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審決分類 審判    B7
管理番号 1411391 
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2023-08-30 
確定日 2024-04-30 
意匠に係る物品 鼻毛カッター 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1691563号「鼻毛カッター」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1691563号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯

本件意匠登録第1691563号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)は、令和3年(2021年)2月24日に意匠登録出願(意願2021−3765)されたものであって、令和3年(2021年)6月29日付けで登録査定がなされ、同年7月13日に意匠権の設定の登録がされた後、同年8月2日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。

令和5年(2023年) 8月30日付け 審判請求書の提出
同年 12月13日差出 審判事件答弁書の提出
令和6年(2024年) 1月18日付け 審理事項通知書の送付
同年 1月23日付け 口頭審理陳述要領書の提出
(請求人)
同年 2月22日 口頭審理

第2 請求の趣旨及び理由

請求人は、令和5年(2023年)8月30日付けで審判請求書を提出し 、請求の趣旨として「意匠登録第1691563号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として、要旨以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため、甲第1号証を提出した。

1 請求の理由

(1)本件登録意匠
意匠登録第1691563号
意匠に係る物品「鼻毛カッター」

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 令和3(2021)年 2月24日
登録 令和3(2021)年 7月13日
掲載公報発行 令和3(2021)年 8月 2日
(意匠登録第1691563号公報)

(3)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、2020年6月5日に中国国家知識産権局が発行した、登録番号CN305830644Sの外観設計専利公報(甲第1号証)に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

(4)本件登録意匠を無効とすべき理由
ア 本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は、意匠登録第1691563号の意匠公報に記載のとおり、意匠に係る物品を「鼻毛カッター」とし、その形態は、基本的な構成を、本体と蓋からなる全体形状が上下同径の円柱形であって、本体正面にスライドスイッチを設け、底面に充電用のコネクタを設けたものとしている。
各部の具体的な態様は、ア)全体の縦横寸法比率を略7:1として、蓋部高さを全体の約3割の高さとしており、イ)スライドスイッチについて、全体高さの約5分の1の縦寸法で縦横寸法が略5:1の競技場トラック形状として、全体上下中央のやや上寄りに設け、ウ)スイッチのスライド部を、スイッチ縦寸法の約8割5分の大きさである競技場トラック形状で、上下を略3等分する位置に2つの横棒状突起を設けたものとし、エ)底面を、内側に底面横幅の約7割幅の円形区画を形成して、その中に底面横幅の約2分の1幅で扁平な隅丸略台形状の充電用コネクタと、充電用コネクタの下方に1つの小円形区画を設けたものとしている。

イ 先行意匠が存在する事実
甲第1号証は、2020年6月5日に中国国家知識産権局が発行した登録番号CN305830644Sの外観設計専利公報であって、本件登録意匠の出願日令和3(2021)年2月24日より前に公開されている。
その内容は、製品の名称を「鼻毛修剪器」(鼻毛トリマー)として、基本的な構成を、本体と蓋からなる全体形状が上下同径の円柱形であって、本体正面にスライドスイッチを設け、底面に充電用のコネクタを設けたものとしている。 各部の具体的な態様は、ア)全体の縦横寸法比率を略7:1として、蓋部高さを全体の約3割の高さとしており、イ)スライドスイッチについて、全体高さの約5分の1の縦寸法で縦横寸法が略5:1の競技場トラック形状として、全体上下中央のやや上寄りに設け、ウ)スイッチのスライド部を、スイッチ縦寸法の約8割5分の大きさである競技場トラック形状で、上下を略3等分する位置に2つの横棒状突起を設けたものとし、エ)底面を、内側に底面横幅の約7割幅の円形区画を形成して、その中に底面横幅の約2分の1幅で扁平な隅丸略台形状の充電用コネクタと、充電用コネクタの上下に計2つの小円形区画を設けたものとしている。

