、補正後の図面は少なくとも3階調の明暗で表現されたものであって、明暗調子を全く有していなかった我が国への出願の当初の図面とは異なっています。この図面の変更によって、本願意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨が特定されることとなりました。したがって、上記手続補正書による補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものです。尚、令和4年7月22日付けの手続補正は適法な手続であったと認定しています。」との理由を述べ、意匠法第17条の2第1項の規定に基づく補正の却下の決定をした。 本件審判の請求は、この手続補正書(2)による令和5年1月6日の手続補正(以下「本件補正」という。)についてされた補正の却下の決定の取消しを求めてなされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、請求の理由の「3.補正の却下の決定が取り消されるべき理由」において、以下のとおり主張した。 「明暗階調の相違に関し、出願当初の図面に明暗調子が記載されていないのに対し、手続補正書の図面代用写真に明暗調子が表されている相違については、一般的に、物品の形状を表す図面の場合には、明暗調子を意図して表そうとしない限り、形状が線図によって現されるのみで、通常は明暗調子を表さないのに対し、写真の場合には望むと望まざるとに拘わらず、材質等の相違がそのまま明暗調子として写真に表れてしまうことが多いところです。 すなわち、本願意匠のように図面から図面代用写真に補正した場合、写真には明暗調子を主張する意図がなくても物理的に明暗調子が表されてしまいます。 したがいまして、手続補正書にその形状が図面代用写真によって表現され、明暗調子が表されていても、本願意匠に限ってみれば、出願当初の意匠を実質的にそのまま写真によって表したもので、本願意匠に係る補正が出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更したとまでは到底いえません。」 第3 当審の判断 1 本件補正前の図面に表された意匠 (1)出願当初の図面に表された意匠(別紙第1参照) 出願当初の願書及び願書に添付した図面によると、意匠に係る物品は「チャイルドシート」であり、図面には、日よけを伴わないチャイルドシートの意匠を表す【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】、【底面図】及び【斜視図】の各図、並びに、日よけを伴うチャイルドシートの意匠を表す【日よけを取り付けた状態を示す正面図】、【日よけを取り付けた状態を示す背面図】、【日よけを取り付けた状態を示す左側面図】、【日よけを取り付けた状態を示す右側面図】、【日よけを取り付けた状態を示す平面図】、【日よけを取り付けた状態を示す底面図】及び【日よけを取り付けた状態を示す斜視図】の各図が、いずれも線図により記載されていた。一方、願書には、意匠法第6条第4項の規定に基づき変化の前後にわたる形状について意匠登録を受けようとする旨の説明は記載されていなかった。 そうすると、原審認定のとおり、本願の出願当初の願書及び図面中には、日よけを伴わないチャイルドシートの意匠及び日よけを伴うチャイルドシートの意匠という二つの意匠が包含されていたものと認められ、また、全ての図は線図により記載されたものであった。 (2)手続補正書(1)の図面に表された意匠 手続補正書(1)による令和4年7月22日の手続補正は、【補正対象書類名】を「図面」、【補正対象項目名】を「全図」、【補正方法】を「変更」、【補正の内容】を「【書類名】図面」として、出願当初に提出された図面の全図を変更したものであり、その図面には、日よけを伴わないチャイルドシートの意匠を表す【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】、【底面図】及び【斜視図】の各図、並びに、【使用状態を示す参考斜視図】として、日よけを伴うチャイルドシートの意匠を表す図が、いずれも線図により記載されたものであった。 2 本件補正後の図面に表された意匠(別紙第2参照) 本件補正は、【補正対象書類名】を「図面」、【補正対象項目名】を「全図」、【補正方法】を「変更」、【補正の内容】を「【書類名】図面」として、願書に添付した図面の全図を再度変更したものであり、本件補正の図面には、日よけを伴わないチャイルドシートの意匠を表す【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】、【底面図】及び【斜視図】の各図、並びに、【使用状態を示す参考斜視図】として、日よけを伴うチャイルドシートの意匠を表す図が、いずれも無彩色による明暗調子が施された状態の図により記載されたものであった。 3 要旨変更の有無に係る判断 (1)一部の意匠を削除したことの当否 出願当初の図面と、手続補正書(1)による補正及び本件補正の図面とを対比すると、手続補正書(1)による補正及び本件補正の図面には、意匠登録を受けようとする意匠として、出願当初の図面中に二つ表されていたうちの一つである、日よけを伴わないチャイルドシートに相当する意匠のみが表され、日よけを伴うチャイルドシートの意匠は削除されている。 