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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K0 |
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管理番号 | 1410276 |
総通号数 | 29 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-06-30 |
確定日 | 2024-03-26 |
意匠に係る物品 | 物理蒸着チャンバ用コリメータ |
事件の表示 | 意願2022− 14278「物理蒸着チャンバ用コリメータ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、2022年1月12日のアメリカ合衆国への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和4年(2022年)7月4日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年(2022年)11月17日付け:拒絶理由通知の送付 令和5年(2023年) 2月28日 :意見書の提出 同 年 3月29日付け:拒絶査定 同 年 6月30日 :審判請求書の提出 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「物理蒸着チャンバ用コリメータ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原審の拒絶理由通知に基づく原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 上記の拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、以下の意匠である(別紙第2参照)。 引用意匠 米国特許商標公報 2019年 9月 3日 物理蒸着室用コリメータ(登録番号US D858468S Collimator for a physical vapor depositionの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH31321797号) における出願意匠の実線部に該当する円筒状外径部の形状 以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を、「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも半導体ウェハの製造等に用いられる「物理蒸着チャンバ用コリメータ」であるから一致する。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 まず、本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもハニカム構造からなるコリメータを周囲で保持するためのものであるから、両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、物理蒸着チャンバ用コリメータの略円筒形状の枠体の部分(以下「円筒部」という。)として位置し、その大きさは半導体ウェハの直径程度のものであり、円筒部内側に形成されたハニカム構造の部分(以下「ハニカム部」という。)、及び円筒部外周部分に付設した鍔部の破線の部分を除いた部分をその範囲とするものであるから、両部分の意匠に係る物品の全体に対する位置、大きさ及び範囲は一致する。 (4)両部分の形状等の対比 両部分の形状等を対比する(以下、対比のため、引用部分も本願部分の図面の向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形状等の共通点 (共通点1)両部分は、全体を、略短円筒形状の円筒部を基本として、その外周部上端部付近に、略円環状の鍔部を全周に亘って一体的に付設したものである点が共通する。 (共通点2)両部分は、円筒部の外周面の形状等を、下端部約1/5の範囲を、それ以外の上中部の直径より約10%縮径した縮径部とし、上中部と縮径部とを、すり鉢状の傾斜面で一体的に接続した構成としたものである点が共通する。 (共通点3)両部分は、円筒部の鍔部より下方部分の断面の厚みについて、ハニカム部と接する部分を肉厚に形成し、それ以外の鍔部より下方部分及び縮径部の部分をそれより薄く形成したものである点が共通する。 イ 形状等の相違点 (相違点1)本願部分は、円筒部の上方開口部内周部分の形状等について、鍔部内側にあたる部分に、傾斜状の段差部を全周に亘って1条形成しているのに対し、引用部分には、本願部分のような段差部がない点で、両部分は相違する。 (相違点2)本願部分は、円筒部の鍔部より上方部分の断面の厚みについて、鍔部より下方の部分よりも薄く形成しているのに対し、引用部分は、上方開口部全体を同じ厚みで形成している点で、両部分は相違する。 3 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、同一である。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 (4)両部分の形状等の類否判断 ア 共通点の評価 (共通点1)は、部分全体の構成態様に係るものであるが、この種物品において、このような構成のものは既に存在するものであって、両部分のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の、円筒部の外周面の形状等については、下端部を縮径部とし、上中部と縮径部とをすり鉢状の傾斜面で一体的に接続したものも、この種物品において既に存在するものであるから、この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点3)の、鍔部より下方部分の断面の厚みについては、ハニカム部と接する部分や縮径部の部分は通常の使用状態では見えにくく、断面図等があってはじめて肉厚がわかるような部分に係る形状の共通性でしかないから、この(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)の、円筒部の上方開口部内周部分の形状等の相違については、物理蒸着チャンバ上部の蓋を開けてコリメータを設置する際等の使用時に目につく部位である上方開口部内周部分に、斜状の段差部を全周に亘って1条形成している本願部分の形状には、従来のものには見られない特徴が認められるものであるから、両部分においては、目につきやすい部分に当たるこの(相違点1)が、部分全体の類否判断に与える影響は大きい。 (相違点2)の、鍔部より上方部分の断面の厚みの相違については、使用時に目につく部位である上方開口部上端部分をごく薄い円筒形状に形成している本願部分の形状にも、従来のものには見られない特徴が認められるものであるから、両部分においては、目につきやすい部分に当たるこの(相違点2)が、部分全体の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分を部分全体として総合的に観察した場合、両部分は、上方開口部内周部分の形状等の(相違点1)及び鍔部より上方部分の断面の厚みの(相違点2)が部分全体の類否判断に与える影響が大きいのに対し、(共通点1)から(共通点3)の共通性が部分全体の美感に与える影響はいずれも小さいものであるから、これらの共通点が相俟っても、部分全体の類否判断に与える影響は上記の相違点が類否判断に与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等は類似しないものである。 (5)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲も同一ではあるものの、両部分の形状等において、類似しないものであるから、本願意匠と引用意匠は類似しないものである。 第3 むすび 上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-03-11 |
出願番号 | 2022014278 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K0)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
伊藤 宏幸 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2024-04-30 |
登録番号 | 1770089 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 鈴木 博子 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 渡邊 徹 |