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審決分類 |
審判 A1 審判 A1 |
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管理番号 | 1415344 |
総通号数 | 34 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-10-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-04-15 |
確定日 | 2024-09-24 |
意匠に係る物品 | 容器付き菓子 |
事件の表示 | 上記当事者間の意匠登録第1707466号「容器付き菓子」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件意匠登録第1707466号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、令和3年5月26日に意匠登録出願(意願2021−11162)されたものであって、審査を経て令和4年2月4日に意匠権の設定の登録がなされ、同年2月15日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 ・審判請求書 令和4年 4月15日付け提出 ・手続補正書 令和4年11月25日付け提出 ・手続補正書 令和4年12月28日付け提出 ・答弁書 令和5年 3月 6日付け提出 ・弁駁書 令和5年 6月13日付け提出 ・審理事項通知 令和5年10月 5日付け提出 ・口頭審理陳述要領書(被請求人) 令和5年11月 2日付け提出 ・口頭審理陳述要領書(請求人) 令和5年11月17日差出 ・口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)令和5年11月24日付け提出 ・口頭審理 令和5年11月30日 第2 請求人の申し立て及び理由の要点 請求人は、請求の趣旨を 「登録第1707466号意匠についての登録を無効とする 審判費用は被請求人の負担とする との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した(「手続補正書」及び「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。 1 「審判請求書」における主張 請求の理由 (1)手続の経緯 出願 令和3年5月26日 登録 令和4年2月15日 (2)意匠登録無効の理由の要点 本件登録意匠は、意匠登録出願前にインターネット上において公衆に利用可能となった商品広告写真に掲載された意匠である甲第1号証の意匠(以下「引用意匠1」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。仮にそうでなくても、当業者が引用意匠1に基づき本件登録意匠を創作することは容易であるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 また、本件登録意匠は、意匠登録出願前にインターネット上において公衆に利用可能となった商品広告写真に掲載された意匠である甲第2号証の意匠(以下「引用意匠2」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。仮にそうでなくても、当業者が引用意匠2に基づき本件登録意匠を創作することは容易であるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 したがって、本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第1号により、無効とすべきものである。 (3)請求人について 請求人は本件意匠に係る物品中の透明容器を製造して顧客たる菓子製造者に販売している。本件無効審判請求は何人も請求ができるものであるが、この度、被請求人は請求人の顧客らに対して侵害警告をし、請求人の経済的利益が実質的に害されているので、本件審判請求を行うものである。 (4)本件登録意匠の要旨 本件登録意匠の意匠に係る物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であると説明されている。本件登録意匠は、部分意匠として意匠登録を受けたものである。その形態は、「本件意匠図面」記載の図面の朱色で着色された部分以外の部分(以下「本件モノクロ部分」という。)のとおりであり、これを具体的に説明すれば次のとおりである。 本件モノクロ部分は、内部に菓子が複数層に積層されて収容された透明な容器の右側面、左側面及び平面における容器の内表面のうち、カットフルーツが配置された部分及び上部の蓋部分を除いた部分である。 本件モノクロ部分の形態は、以下のとおりである。 ア 基本的構成態様 a 密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている。 イ 具体的構成態様 b 透明缶状容器の内部に収容された菓子の積層数は4層であり、その底部及び中央部にはスポンジケーキ様の稠密性のない菓子が収容されている。 c スポンジケーキ様の稠密性のない菓子からなる各層の上面には、形態を特定しない4つのカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能となるよう、上下2層それぞれに配置されている。(正面図と背面図、左側面図と右側面図それぞれにおけるカットフルーツの配置位置が整合しないが、1層当たり4つのカットフルーツが存在すると思われる。なお、図面の不整合について無効理由として主張するものではない。) d 前記cの各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の間隔をもって配置されている。 e スポンジケーキ様の稠密性のない菓子の各層の間、及び上段のスポンジケーキ様の菓子の層と蓋との間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている。 f 透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている。 (5)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由1) 本件登録意匠は、甲1号証の意匠と類似し新規性がないので、無効とすべきものである。 ア 甲第1号証の意匠の要旨 引用意匠1(甲第1号証写真の最も左側にある意匠)は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であり、本件登録意匠に係る物品と同一の物品に関する意匠である。以下の形態を備えている(令和3年1月31日投稿により公衆に利用可能となったインスタグラム写真。甲1)。甲1には、正面より斜め上方から撮影した写真しか掲載されていないが、背面図、側面図及び平面図は正面図とほぼ同一にあらわれると理解される。透明容器の中央に表示されている女性の横顔様の図形部分は、模様ではないことは明らかであり、単なる商品ブランドであって専ら情報伝達のためのものであるので、物品の形状等とは評価できない。 (ア)基本的構成態様 1a 本件登録意匠と同じである。 (イ)具体的構成態様 1b 透明缶状容器の内部に収容された菓子の積層数は4層である。 1c 底部と中央部の各層には、4つのカットフルーツ(イチゴ)が、透明缶状容器の内周面に沿って、その切り口が視覚可能となるよう、上下2層それぞれに配置されている。 1d 前記1cの各カットフルーツ同士は、隙間なく配置されており、1つの層をなしている。 1e 各カットフルーツの層の間、及び上段のカットフルーツと蓋との間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている。 1f 本件登録意匠と同じである。 イ 本件登録意匠と引用意匠1の形態上の共通点及び相違点 (ア)共通点 ・蓋で密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている点(共通点(A))。 ・底部と中央部の各層において、形態を特定しない4つのカットフルーツが、透明缶状容器の内周面に沿って、その切り口が視覚可能となるよう、上下2層のそれぞれに配置されている点(共通点(B))。 ・フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子は隣り合わせとなるよう配置され、色彩にコントラストを生じさせている点(共通点(C))。 ・透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点(共通点(D))。 (イ)相違点 ・スポンジケーキ様の稠密性のない菓子の層の有無について、本件登録意匠の4層の積層菓子のうち、その底部及び中央部にはスポンジケーキ様の稠密性のない菓子が収容されているのに対し、引用意匠1の4層の菓子の積層菓子のうち、底部と中央部の各層はカットフルーツ(イチゴ)が隙間なく収容されており、スポンジケーキ様の稠密性のない菓子は収容されていない点(相違点(ア))。 ・カットフルーツ間の間隔について、本件登録意匠の各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の間隔をもって配置されているのに対し、引用意匠1の各カットフルーツ同士は、隙間なく配置されている点(相違点(イ))。 ウ 本件登録意匠と引用意匠1の類否(理由1) 両意匠に係る物品はいずれも「菓子」であり、デザートとして食用に供せられ、又は贈答に用いられるものである。これらの食用ないし贈答用の菓子の需要者は主に一般消費者であるところ、かかる物品の性質や用途に鑑みれば、看者は、通常、これを正面ないし斜め上方から見る機会が多く、全体的な缶状の容器の形状(特に外観に占める割合が大きい本体部周側面)及び容器の内部に菓子及びカットフルーツが収容され、当該カットフルーツの切り口ないし断面が視覚可能となった形状・模様に着目する(本件で提出する甲1号証の写真を見ても、缶状の透明な容器の形状や容器の内部に菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層状に収容された状態を表示するため、商品の全体を斜め上方から俯瞰的に撮影したものが圧倒的に多い。)と考えられる。 そうすると、前記共通点は、透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が2層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラストを通じて、あたかも缶状容器のパッケージのような模様をなすという外観を通じて統一感を感じさせる独特の形態であって、意匠全体における支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様であるというべきである。(なお、カットフルーツの具体的な形態は本件登録意匠の構成に含まれないので、菓子及びカットフルーツが缶状容器のパッケージのような模様をなす点で共通していれば、カットフルーツの形態の相違は問題にならないというべきである。) 他方、前記相違点は、スポンジケーキ様の稠密性のない菓子の層の有無、カットフルーツ間の間隔であるが、看者(需要者)は、透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラストを通じて、あたかも缶状容器のパッケージのような模様をなす点に着目するものであり、収容された菓子の稠密性の有無やカットフルーツ間の間隔に着目するものではない。ゆえに、これらは、両意匠を全体としてみれば、限られた部分、あるいは必ずしも看者(需要者)が着目しない細部における差異にすぎず、これらを総合しても、前記共通点を凌駕するほどの印象を看者に与えるものではない。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品・用途が一致し、形態においてもその美感に訴える意匠的効果としては、前記共通点が生じさせる効果が相違点のそれを凌駕し、意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるから、本件登録意匠は引用意匠1に類似するものというべきである。 (6)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由2) 本件登録意匠は、少なくとも当業者が甲第1号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきである。 ア 甲第3号証の意匠の要旨 引用意匠3(甲第3号証写真の1頁目にある意匠)は、透明な瓶状容器の内部に収容されてなる菓子であり、本件登録意匠に係る物品と同一の物品に関する意匠である。以下の形態を備えている(平成31年3月21日投稿により公衆に利用可能となったブログ記事。甲3)。甲3は、正面より斜め上方から撮影した写真しか掲載されていないが、背面図、側面図及び平面図は正面図とほぼ同一にあらわれると理解される。 (ア)基本的構成態様 3a 透明瓶状容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている。 (イ)具体的構成態様 3b 容器の内部に収容された菓子の積層数は6層であり、その底部及び中央部にはスポンジケーキ様の稠密性のない菓子が収容されている。 3c スポンジケーキ様の稠密性のない菓子からなる各層の上面には、形態を特定しない4つないし6つのカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能となるよう配置されている。 3d 前記3cの各カットフルーツ同士は、隙間なく配置されており、1つの層をなしている。 3e 各カットフルーツの層の上部には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている。 イ 引用意匠1に基づく創作容易性(理由2) (ア)スポンジケーキの収容について 甲第1号証(令和3年1月31日投稿により公衆に利用可能となったインスタグラム写真)、甲第3号証ないし甲第15号証(※当審注:以下甲17まで記載があり、「甲第17号証」の誤記と認められる。)に掲載された意匠は、証拠説明書記載のとおり、いずれも出願前公知の本件物品に関する意匠である(公衆に利用可能となった日につき、甲3:2019年3月21日、甲4:2021年1月25日、甲5:2018年5月23日、甲6:2016年4月4日、甲7:2016年3月30日、甲8:2015年3月13日、甲9:2021年1月14日、甲10:2020年5月23日、甲11:2020年8月31日、甲12:2020年8月30日、甲13:2020年7月16日、甲14:2019年5月14日、甲15:2019年10月18日、甲16:2016年4月9日、甲17:2018年4月16日)ところ、密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている構成は、引用意匠1及び引用意匠2等に見られるように、周知のもの又はありふれたものである。 また、引用意匠3にみられるように、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容することは広く知られており(甲3、甲5、甲16、甲17)、単なる寄せ集めに過ぎない。(引用意匠3は、本願意匠の「意匠に係る物品の説明記事」記載の「容器の底部および中央部にはスポンジケーキを層状に配置し、容器の内表面にはカットされたフルーツを配置し、それ以外の部分には生クリーム等を注入してなる菓子」そのものであるところ、その他、本件登録意匠において容器の内部に収容された菓子の態様には、引用意匠3とは異なる独自の創意工夫に基づく当業者であるパティシエ・菓子職人の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を認めるべき部分は何ら存在しない。) (イ)カットフルーツの間隔について カットフルーツの収容個数に応じて適宜それらの間隔を変更することは当然考慮されるものであり、カットフルーツの数の大小や間隔が看者の視覚に訴える色彩のコントラスト(透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラスト)を失わせることはなく、看者の美感に与える影響は少ない。かように、カットフルーツの間隔の有無は、連続する単位の数の単なる増減に当然に伴うものに過ぎず、意匠創作上のありふれた手法に過ぎない。 (ウ)結論 したがって、透明缶状(円筒状)容器に層状の菓子を収容した引用意匠1に基づき、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容し、かつカットフルーツ間に間隔を設けた本件登録意匠の構成は、当業者が容易に創作できたものというべきである。 よって、本件登録意匠は、当業者が甲第1号証に基づき意匠を容易に創作できた(創作容易性)というべきである。 (7)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由3) 本件登録意匠は、甲2号証の意匠と類似し新規性がないので、無効とすべきものである。 ア 甲第2号証の意匠の要旨 引用意匠2(甲第2号証写真の左から2番目にある意匠)は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であり、以下の形態を備えている(令和3年1月12日投稿により公衆に利用可能となったインスタグラム写真。甲2)。 (ア)基本的構成態様 2a 本件登録意匠と同じである。 (イ)具体的構成態様 2b 透明缶状容器の内部に収容された菓子の積層数は7層である。 2c 上から2番目の層には黒色の(チョコクランチ、ナッツなどの)稠密性のない菓子が収容され、下から2番目の層には粉砕したフルーツ様の稠密性のない菓子が収容されている。 2d 上から4番目の層には、4つないし6つのカットフルーツ(イチゴ)が、透明缶状容器の内周面に沿って、その切り口が視覚可能となるよう配置されている。 2e カットフルーツの層と粉砕したフルーツの層の間、及びカットフルーツの層と黒色の稠密性のない菓子の層の間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている。 2f 本件登録意匠と同じである。 イ 本件登録意匠と引用意匠2の形態上の共通点及び相違点 (ア)共通点 ・密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている点(共通点(A))。 ・形態を特定しない4つないし6つのカットフルーツが、透明缶状容器の内周面に沿って、その切り口が視覚可能となるよう配置されている点(共通点(B))。 ・フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子は隣り合わせとなるよう配置され、色彩にコントラストを生じさせている点(共通点(C))。 ・透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点(共通点(D))。 (イ)相違点 ・収容された菓子の種類と種類ごとの層の場所・数について、本件登録意匠の4層の積層菓子のうち、その底部及び中央部にはスポンジケーキ様の稠密性のない菓子が収容されているのに対し、引用意匠2の7層の積層菓子のうち、上から2番目の層には黒色の(チョコクランチ、ナッツなどの)稠密性のない菓子が収容され、スポンジケーキ様の菓子が収容された層はない点(相違点(ア))。 ・菓子の層の数について、本件登録意匠は6層であるのに対し、引用意匠2は6層ないし7層である点(相違点(イ))。 ウ 本件登録意匠と引用意匠2の類否(理由3) 両意匠に係る物品はいずれも「菓子」であり、デザートとして食用に供せられ、又は贈答に用いられるものである。これらの食用ないし贈答用の菓子の需要者は主に一般消費者であるところ、かかる物品の性質や用途に鑑みれば、看者は、通常、これを正面ないし斜め上方から見る機会が多く、全体的な缶状の容器の形状(特に外観に占める割合が大きい本体部周側面)及び容器の内部に菓子及びカットフルーツが収容され、当該カットフルーツの切り口ないし断面が視覚可能となった形状・模様に着目する(本件で提出する甲2号証の写真を見ても、缶状の透明な容器の形状や容器の内部に菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層状に収容された状態を表示するため、商品の全体を斜め上方から俯瞰的に撮影したものが圧倒的に多い。)と考えられる。 そうすると、前記共通点は、透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラストを通じて、あたかも缶状容器のパッケージのような模様をなすという外観を通じて統一感を感じさせる独特の形態であって、意匠全体における支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様であるというべきである。(なお、カットフルーツの具体的な形態は本件登録意匠の構成に含まれないから、菓子及びカットフルーツが缶状容器のパッケージのような模様をなす点で共通していれば、カットフルーツの形態の相違は問題にならないというべきである。) 他方、前記相違点は、菓子の層の数、スポンジケーキ様の菓子の層の有無、カットフルーツ間の間隔であるが、看者(需要者)は、透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラストを通じて、あたかも缶状容器のパッケージのような模様をなす点に着目するものであり、収容された菓子の種類やカットフルーツ間の間隔に着目するものではない。ゆえに、これらは、両意匠を全体としてみれば、限られた部分、あるいは必ずしも看者(需要者)が着目しない細部における差異にすぎず、これらを総合しても、前記共通点を凌駕するほどの印象を看者に与えるものではない。