つまり、手続補正書(1)による補正及び本件補正では、出願当初に包含されていた二つの意匠のうちの一つが削除されているが、これは、原審審査官による意匠法第7条の拒絶理由通知(1)を受けてのものであり、二以上の意匠を包含する意匠登録出願について、その一部を除外して意匠ごとの適法な出願とするためには手続の補正によらざるを得ないから、本件補正のうち、出願当初の図面から日よけを伴うチャイルドシートの意匠を削除する補正は、手続補正書(1)による補正と同様、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。 (2)図面の記載内容を変更したことの当否 ア 図面に表された意匠の対比 出願当初の図面及び手続補正書(1)による補正の図面に表された日よけを伴わないチャイルドシートの意匠(これらは同一であるため、以下「本件補正前の意匠」という。)と、本件補正の図面に表されたチャイルドシートの意匠(以下「本件補正後の意匠」という。)とを対比すると、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)には、主として以下の相違点が認められる。 〔相違点1〕本件補正前の意匠は、チャイルドシートの全体が線図によって表されているのに対して、本件補正後の意匠は、チャイルドシートの全体が表面に無彩色による明暗調子が施された状態で表されている。 〔相違点2〕本件補正前の意匠は、クッションカバーの立体縫製線が少なく表されているのに対して、本件補正後の意匠は、クッションカバーの立体縫製線が多く表されている。 〔相違点3〕本件補正前の意匠は、シート手前側のスリットに調整ベルトが通っていない状態で表されているのに対して、本件補正後の意匠は、シート手前側のスリットから調整ベルトを垂下させた状態で表されている。 〔相違点4〕本件補正前の意匠は、シート本体の底面部には孔が設けられていないのに対して、本件補正後の意匠は、シート本体の底面部に複数の小円孔が設けられている。 イ 明暗調子の有無についての評価 〔相違点1〕にいう、図面中の明暗調子の有無に係る相違について、原審審査官は、「補正後の図面は少なくとも3階調の明暗で表現されたものであって、明暗調子を全く有していなかった我が国への出願の当初の図面とは異な」る旨を述べ、請求人は、「本願意匠のように図面から図面代用写真に補正した場合、写真には明暗調子を主張する意図がなくても物理的に明暗調子が表されてしまい・・・手続補正書にその形状が図面代用写真によって表現され、明暗調子が表されていても、本願意匠に限ってみれば、出願当初の意匠を実質的にそのまま写真によって表したもの」である旨を主張している。 まず、請求人が主張する、本件補正は図面代用写真によるものであるとの点について、上記2のとおり、本件補正は、【補正対象書類名】を「図面」、【補正対象項目名】を「全図」、【補正方法】を「変更」、【補正の内容】を「【書類名】図面」として、図面の全図を変更したものであることからすると、本件補正は、図面代用写真ではなく、図面であることを意図して手続がなされたものと解するのが相当であるから、「写真には明暗調子を主張する意図がなくても物理的に明暗調子が表されてしま」うとの請求人の主張は、本件補正について妥当するものとはいえない。 一方、原審審査官が指摘するとおり、本件補正の図面からは、厳密にいえば三階調程度の明度差を見て取ることができるものの、それらの階調の差はさほど大きなものではなく、各部を構成する部品間で多少の明度差が生じている程度のものであることからすると、本件補正の図面に表された明暗調子は、意匠の構成要素たる色彩又は模様(塗り分け模様)を積極的に特定することを意図して表されたものとまでは認められない。 そうすると、本件補正後の意匠に表された明暗調子は、本願の意匠の立体形状を特定するために表されたものと同等と解するのが相当であるから、本件補正が明暗調子を有する図面を表した点をもって、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するとはいえない。 ウ 具体的形状の相違点についての評価 〔相違点2〕ないし〔相違点4〕にいう具体的形状の相違については、意匠に係る物品の使用時態様の違いや、カバーに覆われて通常は視認されにくい底面部に係る相違など、いずれも、意匠の要旨の認定には影響を及ぼさない程度の微細な部分に係る相違にとどまるものと認められるから、これらの相違点をもって、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するとはいえない。 エ 小括 上記イ及びウのとおり、本件補正の図面は、本件補正前の意匠を実質的にそのまま表したものと認めるのが相当であるから、本件補正のうち、図面の記載内容を変更した補正は、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。 第4 結び 以上のとおり、本件補正の内容は、本願の意匠の要旨の認定に大きな影響を与えるものではなく、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するものとはいえないから、本件補正を、意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-12-18 |
出願番号 | 2021026432 |
審決分類 |
D
1
7・
1-
W
(D7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
伊藤 宏幸 江塚 尚弘 |
登録日 | 2024-03-21 |
登録番号 | 1766863 |
代理人 | 弁理士法人坂本国際特許商標事務所 |