ウ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との対比
意匠に係る物品は、本件登録意匠が「鼻毛カッター」であり甲第1号証の意匠が「鼻毛修剪器」(鼻毛トリマー)であって、両意匠の物品は同一である。

本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態は、以下に対比するように底面態様のわずかな差異を除いて、全体がほぼ同一といえるほど近似している。

ウ−1 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との共通点
A 意匠全体の基本的な構成について、本体と蓋からなる全体形状を上下同径の円柱形として、本体正面にスライドスイッチを設け、底面に充電用のコネクタを設けたものとしている点が共通する。
B 各部の具体的な態様について、
ア)全体の縦横寸法比率を略7:1として、蓋部高さを全体の約3割の高さとしている点、
イ)スライドスイッチについて、全体高さの約5分の1の縦寸法で縦横寸法が略5:1の競技場トラック形状として、全体上下中央のやや上寄りに設けている点、
ウ)スイッチのスライド部を、スイッチ縦寸法の約8割5分の大きさである競技場トラック形状で、上下を略3等分する位置に2つの横棒状突起を設けたものとしている点、
エ)底面を、内側に底面横幅の約7割幅の円形区画を形成して、その中に底面横幅の約2分の1幅で扁平な隅丸略台形状の充電用コネクタと小円形区画を設けている点、が共通する。

ウ−2 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との差異点
底面の具体的な態様について、本件登録意匠は、充電用コネクタの下方に1つの小円形区画を設けているのに対して、甲第1号証の意匠は、充電用コネクタの上下に小円形区画を設けている点が相違する。
なお、平面図の対比において、スライドスイッチ突起部の位置が異なるが、これは本件登録意匠の平面図の誤記によるものであって、両意匠のスライドスイッチの位置に相違はない。

エ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との類否
本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、底面の小円形区画の数の差異を除いて、意匠全体の基本的な構成、各部の具体的な態様が共通し、ほぼ同一といえる視覚的印象が形成されている。
これに対して両意匠の差異は、比較的着目されない底面における差異であるとともに、底面においても全体の構成が共通している中で、充電用コネクタの上方に小さな円形区画を設けているか否かという部分的な差異にすぎず、意匠全体の視覚的印象に与える影響は極めて微弱であるという他ない。
したがって、意匠全体として判断した場合に、両意匠の差異が、ほぼ同一といえる両意匠の共通感を凌駕するものでないことは明らかであるので、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。

2 陳述要領書における主張

請求人は、口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述要領書」という。)に基づき、要旨、以下のとおり意見を述べた。

(1)陳述の要領
ア 請求の理由の主旨
令和5年8月30日付審判請求書に記載のとおり。すなわち、本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、底面の小円形区画の数の差異を除いて、意匠全体の基本的な構成、各部の具体的な態様が共通し、ほぼ同一といえる視覚的印象が形成されている。
意匠全体として判断した場合に、両意匠の差異が、ほぼ同一といえる両意匠の共通感を凌駕するものでないことは明らかであるので、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものであって、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。

イ 被請求人の主張に対する反論
(ア)差異点の認定について
被請求人は「充電用コネクタ部分(底面)において、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と異なって、充電用コネクタの上方に小さな円形区画がない点のみならず、さらには、コネクタの内部には半円区画(下記図付番1)とその内部に4つの小三角形の構造(下記図付番2)がみられる点でも差異がみられる。」(令和5年12月13日差出審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)3頁下から5行目乃至同1行目)としている。



審判請求書において請求人は、両意匠の底面におけるコネクタ内部形状の差異を認定、評価していないが、両意匠の要部とはいえない、底面におけるUSB差込口の奥まった内部形状に関する差異であって、覗き込んでようやく判る細部の差異に過ぎないので、意匠全体の視覚的印象に与える影響は極めて微弱であり、認定、評価の欠如があったとしても、両意匠の類否判断に影響を及ぼすものでは無い。

