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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E4
管理番号 1414237 
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-10-31 
確定日 2024-08-01 
意匠に係る物品 ギターブリッジ 
事件の表示 意願2022− 21396「ギターブリッジ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意匠法4条2項の規定の適用を受けようとし、パリ条約による優先権の主張(2022年8月18日、アメリカ合衆国)を伴う、令和4年(2022年)10月4日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和5年(2023年) 3月29日付け 拒絶理由通知
同年 6月27日 意見書の提出
同年 7月28日付け 拒絶査定
同年 10月31日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ギターブリッジ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
以下のウェブサイトに表されたギターの意匠

著者の氏名/名称:Gibson Garage(ギブソン・ガレージ)
表題 :Gibson Master Artisan Collection|Leo Scala Super’58s
掲載箇所 :動画再生後、4分38秒頃から5分02秒頃まで の間に表示される映像(添付の写真は4分48秒経過後のキャプチャ画像)
媒体のタイプ :[online]
掲載年月日 :2022年4月6日
検索日 :[2023年3月23日検索]
情報の情報源 :インターネット
情報のアドレス :
https://www.facebook.com/OfficialGibsonGarage/videos/gibson-master-artisan-collection-leo-scala-super-58s/564265834727710/

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
原審が拒絶の理由において認定した引用意匠の意匠に係る物品は「ギター」であるが、当審は、引用意匠が掲載されるウェブサイト(動画共有サイト:フェイスブック)の掲載箇所として示されるギターの映像において中央下端寄りに形成される「ギターブリッジ」の意匠を引用意匠として特定し、以下のとおり、本願意匠と対比するものとする。

(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共に「ギターブリッジ」であるから、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、対比のため、引用意匠の図の向きを、本願意匠の図の向き及び表記に合わせて認定する。

ア 共通点
(ア)全体は、平面視において、先端を下向きにした左右対称形の略凹四角形(楔形)の板体の上辺に沿ってやや小振りな略凹四角形の厚板を一体状に貼り付けたものであって、
(イ)頂角は、中央上側が約250°、中央下側が約80°、左右が約15°であって、
(ウ)厚板は、中央の高さが全体の約4割で、上辺の長さが全体の約8割で、
(エ)板体の中央及び左右寄りの厚板の近くに円孔を3個形成し、その円孔の間に小円孔を等間隔に3個ずつ形成し、厚板の中央及び左右に円孔を3個形成したものである点において共通する。

イ 相違点
色彩について、本願意匠は、線図のみで色彩は施されていないのに対し、引用意匠は、全体に暗い金属色を施している点において相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
共通点(ア)から共通点(エ)は、相まって、両意匠の基調を形成しており、需要者に強い共通感をもたらしているから、これら共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。

イ 相違点の評価
相違点は、引用意匠は金属製のギターブリッジとしてはごく普通に見られる色彩であり、格別、需要者の関心が高いものとはいえないことから、その差異のみによって、両意匠を別異のものとする程の大きな相違とはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるのに対し、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいから、両意匠の形状等は類似するものである。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であり、形状等においても類似するものであるから、本願意匠と引用意匠は類似するものである。

3 引用意匠が掲載されるウェブサイトのギターの映像を、本願の新規性喪失の例外規定の適用における「先の公開に基づく関係にある」映像と認めるか否かについて
当審は、引用意匠が掲載されるウェブサイトのギターの映像が、本願意匠について意匠法4条2項の規定の適用を受けるために本願の出願人(請求人のこと)が提出した「新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書」(以下「証明書」という。)に記載の公開の事実に照らし、新規性喪失の例外規定の適用における「先の公開に基づく関係にある」映像に該当し、証明書の省略が認められるものの対象となって、本願意匠の新規性の判断資料から除外されるべきものであるか否かについて、以下のとおり判断する。

(1)証明書に記載された意匠
ア 証明書について
本願について提出された証明書に記載の公開の事実について、下記の公開の事実に記載のウェブサイトのアドレスに掲載された「ギター」の意匠(以下「証明書記載意匠」という。)が、意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けるものであるか否かについて判断する。

[公開の事実]
(ア)公開日:2022年4月5日
(イ)公開場所:出願人のウェブサイト
(ウ)ウェブサイトのアドレス:https://www.gibson.com/en−US/News/gibson−launches−new−master−artisan−collection−series−leo−scala−super−58
(エ)公開者:ギブソン・ブランズ・インク
(オ)公開意匠:ギター(製品名:Leo Scala Super ‘58 Flying Vs)の意匠
(カ)公開意匠の創作者:レオ・スカーラ
(キ)意匠登録を受ける権利の承継について:証明書記載意匠の意匠登録を受ける権利は、公開日以前に、創作者(レオ・スカーラ)から公開者(ギブソン・ブランズ・インク)に譲渡され、ギブソン・ブランズ・インクが意匠登録を受ける権利を承継した。

イ 証明書記載意匠に対する意匠の新規性の喪失の例外の適用について
本願は、令和4年(2022年)10月4日の出願で、その出願人は、ギブソン・ブランズ・インクであり、証明書記載意匠は、前記アのとおり、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して意匠法3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠であって、本願がその該当するに至った日から1年以内に意匠登録を受ける権利を有する者がした意匠登録出願である事実が認められることから、証明書記載意匠は、意匠法4条2項による意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けることができるものである。

(2)証明書記載意匠と引用意匠が掲載されるウェブサイトのギターの映像との関係
証明書記載意匠と引用意匠が掲載されるウェブサイトのギターの映像の意匠に係る物品及び形状等についてであるが、意匠に係る物品は、いずれも「ギター」であるから、同一であり、また、形状等についても、証明書記載意匠と引用意匠が掲載されるウェブサイトのギターの映像(例えば、動画の冒頭の画像の左から2番目のギターの映像。)は、ほぼ一致するものであるから、同一である。
そして、引用意匠が掲載されるウェブサイトの公開日は、証明書記載意匠の公開日である2022年4月5日より後日の同年4月6日であり、本願の出願日は、その公開日から1年以内である。

(3)引用意匠に対する、本願における意匠の新規性の喪失の例外の適用の判断
同一人が、様々なウェブサイトやSNSを利用して商品等を広告掲載することは通常行われているところであるが(引用意匠が掲載されるウェブサイトの公開者(ギブソン・ガレージ)は、請求人が設立したブランド体験施設の名称であるから実質的に同一人のものといえる。)、審判請求書における、引用意匠は、証明書の「公開の事実」に紐付けられるものであるとの主張は、前記(2)のとおり、客観的に見て、合理性があるものと認められ、これを否定する理由はない。
そうすると、引用意匠は、証明書記載意匠と同一であり、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して意匠法3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠であり、かつ、本願がその該当するに至った日から1年以内に意匠登録を受ける権利を有する者がした意匠登録出願である事実が認められるから、引用意匠についても、証明書記載意匠と同様に、本願意匠の新規性の判断資料から除外されるべきものである。

4 小括
したがって、引用意匠は、本願意匠と類似するものであるが、引用意匠は意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けることができ、本願意匠の新規性の判断資料から除外されるので、引用意匠をもって、本願意匠が意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当することはない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとはいえないので、本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2024-07-18 
出願番号 2022021396 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 富永 亘
特許庁審判官 内藤 弘樹
山永 滋
登録日 2024-09-03 
登録番号 1779682 
代理人 神蔵 初夏子 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 片山 礼介 

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