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品・用途が一致し、形態においてもその美感に訴える意匠的効果としては、前記共通点が生じさせる効果が相違点のそれを凌駕し、意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるから、本件登録意匠は引用意匠1に類似するものというべきである。 (8)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由4) 本件登録意匠は、少なくとも当業者が甲第2号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきである。 ア スポンジケーキの収容について 甲第2号証(令和3年1月12日投稿により公衆に利用可能となったインスタグラム写真)、甲第3号証ないし甲第15号証(※当審注:以下甲17まで記載があり、「甲第17号証」の誤記と認められる。)に掲載された意匠は、証拠説明書記載のとおり、いずれも出願前公知の本件物品に関する意匠である(公衆に利用可能となった日につき、甲3:2019年3月21日、甲4:2021年1月25日、甲5:2018年5月23日、甲6:2016年4月4日、甲7:2016年3月30日、甲8:2015年3月13日、甲9:2021年1月14日、甲10:2020年5月23日、甲11:2020年8月31日、甲12:2020年8月30日、甲13:2020年7月16日、甲14:2019年5月14日、甲15:2019年10月18日、甲16:2016年4月9日、甲17:2018年4月16日)ところ、密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている構成は、引用意匠1及び引用意匠2等に見られるように、周知のもの又はありふれたものである。 また、引用意匠3にみられるように、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容することは広く知られており(甲3、甲5、甲16、甲17)、単なる寄せ集めに過ぎない。(引用意匠3は、本願意匠の「意匠に係る物品の説明記事」記載の「容器の底部および中央部にはスポンジケーキを層状に配置し、容器の内表面にはカットされたフルーツを配置し、それ以外の部分には生クリーム等を注入してなる菓子」そのものであるところ、その他、本件登録意匠において容器の内部に収容された菓子の態様には、引用意匠3とは異なる独自の創意工夫に基づく当業者であるパティシエ・菓子職人の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を認めるべき部分は何ら存在しない。) イ カットフルーツの間隔について カットフルーツの収容個数に応じて適宜それらの間隔を変更することは当然考慮されるものであり、カットフルーツの数の大小や間隔が看者の視覚に訴える色彩のコントラスト(透明缶状容器の内部の菓子及びカットフルーツの切り口ないし断面が層をなし、フルーツと生クリーム様の稠密性ある菓子が隣り合わせとなるよう配置されることで生じる色彩のコントラスト)を失わせることはなく、看者の美感に与える影響は少ない。かように、カットフルーツの間隔の有無は、連続する単位の数の単なる増減に当然に伴うものに過ぎず、意匠創作上のありふれた手法に過ぎない。 ウ 結論 したがって、透明缶状(円筒状)容器に層状の菓子を収容した引用意匠2に基づき、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容し、かつカットフルーツ間に間隔を設けた本件登録意匠の構成は、当業者が容易に創作できたものというべきである。 よって、本件登録意匠は、当業者が甲第2号証に基づき意匠を容易に創作できた(創作容易性)というべきである。 (9)結論 以上から、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と類似し新規性がなく(意匠法第3条第1項第3号)、少なくとも甲第1号証の意匠に基づき容易に創作できた(創作容易性)(意匠法第3条第2項)ものであるから、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである(理由1、理由2)。 また、本件登録意匠は、甲第2号証の意匠と類似し新規性がなく(意匠法第3条第1項第3号)、少なくとも甲第2号証の意匠に基づき容易に創作できた(創作容易性)(意匠法第3条第2項)ものであるから、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである(理由3、理由4)。 2 弁駁書における主張 意見の内容 (1)本意見書は、令和5年3月6日付答弁書に主張されている事項に関して請求人の反論の概要を述べるものである。 (2)本件意匠の性質について 答弁書に対する反論を述べる前に、本件意匠を構成するものについて述べる。 ア 意匠は、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものであるところ、本件意匠に係る物品の説明によれば本件意匠の物品「容器付き菓子」は、透明容器の内部に菓子やフルーツなどを収容して内部のこれらの食材の状態を視認できる食料品といえる。甲1(引用意匠1)及び甲2(引用意匠2)はいずれも透明容器の内部にフルーツ菓子等の食材を収容して内部の食材の状態を視認できる食料品であり、それらの用途(容器内部に収容された食材を食すること)及び機能(食材を透明容器内に収容された状態で販売、保管できること、内部の食材の状態は透明容器を通して確認できること。)が共通するものであるので、本件意匠の物品と引用意匠1、2の物品は同一であることは明らかである。なお、本件意匠の物品は外部から視認できるスポンジケーキが収容されている容器付き菓子であるとしても、容器内に収納する食材の種類のありふれた選択、置き換えに過ぎず、物品の用途、機能に何ら影響を与えるものではなく、物品の同一性を否定することはできない。 イ 物品の意匠性に不可欠であって、その中心的な要素となる形状は、視覚を通じて視認できる物品のそれ自体の形状である。形状のない意匠はあり得ないが、模様のみの意匠又は色彩のみの意匠もあり得ないので、意匠において形状はもっとも基本的な構成要素である。本件意匠の形状は、写真で現わされているように正面、背面、両側面がいずれも透明の密閉容器であって、上面又は底面の一方に密閉状態を解除する蓋がついている形状である。内部に収容されている食材についてはそれらの形状は特定できないので(分解しなければ視認できないものは形状の構成要素とはなりえない。)形状を構成するものではなく、透明容器の円筒内部表面との接触面状態が視認できる程度の視覚性しかないので、透明容器内部に収容される食材によって現れるものは意匠の模様と見るべきものである。本件意匠は、その模様部分において「朱色で着色された部分以外」の部分意匠としたものである。 ウ 引用意匠1には透明円筒容器の外側に図形と思われるマークが付されており、又引用意匠2には「NOON」の文字(マーク)が付されている。しかし、一般消費者にとって、それらのマークは商標ないし成分表示等の専ら情報伝達のために付したものと理解するので引用意匠1、2の意匠を構成するものではない(被請求人が答弁書8頁において相違点vと主張しているのは誤りである。)。CUP NOODLE事件においては、包装用容器の表面に図案化した大きく表示された文字「CUP NOODLE」は、模様とは評価できないとして意匠を構成しないものと判断している(最判55年10月16日)。 本件意匠と引用意匠1、2とは、いずれも形状においては同一少なくとも酷似しており実質的には相違するところはない。透明容器部分において視認できる模様が異なるに過ぎない。公知の物品の形状に付された模様のみが異なる場合は、その模様が独自の美的創作性を有しているなど形状の同一性にもかかわらず意匠の要部と認定できる場合は極めてまれであろう。ありふれた模様の変更があっても類似(少なくとも創作容易)とみるべきである。本件意匠は、まさに引用意匠1、2との関係ではありふれた模様の変更に過ぎない事案である。 (3)類似又は創作非容易性を判断するうえで留意すべきこと 本件意匠と引用意匠1、2とは、透明容器を通して現れる具体的な模様は異なる面があるが、甲1乃至10に示される通り透明容器内にフルーツやスポンジケー類を層状に積層する容器付き菓子は多数知られている。それら食材は半分にカットしたイチゴ、スポンジケーキ、クリームが主たる要素となっている。それらの組み合せや容器内配置の選択は多数考えられるところ、いずれも単なる寄せ集めなどのありふれた手法に過ぎない。周知形状の(透明)包装容器を使用して、複数種類の食材を寄せ集め又は組み合わせて一つの独立した食品(物品)を作ることは人類が古くから行っていることである。お弁当、お節料理、詰合わせビスケット等などの物品にみられるように、容器に収容する食材の組み合わせは無数にあることを考慮すると、食材自体(例えば、チョコレートや和菓子、洋菓子など)又は容器自体(例えば包装箱、トレイなど)の形状の創作によって美観を起こさせるものである場合はともかく、周知形状の容器内に収容する食材について寄せ集め、置き換え、配置の変更などのありふれた手法によって外形的な模様が形成されている場合には、それらには創作性を認める余地はない。かような容器付き食品について安易に意匠権を付与することは、第三者の食品創作の自由を阻害する弊害が大きい。本件においても被請求人は、同一物品を販売する第三者に対して、透明容器に現れた模様が全く異なる物品にもかかわらず、本件意匠権侵害を主張(実施ライセンス料の請求)して営業を妨害した弊害が顕著である(被警告者は、零細の菓子店であるので実質的な反論をする能力はない。)。 本件意匠と引用意匠1、2との模様に係る相違は、容器内部に配置される食材の選択と配置等を変更したにことによる模様の変化であって、本件意匠に係る食材選択やそれらの配置の変化によって物品の美観を起こさせるまでにはなっていない。本件意匠の模様は引用意匠と対比しても特に美観がすぐれているわけでもなくむしろ模様としてもまとまりなく煩雑な感じを与えるだけである。かような観点から、本件審判においては、引用意匠1、2との細かな模様上の相違点があっても類似判断ないし創作非容易性判断においてはそれらを重視すべきではない。 (4)答弁書に対する反論 ア 引用意匠1について 被請求人は、「各層に配置されているカットフルーツは6つないし7つが配置されている」と見るべきという(4頁16〜19行目)。1号証の写真を見る限り、カットフルーツは中央のものとその両脇にそれぞれ半分ほど視認できる。背面も同様の状態と推認できるので、カットフルーツは合計4個、多くとも5個と思われる。カットフルーツの個数が多少異なっても、その模様の違いが美観に与える影響はなく、消費者も物品を混同するものとは思えない。類似性の判断には影響しない。かような細かい相違点はありふれた手法としての「連続する単位の数の増減」の典型例であるので非創作容易性の根拠とはなりえない。 被請求人は、白いものは、菓子ではなくミルク等である可能性があること、引用意匠1は缶ケーキではないことを主張するが誤りである。引用意匠1の模様を理解する場合においては、引用意匠ではないその隣に併せて撮影された物品を参照すべき関連性はない。「缶ケーキ」なる名称は甲1号証に撮影された引用意匠1を含む複数の製品(物品)に付せられたものであることは明らかであるのでそれを疑う根拠はない。「缶ケーキ」の用語と甲1の写真からは、円筒状の透明容器内にケーキなどが見える状態で収容されている商品であることが示されている。内部のケーキが流動性を持ったミルクであることを推認する根拠はないし、ミルクであれば模様が流動的になってしまうのでケーキといは(※当審注:「とは」の誤記と認められる。)言えなくなる。又、被請求人は、白いものは3層あるというが(5頁1〜2行目)、写真からは明らかではない。最下部に白いものが多少あったとしてもかような点は模様として印象が薄く相違点として類似性の判断に影響を与えるものではない。更に被請求人は、透明缶状容器の底面直径は5分の4程度の証拠はないというが、請求人はその具体的数値を正確に立証する意図はなく、容器の直径より円形底面は狭くなっていることを主張するために数値に言及したものであり、引用意匠1にはその事実は現れている。被請求人が主張するこれらの相違点はあまりにも細かすぎそれらを検討する意義が見いだせない。 本件意匠と引用意匠1との相違点は、審判請求書に述べた通り、相違点アと相違点イ(※当審注:「相違点(ア)」と「相違点(イ)」の誤記と認められる。以下同様。)の2点に尽きる。それらの相違点にかかわらず本件意匠が新規性を有しないことはすでに述べた通りである。被請求人が主張するそれ以外の相違点(イチゴの数、白いものの表面積等)は、仮にあるとしても実質的同一といえる程度のもの、又は、上記相違点ア、イの相違を前提とした相違に過ぎず、一般需要者の立場からみた美観としては実質的な相違ではない。なお、被請求人が提出した乙号証はいずれも被請求人が販売する商品に関するものであって、本件意匠の認定の資料として参照すべきものではない。 イ 創作非容易性について 被請求人は、本件意匠の創作非容易性を論じる際に、引用意匠3と本件意匠との対比を行っているが(答弁書16頁の4−4)、全く無駄な議論である。引用意匠3は、無効理由の主引用意匠ではなく引用意匠1、2に基づく創作容易性を根拠づける公知(周知)意匠であるので、単にその意匠に現れている構成要素の適用の可否、容易性等を議論すれば足りる。 引用意匠3は、透明容器内にショートケーキを収納したお菓子であり、ショートケーキといえばスポンジケーキに生クリームとイチゴを配置したお菓子である。引用意匠3には、容器内において層状にスポンジケーキ、イチゴ、生クリームを配置した模様が現れている。このようなスポンジケーキ、イチゴ、生クリームの3食材を組み合わせたものは、甲4号証(生クリームとイチゴを入れたケーキであるのでスポンジケーキは必須)、甲5号証(簡単に作る、生クリームイチゴボトルケーキ)の他、甲6号証、甲7号証、甲17号証などから明らかなように、円筒状透明容器内にショートケーキの材料であるスポンジケーキ、イチゴ、生クリームを層状に配置することは広く知られたものであり、容器付き菓子を製造・販売等する業界において通常の知識を有する者にとっては、透明容器の外面に現れる模様は、ありふれた手法によって生じる違いに過ぎない。イチゴの数や、イチゴの間の間隔の違いは、連続する単位の数の増減、イチゴ配置の変更ないしは構成比率の変更に伴う模様の変化に過ぎないので、本件意匠と引用意匠1、2との相違点における模様の相違は、ありふれた手法による改変であることは明らかである。 (5)まとめ よって、本件意匠は無効とすべきである。 3 「口頭陳述要領書」における主張 陳述の要領 被請求人の令和5年11月2日付口頭審理陳述要領書記載の陳述内容(以下、「被請求人陳述」という。頁を表示する場合は当該要領書に記載の頁を示す。)に対する請求人の反論(反論しないものは、請求人がすでに主張しているので繰り返さない。)は、以下のとおりである。 (1)被請求人陳述(2頁最終行〜3頁2行目)について 被請求人は引用意匠1の物品は、容器付き飲料であるかの如く主張する(流体の飲料の意味か?)が、容器内部にある食材は本件登録意匠と同じ赤色イチゴ状のものと生クリーム状のものと見られることは争えない。物品の同一性は明らかである。容器内に保管される食材が飲料物であろうと菓子であろうと透明容器の外観において視覚を通じて認識される模様、色彩が同じであれば、意匠の物品の特定においては区別する意味はない。 (2)被請求人陳述(3頁4行目〜4頁11行目)について 被請求人は、意匠において必須の要素が形状であることを否定しているが、そのような見解は意匠の本質に反するものであって誤りである。令和元年改正により形状がない画像意匠が保護対象となったが、これは物品の意匠とは別に外付けで立法されたものであることから、物品の意匠自体については従来通りの理解が維持されている(この点は争いのないことである。茶園成樹「意匠法第2版」19頁参照。)。 物品の形状が公知意匠と同じで模様のみが異なる物品意匠の類似性や創作性の評価に関しては、物品の本質的要素である形状において創作性がなければ、付された模様自体が独自に視覚を通じて美観を起こさせて登録要件を具備するものでなければ意匠登録はできない。 (3)被請求人陳述(4頁下から4行目〜5頁27行目)について 本件登録意匠の登録要件の有無に関する主張ではないし、独自の見解でもある。被請求人は、容器内配列に係る食材の組み合わせは多数あり、非類似の配置関係に係る意匠も多数あるので本件登録意匠を認めるべきであるというが、趣旨不明の主張である。そもそも登録要件のない意匠を認めるべきであるかのごとき主張である。本件意匠登録は、審査過程において適切な公知引用意匠の調査ができなかったために登録査定されたが、引用意匠1他に明らかなとおり、韓国においては適切な公知意匠が多くあり、透明容器付き菓子はすでに広く知られているところであり、本件意匠登録は、それらの公知意匠に依拠して意匠としての食材などの模様等を組み合わせて日本国に意匠出願したに過ぎない。 被請求人は、本件登録意匠の権利行使に積極的であることを表明しており、権利濫用的な権利行使を防止する意味でも、本件登録意匠を無効にする必要性は高い。 (4)被請求人陳述(5頁下から12行目〜6頁下から8行目まで)について 被請求人の「カットフルーツ」、「白いもの」及び「相違点について」に関する主張については、請求人はすでに審判請求書及び弁駁書において反論しているので繰り返し述べない。なお、被請求人は、商業的成功、グットデザイン賞に言及しているが主張自体失当である。 (5)被請求人陳述(6頁下から6行目〜7頁下から2行目まで)について 被請求人の主張については、請求人はすでに審判請求書及び弁駁書において実質的に反論しているので繰り返し述べない。なお被請求人は、ありふれた手法と認定される各相違点が複数あれば創作容易性が否定される(創作非容易性)と主張するが、独自の主張であって、完全に誤りである。相違点がありふれた手法や軽微な改変等などであると認定された以上、それらが複数あっても直ちに意匠の創作非容易性が肯定されるものではない。 4 請求人添付の証拠 甲第1号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 _kongsam) https://www.instagram.com/p/CKtMER_A9Fd/?utm_source=ig_web 甲第2号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 noon.for.dessert) https://www.instagram.com/p/CJ8WNeUF-S2/?utm_source=ig_web 甲第3号証 ブログ投稿写真(韓民国政府)https://blog.naver.com/hope_city/221493161258 甲第4号証 ブログ投稿写真(キム・エルメ) https://blog.naver.com/shinhwa51l7/222219215197 甲第5号証 ブログ投稿写真(ンガビ) https://blog.naver.com/hyeji969I/221281844628 甲第6号証 ブログ投稿写真(ココミ) https://m.blog.naver.com/PostView.naver?isHttps Redirect=true&blogId=poshlady&logNo=220673616820 甲第7号証 ブログ投稿写真(エクスカーション・アン・ベーキング・イェン) https://blog.naver.com/sopoongn/220669726981 甲第8号証 ブログ投稿写真(悲しいあくび (イチヒエ)) https://blog.naver.com/yichihye/220299138997 甲第9号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 gossinecake) https://www.instagram.com/p/CKAIIllHMsq/ 甲第10号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 gossinecake) https://www.instagram.com/p/CAHtWZun5gd/ 甲第11号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 blessroll_pyeongtaek) https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋 甲第12号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 blessroll_pyeongtaek) https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋 甲第13号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 blessroll_pyeongtaek) https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋 甲第14号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 blessroll_pyeongtaek) https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋 甲第15号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名 gossinecake) https://www.instagram.com/p/B3vnsqgHYzu/?igs hid=YmMyMTA2M2Y%3D 甲第16号証 YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 Cooking tree) https://www.youtube.com/watch?v=APktlc8hwA 甲第16号証の2 YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 Cooking tree) https://www.youtube.com/watch?v=APktlc8hwA 甲第17号証 YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 EUNGABI) https://www.youtube.com/watch?v=tMnxTJp0ww4 甲第17号証の2 YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 EUNGABI) https://www.youtube.com/watch?v=tMnxTJp0ww4 翻訳文一覧(証拠の翻訳文) 第3 被請求人の理由の要点 被請求人は、答弁書を提出し、「口頭審理陳述要領書」及び口頭審理陳述要領書(2)を提出し、おおむね以下のとおり主張した。 