(イ)差異点の評価について
被請求人は、底面について「鼻毛カッターの需要者にしてみれば、・・・その充電の方法・態様を確認するために、コネクタ部分がある底面部分についても少なからず着目をする部分であるといえる。」(答弁書4頁1行目乃至5行目)として、
「使用者はコネクタと電気コードの着脱を確認するため、円筒形の全体形状、蓋部の位置・高さ、スライドスイッチの位置・形態などよりも、使用時においては比較的大きな注意力を払うものであるといえる。」(答弁書4頁中段下線部)と、下線を付し強調して主張する。

しかしながらこの主張は、使用者が、機能的な観点から使用時には底面にも着目するといっているに過ぎず、形態の評価において重きをおくべき要部とはいえない底面におけるごく部分的な差異が、「意匠全体として判断した場合にでも、両意匠の当該差異が、両意匠の蓋部などにおける共通感を凌駕するものといえる。」(答弁書4頁下から3行目乃至同1行目)との主張の根拠にはなり得ない。

そもそも両意匠の底面における主たる差異は、コネクタの下方に1つの小円形区画を設けているか(本件登録意匠)、コネクタの上下に小円形区画を設けているか(甲第1号証)にあり、コネクタ部は同じUSB差込口形状であって共通している。したがって、使用者が「充電の方法・態様を確認するために」底面に着目したとしても、両意匠の底面には、充電の方法に関する差異、充電時の態様にかかわる形態の差異は無く、意匠全体としての共通感を凌駕する差異は存在しない。

被請求人の主張は、意匠全体の基本的な構成、各部の具体的な態様に基づいて総合的に検討すべき意匠の類否判断の基本を逸脱して、形態の評価において重きをおくべき意匠の要部とはいえない、底面の細部に係る差異のみを高く評価するものであって不当である。

3 証拠方法
証拠は、原本に代わる写しである。

甲第1号証 2020年6月5日に中国国家知識産権局が発行した、登録番号CN305830644Sの外観設計専利公報

第3 答弁の趣旨及び理由

被請求人は、令和5年12月13日付けで、答弁書を提出し、答弁の趣旨として「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」とし、その理由として、要旨以下のとおり主張した。

本件無効審判請求人は、令和5年11月14日付け送達の無効審判請求書に おいて、審判請求人が「請求の理由」において主張した内容につき、以下の内容の答弁書を提出する。

(1)審判請求人は、本件登録意匠の意匠全体の基本的な構成について、「本体と蓋からなる全体形状を上下同径の円柱形として、本体正面にスライドスイッチを設け、底面に充電用のコネクタを設けたものとしている点が共通する」とし、さらに、「各部の具体的な態様」として、以下の点を指摘している。

(ア)全体の縦横寸法比率を略7:1として、蓋部高さを全体の約3割の高さとしている点
(イ)スライドスイッチについて、全体高さの約5分の1の縦寸法で縦横寸法が略5:1競技場トラック形状として、全体上下中央のやや上寄りに設けている点
(ウ)スイッチのスライド部を、スイッチ縦寸法の約8割5分の大きさである競技場トラック形状で、上下を略3等分する位置に2つの横棒状突起を設けたものとしている点
(エ)底面を、内側に底面横幅の約7割幅の円形区画を形成して、その中に底面横幅の約2分の1幅で扁平な隅丸台形状の充電用コネクタと小円形区画を設けている点

そして、審判請求人は、「本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、底面の小円形区画の数の差異を除いて、意匠全体の基本的な構成、各部の具体的な態様が共通地、ほぼ共通する視覚的印象が形成されている。これに対して両意匠の差異は、比較的着目されない底面における差異であるとともに、底面においても全体の構成が共通している中で、充電用コネクタの上方に小さな円形区画を設けているか否かという部分的な際にすぎず、意匠全体の視覚的印象に与える影響は極めて微弱であるという他ない。したがって、意匠全体として判断した場合に、両意匠の差異が、ほぼ同一といえる両意匠の共通感を凌駕するものではないことは明らかであるので、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものである」と両意匠は類似する旨主張している。

