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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1413395 
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-10-03 
確定日 2024-06-25 
意匠に係る物品 太陽電池モジュール 
事件の表示 意願2022− 21509「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、令和4年(2022年)10月5日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年) 3月29日付け 拒絶理由通知書
同年 5月10日 意見書提出
同年 7月 5日付け 拒絶査定
同年 10月 3日 審判請求書提出

第2 本願の意匠の願書及び添付図面の記載

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「太陽電池モジュール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「正面図において、A−A’線及びB−B’線の範囲に赤色で塗りつぶしていない部分が意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用の意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)

著者の氏名 シャープ株式会社
表題 SHARP
掲載場所 住宅用 単結晶太陽電池モジュール2機種を発売|ニュースリリース:シャープ NU−259AM
※添付イメージ引用意匠
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2021年3月5日
検索日 2023年3月29日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://corporate.jp.sharp/news/210305-a.html
に表された太陽電池モジュール(NU−259AM)の意匠
※縦置きの場合、右及び上から2番目のセルとその周辺部分(横置きの場合、右及び下から2番目のセルとその周辺部分)

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
以下、本願意匠と引用意匠の対比において、引用意匠を左に90°回転して、本願意匠と対比する。

(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも太陽光発電に用いる「太陽電池モジュール」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)は、太陽光で発電を行うためのソーラーパネルのセルの一部であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分の位置は、正面の上端右隅(上から2行目で右から2列目のセル周辺)であるから、一致するが、大きさ及び範囲は、本願部分は、正面全体の約1/42の大きさ及び範囲であるのに対し、引用部分は、正面全体の約1/35の大きさ及び範囲であるから、一致しない。

(4)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。

ア 共通点
(ア)基本的構成態様
両部分は、中央に正面視略横長長方形のセル(以下「中央セル」という。)を配置し、その四辺及び四隅に僅かに隙間を空けて略矩形状のセル(以下「周辺セル」という。)を8個配置している点、
具体的態様として、
(イ)中央セル
中央セルは、表面に断面円形の略縦長針金状の配線材(以下「配線材」という。)を等間隔に9本形成し、上辺の両角を僅かに斜めに切り欠いている点、
(ウ)周辺セル
周辺セルのうち、上下のセルは、表面に配線材を等間隔に9本ずつ形成し、左右のセル及び四隅のセルは、表面に配線材を等間隔に3本ずつ形成している点、
また、下のセルは上辺の両角、左上と左中央のセルは下辺の右角、右上と右中央のセルは下辺の左角を、それぞれ僅かに斜めに切り欠いている点、
(エ)色彩
両部分は、中央セル及び周辺セルの表面を暗色とし、配線材及び隙間を明色に着色している点において、共通する。

イ 相違点
本願部分は、配線材のセルと接する両側の隙間に、長手方向に沿って透光性を有する傾斜面を形成しているのに対し、引用部分は、断面を表す図に傾斜面は見当たらない点において、相違する。

なお、本願部分は、部分拡大図(CD部分拡大図)により、図中において、配線材の両側を上下に4等分する区画線が3本確認できるが、基本6図やその他の拡大図において当該区画線を明確に視認することができないため、当該区画線は、本願部分の構成要素として認定しない。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能
両部分の用途及び機能は一致するから、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分の位置は一致する。一方、両部分の大きさ及び範囲は正面全体に対する比率において相違するがその差は僅かであり微弱なものといえるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は、類似する。

(4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価

ア 共通点の評価
この種ソーラーパネルの物品分野において、上辺の両角を僅かに斜めに切り欠き、表面に配線材を複数本形成したハーフカットセルを、縦横に整列して多数配置したものであって、列ごとに向きを反転させたものが、本願の出願前から公然知られているものであるから(例えば、特許庁意匠課が平成18年(2006年)3月10日に受け入れた株式会社ワイズギア発行の内国カタログ「MARINE ACCESSORIES CATALOG 2005」第288頁に所載の「太陽電池パネル」の意匠(公知資料番号HC18009175)。参考意匠、別紙第3参照)、色彩も含め、需要者が特に注目するものとはいえず、これらの共通点が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
相違点について、この種物品の分野においては、本願部分のように、配線材のセルと接する両側の隙間に、長手方向に沿って透光性を有する傾斜面を形成したものは、本願部分の他には見当たらず、正面視において配線材の両側の比較的目に付きやすい部位であることを考慮すると、引用部分との対比において需要者に異なる美感を起こさせるものといわざるを得ないから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(5)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能が同一で、位置、大きさ及び範囲が類似するが、形状等においては、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲









審決日 2024-06-12 
出願番号 2022021509 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 富永 亘
特許庁審判官 内藤 弘樹
清野 貴雄
登録日 2024-07-26 
登録番号 1777044 
代理人 鎌田 健司 
代理人 前田 健児 

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