1 審判事件答弁書における主張 (1)答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 (2)本事件の背景 請求人は、審判請求書の6.請求の理由(3)請求人(本審決における第2の(3))についての項において 「請求人は本件意匠に係る物品中の透明容器を製造して顧客たる菓子製造者に販売している。この度、被請求人は請求人の顧客らに対して侵害警告をし、請求人の経済的利益が実質的に害されているので、本件審判請求を行うものである。」と主張している。 しかしながら、被請求人は、意匠権に基づき侵害行為を止めるよう警告をしたのであって、正当な権利行使をしている。この点について、誤解がなきよう、これまでの経緯と背景について概略を説明する。 請求人の株式会社BMターゲットは、被請求人の株式会社GAKUから透明容器缶を受注し、納品する取引関係にあった。いわば被請求人は、請求人にとっての顧客であった。 しかし、被請求人が創作したショートケーキ缶が、テレビやYouTubeなどの各種メディアで紹介されて全国的に話題になると、請求人は、自身のオンラインショップサイトに被請求人のショートケーキ缶の画像を無断で転載し、透明容器缶の利用例として宣伝広告を始めた。 このため、透明容器缶を購入した第三者が、被請求人のショートケーキ缶とそっくりな商品を製造販売するに至ってしまった。従って、被請求人は、請求人および被疑侵害品を製造販売する第三者に対し、意匠権及び不正競争防止法に基づいて、被疑侵害品の製造販売を中止するよう警告したのである。 このような被請求人の意匠権等に基づく警告に対し、第三者の多くは被疑侵害品の製造販売を中止したが、請求人は、自身のオンラインショップサイトに「話題のケーキ缶容器/豊富に取り揃えています」のタイトルとともに、ショートケーキ缶の模倣品の写真を掲載し続け、さらに以下の注意書きも掲載し続けた。 「株式会社GAKUからの営業妨害、インスタ投稿書込み、DMへ誹謗中傷されているお客禄へ。お困りのことと思います。安心してご商売を続けお客様は無視するか、BMターゲットの弁護士へ連絡するように返事してください相談は弊所まで」 上記の行為に対し、被請求人は、意匠権及び不正競争防止法に基づく権利行使は、正当な権利行使であり、業務妨害や誹謗中傷に該当しないこと、むしろ上記文面の掲載は「営業上の信用を害する虚偽の事実」の流布に該当し、不正競争防止法2条1項21号の不正競争行為に該当するため、即刻削除するように求めた。 しかし、請求人は、意匠登録出願中のみならず、意匠権が取得された後も、「無効審判請求を行うことを決定し、無効審決が確定した場合は、上記記載の問題が解決される」旨を主張した上で、自身のオンラインショップにおいて模倣品の掲載を続けている(乙第1号証の1)。 なお、上記注意書きは現在は削除されているが、過去のウェブサイトの状態を確認可能なインターネットアーカイブ(https://archive.org/web/web.php)によれば、少なくとも意匠登録後の2022年7月25日までは掲載され続けていた(乙第1号証の2)。 以上のように、被請求人は、意匠権に基づき正当な権利行使を行っているにも関わらず、請求人によって営業妨害、誹謗中傷などと流布されており、大変な迷惑を被っている。 (3)理由 (ア) 請求人の主張する無効理由について 請求人は、意匠登録第1707466号に係る登録意匠(以下、「本件登録意匠」という。)につき、以下の無効理由を主張しているが、以下に詳述するとおり、いずれも理由がない。 理由1:甲第1号証(引用意匠1)に基づく新規性違反 理由2:甲第1号証(引用意匠1)に基づく創作非容易性違反 理由3:甲第2号証(引用意匠2)に基づく新規性違反 理由4:甲第2号証(引用意匠2)に基づく創作非容易性違反 (イ)理由1(引用意匠1に基づく新規性違反)について (イ−1)請求人の認定について (イ−1−1)イチゴの数について 請求人は、引用意匠1につき、「背面図、側面図および平面図は正面図とほぼ同一にあらわれると理解される」と認定する一方で(審判請求書第5頁第9〜11行目)、具体的構成態様1cにおいて「底部と中央部の各層には、4つのカットフルーツ(イチゴ)が…(中略)…配置されている」と認定し、共通点(B)として挙げている。 しかしながら、引用意匠1では、正面図において3つのイチゴが隙間無く配置されているため、背面図も同一に表れるのであれば、各層に配置されるイチゴが4つであるとは考え難く、6つないし7つ程度のイチゴが配置されていると考えるのが妥当である。 (イ−1−2)白いものについて 請求人は、引用意匠1の具体的構成態様1eにおいて、「各カットフルーツの層の間、及び上段のカットフルーツと蓋との間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている」と認定している。 しかしながら、引用意匠1の右隣には、ピンク色の飲料と思われるものが充填された缶ジュースがあるため、引用意匠1の白いものも、菓子ではなくミルク等の飲料である可能性がある。 なお、甲第1号証には、「(※当審注:ハングル文字のため表示不可)(缶ケーキ)」とのハッシュタグが付されているが、引用意匠1を指しているものとは限らないし、甲第1号証の右から2番目の缶には、スプーンまたはフォークらしきものが付されているため、こちらの缶のみが「缶ケーキ」である可能性もある。 また、仮に引用意匠1の白いものが飲粒であったとしても、食品用の接着剤を使用すれば、透明缶状容器の内周面にイチゴを固定することは十分に可能である。 よって、引用意匠1における白いものが菓子であることは断定できない。 (イ−1−3)白いものの配置について 請求人は、引用意匠1の具体的構成態様1eにおいて、「各カットフルーツの層の間、及び上段のカットフルーツと蓋との間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている」と認定している。 しかしながら、引用意匠1では、下段のカットフルーツの層の下にも白いものが充填されており、白いものの層が3層に分かれて存在する点が正確に認定されていない。 (イ−1−4)透明缶状容器の底面について 請求人は、引用意匠1の具体的構成態様1fを「本件登録意匠と同じである」と認定し、「透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点」を共通点(D)として挙げている。しかしながら、引用意匠1の底面を確認する証拠が存在しない以上、上記認定は失当である。 (イ−1−5)透明缶状容器の模様について 請求人は、透明缶状容器に施された女性の横顔の図形部分につき、「単なる商品ブランドであって専ら情報伝達のためのものであるので、物品の形状等とは評価できない」と認定している。 しかしながら、意匠審査基準において、意匠を構成しないものとして規定されているのは、新間、書籍の文章部分や、成分表示、使用説明などを普通の態様で表した文字等のように、専ら情報伝達のためだけに使用されている文字であり、模様は含まれていない。 したがって、引用意匠1において、透明缶状容器に施された女性の横顔の図形は、模様であることは明らかであるから、意匠を構成するものとして取り扱われるべきである。 (イ−2)物品の類否について 本件登録意匠に係る物品は「容器付き菓子」であり、その使用目的、使用状態及び機能は以下のとおりである。 (a)使用目的:食べる目的 (b)使用状態:スプーン等で掬って食する使用状態 (c)機能:空腹を満たす機能 一方、引用意匠1の白いものが飲料の場合、引用意匠1に係る物品は「容器付き飲料」であるから、その使用目的、使用状態及び機能は以下のとおりである。 (a)使用目的:飲む目的 (b)使用状態:開口部に口を直接付けて飲む使用状態 (c)機能:喉を潤す機能 以上のとおり、引用意匠1の白いものが飲料の場合、両意匠に係る物品は、用途および機能に共通性が存在せず、互いに非類似の物品であるため、本件登録意匠は引用意匠1に類似しない。 (イ−3)形態の類否について 仮に、引用意匠1の白いものが「生クリーム様の稠密性のある菓子」であるとしても、以下に詳述するとおり、本件登録意匠の形態は、引用意匠1の形態に類似しない。 (イ−4)本件登録意匠の認定 (イ−4−1)図形の内側に着色部分が記載されているときの取り扱いについて 本件登録意匠のように、図形の内側に着色部分(意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す表現)が記載されているとき、図形中の着色部分によって表された位置に、形態を特定しない部分を有する意匠として取り扱われることは、特許庁のホームページで公開されている「物品等の部分について意匠登録を受けようとする場合のQ&A」の問7に明記されている。 また、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」との境界は、破線部や着色部分の外縁にあるものとして取り扱われることも明記されている(上記問7より)。 したがって、本件登録意匠は、着色部分によって表された位置に、形態を特定しないカットフルーツを有する意匠として取り扱われるべきものである。 また、本件登録意匠の「意匠登録を受けようとする部分」は、容器付き菓子において外周面に現れたカットフルーツ(朱色で着色された部分)を除いた部分であるから、着色部分の外縁より外側(外縁を含む)には生クリームとスポンジケーキ層が充填されているという形態が、本件登録意匠の「意匠登録を受けようとする部分」の内部形状といえる。 (イ−4−2)本件登録意匠の形態について 本件登録意匠は、容器付き菓子に係る部分意匠であって、主に以下の形態を備えている。 基本的構成態様について (形態A)蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が配置されている。 具体的構成態様について (形態B)透明缶状容器の内部における底部および中央部には、層状のスポンジケーキが視覚可能に配置されている。 (形態C)各スポンジケーキ層の上面には、形態を特定しない5つ程度のカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能に配置され、各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の左右間隔で隔てられ、かつ、各カットフルーツ層は、当該カットフルーツの高さの半分程度の上下間隔で隔てられている。 (形態D)上段のスポンジケーキ層と蓋との間、および下段のスポンジケーキ層と上段のスポンジケーキ層との間には生クリームが充填され、各カットフルーツの間にも生クリームが隙間なく充填されている。 (形態E)透明缶状容器の外周面に表れる生クリームの表面積は、カットフルーツの表面積の約2倍程度である(※画像中のピクセル数により算出した)。 (形態F)透明缶状容器の透明部分には、模様が施されていない。 (イ−5)甲第1号証(引用意匠1)の認定 引用意匠1は、容器付き菓子に係る意匠であって、以下の形態を備えている。 基本的構成態様について (形態lA)蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている。 具体的構成態様について (形態lB)透明缶状容器の外表面には、スポンジケーキが全く表れていない。 (形態1C)透明缶状容器の内部における底部および中央部には、6つないし7つ程度のイチゴが透明缶状容器の内周面に沿って左右を密着状態で隙間なく配置され、かつ、上段のイチゴ層と下段のイチゴ層とは近接または接触した状態で配置されている。 (形態1D)上段のイチゴ層と蓋との間、下段のイチゴ層と上段のイチゴ層との間、および下段のイチゴ層と缶底との間には白いものが充填され、左右に隣接するイチゴ間には白いものが充填されていない。 (形態lE)透明缶状容器の外表面に表れる白いものの表面積は、イチゴの表面積の約0.8倍程度である(※画像中のピクセル数により算出した)。 (形態1F)透明缶状容器の透明部分には、上下方向における略中央位置に女性の横顔の模様が施されている。 (イ−6)本件登録意匠と引用意匠1との対比 (イ−6−1)形態の共通点について 本件登録意匠と引用意匠1とは、基本的構成態様において、蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている形態において共通する。 (イ−6−2)形態の差異点について 一方、本件登録意匠と引用意匠1とを比較すると、以下の差異点(i)〜(v)が存在する。 (i)引用意匠1では、透明缶状容器の外表面にスポンジケーキが全く表れていないのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の内部における底部および中央部に層状のスポンジケーキが視覚可能に配置されている点。 (ii)引用意匠1では、透明缶状容器の内部における底部および中央部に6つないし7つ程度のイチゴが透明缶状容器の内周面に沿って左右を密着状態で隙間なく配置され、かつ、上段のイチゴ層と下段のイチゴ層とは近接した状態または接触した状態(※右端側のイチゴ)で配置されているのに対し、本件登録意匠では、各スポンジケーキ層の上面に形態を特定しない5つ程度のカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能にバランスよく配置され、各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の左右間隔で隔てられ、かつ、各カットフルーツ層は、当該カットフルーツの高さの半分程度の上下間隔で隔てられている点。 (iii)引用意匠1では、上段のイチゴ層と蓋との間、下段のイチゴ層と上段のイチゴ層との間、および下段のイチゴ層と缶底との間に白いものが充填され、左右に隣接するイチゴ間には白いものが充填されていないのに対し、本件登録意匠では、上段のスポンジケーキ層と蓋との間、および下段のスポンジケーキ層と上段のスポンジケーキ層との間に生クリームが充填され、各カットフルーツの間にも生クリームが隙間なく充填されている点。 (iv)引用意匠1では、透明瓶の外周面に表れる白いものの表面積が、イチゴの表面積に対して約0.8倍程度しかないのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の外周面に表れる生クリームの表面積が、カットフルーツの表面積の約2倍程度もある点。 (v)引用意匠1では、透明缶状容器の透明部分の上下方向における略中央位置に女性の横顔の模様が施されているのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の透明部分に模様が施されていない点。 (イ−7)本件登録意匠と引用意匠1との類否判断 (イ−7−1)共通点が類否判断に及ぼす影響 本件登録意匠と引用意匠1とは、基本的な構成態様において共通している。しかしながら、基本的構成態様における上記共通点は、容器付き菓子に関する物品分野において、ごく普通に見られるありふれた態様であり、取引者や需要者にとって、注意を惹く部分ではないため、意匠の要部にはなり得ないものといえる。 よって、上記共通点が意匠全体の類否判断に与える影響は、極めて小さいものであるか、あるいは捨象して評価すべきものである。 (イ−7−2)差異点が類否判断に及ぼす影響 一方、本件登録意匠や引用意匠1のような容器付き菓子に係る意匠においては、具体的構成態様における上記差異点(i)〜(v)が、販売される際や手に取った際に取引者や需要者の目に入ってくる部分であるから、最も観察されやすく注意を惹く部分であり、意匠の要部となり得るものである。 (イ−7−3)差異点(i)について 上記差異点(i)で指摘したスポンジケーキ層の有無は、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 そもそも本件登録意匠に係る物品は、「ショートケーキ缶」という商品名で販売されていることからもわかるとおり(乙第2号証)、ショートケーキをモチーフとして創作されたものである。 また、そのデザインコンセプトは、コロナ禍のため喫茶店内での飲食が困難になった折、ショートケーキを自動販売機で販売することができ、お土産としても手軽にカバンに入れて持ち歩くことも可能な商品開発を目指したところにある。 このため、本件登録意匠は、ショートケーキの三大構成要素である「フルーツ」、「スポンジケーキ」、「生クリーム」の3つを透明缶状容器の内部にバランスよく配置することで、缶の中にショートケーキを再現したという強いインパクトと視覚的印象を看者に与える。 これに対し、引用意匠1には、ショートケーキのベース部分とも言えるスポンジケーキが存在しない。 このため、需要者や取引者は、引用意匠1からショートケーキを連想することはなく、単にイチゴと白いものとが封入されたものという程度の視覚的印象を与えるに過ぎない。 よって、上記差異点(i)は、デザインコンセプトが異なることに加え、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものといえる。 (イ−7−4)差異点(ii)について 上記差異点(ii)で指摘したカットフルーツの配置についても、上記差異点(i)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、上下の各カットフルーツ層において、カットフルーツがバランスよく、適度な左右間隔を隔ててゆったりと配置されている。 また、上下のカットフルーツ層自体も、スポンジケーキ層の幅を確保する必要性も鑑みて、適度な上下間隔を隔てて余裕を持って配置されている。 このため、本件登録意匠では、カットフルーツのそれぞれが、パティシエの手によってショートケーキの上に一つずつ丁寧に載せられたフルーツのように、上品で落ち着いた佇まいの視覚的印象を与え、意匠全体として高級感を醸し出している。 これに対し、引用意匠1では、イチゴが左右方向に隣接するイチゴと互いに密着した状態で詰め込まれており、上下のイチゴ層も近接ないし接触した状態で配置されている。 このため、引用意匠1では、緊密状態のイチゴのそれぞれが、無造作かつ粗雑に詰め込まれたという視覚的印象を与え、意匠全体としても高級感が損なわれている。 よって、上記差異点(ii)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (イ−7−5)差異点(iii)、(iv)について 上記差異点(iii)、(iv)で指摘した生クリーム(白いもの)の配置・割合についても、上記差異点(i)、(ii)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、スポンジケーキ層によって仕切られた上下2段の空間内に、カットフルーツの表面積の約2倍程度となるように生クリームがたっぷりと充填されているとともに、各カットフルーツの間にも隙間なく充填されている。 このため、本件登録意匠では、一番大きな表面積を占める生クリームが、清潔で純粋かつ可愛らしい視覚的印象を与えるとともに、カットフルーツやスポンジケーキとの間で鮮やかなコントラストをなし、生クリーム好きな需要者をも魅了するインパクトのある外観を呈している。 これに対し、引用意匠1では、イチゴ層によって仕切られた上中下3段の空間内に白いものが充填されており、その表面積はイチゴの表面積にも及ばない約0.8倍程度しかない。 このため、引用意匠1では、白いものの層が3層に細かく分断されているため、ボリューム的に物足りなさを感じさせるとともに、一番大きな表面積を占めるイチゴの赤色が、白いものの印象を凌駕し、原色特有のどぎつい視覚的印象を与える。 よって、上記差異点(iii)、(iv)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (イ−7−6)差異点(v)について 上記差異点(v)で指摘した透明缶状容器に施された模様の有無についても、上記差異点(i)〜(iv)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、透明缶状容器の透明部分に模様が施されていないため、透明缶状容器の側面をどこから見ても、カットフルーツ、生クリームおよびスポンジケーキを遮るものがない。 このため、本件登録意匠は、純粋に透明缶状容器の中身だけで、需要者の目を楽しませているという視覚的印象を与える。 これに対し、引用意匠1では、透明缶状容器の透明部分の上下方向における略中央位置に女性の横顔が模様として施されている。 このため、当該模様が施された側面近傍を視認した場合、当該模様がカットフルーツや白いものと重なってしまうため、純粋に透明缶状容器の中身を鑑賞することができないという視覚的印象を与える。 よって、上記差異点(v)は、需要者や取引者に対して異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は無視できないものといえる。 (イ−7−7)小括 以上より、本件登録意匠と引用意匠1とを意匠全体として上記共通点および上記差異点(i)〜(v)を総合的に観察した場合、両意匠の形態における上記差異点(i)〜(v)は、上記共通点を逢かに凌駕し、需要者及び取引者に対して全く異なる美感を起こさせるものである。 よって、本件登録意匠は、引用意匠1に類似するものではないから、請求人の理由1には理由がない。 (ウ)理由3(引用意匠2に基づく新規性違反)について (ウ−1)請求人の認定について (ウ−1−1)イチゴの数について 請求人は、引用意匠2の具体的構成態様2dとして、「上から4番目の層には、4つないし6つのカットフルーツ(イチゴ)が…(中略)…配置されている」と認定し、共通点(B)として挙げている。 