(2)しかしながら、被審判請求人は、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものではない旨を主張する。
以下、その理由を述べる。
まず、確かに、全体として円筒形の形状である点、蓋部の位置や高さ、スライドスイッチの位置や形態については、一応の形態面での共通性があるものといえる。
一方で、審判請求人も主張するように、充電用コネクタ部分においては、相違点がみられる。ここで、充電用コネクタ部分(底面)において、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と異なって、充電用コネクタの上方に小さな円形区画がない点のみならず、さらには、コネクタの内部には半円区間(下記図付番1)とその内部に4つの小三角形の構造(下記図付番2)がみられる点でも差異がみられる。



そして、審判請求人は、需要者によって「比較的着目されない底面」と認定しているが、鼻毛カッターの需要者にしてみれば、購入の際には、カッター部分やスイッチ部分のみならず、充電の際、その充電の方法・態様を確認するために、コネクタ部分がある底面部分についても少なからず着目をする部分であるといえる。
そして、使用開始時には、コネクタ部分から電気コードを抜き、使用終了時(充電開始時)には、コネクタ部分に着目して電気コードをコネクタに挿入して充電を開始するし、使用者はコネクタと電気コードの着脱を確認するため、円筒形の全体形状、蓋部の位置・高さ、スライドスイッチの位置・形態などよりも、使用時においては比較的大きな注意力を払うものであるといえる。
また、近年コネクタ部分の複雑化や使用可能なコネクタ規格の多様化があるところ、需要者は、使用時の態様を想定し、使いやすさを意識することが多いという現状を鑑みても、上記底面部分は、需要者の注意を惹く部分であるといえる。
すなわち、意匠全体の視覚的印象に与える影響は大きく、意匠全体として判断した場合にでも、両意匠の当該差異が、両意匠の蓋部などにおける共通感を凌駕するものといえる。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものではない。

(3)以上から、本件登録意匠は、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法48条1項1号の規定に該当し無効にすべきであるとする、審判請求人の主張は失当であるといえる。

第4 口頭審理

本件審判について、当審は、令和6年1月18日付けで審理事項通知書を通知し、これに対して、請求人は、同年1月23日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、同年2月22日に口頭審理を行った。(令和6年2月22日付け「第1回口頭審理調書」)
なお、被請求人から、口頭審理陳述要領書の提出はなかった。

1 請求人の主張
請求人は、口頭審理陳述要領書(前記第2の2)に基づき、意見を述べた。

2 被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書(前記第3)に基づき、意見を述べた。

3 審判長
審判長は、この口頭審理において甲第1号証について取り調べ、本件審理を終結した。(令和6年2月22日付け「第1回口頭審理調書」)

第5 当審の判断

1 本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1691563号)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「鼻毛カッター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであって、具体的な形状等は、以下のとおりである。

(1)基本的構成態様
全体は、縦(高さ)、横(径)の長さの比率が約6.5:1の略縦長円柱体であって、上端から約1/3の位置に設けた横溝より上側をキャップ、下側を本体とし、本体の正面上方に、本体の縦の長さの約1/3の長さの略縦長トラック形のスライドスイッチを設け、底面に、略横長矩形状のUSBプラグを設けている。また、表面全体に青みがかった灰色の色彩を施している。

(2)具体的態様
ア スライドスイッチ
スライドスイッチの内側に、略縦長トラック形の薄板状スライダーを密接して設け、その表面には、上下端部から約1/4の位置にそれぞれ水平凸条を設けている。

イ 底面
外縁のやや内側を略円形の凹状面とし、USBプラグは、左右上角を斜めに切り欠き、左右下角を隅丸に形成した外形状であって、その内側には、外縁に沿って細溝を形成し、下辺中央に略半円形状の区画線を設け、その区間線内に沿って4つの略三角形状部分を等間隔に形成している。また、USBプラグの下に、略小円形模様を形成している。