しかしながら、引用意匠2では、正面図において少なくとも3つのイチゴが隙間無く配置されているため、背面図も同一に表れると仮定すれば、各層に配置されるイチゴが4つであることは考え難く、6つないし7つ程度のイチゴが配置されていると考えるのが妥当である。 (ウ−1−2)白いものの配置について 請求人は、引用意匠2の具体的構成態様2eとして、「カットフルーツの層と粉砕したフルーツの層の間、及びカットフルーツの層と黒色の稠密性のない菓子の層との間には、生クリーム様の稠密性ある菓子が緊密に充填されている」と認定している。 しかしながら、引用意匠2では、黒色の稠密性のない菓子の層と蓋との間、および粉砕したフルーツと缶底面との間にも白いものが充填されており、白いものの層が4層も存在する点が正確に認定されていない。 (ウ−1−3)透明缶状容器の底面について 請求人は、引用意匠2の具体的構成態様2fを「本件登録意匠と同じである」と認定し、「透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点」を共通点(D)として挙げている。 しかしながら、引用意匠2の底面を正確に確認する証拠が存在しない以上、上記認定は失当である。 (ウ−2)甲第2号証(引用意匠2)の認定 引用意匠2は、容器付き菓子に係る意匠であって、以下の形態を備えている。基本的構成態様について (形態2A)蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている。具体的構成態様について (形態2B)透明缶状容器の外表面には、スポンジケーキが全く表れていない。 (形態2C)透明缶状容器の内部における中央部には、6つないし7つ程度のイチゴが透明缶状容器の内周面に沿って左右を密着状態で隙間なく配置され、かつ、底部近傍には粉砕されたイチゴと思われるものが層状に配置されている。 (形態2D)黒色の稠密性のない菓子の層と蓋との間(第1層)、カットフルーツの層と黒色の稠密性のない菓子の層との間(第3層)、カットフルーツの層と粉砕したフルーツの層の間(第5層)、および粉砕したフルーツと缶底面との間(第7層)には、白いものが充填され、左右に隣接するイチゴ間や粉砕されたイチゴ間には白いものが充填されていない。 (形態2E)少なくとも上から2番目の層には、黒色の稠密性のない菓子が配置されている。 (形態2F)透明缶状容器の透明部分には、上下方向における略中央位置に楕円形状のロゴマークが模様として施されている。 (ウ−3)本件登録意匠と引用意匠2との対比 (ウ−3−1)形態の共通点について 本件登録意匠と引用意匠2とは、基本的構成態様において、蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている形態において共通する。 (ウ−3−2)形態の差異点について 一方、本件登録意匠と引用意匠2とを比較すると、以下の差異点(i)〜(iv)が存在する。 (i)引用意匠2では、透明缶状容器の外表面にスポンジケーキが全く表れておらず、黒色の稠密性のない菓子が配置されているのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の内部における底部および中央部に層状のスポンジケーキが視覚可能に配置されており、黒色の菓子層は配置されていない点。 (ii)引用意匠2では、透明缶状容器の内部における中央部に6つないし7つ程度のイチゴが透明缶状容器の内周面に沿って密着状態で隙間なく乱雑に配置され、かつ、底部近傍には粉砕されたイチゴと思われるものが層状に配置されているのに対し、本件登録意匠では、各スポンジケーキ層の上面に形態を特定しない5つ程度のカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能にバランスよく丁寧に配置され、各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の左右間隔で隔てられている点。 (iii)引用意匠2では、黒色の稠密性のない莫子の層と蓋との間(第1層)、カットフルーツの層と黒色の稠密性のない菓子の層との間(第3層)、カットフルーツの層と粉砕したフルーツの層の間(第5層)、および粉砕したフルーツと缶底面との間(第7層)に白いものが充填され、左右に隣接するイチゴ間や粉砕されたイチゴ間には白いものが充填されていないのに対し、本件登録意匠では、上段のスポンジケーキ層と蓋との間、および下段のスポンジケーキ層と上段のスポンジケーキ層との間に生クリームが充填され、各カットフルーツの間にも生クリームが隙間なく充填されている点。 (iv)引用意匠2では、透明缶状容器の透明部分の上下方向における略中央位置に楕円形状のロゴマークが模様として施されているのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の透明部分に模様が施されていない点。 (ウ−4)本件登録意匠と引用意匠2との類否判断 (ウ−4−1)共通点が類否判断に及ぼす影響 本件登録意匠と引用意匠2とは、基本的な構成態様において共通している。しかしながら、基本的構成態様における上記共通点は、容器付き菓子に関する物品分野において、ごく普通に見られるありふれた態様であり、取引者や需要者にとって、注意を惹く部分ではないため、意匠の要部にはなり得ないものといえる。 よって、上記共通点が意匠全体の類否判断に与える影響は、極めて小さいものであるか、あるいは捨象して評価すべきものである。 (ウ−4−2)差異点が類否判断に及ぼす影響 一方、本件登録意匠や引用意匠2のような容器付き菓子に係る意匠においては、具体的構成態様における上記差異点(i)〜(iv)が、販売される際や手に取った際に取引者や需要者の目に入ってくる部分であるから、最も観察されやすく注意を惹く部分であり、意匠の要部となり得るものである。 (ウ−4−3)差異点(i)について 上記差異点(i)で指摘したスポンジケーキ層および黒色の菓子層の有無は、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 そもそも本件登録意匠に係る物品は、「ショートケーキ缶」という商品名で販売されていることからもわかるとおり(乙第2号証)、ショートケーキをモチーフとして創作されたものである。 また、そのデザインコンセプトは、コロナ禍のため喫茶店内での飲食が困難になった折、ショートケーキを自動販売機で販売することができ、お土産としても手軽にカバンに入れて持ち歩くことも可能な商品開発を目指したところにある。 このため、本件登録意匠は、ショートケーキの三大構成要素である「フルーツ」、「スポンジケーキ」、「生クリーム」の3つを透明缶状容器の内部にバランスよく配置することで、缶の中にショートケーキを再現したという強いインパクトと視覚的印象を看者に与える。 これに対し、引用意匠2には、ショートケーキのベース部分とも言えるスポンジケーキが存在していないばかりか、一般的なショートケーキには使用されていない黒色の菓子が層状に配置されている。 このため、需要者や取引者は、引用意匠2からショートケーキを連想することはなく、単にイチゴと白い菓子と黒い菓子が層状に封入されたものという程度の視覚的印象を与えるに過ぎない。 よって、上記差異点(i)は、デザインコンセプトが異なることに加え、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものといえる。 (ウ−4−4)差異点(ii)について 上記差異点(ii)で指摘したカットフルーツの配置についても、上記差異点(i)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、上下の各カットフルーツ層において、カットフルーツがバランスよく、遼度な左右間隔を隔ててゆったりと配置されている。 このため、本件登録意匠では、カットフルーツのそれぞれが、パティシエの手によってショートケーキの上に一つずつ丁寧に載せられたフルーツのように、上品で落ち着いた佇まいの視覚的印象を与え、意匠全体として高級感を醸し出している。 これに対し、引用意匠2では、イチゴが左右方向に隣接するイチゴと互いに密着し、かつ高さが不揃いの状態で乱雑に詰め込まれており、下層のイチゴ層に至っては、細かく粉砕された状態で配置されている。 このため、引用意匠2では、緊密状態のイチゴのそれぞれが、無造作かつ乱雑に詰め込まれたという視覚的印象を与えるとともに、粉砕されたイチゴ層は、カットフルーツの断面本来の美感を完全に消失している上、ぐちゃぐちゃとした汚らしい視覚的印象を与え、意匠全体としても高級感が損なわれている。 よって、上記差異点(ii)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (ウ−4−5)差異点(iii)について 上記差異点(iii)で指摘した生クリーム(白いもの)の配置についても、上記差異点(i)、(ii)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、スポンジケーキ層によって仕切られた上下2段の空間内に、生クリームがたっぷりと充填されているとともに、各カットフルーツの間にも隙間なく充填されている。 このため、本件登録意匠では、一番大きな表面積を占める生クリームが、清潔で純粋かつ可愛らしい視覚的印象を与えるとともに、カットフルーツやスポンジケーキとの間で鮮やかなコントラストをなし、生クリーム好きな需要者をも魅了するインパクトのある外観を呈している。 これに対し、引用意匠2では、白いものの層が4層に細かく分断されており、各層の厚さはイチゴの高さにも満たないほど薄く設定されている。 このため、白いものの層が需要者に与える外観上のインパクトに欠けており、ボリューム的にも物足りない視覚的印象を与える。 また、引用意匠2では、左右に隣接するイチゴ間や粉砕されたイチゴ間には白いものが充填されていないため、菓子の層が単調に積層されているに過ぎないという視覚的印象を与える。 よって、上記差異点(iii)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (ウ−4−6)差異点(iv)について 上記差異点(iv)で指摘した透明缶状容器に施された模様の有無についても、上記差異点(i)〜(iii)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に付き易く観察され易い差異点といえる。 具体的には、本件登録意匠では、透明缶状容器の透明部分に模様が施されていないため、透明缶状容器の側面をどこから見ても、カットフルーツ、生クリームおよびスポンジケーキを遮るものがない。 このため、本件登録意匠は、純粋に透明缶状容器の中身だけで、需要者の目を楽しませているという視覚的印象を与える。 これに対し、引用意匠2では、透明缶状容器の透明部分の上下方向における略中央位置に楕円形状のロゴマークが模様として施されている。 このため、当該模様が施された側面近傍を視認した場合、当該模様がカットフルーツや白いものに重なってしまうため、純粋に透明缶状容器の中身を鑑賞することができないという視覚的印象を与える。 よって、上記差異点(iv)は、需要者や取引者に対して異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は無視できないものといえる。 (ウ−4−7)小括 以上より、本件登録意匠と引用意匠2とを意匠全体として上記共通点および上記差異点(i)〜(iv)を総合的に観察した場合、両意匠の形態における上記差異点(i)〜(iv)は、上記共通点を逢かに凌駕し、需要者及び取引者に対して全く異なる美感を起こさせるものである。 よって、本件登録意匠は、引用意匠2に類似するものではないから、請求人の理由3には理由がない。 (エ)理由2、4(引用意匠1、2に基づく創作非容易性違反)について (エ−1)請求人の主張について 請求人は、「密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている構成は、引用意匠1及び引用意匠2等に見られるように、周知のもの又はありふれたものである」と主張している。 また、「引用意匠3にみられるように、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容することは広く知られており(甲3、甲5、甲16、甲17)、単なる寄せ集めに過ぎない」と主張している。 しかしながら、引用意匠3に係る甲第3号証には、請求人が「スポンジ層」と主張する食材は「(※当審注:ハングル文字のため表示不可)(パン)」であることが明記されており、事実認定に誤りがある。 また、後段の主張の根拠とされている甲第16号証は、現在アクセス不能な状態であり、真偽を確認することができない。 さらに、甲第17号証は、甲第5号証のウェブサイトにおいて、「(※当審注:ハングル文字のため表示不可)(詳しくは映像をご覧下さい!)」というコメントとともにリンクされた動画であるから、実質的に甲第5号証と同一の証拠と言える。 そうすると、「透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容すること」を示す証拠は実質的に一つしかないため、少なくとも「広く知られている」という請求人の主張は妥当ではない。 (エ−2)デザインコンセプトの相違について 仮に、「(※当審注:ハングル文字のため表示不可)(パン)」が「スポンジ層」に相当するものとしても、引用意匠3や甲5および甲17に係る意匠は、いずれも蓋のない瓶状容器に盛り付けた菓子であり、店内や家庭等のように、菓子を盛り付けたその場で食することを前提としたデザインとなっている。 これに対し、本件登録意匠は、昨今のコロナ禍で飲食店の営業が制限される中、ショートケーキをいつでも気軽にテイクアウトしてもらいたいという着想のもと、蓋で密封された透明缶状容器内にショートケーキを再現することで、テイクアウトのみならず自動販売機やオンラインショップ等における販売を可能とし、横向きや逆さにしても内容物の配置が崩れにくく、SNS等で「映える」ことを意識しながら創意工夫を施して創作したものである。 よって、本件登録意匠は、引用意匠3や甲5および甲17に係る引用意匠とは、デザインコンセプトが全く異なっており、これを具現化したデザインの外観・美観は、以下に詳述するとおり、全く異なるものとして現れている。 (エ−3)引用意匠3の認定 引用意匠3は、透明瓶入りの菓子に係る意匠であって、以下の形態を備えている。 基本的構成態様について (形態3A)蓋がない透明瓶の開口部からはみ出すように菓子が盛り付けられている。 具体的構成態様について (形態3B)透明瓶の内部における底部および中央部には、イチゴの高さの約3分の2程度の厚みのパンが層状に配置されている。 (形態3C)各パン層の上面には、6つないし7つ程度のイチゴが透明瓶の内周面に沿って密着状態で隙間なく緊密に配置されている。 (形態3D)各イチゴ層の上部にのみ、生クリームが充填されており、左右に隣接するイチゴ間には生クリームが全く充填されていない。 (形態3E)透明瓶の外周面に表れる生クリームの表面積は、イチゴの表面積に対して約0.4倍程度である(※画像中のピクセル数により算出した)。 (エ−4)本件登録意匠と引用意匠3との対比 本件登録意匠と引用意匠3とを比較すると、以下の差異点が存在する。 (i)引用意匠3では、透明瓶の開口部から複数のイチゴがはみ出した状態で盛り付けられているのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の開口部から生クリーム等がはみ出さない程度に、蓋の裏面すれすれに盛り付けられている点。 (ii)引用意匠3では、透明瓶の内部における底部および中央部には、イチゴの高さの約3分の2程度の厚みのパンが層状に配置されているのに対し、本件登録意匠では、イチゴの高さの約3分の1程度の厚みのスポンジケーキが層状に配置されている点。 (iii)引用意匠3では、各パン層の上面に6つないし7つ程度のイチゴが透明瓶の内周面に沿って密着状態で隙間なく配置され、緊密に詰め込まれているのに対し、本件登録意匠では、各スポンジケーキ層の上面に形態を特定しない5つ程度のカットフルーツが透明缶状容器の内周面に沿って視覚可能にバランスよく配置され、各カットフルーツ同士は、当該カットフルーツの横幅の半分程度の左右間隔で隔ててゆったりと配置されているため、上品で落ち着いた佇まいの視覚的印象を与え、意匠全体として高級感を醸し出している点。 (iv)引用意匠3では、各イチゴ層の上部にのみ、パン層と同程度かそれ以下の厚さで生クリームが無造作に入れられており、各イチゴの間には生クリームが配置されていないのに対し、本件登録意匠では、各スポンジケーキ層の間、および上段のスポンジケーキ層と蓋との間に、スポンジケーキ層の厚さの約3〜4倍程度の厚さで生クリームが緊密に充填されるとともに、各カットフルーツの間にも隙間なく生クリームが充填されており、カットフルーツやスポンジケーキとの間で鮮やかなコントラストをなしている点。 (v)引用意匠3では、透明瓶の外周面に表れる生クリームの表面積が、イチゴの表面積に対して約0.4倍程度しかなく、生クリーム好きな需要者には物足りない視覚的印象を与えるのに対し、本件登録意匠では、透明缶状容器の外周面に表れる生クリームの表面積が、カットフルーツの表面積の約2倍程度もあるため、清潔で純粋かつ可愛らしい視覚的印象を与えるとともに、カットフルーツやスポンジケーキとの間で鮮やかなコントラストをなし、生クリーム好きな需要者を魅了する外観を呈している点。 (エ−5)創作非容易性について 上記差異点(i)〜(v)に鑑みて、本件登録意匠の創作非容易性について検討する。 まず、上述したとおり、甲5および甲17のみを証拠として、「透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容すること」は「広く知られている」とする請求人の主張は根拠が薄弱である。仮に「広く知られている」としても、この種の容器付き菓子は、容器内部における具材(スポンジケーキ、カットフルーツ、生クリーム)の位置・大きさ・範囲という様々な構成要素が組み合わされて創作されるものである。 そして、その組み合わせ態様については、造形上、多様な創意工夫の余地があるところであって、構成各部の態様を具体的に決定し、構成各部をどのように関連づけ、配置し、それらの結合により、全体の形態についてどのように具体化するかの選択および創意工夫は多様に存在するものであるから、その組み合わせの具体的な構成態様が、意匠全体の印象に大きな影響を与え、需要者の関心を抱かせ、注意を惹くところと言える。 特に、本件登録意匠は透明缶状容器内という、製造上および衛生上の問題を解決しつつ、さらにデザイン上も厳しい制約条件の下で、如何にして需要者の購買意欲をそそる美観(綺麗、かわいい、美味しそう)を呈することができるか、という難題を解決して商品化された意匠である。 そうすると、上記差異点(i)〜(v)に係る本件登録意匠の具体的な構成態様は、引用意匠1〜3等に表されているものではなく、ましてや、この種の物品分野において従来見られないものであるから、新規で独創性のある着想によるものと言うべきである。 なお、請求人は、「スポンジケーキの収容について」は「単なる寄せ集め」であると主張し、「カットフルーツの間隔について」は「連続する単位の数の単なる増減に当然に伴うものに過ぎず、意匠創作上のありふれた手法に過ぎない」と主張する。 しかしながら、上記主張は、容易(寄せ集め)の上に、容易(単位数の増減)を重ねた複数のステップを経るものであり、創作容易の範疇を大きく逸脱するものである。 また、引用意匠1〜3を寄せ集め、カットフルーツの単位数の増減させたとしても、直ちに本件登録意匠に想到するものではなく、別途、上記差異点(i)〜(v)に係る特徴的な創作を施さなければ、本件登録意匠に到底至るものではない。 よって、本件登録意匠は、当業者であっても引用意匠1または引用意匠2に基づいて容易に創作できた意匠ではないから、請求人の理由2、4には理由がない。 (エ−6)本件登録意匠の創作非容易性を裏付ける商業的成功について 本件登録意匠に係る商業的成功については、特許庁の審査における令和3年10月11日提出の意見書内「2.意見の内容−(7)本願意匠の創作非容易性を裏付ける商業的成功について」の項において、甲第1号証〜甲第36号証を提出して詳述しているところである。よって、ここでは繰り返しの主張を最小限にとどめ、その後に受賞したグッドデザイン賞に関する証拠を提出する。 すなわち、本件登録意匠に係る商品は、「ショートケーキ缶」として、発売以来、全国放送のテレビ、新聞、雑誌、SNS、ウェブサイトなど、様々なメディアで紹介され、商業的な成功を収めている。そのほんの一部を例として以下に挙げる。 (エ−6−1)テレビでの紹介 ・テレビ朝日「中居正広のニュースな会」(2021年8月28日放送)では、「爆売れしそうな美味グルメBEST5」の第1位に選ばれ、「断面映えのケーキ缶」として紹介されている(乙第3号証)。 ・フジテレビ「めざましテレビ」(2021年8月17日放送)では、「進化形!萌え断スイーツ」として紹介されている(乙第4号証)。 ・フジテレビ「ノンストップ!」(2021年6月28日放送)では、ショートケーキ缶がBUZZっているものとして紹介されている(乙第5号証)。 ・日本テレビ「スッキリ」(2021年7月1日放送)では、「SNSで話題!ショートケーキ缶」として紹介されている(乙第6号証)。 ・日本テレビ「ヒルナンデス」(2021年9月23日放送)では、「SNSで超話題の缶スイーツ」として紹介されている(乙第7号証)。 ・TBS「ラヴィット!」(2021年7月9日放送)では、ショートケーキ缶が試食されている(乙第8号証)。 このように地上波の全国放送を含む様々なテレビ番組において取り上げられている事実は、本件登録意匠が全国的にみても従来にはない斬新なデザインであることを強く推認できる証拠といえる。 (エ−6−2) YouTubeでの紹介 また、本件登録意匠に係る「ショートケーキ缶」は、超人気YouTuberによっても紹介されており、そのほんの一部を例として以下に挙げる。 ・「HikakinTV」では、「ツィッターで20万近いいいね獲得してたんですよね超話題になって」、「考えた学さん天才ですよ」、「いや!イチゴもキレイに断面がさ見えてるし」、「ケーキのさスポンジもこれ見えてんの!おいしそうに!」「これインスタ映え〜だろ!これ完全に映え〜!」等とコメントされている(乙第9号証)。 ・「はじめしゃちょー(hajime)」では、ショートケーキ缶を試食しながら紹介している(乙第10号証)。 ・「ヴァンゆんチャンネル(VANYUN)」では、「天才的な発明品!!」、「萌え断=キュンとする断面」等のコメントとともに紹介されている(乙第11号証)。 このように映像のみで再生回数を稼ぐことを要求されるYouTubeにおいて多数紹介されている事実は、本件登録意匠が視聴者の興味を惹きつける斬新な外観であり、映え度や萌え感の高いデザインであることを示す証左であるものと思料する。 (エ−6−3)グッドデザイン賞の受賞 さらに、上述した各種メディアでの紹介に加え、本件登録意匠に係る「ショートケーキ缶」は、「透明の容器から見える本物のケーキの断面の美しさ」等がデザインのポイントとして評価され、2022年度のグッドデザイン賞も受賞している(乙第12号証)。 また、審査委員からも以下のように、斬新でかつ機能的にも優れたデザインが評価されている。 「これはケーキの再発明とも言えるデザイン。持ち運べ、美しく、しかもいつでも購入可能というケーキの概念を変えるデザインであるという点に評価が集まった。透明の容器の開発からそのPRまでが一貫しており、まさに「ケーキをポケットに」というコンセプトの勝利かと思う。もらった人たちはもちろん笑顔になると思うが、自販機を経由することで買う人たちの笑顔も想像できる。昨今、見栄えのするスイーツは数あれど、その中でも群を抜いて、斬新でかつ機能的にも優れたデザインに称賛を贈りたい。」 (エ−6−4)小括 以上のとおり、上述した各メディアでは、単に美味しいという味覚に関するものよりも、外観デザインの斬新性や需要者の嗜好性が高く評価されている。 よって、本件登録意匠が従来商品とは一線を画する斬新なデザインであり、容易に創作できたものでないことを強く肯定的に評価しうる事実であり、その結果、グッドデザイン賞にまで至っているものと思料する。 (オ)結論 以上のとおり、本件登録意匠は、甲第1号証および甲第2号証に係る各意匠と類似せず新規性があるから、請求人が主張する無効理由1、3には理由がない。 また、本件登録意匠は、甲第1号証または甲第2号証に係る各意匠に基づいて容易に創作できたものでもないから、請求人が主張する無効理由2、4には理由がない。 よって、本件無効審判の請求は成り立たないものである。 2 口頭審理陳述要領書における主張 陳述の要領 令和4年4月15日付審判請求書に対する反論は、令和5年3月6日付答弁書にて述べたとおりである。よって、本口頭審理陳述要領書では、主として、令和5年6月13日付弁駁書の主張に対して、以下のとおり反論する。 (1)意見の内容(2)のアについて 請求人は、本件登録意匠に係る物品「容器付き菓子」は「透明容器の内部に菓子やフルーツなどを収容して内部のこれらの食材の状態を視認できる食料晶」であると言い換えた上で用途・機能を認定し、引用意匠1に係る物品との同一性を主張している。 しかしながら、本件登録意匠に係る物品は「容器付き菓子」であって、「透明な容器の内部に収容されてなる菓子」である(本件登録意匠の【意匠に係る物品の説明】より)。 よって、令和5年3月6日付答弁書の理由(2−2)(本審決において第3の1(3)(イ−2))で主張したとおり、引用意匠1に係る物品が「容器付き飲料」の場合、本件登録意匠に係る物品「容器付き菓子」とは非類似の物品といえる。 なお、引用意匠2については、そもそも物品の同一性を争っていない。 (2)意見の内容(2)のイについて 請求人は、「意匠において形状はもっとも基本的な構成要素である」と主張しているが、根拠が不明である。 現に意匠法上、形状、模様、色彩には特に軽重の差は規定されていない。 また、意匠審査基準においては、意匠の構成要素間の関係については、以下のとおり、色彩は形状及び模様よりも類否判断に与える影響が小さいとされているものの、形状及び模様が類否判断に与える影響の大きさについては、一概には言えず、先行意匠群との関係で定まる旨が明記されている。 「■意匠審査基準第III部第2章第1節新規性第10頁 (4)意匠の構成要素間の関係 意匠の構成要素である形状、模様、色彩のうち、どの構成要素が類否判断に大きな影響を与えるかは、一概には言えず、先行する公知意匠群との関係において、最も特徴が大きく注意を引くものが類否判断に与える影響が大きいといえる。 しかしながら、形状及び模様は、人知に基づく創作を必要とする場合が多いのに比し、色彩はそれが模様を構成しない限り、創作というよりも選択と形容するのが適当であって、色彩のみを変更した多数の製品バリエーションが通常用意されていることから、色彩は形状及び模様よりも注意を引きにくいといえる。したがって、一般的に色彩は、形状及び模様よりも類否判断に与える影響が小さい。」 なお、請求人は、本件登録意匠に係る形状は、「正面、背面、両側面がいずれも透明の密閉容器であって、上面又は底面の一方に密閉状態を解除する蓋がついている形状」であり、「内部に収容されている食材についてはそれらの形状は特定できないので(分解しなければ視認できないものは形状の構成要素とはなりえない。)形状を構成するものではなく」と主張し、「透明容器内部に収容される食材によって現れるもの」が、本件登録意匠に係る模様と主張する。 しかしながら、本件登録意匠に係る物品の説明や各図面を参酌すれば、スポンジケーキが層状に配置された形状を備えており、容器の内表面にはカットされたフルーツが配置され、それ以外の部分には、着色部分の外縁形状に沿って生クリーム等が充填されているという形状が特定される。 また、着色部分以外はグレースケール画像ではあるものの、グレーの濃淡によって少なくとも色調が特定される。 よって、内部に収容されている菓子からも模様のみならず、形状や色調を特定でき、意匠を構成することは明らかである。 一方、仮に、本件登録意匠に係る形状が、請求人が主張するように「正面、背面、両側面がいずれも透明の密閉容器であって、上面又は底面の一方に密閉状態を解除する蓋がついている形状」であるとするならば、当該形状は本件登録意匠に係る物品分野においてありふれたものであるから、上記意匠審査基準によると、注意を引きにくく、類否判断に与える影響は小さいということになる。 そうすると、本件登録意匠においては、必然的に、もう一方の構成要素である模様の方が、最も特徴が大きく注意を引くものであり、類否判断に与える影響は大きいということになる。 すなわち、請求人が、本件登録意匠の模様と見るべきものであると主張する「透明容器内部に収容される食材によって現れるもの」が、類否判断に与える影響は大きいということに帰結する。 (3)意見の内容(2)のウについて 請求人は、引用意匠1、2に付されたマークは、「商標ないし成分表示等の専ら情報伝達のために付したものと理解するので引用意匠1、2の意匠を構成するものではない」旨を主張する。 しかしながら、請求人が引用したカップヌードル事件は、「文字」が模様として認められるか否かを判示したものに過ぎず、「文字」以外の「図形」について判示したものではない。 よって、仮に、引用意匠1の文字部分(「Cafe」)や、引用意匠2の文字部分(「noon」)が意匠を構成しないものとしても、引用意匠1の図形部分(女性の横顔イラスト)や、引用意匠2の図形部分(白色楕円形の内部に桃色楕円形)は模様であるから、令和5年3月6日付答弁書にて主張したとおり、各図形部分は意匠を構成するものとして取り扱われるべきものである。 また、請求人は「公知の物品の形状に付された模様のみが異なる場合は、その模様が独自の美的創作性を有しているなど形状の同一性にもかかわらず意匠の要部と認定できる場合は極めてまれであろう。」旨を主張する。 しかしながら、「〜であろう」という語尾からも明らかなとおり、上記主張は単なる憶測に過ぎず、当該憶測に基づく「ありふれた模様の変更があっても類似(少なくとも創作容易)とみるべきである。」旨の主張にも、何ら根拠や理由がない。 むしろ、本件登録意匠は、その商業的成功や世間一般からの高い評価、およびグッドデザイン賞の受賞などの実状に鑑みれば(令和5年3月6日付答弁書の理由(4−6)参照)、請求人がいうところの「独自の美的創作性」を有しており、「極めてまれ」な意匠といえる。 (4)意見の内容(3)について 請求人は、「それら(食材)の組み合せや容器内配置の選択は多数考えられる」および「容器に収容する食材の組み合わせは無数にある」と主張する一方で、「容器付き食品について安易に意匠権を付与することは、第三者の食品創作の自由を阻害する弊害が大きい」旨を主張しているが、完全に矛盾する。 食材の組み合わせが無数にあるのであれば、本件登録意匠に係る、スポンジケーキ+カットフルーツ+生クリームという組み合わせ以外の組み合わせも無数に存在する。 また、容器内配置の選択も多数考えられるのであれば、スポンジケーキ+カットフルーツ+生クリームの組み合わせを使用したとしても、本件登録意匠と同一又は類似の意匠を構成しない配置は多数考えられるはずである。 よって、「容器付き菓子」について意匠権を付与しても「第三者の食品創作の自由を阻害する」ことにはならないし、そもそも、特許庁の審査官が「安易に」意匠権を付与するはずもない。 それどころか、「容器付き菓子」について意匠権を付与しないものとすると、「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与する」という意匠法の法目的を没却することになる。 また、請求人は「被請求人は、同一物品を販売する第三者に対して、透明容器に現れた模様が全く異なる物品にもかかわらず、本件意匠権侵害を主張して営業を妨害した弊害が顕著である。」旨を主張している。 しかしながら、「模様が全く異なる」というのは、請求人の主観的な意見に過ぎず、実際に意匠権の侵害が成立する場合は当然に「営業を妨害」することには当たらず、正当な権利行使といえる。 一方、令和5年3月6日付答弁書の7(本事件の背景)(本審決において第3の1(2))で詳述したとおり、請求人は、未だに「株式会社GAKUからの業務妨害、インスタ投稿書込み、DMへ誹謗中傷されているお客様へ。お困りのことと思います。安心してご商売を続け、お客様は無視するか、BMターゲットの弁護士へ連絡するように返事してください。」と、自身のホームページに掲げている。 すなわち、請求人は、被疑侵害品の製造・販売を続けること、および被請求人からの警告を無視することを被疑侵害者に教唆及び幣助しており、これらの行為自体が、被請求人に対する営業妨害に他ならない。 (5)意見の内容(4)について (5−1)[1](※当審注:「丸囲い数字1」について表示不可のため[1]とする。本審決において第2の2(4)ア)について (5−1−1)カットフルーツについて 請求人は、「カットフルーツの個数が多少異なっても、その模様の違いが美観に与える影響はなく、消費者も物品を混同するものとは思えない。類似性の判断には影響しない。」旨を主張する。 しかしながら、上記(2)で述べたとおり、請求人が、本件登録意匠の模様と見るべきものであると主張する「透明容器内部に収容される食材によって現れるもの」が、類否判断に与える影響が大きいのであるから、「模様の違いが美観に与える影響」は当然に存在し、「類似性の判断には影響しない」はずがない。 (5−1−2)白いものについて 請求人は、「「缶ケーキ」なる名称は甲1号証に撮影された引用意匠1を含む複数の製品(物品)に付せられたものであることは明らかであるのでそれを疑う根拠はない。」と主張する。 しかしながら、そもそも引用意匠1には、透明缶状容器の外表面に「スポンジケーキ」が一切現れておらず、内容物はイチゴと白いものだけであるため、これを「缶ケーキ」と呼ぶには無理がある。 仮に、甲第1号証における4つの缶全てに対して「#(※ハングル文字のため表示不可)(缶ケーキ)」とのハッシュタグが付されたのであれば、甲第1号証の左から2番目にある、ピンク色の飲料が充填された缶ジュースも「缶ケーキ」の一種ということになる。そうすると、引用意匠1についても、製品の名称が「缶ケーキ」であったとしても、実際には白色の飲料が充填された缶ジュースである可能性は否定できない。 さらに、甲第1号証の右から2番目の缶には、スプーンまたはフォークらしきものが付されているため、普通に考えると、こちらの缶のみが、ケーキが収容された本当の意味での「缶ケーキ」である可能性が高い。 よって、引用意匠1における白いものは、菓子ではなく飲料である可能性も十分に考えられる。 (5−1−3)相違点について 請求人は、「本件意匠と引用意匠1との相違点は、審判請求書に述べた通り、相違点アと相違点イの2点に尽きる。(中略)…被請求人が主張するそれ以外の相違点(イチゴの数、白いものの表面積等)は、仮にあるとしても実質的同一といえる程度のもの、または、上記相違点ア、イの相違を前提とした相違に過ぎず、一般需要者の立場からみた美観としては実質的な相違ではない。」と主張する。 しかしながら、相違点の認定及び評価については、令和5年3月6日付答弁書で述べたとおりであることに加え、「一般需要者の立場からみた美観」が斬新かつ独創的で優れていたからこそ、本件登録意匠に係る商品「ショートケーキ缶」が、商業的な成功を納めているのであって、現実には請求人の主張と真逆の結果となっている。 さらに、令和5年3月6日付答弁書の理由(4−6−3)(本審決において第3の1(3)(エ)(エ−6−3))でも述べたとおり、「ショートケーキ缶」がグッドデザイン賞を受賞したことは、デザイン開発に長けたプロの目から見ても、本件登録意匠が優れたデザインであることを裏付ける何よりの証左といえる。 (5−2)[2](※当審注:「丸囲い数字2」について表示不可のため[2]とする。本審決において第2の2(4)イ)について 請求人は、「被請求人は、本件意匠の創作非容易性を論じる際に、引用意匠3と本件意匠との対比を行っているが、全く無駄な議論である。」と主張する。この点につき、請求人は、令和4年4月15日付審判請求書の理由2、理由4において、本件登録意匠の創作非容易性に関し、「密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている構成は、引用意匠1及び引用意匠2等に見られるように、周知のもの又はありふれたものである。 また、引用意匠3にみられるように、透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容することは広く知られており(甲3、甲5、甲16、甲17)、単なる寄せ集めに過ぎない」と主張している。 すなわち、請求人は、「密封された透明缶状(円簡状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている構成」と、「透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容すること」との「単なる寄せ集め」と主張しているのである。 この「単なる寄せ集め」は、意匠審査基準において、「ありふれた手法」の一例として挙げられており、「複数の既存の意匠等を組み合わせて、一の意匠を構成することをいう。」と説明されている。 したがって、被請求人は、「単なる寄せ集め」でないことを反論するために、「透明容器の食材としてスポンジ層を2層にわたってイチゴを含むカットフルーツの間に収容すること」の筆頭証拠である引用意匠3と、本件登録意匠との対比を行ったのであって、「単なる寄せ集め」の意味を正確に理解している者であれば、「全く無駄な議論」ではないことは明白である。 そして、令和5年3月6日付答弁書で述べたとおり、本件登録意匠と引用意匠3との間には、差異点(i)〜(v)が存在し、これらの差異点(i)〜(v)に係る具体的な構成態様は、いずれの引用意匠にも表されているものではなく、ましてや、この種の物品分野において従来見られないものであるから、やはり新規で独創性のある着想によるものといえる。 また、引用意匠1または引用意匠2と、引用意匠3等とを単に寄せ集めたとしても、直ちに本件登録意匠に想到するものではなく、別途、上記差異点(i)〜(v)に係る特徴的な創作を施さなければ、本件登録意匠に到底至るものではない。 よって、本件登録意匠は、当業者であっても引用意匠1または引用意匠2に基づいて容易に創作できた意匠ではない。 また、請求人は、「イチゴの数や、イチゴの間の間隔の違いは、連続する単位の数の増減、イチゴ配置の変更ないしは構成比率の変更に伴う模様の変化に過ぎないので、本件意匠と引用意匠1、2との相違点における模様の相違は、ありふれた手法による改変であることは明らかである。」と主張する。 しかしながら、「本件意匠と引用意匠1、2との相違点」は、「イチゴの数」や「イチゴの間の間隔」だけではなく、令和5年3月6日付答弁書で述べたとおり、本件登録意匠と引用意匠1との間には、差異点(i)〜(v)が存在し、本件登録意匠と引用意匠2との間には、差異点(i)〜(iv)が存在する。 また、仮に、上記差異点の一つ一つが「ありふれた手法による改変」であるとしても、それらの複数の改変を重ねて得られる本件登録意匠は、もはや創作容易の範疇を大きく逸脱し、創作非容易性を備えるものとなる。 (6)結論 以上のとおり、令和5年6月13日付弁駁書における請求人の主張は、被請求人の主張とは相容れないものである。 よって、令和5年3月6日付答弁書で述べたとおり、本件無効審判の請求は成り立たないものである。 3 「口頭審理陳述要領書(2)」における主張 陳述の要領 令和5年11月15日付口頭審理陳述要領書に対して、以下のとおり反論する。 (1)(本審決において第2の3(1))について 請求人は「容器内に保管される食材が飲料物であろうと菓子であろうと透明容器の外観において視覚を通じて認識される模様、色彩が同じであれば、意匠の物品の特定においては区別する意味はない」と主張する。 しかしながら、意匠は物品の形態であるところ、仮に形態が同一であっても、物品が非類似であれば、意匠も非類似となるため、物品が「容器付き菓子」であるか、「容器付き飲料」であるかを特定し、区別(類否判断)する意味は当然に存在する。 (2)(本審決において第2の3(2))について 請求人は「被請求人は、意匠において必須の要素が形状であることを否定している」と主張しているが、その点は否定していない。 被請求人は、請求人が弁駁書において「意匠において形状はもっとも基本的な構成要素である」と主張したことに対し、審査基準には「形状及び模様が類否判断に与える影響の大きさは、先行意匠群との関係で定まる」旨が明記されている点を指摘したのである。 すなわち、被請求人は、形状が「必須」であるという主張を否定したのではなく、「もっとも基本的」であるという主張を否定したのである。 なお、前回の口頭審理陳述要領書でも述べたとおり(第3頁下から15行目〜下から2行目)、透明容器の内部に収容された菓子からは、模様のみならず、形状や色調も特定できるため、これを模様のみに落とし込もうとする請求人の主張は失当である。 (3)(本審決において第2の3(3))について 請求人は、「被請求人は、容器内配列に係る食材の組み合わせは多数あり、非類似の配置関係に係る意匠も多数あるので本件登録意匠を認めるべきであるというが、(趣旨不明の主張である)」と主張しているが、そのような主張はしていない。 弁駁書において、請求人が、食材の組合せや容器内配置の選択は多数あると主張する一方で、「容器付き食品について安易に意匠権を付与することは、第三者の食品創作の自由を阻害する弊害が大きい」と、矛盾する主張していたため、食材の組合せや容器内配置の選択が多数あるなら、「第三者の食品創作の自由を阻害する」ことにはならない、ということを指摘したに過ぎない。 (4)(本審決において第2の3(4))について 請求人は、「被請求人は、商業的成功、グッドデザイン賞に言及しているが主張自体失当である」と主張しているが、なぜ失当であるかの理由や根拠が全く示されていない。 (5)(本審決において第2の3(5))について 請求人は、「相違点がありふれた手法や軽微な改変等などであると認定された以上」と、あたかも相違点がありふれた手法や軽微な改変であることが既成事実であるかのように主張しているが、そのような認定はされていない。 被請求人は、「仮に、上記差異点の一つ一つが「ありふれた手法による改変」であるとしても」と前置きして主張しているに過ぎず、そもそも各差異点が「ありふれた手法による改変」であるとは認めていない。 4 被請求人証拠 乙第1号証の1 請求人(株式会社BMターゲット)が運営する「BMTARGET ONLINE SHOP」のホームページhttps://bmtarget.shop/ 乙第1号証の2 2022年7月25日時点での請求人(株式会社BMターゲット)が運営する「BMTARGET ONLINE SHOP」のホームページ https://web.archive.org/web/20220725114706/https://bmtarget.shop/ 乙第2号証 被請求人(株式会社GAKU)が運営する「patisserie OKASHI GAKU」のホームページ https://okashigaku.official.ec/ 乙第3号証 テレビ朝日 「中居正広のニュースな会 TV番組(2021/08/28放送) 乙第4号証 フジテレビ めざましテレビ TV番組(2021/08/17放送) 乙第5号証 フジテレビ ノンストップ! TV番組(2021/06/28放送) 乙第6号証 日本テレビ スッキリ TV番組(2021/07/01放送) 乙第7号証 日本テレビ ヒルナンデス TV番組(2021/09/23放送) 乙第8号証 TBS ラヴィット! TV番組(2021/07/09放送) 乙第9号証 HikakinTV YouTube https://www.youtube.com/watch?v=RqzOUS3-ZUE 乙第10号証 はじめしゃちょー(hajime)YouTube https://www.youtube.com/watch?v=JHIbhVZHrTE 乙第11号証 ヴァンゆんチャンネル【VANYUN】YouTube https://www.youtube.com/watch?v=x9HmXJ6sXwQ 乙第12号証 「GOOD DESIGN AWARD」のホームページ https://www.g-mark.org/award/describe/54297 第4 口頭審理 当審は、本件審判について、令和5年11月30日に口頭審理を行った。