2 無効理由の要点
請求人が主張する無効理由の要点は、以下のとおりである。

本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、2020年6月5日に中国国家知識産権局が発行した、登録番号CN305830644Sの外観設計専利公報(甲第1号証)に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

3 無効理由の判断
本件登録意匠が、甲第1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)と類似する意匠であるか否かについて、検討し、判断する。

(1)証拠の説明
甲1意匠は、審判請求書に添付した甲第1号証によれば、中華人民共和国国家知識産権局が、2020年(令和2年)6月5日に公告した外観設計専利公報(公告番号:CN305830644S)に記載されたものであって、意匠に係る物品を「鼻毛剪定器(RF−3029)」とし、その具体的な形状等は、以下のとおりである。(別紙第2参照)

ア 基本的構成態様
全体は、縦(高さ)、横(径)の長さの比率が約6.5:1の略縦長円柱体であって、上端から約1/3の位置に設けた横溝より上側をキャップ、下側を本体とし、本体の正面上方に、本体の縦の長さの約1/3の長さの略縦長トラック形のスライドスイッチを設け、底面に、略横長矩形状のUSBプラグを設けている。また、表面には色彩を施していない。

イ 具体的態様
(ア)スライドスイッチ
スライドスイッチの内側に、略縦長トラック形の薄板状スライダーを密接して設け、その表面には、上下端部から約1/4の位置にそれぞれ水平凸条を設けている。

(イ)底面
外縁のやや内側に略円形模様を形成し、USBプラグは、左右上角を斜めに切り欠き、左右下角を隅丸に形成した外形状であって、その内側には、外縁に沿って細溝を形成し、下辺中央に略横長矩形状の区画線を形成している。また、USBプラグの上下に、径の異なる2つの略小円形模様を形成している。

(2)無効理由の検討

請求人が主張している本件無効審判請求の無効理由は、本件登録意匠は、甲1意匠と類似する意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、意匠登録を受けることができないというものである。

そこで、請求人及び被請求人の主張を踏まえつつ、本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)が類似するか否かを判断する。

ア 両意匠の対比
(ア)意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、表記は異なるが、いずれも鼻毛をカットし、適当な長さに調整することを目的に使用する「鼻毛カッター」であるから、一致する。

(イ)形状等の対比
両意匠の形状等を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。

a 共通点
(共通点1)基本的構成態様として、全体は、縦(高さ)、横(径)の長さの比率が約6.5:1の略縦長円柱体であって、上端から約1/3の位置に設けた横溝より上側をキャップ、下側を本体とし、本体の正面上方に、本体の縦の長さの約1/3の長さの略縦長トラック形のスライドスイッチを設け、底面に、略横長矩形状のUSBプラグを設けている点において、共通する。
(共通点2)スライドスイッチについて、スライドスイッチの内側に、略縦長トラック形の薄板状スライダーを密接して設け、その表面には、上下端部から約1/4の位置にそれぞれ水平凸条を設けている点において、共通する。
(共通点3)USBプラグは、左右上角を斜めに切り欠き、左右下角を隅丸に形成した外形状であって、その内側には、外縁に沿って細溝を形成し、USBプラグの下に、略小円形模様を形成している点において、共通する。

b 相違点
(相違点1)表面の色彩について、本件登録意匠は表面全体に青みがかった灰色の色彩を施しているのに対し、甲1意匠は色彩を施していない点において、相違する。
(相違点2)底面の外縁のやや内側の態様について、本件登録意匠は凹状面であるのに対し、甲1意匠は当該部が凹状面であるか否か不明である点において、相違する。
(相違点3)底面のUSBプラグの内側の形状について、本件登録意匠は、外縁の内側の細溝の下辺中央に略半円形状の区画線を設け、その区間線内に沿って4つの略三角形状部分を等間隔に形成しているのに対し、甲1意匠は、同じ位置に、略横長矩形状の区画線を形成している点において、相違する。
(相違点4)USBプラグの上部の態様について、本件登録意匠は略小円形模様を形成していないのに対し、甲1意匠は、USBプラグの下部の略小円形模様よりもやや小径の略小円状模様を形成している点において、相違する。

イ 両意匠の類否判断
(ア)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから、同一である。

(イ)両意匠の形状等の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、鼻毛をカットし、適当な長さに調整することを目的に使用する「鼻毛カッター」であるから、需要者は、主に使用者である購買者及び販売業者等の取引者であって、当該需要者は、使用時の握りやすさや操作の容易さ、携行所持のしやすさを重視し、物品全体の外形状や、使用時に把持する本体の態様、電源の入り切りの操作時に使用するスライドスイッチの態様に注視して観察するものであるということができる。

a 共通点の評価
(共通点1)の基本的構成態様、すなわち、全体は、縦(高さ)、横(径)の長さの比率が約6.5:1の略縦長円柱体であって、上端から約1/3の位置に設けた横溝より上側をキャップ、下側を本体とし、本体の正面上方に、本体の縦の長さの約1/3の長さの略縦長トラック形のスライドスイッチを設け、底面に、略横長矩形状のUSBプラグを設けた態様は、意匠全体の骨格を成すものであって、本体の握りやすさや操作の容易さ、携行所持のしやすさを重視する需要者に強い共通の印象を与えるものであるから、(共通点1)が、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
(共通点2)の、スライドスイッチの具体的態様は、使用時に目につきやすく、使用時の電源の入り切りの操作の容易さにも大きく影響を与えるものであって、需要者が強い関心を持って観察する部位に係るものであるから、(共通点2)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(共通点3)の、底面の具体的態様は、通常の使用時に需要者が特段注意して観察する部位に係るものではなく、とりわけUSBプラグの外形状は、規格化されたUSBプラグ(いわゆる「Mycro USB Type−B(2.0)」)の差し込み口の外形状に相当するものであって、この種物品分野においては、例を挙げるまでもなくごく一般に見られるものであり、需要者が特に注意を惹くものとはいえないから、(共通点3)が、両意匠の類否判断与える影響は小さい。

b 相違点の評価
(相違点1)の、表面の色彩の有無の相違については、本件登録意匠の表面の色彩は、従来から各種の物品で普通になされるこの種の色彩選択、及びこれに併せて生ずる視覚効果の域を出ないものであって、特に意匠上の特徴として大きく評価することができないから、(相違点1)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点2)の、底面の外縁のやや内側の略円形模様の具体的態様が明らかであるか否かの相違については、通常の使用時には需要者が特に着目する部位に係るものではないから、甲1意匠の当該部の形状が凹状面であるか否かに関わらず、(相違点2)が、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
(相違点3)の、USBプラグの内側の形状の相違については、通常の使用時には需要者が特に注意して観察することのない部位に係るものであって、当該部位を詳細に観察することで違いに気がつく程度の、細部における微細な相違であるから、(相違点3)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点4)の、USBプラグの上部の略小円形模様の有無の相違については、当該模様はごく小さいもので、さほど目立つものではなく、格別、需要者の注意を惹くものではないから、(相違点4)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

c 両意匠の形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を全体として総合的に観察した場合、(相違点1)から(相違点4)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、(共通点3)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(共通点1)及び(共通点2)は、両意匠の類否判断に与える影響が極めて大きく、これら共通点が相まって相違点を凌駕し、需要者に強い共通の印象を与え、両意匠に共通の美感を起こさせるものであるといえるから、両意匠の形状等は類似するものである。

(ウ)小括
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であって、その形状等においても類似するから、両意匠は、類似する。
したがって、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由には、理由がある。

第6 むすび

以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠と類似するから、同法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、本件登録意匠(登録第1691563号)は、意匠法48条1項1号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、意匠法52条で準用する特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。





審決日 2024-03-21 
出願番号 2021003765 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (B7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
吉田 英生
登録日 2021-07-13 
登録番号 1691563 
代理人 篠崎 史典 
代理人 永芳 太郎 

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