審判長は、本件審判において請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由について、後記第5の2のとおりとし、甲第1号証から甲第17号証、及び乙第1号証から乙第12号証について取り調べた。(令和5年11月30日付け「第1回口頭審理調書」) 第5 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠は、物品の部分について、意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書の記載及び願書に添付された図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「容器付き菓子」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に表されたとおりとしたものであり、当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本件意匠部分」という。)を「朱色で着色された部分以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」とし、意匠に係る物品の説明を「本物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子である。本物品は、内容物を示す参考図に示すように、容器の底部および中央部にはスポンジケーキを層状に配置し、容器の内表面にはカットされたフルーツを配置し、それ以外の部分には生クリーム等を注入してなる菓子である。」としたものである(別紙第1参照)。 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は「容器付き菓子」である。 (2)本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上面の縁部(以下「上縁部」という。)以外の上面、並びに、上寄り及び下寄りの内壁に沿って横方向に間隔を開けて配したフルーツ(断面)などを除いた全体にわたる位置及び範囲である。 (3)本件意匠部分の形態 本件意匠部分の形態は、具体的には以下のとおりである。 基本的構成態様 ア 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 イ 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成している。 ウ 菓子層は、2層から成る段を2段重ねて構成し、上下段はほぼ同じ構成で、各段の第1層は、上側は略直線状で、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、その下方(第2層)には、上下側が略直線状で、粗めのざらつきのある素材を封入し、各層は、内壁までいっぱいに、層全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。 エ 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層(上1:上2:下1:下2)の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約2:42:12:35:8である。 オ 全体は明暗調子で現されており、上から順に、上縁部は金属様光沢を帯びた中間明暗調子、上下段の第1層が、明るい明調子であって、上下段の第2層が明調子であり、菓子層について、菓子層全体の階調は、明るい明調子と明調子を交互に形成している。 2 無効理由の要点 請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由は、以下の4つである。 (1)本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第1号証の意匠(以下「引用意匠1」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由1」という。)。 (2)本件登録意匠は、引用意匠1に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠であるので、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由2」という。)。 (3)本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の意匠(以下「引用意匠2」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由3」という。)。 (4)本件登録意匠は、引用意匠2に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠であるので、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由4」という。)。 3 無効理由の判断 以下、甲第1号証の意匠ないし甲第17号証の意匠は、本件登録意匠の向きと合わせて認定を行い、また、意匠に係る物品の表記は、ハングル表記のものは、便宜上、和訳を用いる。 (1)無効理由1について 本件登録意匠は、引用意匠1(甲第1号証の意匠)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。 引用意匠1の意匠に係る物品は「缶ケーキ」であり、甲第1号証の掲載画像には4つの缶入りの飲料もしくは食べ物が現れているから、左端の「缶ケーキ」を引用意匠1として、形態を認定する。また、本件意匠部分と対比の対象とする引用意匠1の部分を「引用部分1」とする。 ア 引用意匠1(甲第1号証(別紙第2参照)) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 _kongsam)に掲載。 掲載URL:https://www.instagram.com/p/CKtMER_A9Fd/?utm_source=ig_web インターネット掲載日:令和3年(2021年)1月31日 (ア)意匠に係る物品 引用意匠1の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。 (イ)引用部分1の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 引用部分1は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上縁部以外の上面、並びに、上寄り及び下寄りの内壁に沿って横方向に配したフルーツ(断面)などを除いた全体にわたる位置及び範囲である。 (ウ)引用部分1の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、1層から成る上段と、2層から成る下段の2段で構成し、上下段の上方(第1層)はほぼ同じ構成で、容器内壁に沿って周面を一周するように、上側は略直線状に、下側は略等間隔のジグザグ状に、層内上端から半ばまできめの細かい素材を充填して成り、下段の下方(第2層)は、上下側が略直線状で、きめの細かい素材をのみを充填して成り、各層は、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。 D 平面視によりの斜め上から見下ろした画像であるから、短縮され、全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、対比可能なほど明らかではなく、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率も、詳細は不明であるが、上縁部は厚みが薄く、上下段の上方(第1層)は全体のほとんどを占め、下段の下方(第2層)の厚みは薄い。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、菓子層のすべての層は、略白色(明るい明調子)である。 F 容器上の中央やや下寄りに、女性の横顔の図柄を配し、その右下にaneの文字列を配している。 イ 引用意匠1が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 引用意匠1については、前記アのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 _kongsam)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2021年1月31日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 したがって、引用意匠1については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ウ 本件登録意匠と引用意匠1の対比 本件登録意匠については、前記1に記載のとおり、引用意匠1は前記アに記載のとおりである。 (ア)物品について 本件登録意匠は「容器付き菓子」で、引用意匠1は「缶ケーキ」であって、表記は相違するが、共に容器内に菓子を封入したものであるから、本件登録意匠と引用意匠1(本項目において、以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。 (イ)本件部分と引用部分1の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲について 本件部分と引用部分1(本項目において、以下「両部分」という。)は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上縁部以外の上面、並びに、上寄り及び下寄りの内壁に沿って横方向に配したフルーツ(断面)などを除いた全体にわたる位置及び範囲であるから、両部分の、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲はおおむね同一である。 (ウ)両部分の形態について A 共通点 基本的構成態様について (A)全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである点、 具体的態様について (B)容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りしたものである点、 (C)菓子層は、上段と下段から成り、段は層から成り、上下段の各層の上側は略直線状で、下段の最も下側も略直線状であって、おおむね均一な厚みの層を形成し、上下段の第1層は、ほぼ同じ構成で、きめの細かい素材を充填し明るい明調子である点、 (D)全体に明暗調子(色彩の明暗を含む。)が現れ、上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点 が共通する。 B 相違点 具体的態様について (A)本件意匠部分は明暗調子のみのものであって、引用部分1は色彩が現れている点、 (B)上縁部の厚み比率について、部分全体の縦方向長さを約99として本件意匠部分は約2であるのに対し、引用部分1は、薄いものである点、 (C−1)本件意匠部分の菓子層について、上段は2層から成るものであるのに対し、引用部分1の上段は1層から成るものである点、 (C−2)本件意匠部分の上段の上方(第1層)は、容器内壁に沿って周面を一周するように、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、厚み比率は約42であって、その下方(第2層)には、粗めのざらつきのある素材を封入し、厚み比率は約12で、明調子であるのに対し、引用部分1は、容器内壁に沿って周面を一周するように下側は略等間隔のジグザグ状の層内上端から半ばまでにきめの細かい素材を充填して成り、厚み比率ついては、ある程度厚いものの不明であり、略白色である点、 (C−3)本件意匠部分の下段の上方(第1層)は、容器内壁に沿って周面を一周するように、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、厚み比率は約35で、その下方(第2層)には、粗めのざらつきのある素材を封入し、厚み比率は約8で、明調子であるのに対し、引用部分1の下段の上方(第1層)は、容器内壁に沿って周面を一周するように下側は略等間隔のジグザグ状の層内上端から半ばまでにきめの細かい素材を充填して成り、厚み比率ついては、ある程度厚いものの不明であり、略白色で、その下方(第2層)は、きめの細かい素材のみを充填した、厚みの薄い、明るい明調子のものである点、 (D)菓子層全体の階調について、本件意匠部分は、明るい明調子と明調子を交互に形成しているのに対し、引用部分1は、ほぼ略白色の明るい明調子である点、 (E)本件意匠部分は、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成しているのに対し、引用部分1の底面の態様は不明である点、 (F)引用部分1は、容器上の中央やや下寄りに、女性の横顔の図柄を配し、その右下に「ane」の文字列を配しているのに対し、本件意匠部分は、配していない点、 で相違する。 エ 本件登録意匠と引用意匠1が類似するか否かの判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 本件意匠部分及び引用部分1(本項目において、以下「両部分」という)の形態については、以下のとおり評価する。 (ア)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、具体的態様としてあげた共通点(B)は、この種の容器付き菓子の物品分野において、飲料缶様の略有底円筒状の容器を採用した事による、自明ともいうべき態様の共通点であるから両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(C)についてもこの種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通に見られる形態であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。そして、共通点(D)の上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点については、この種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通の態様であり、全体に明暗調子が現れたものである点は、図面代用写真及び画像で現されたものの、当然の態様であるといえるから、両部分の類否判断に与える影響は微弱である。 よって、共通点(A)から共通点(D)は、類否判断に与える影響がいずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (イ)相違点の評価 これに対して、両部分の各相違点を見ると、本件登録意匠に係る物品である「容器付き菓子」は、菓子の購入者などを主な需要者とし、容器を食器として、スプーンなどを用いて食すものであるから、需要者は、食べやすさはもちろん、各菓子層の味わいの相違や食感などに関心を持ち、外観から観察される各層の色調や層の厚さによる量のバランスや素材感などを注目するところ、まず、相違点(C−1)は、両部分の上段の菓子層数の相違であるから、菓子層の構成に関わり、両部分の類否判断に一定程度の影響を与え、次に、相違点(C−2)及び相違点(C−3)は、両部分の上下段の菓子層の具体的態様についての相違であって、特に、本件意匠部分に見られる粗めのざらつきのある素材の層の有無、及び、各段の上方層の下側の態様が互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成して成るものか、不揃いなジグザグ状に形成してなるものかの点は、一見して看取できる相違であって、また、アーチ状部間に、略柱状に、層の上下方向全幅にわたり、きめの細かい素材を充填して成るものか、上下方向上端から層の半ばまでに、きめの細かい素材を充填しなるものかの相違も容易に看取できるものである。そして、引用部分1は、全層に亘り、きめの細かい素材を充填して、全体として広範囲に均一でなめらかな視覚的印象を与えているのに対し、本件意匠部分の粗めのざらつきのある素材の層を上下段の下方に間隔を置いて配置した態様は、その余にきめの細かい素材を充填して成る中で、全体に一定のアクセントを繰り返し与えており、きめの細かい素材によるしっとりした質感の中で密に詰まった凹凸によるやや乾燥した触感を想起させるような層の視覚的印象は、需要者に両部分は別異のものであるとの印象を強く与えるから、これらの相違が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。そして、相違点(D)の菓子層全体の階調については、明るい明調子と明調子を交互に形成した穏やかな明暗調子は、引用部分1のすべて単一の明るい明調子である点で相違し、上記の(C−2)及び相違点(C−3)を補強し、この点は両部分の類否判断に与える影響は大きい。また、相違点(A)の明暗調子のみで表したものか色彩を現したものかの点は、出願に際し、色彩を表さない図面代用写真としたものか、実製品の色彩が現れた画像であるかの相違であって、双方ともにありふれた態様であって、相違点(B)の上縁部の厚み比率の相違についても、さほど需要者も注目しない上縁部の厚み比率の多少の相違であり、相違点(E)は、底面側の目につかない部分の、かつ、この種容器付き菓子の物品分野において、よく見られる形態について、表れているか不明かの相違であって、(F)ついては、実製品に店名や商品名のロゴなどの文字を施すことは、ごく普通に行われており、これらの文字列等の有無が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 そうすると、相違点(A)、相違点(B)、相違点(E)及び相違点(F)が両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(C−1)の両部分の類否判断に与える影響は一定程度であって、相違点(D)は両部分の類否判断に与える影響が大きく、相違点(C−2)及び相違点(C−3)は両部分の類否判断に与える影響が極めて大きく、総合すると、相違点が総じて両部分類否判断に与える影響は大きく、共通点は両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象づけるものであるから本件意匠部分が引用部分1に類似するということはできない。 オ 小括 以上のとおり、両部分の相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似するものではない。 そうすると、前記イのとおり、引用意匠1は本件登録意匠の出願前に公然知られたものであると認められ、意匠に係る物品も同一であって、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても同一であるが、形態について、両部分は類似しないから、本件登録意匠は、引用意匠1に類似する意匠ということはできない。 したがって、無効理由1によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。 (2)無効理由2について 本件登録意匠が、引用意匠1に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであるか否かについて検討し、判断する。 本件登録意匠は、前記1に記載のとおりであって、引用意匠1は、前記(1)ア(ア)から(ウ)のとおり、甲第3号証から甲第17号証の意匠は以下のとおりである。 ア 甲第3号証(別紙第4参照) 甲第3号証の第2頁に掲載されたものを甲3意匠として認定する。 甲第3号証の意匠(「引用意匠3」、以下「甲3意匠」という。) 韓民国政府による継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://blog.naver.com/hope_city/221493161258 インターネット掲載日:平成31年(2019年)3月21日 (ア)意匠に係る物品 甲3意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲3意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に2段で構成し、各段は2層から成り、上下段はほぼ同じ構成で、各段の第1層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して(下側はイチゴの外形状に沿った略ジグザグ状の形態として)成り、上下段の第2層は粗めのざらつきのある素材を封入し、各層は、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。また、菓子層上面の中心にスライスしたイチゴを2つ盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層(上1:上2:下1:下2)の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約38:9:33:19である。各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。 E 全体は色彩が現されており、上下段の第1層の充填層は略白色(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、上下段の第2層は黄色がかった白色で、明調子であって、ほぼ互い違いに上側が明るい明調子で下側が暗調子の層と明調子の層を隣接して形成している。 (ウ)甲3意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲3意匠については、前記のとおり、大韓民国政府による継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載に掲載された「ボトルケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2019年3月21日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲3意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 イ 甲第4号証(別紙第5参照) 甲第4号証の第9頁の中程左側に掲載されたものを甲4意匠として認定する。 甲第4号証の意匠(以下「甲4意匠」という。) キム・エルメによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://blog.naver.com/shinhwa51l7/222219215197 インターネット掲載日:令和3年(2021年)1月25日 (ア)意匠に係る物品 甲4意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲4意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、蓋部を螺合して形成して、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 蓋部を螺合した容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、するねじ切り部を上端に形成して、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は縦方向に3段で構成し、各段は2層から成り、上段の第1層は、きめの細かい素材を略一定の厚みに充填して成り、次に、第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入して成り、中段の第1層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填して(下側はイチゴの外形状に沿った略ジグザグ状の形態として)成り、第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入し、下段の第1層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填して(下側はイチゴの外形状に沿った略ジグザグ状の形態として)成り、第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入して成り、上段の第1層及び下段の第2層は、おおむね均一な縦幅(厚み)あり、その余の上段の第2層から下段の第1層は、上下側に、湾曲や嵌入があり均一な厚みの層とはいえない。菓子層上面にスライスにしたイチゴを盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、主に右側で計測して、上部空間及び各菓子層(上1:上2:中1:中2:下1:下2)の縦方向長さ及び下縁部の(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約8.5:9.5:5.5::35.5:3.5:30:6.5である。 E 全体は色彩が現されており、上部空間は透明で、上段の第1層は、略白色(明るい明調子)で、上段の第2層は黄色がかった白色(明調子)で、中段の第1層は、充填層は略白色(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色(暗調子)で、中段の第2層は黄色がかった白色(明調子)で、下段は、中段と同じ態様でほぼ互い違いに明るい明調子と上側が明るい明調子で下側が暗調子の層と明調子が隣接して形成している。 (ウ)甲4意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲4意匠については、前記のとおり、キム・エルメによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載された「ボトルケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2021年1月25日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲4意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ウ 甲第5号証(別紙第6参照) 甲第5号証の複数の掲載画像には2つの同様の製品が現れているから、甲第5号証の第1頁の左から2つめのものを甲第5号証の意匠として、形態等を認定する。 甲第5号証の意匠(以下「甲5意匠」という。) ンガビによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://blog.naver.com/hyeji969I/221281844628 インターネット掲載日:平成30年(2018年)5月23日 (ア)意匠に係る物品 甲5意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲5意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に2段で構成し、各段は2層から成り、上段の第1層は、層内の下側に、刻んだイチゴをちりばめて、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、上段の第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入し、下段の第1層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、下段の第2はきめの細かい素材のみを充填して成り、各層は、上下側は略直線状で、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。また、さらに菓子層上面中心に断面を下に半切りにしたイチゴを1つ配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約8.5:29.5:11.5:38:11.5である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は透明で、上段の第1層の充填層は略白色(明調子)でイチゴは赤色で(暗調子)で、上段の第2層は黄色がかった白色(明調子)で、下段の第1層の充填層は略白色で、(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、下段の第2層は略白色(明るい明調子)で、ほぼ互い違いに上側が明調子で下側が暗調子の層と明調子が隣接して形成している。 (ウ)甲5意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲5意匠については、前記のとおり、ンガビによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載された「ボトルケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、2018年5月23日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲5意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 エ 甲第6号証(別紙第7参照) 甲第6号証の第2頁に掲載されたものを甲6意匠として認定する。 甲第6号証の意匠(以下「甲6意匠」という。) ココミによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://m.blog.naver.com/PostView.naver?isHttpsRedirect=true&blogId=poshlady&logNo=220673616820 インターネット掲載日:平成28年(2016年)4月4日 (ア)意匠に係る物品 甲6意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲6意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、やや裾すぼまりの略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に2段で構成し、各段は1層もしくは2層から成り、上段の第1層は、容器の上端いっぱいに形成し、上段の第1層及び下段の第1層は、層内の上側に、複数のイチゴの断面の先端側を下に向けて、容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その下側に、きめの細かい素材を充填して成り、下段の第2層は粗めのざらつきのある素材を封入して成り、各層は、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。上段の第1層に対し下段の第1層は、イチゴ部分を半分幅左右方向にずらして配している。さらに上部中心にペパーミントとブルーベリーを3つ盛り付けて配し、上寄りに紺色と白色のツートーンの飾り紐を配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約1:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約60:29:10である。各々、おおむね均一な厚みの層を形成している。 E 全体は色彩が現されており、上段の第1層に及び下段の第1層の充填層は略白色(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、下段の第2層は黄色がかった白色(明調子)でほぼ互い違いに上側が明調子で下側が暗調子の層と明調子が隣接して形成している。 (ウ)甲6意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲6意匠については、前記エのとおり、ココミによって継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載された「ボトルケーキ」であり、その掲載内容中で掲載日として、平成28年(2016年)4月4日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲6意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 オ 甲第7号証(別紙第8参照) 甲第7号証の第6頁に掲載された画像には2つ透明容器に封入された菓子の製品が現れているから、左から1つめのものを甲第7−1号証の意匠として、2つめのものを甲第7−2号証の意匠として形態等を認定する。 甲第7−1号証の意匠(以下「甲7−1意匠」という。) エクスカーション・アン・ベーキング・イェンによる継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://blog.naver.com/sopoongn/220669726981 インターネット掲載日:平成28年(2016年)3月30日 (ア)意匠に係る物品 甲7−1意匠及び甲7−2意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲7−1意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を係合する段差部を上端に形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、全体で3層であって、容器のほぼ上端及び内壁までいっぱいに形成し、上から、第1層及び第3層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面の先端部を上向きに容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、第2層は層の上側に、複数のイチゴの断面の先端部を下向きに容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、第1層に対し第3層は、上下方向に同様の構成(イチゴ部分が上下方向にほぼ同位置)で、第2層及び第3層の配置はイチゴの先端部が互い違いに組み合うよう約半幅左右方向にずらして配している。各層は、第1層は、おおむね均一な縦幅(厚み)に形成しているが第2層は第3層の配置は互いに先端部が組み合う配置なので、均一な縦幅(厚み)ではない。また、さらに容器内側及び上面にきめ細かな素材を充填し、上面中心にイチゴを盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約2.5:2であって、各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、第1層:第2層及び第3層は、約5:8である。 E 全体は色彩が現されており、上面の充填部は略白色(明るい明調子)で周側面のイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)である。 (ウ)甲7−2意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、裾すぼまりの略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端の縁部を最も大径に形成し、その下に細幅の段部を設け、下方に向けて、周面は漸次径を狭めて形成して成り、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に4段で構成し、各段は2層から成り、容器の上端いっぱいに形成し、第1段の第1層は、きめの細かい素材から成り、第2段の第1層及び第3段の第1層はところどころに刻んだイチゴが混ざったきめの細かい素材を充填して成り、第4段の第1層は、層内の上側に、複数の刻んだイチゴを封入し、その下側に、きめの細かい素材を充填して成り、第1段の第2層、第2段の第2層、第3段の第2層及び第4段の第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入し、各層は、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。また、さらに上面中心に半切りにしたイチゴを盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約5.5:11.5:22.5:5.5:18:9で:14.5:12.5である。 E 全体は色彩が現されており、第1段の第1層は略白色(明るい明調子)で第2段の第1層、第3段の第1層及び、第4段の第1層の充填部分は、略白色(明るい明調子)で刻んだイチゴは赤色で(暗調子)で、第1段の第2層、第2段の第2層、第3段の第2層及び第4段の第2層は黄色がかった白色(明調子)で、上端から半ばすぎまで部分的に暗調子部を配しながら、ほぼ互い違いに明るい明調子と明調子が隣接して形成し、下寄りに明調子と明調子と明るい明調子が隣接してコントラストを形成している。 (エ)甲7意匠(甲7−1意匠及び甲7−2意匠)が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲7意匠については、前記のとおり、継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログ掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2016年3月30日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲7意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 カ 甲第8号証(別紙第9参照) 甲第8号証の第1頁の掲載画像には2つ同様の製品が現れているから、手前のものを甲第8号証の意匠として形態等を認定する。 甲第8号証の意匠(以下「甲8意匠」という。) 悲しいあくび(イチヒエ)による継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載。 掲載URL:https://blog.naver.com/yichihye/220299138997 インターネット掲載日:平成27年(2015年)3月13日 (ア)意匠に係る物品 甲8意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲8意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を係合する段差部を上端に形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、全体で3層であって、ほぼ容器の上端及び内壁までいっぱいに形成し、上から、第1層は、層の下側に、複数のイチゴの断面を先端部を下向きに容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けてその上側に、きめの細かい素材を充填して成り、第2層は層の上側に、複数のイチゴの断面を先端部を下向きに容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて第3層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を先端部を上向きに容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、第1層に対し第3層は、上下方向に同様の構成(イチゴ部分が上下方向にほぼ同位置)で、第2層及び第3層はイチゴの先端部が互い違いに組み合うよう約半幅左右方向にずらして配している。各層は、第1層は、おおむね均一な縦幅(厚み)に形成しているが第2層は第3層の配置は互いに先端部が組み合う配置なので、均一な縦幅(厚み)ではない。また、さらに容器内にきめ細かな素材を充填し上面右側に半切りのイチゴを2つ盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約2.5:2であって、各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、第1層:第2層及び第3層は、約3:2である。 E 全体は色彩が現されており、上面の充填部は略白色(明るい明調子)で周側面のイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)ある。 (ウ)甲8意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲8意匠については、前記のとおり、継続して更新される日記形式のウェブサイトであるブログに掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2015年3月13日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲8意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 キ 甲第9号証(別紙第10参照) 甲第9号証の掲載画像には3つ同様の製品が現れているから、左から2つめのものを甲第9号証の意匠として形態等を認定する。 甲第9号証の意匠(以下「甲9意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に右から1つめに掲載された缶入りの食品の意匠。 掲載URL:https://www.instagram.com/p/CKAIIllHMsq/から抜粋。 インターネット掲載日:令和3年(2021年)1月14日 (ア)意匠に係る物品 甲9意匠の意匠に係る物品を仮に「缶ケーキ」である。 (イ)甲9意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に3段で構成し、(各段は1層から成るから、以下上段層、中段層、下段層という。)、上段層は、複数のイチゴが先端を中心で突き合わせるように略山状に盛られ、中段層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、下段層はきめの細かい素材をのみを充填して成り、上段層を除く各層は、上下側を略直線状で、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3.5:2であって、上縁部及び各菓子層(上:中:下)の縦方向長さ(厚み)の比率は、上から、約3:18:9:52:12である。 E 全体は色彩が現されており、上段層は赤色(暗調子)中段層の充填層は明るいピンク色(明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、下段層は明るいピンク色(明調子)で、ほぼ明暗が互い違いに、暗調子と上側が明調子で下側が暗調子の層と明調子の層を隣接して形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きく中央にケーキの絵柄を乗せた「G」字を配し、下に小さく横方向にハングル文字と「GOSSINE CAKE」等の文字列を配し、周囲を輪状の草花柄で囲っている。 (ウ)甲9意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲9意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2021年1月14日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲9意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ク 甲第10号証(別紙第11参照) 甲第10号証の掲載画像には3つ同様の製品が現れているから、左から2つめのものを甲第10号証の意匠として形態等を認定する。 甲第10号証の意匠(以下「甲10意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載。 掲載URL:https://www.instagram.com/p/CAHtWZun5gd/ インターネット掲載日:令和2年(2020年)5月23日 (ア)意匠に係る物品 甲10意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。 (イ)甲10意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に4段で構成し、(各段は1層から成るから、以下第1段層、第2段層、第3段層、第4段層という。)第1段層は、複数のイチゴが頂点を突き合わせるように略山状に盛られ、第2段層は、細かく刻んだイチゴの上にきめの細かい素材を充填して成るものであって、第3段層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、第4段層はきめの細かい素材をのみを充填して成り、第1段層を除く各層は、上下側を略直線状で、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3.5:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、上から、約2:22:16:30:10である。 E 全体は色彩が現されており、第1段層は赤色(暗調子)で、第2段層は、上側が明るいピンク色(明調子)で下側が細かく刻んだイチゴは赤色(暗調子)で、第3段層は、上側が明るいピンク色(明調子)で、下側のイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、第4段層が明るいピンク色(明調子)で、ほぼ明暗が互い違いに、暗調子と上側が明調子で下側が暗調子の層と明調子の層を隣接して形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きくピンクのハートと短円柱形、下に横方向にハングル文字を配し、その下に小さく「Gossine cafe」と文字列を配し、周囲を草花柄で円形状に囲っている。 (ウ)甲10意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲10意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2020年5月23日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲10意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ケ 甲第11号証(別紙第12参照) 甲第11号証の掲載画像には2つの同様の製品(が現れているから、最も左のものを甲第11号証の意匠として、形態等を認定する。 甲第11号証の意匠(以下「甲11意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載。 掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/ インターネット掲載日:令和2年(2020年)8月31日 (ア)意匠に係る物品 甲11意匠の掲載されたインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの食品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した後記、甲第12号証の記載には「虹スムージー」との記載がある。 スムージーとは一般的に凍らせた果物や野菜をミキサーでジュースにした飲料を指すが、飲料即液体であるならば、液体部分は、固有の形態等を有していないものとして、意匠法上の物品とは認められない。 しかしながら、本件において、甲11意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められるから、甲11意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。 (イ)甲11意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、全部で9層であって、第1層は下側が不規則に波打ち、第2層から第8層までは、上下面が不規則に波打ち、第9層は略均一な厚みの層を形成して、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填して成るものである。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約6.5:13:13:10.5:32:13:20:13:20:20である。 E 意匠全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明るい明調子)で、第2層がムラのある黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は黄色で(中間明暗調子)、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明るい明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方(第5層から第9層)に交互に明るい明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等と文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。 (ウ)甲11意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲11意匠については、前記アのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年8月31日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲11意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 コ 甲第12号証(別紙第13参照) 甲第12号証は、最も左のものを甲12意匠として、形態等を認定する。 甲第12号証の意匠(以下「甲12意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載。 掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。 インターネット掲載日:令和2年(2020年)8月30日 (ア)意匠に係る物品 甲12意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に「虹スムージー」とある。スムージーとは一般的に凍らせた果物や野菜をミキサーでジュースにした飲料等を指すが、飲料即液体であるならば、液体部分は、固有の形態等を有していないものとして、意匠法上の物品とは認められないところ、本件において、甲12意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められるから、甲12意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」とする。 (イ)甲12意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、全部で9層であって、各々、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約5.5:10.5:13.5:6:27.5:8.5:20:15.5:14.5:10.5である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明るい明調子)で、第3層には第2層が被さり、略白色に黄緑色がまだらになっており、第2層は暗点の混じる黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は明るいオレンジ色(中間明暗調子)で、第6層は赤紫色(暗調子)、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明るい明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明るい明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。 (ウ)甲12意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲12意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年8月30日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲12意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 サ 甲第13号証(別紙第14参照) 甲第13号証は、最も右のものを甲13意匠として、形態等を認定する。 甲第13号証の意匠(以下「甲13意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に右から1つめに掲載された缶入りの食品の意匠。 掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。 インターネット掲載日:令和2年(2020年)7月16日 (ア)意匠に係る物品 甲13意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの製品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した前記甲11意匠を参照し、本件において、甲13意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められることから、甲13意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。 (イ)甲13意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、全部で9層であって、各々、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約4:12:10:27:17:21:16:4:11:10である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明るい明調子)で、第7層には第6層が被さり、略白色に赤紫色がまだらになっており、第2層は暗点の混じる黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は明るいオレンジ色(中間明暗調子)で、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明るい明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明るい明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。(第5層目と第6層目、第8層目と第9層目が顕著) F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。 (ウ)甲13意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲13意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年7月16日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲13意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 シ 甲第14号証(別紙第15参照) 甲第14号証の意匠(以下「甲14意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に右から1つめに掲載された缶入りの食品の意匠。 掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。 インターネット掲載日:令和1年(2019年)5月14日 (ア)意匠に係る物品 甲14意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの製品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した前記甲11意匠を参照し、本件において、甲14意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められることから、甲14意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。 (イ)甲14意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、全部で9層であって、各々、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約4.5:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを151として、約3:12:10:27:17:21:16:4:11:10である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明るい明調子)で、第2層はムラのある黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は黄色で(中間明暗調子)、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明るい明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。 (ウ)甲14意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲9意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2019年5月14日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲14意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ス 甲第15号証(別紙第16参照) 甲第15号証の意匠(以下「甲15意匠」という。) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載。 掲載URL:https://www.instagram.com/p/B3vnsqgHYzu/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D インターネット掲載日:令和1年(2019年)10月18日 (ア)意匠に係る物品 甲15意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。 (イ)甲15意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。 C 菓子層は、全部で10層であって、正面図から、第1層は、細かくざらついた素材を薄く容器内壁手前まで配した態様であって、第2層、第4層、第6層、第8層及び第10層は、各々、内壁までいっぱいに、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成し第3層、第5層、第7層やや粗めの素材を充填して不均一な厚みの層を形成し、第9層はやや粗めの素材を充填してほぼ均一な厚みの層を形成したものである。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約6.5:4であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、約5.5:1:16:10.5:17:5.5:10.5:7.5:14.5:6.5:12.5である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層は、略焦げ茶色(暗調子)で、第2層、第4層、第6層、第8層及び第10層が略白色(明るい明調子)で、第3層、第5層、第7層及び第9層は略ムラのある茶色(暗調子)に現れている。暗調子の層のうち、第1層が最も暗く、菓子層全体の階調は、上から互い違いに明るい明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。 F 容器上の中央やや下寄りに、大きくピンクのハートと短円柱形、下に小さく横方向にハングル文字を配し、周囲を大きく緑色の草花柄で円形状に囲っている。 (ウ)甲15意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲15意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2019年10月18日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、甲15意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 セ 甲第16号証(別紙第17参照) 甲第16号証の掲載画像には2つ透明容器に入った菓子が現れているから、左から1つめのものを甲第16号証の意匠として形態等を認定する。 甲第16号証の意匠(以下「甲16意匠」という。) YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 Cooking tree)に掲載。 掲載URL:https://www.youtube.com/watch?v=APktlc8hwA インターネット掲載日:平成28年(2016年)4月9日 (ア)意匠に係る物品 甲16意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲16意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に設け、細幅の段状部を経て、周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に3段で構成し、各段は2層から成り、容器の上端いっぱいに形成し、上段の第1層は、層の下側に刻んだイチゴをまばらに配した上側にきめ細かな素材を充填して成り、上段の第2層は粗めのざらつきのある素材を封入し、中段の第1層は刻んだイチゴから成り、中段の第2層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、下段の第1層は、層の下側に刻んだイチゴを配した上側にきめ細かな素材を充填して成り、下段の第2層は粗めのざらつきのある素材を封入し、各層は、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。また、さらに上面中心に半切りにしたイチゴを盛り付けて配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約16.5:6.5:14:42:14.5:5.5である。各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。 E 全体は色彩が現されており、上段の第1層及び下段の第1層の充填層は略白色(明るい明調子)でイチゴは赤色で(暗調子)で、中段の第1層は赤色(暗調子)で、中段の第2層の充填層は略白色(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で上段の第2層及び下段の第2層は黄色がかった白色で、ほぼ互い違いに上側が明るい明調子で下側が暗調子の層と明調子が隣接して形成し、中程に明るい明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。 (ウ)甲16意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲16意匠については、前記のとおり、動画投稿サイトYouTubeに(アカウント名 Cooking tree)が投稿した「ボトルケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2016年4月9日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には動画の投稿が行われたと認められる。 よって、甲16意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ソ 甲第17号証(別紙第18参照) 甲第17号証の第1頁の掲載画像には2つの同様の製品が現れているから、左から2つめのものを甲第17号証の意匠として、形態等を認定する。 甲第17号証の意匠(以下「甲17意匠」という。) YouTube投稿動画の抜粋(アカウント名 EUNGABI)に掲載。 掲載URL:https://www.youtube.com/watch?v=tMnxTJp0ww4 インターネット掲載日:平成30年(2018年)4月16日 (ア)意匠に係る物品 甲17意匠の意匠に係る物品は「ボトルケーキ」である。 (イ)甲17意匠の形態 基本的構成態様 A 全体は、略有底円筒状の容器に、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、菓子層を複数層積層して封入し、容器面全体を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面は中胴より僅かに小径に形成し、蓋部を螺合するねじ切り部を上端に形成して、下端周縁部は僅かに丸みを帯びて面取りし、底面は不明である。 C 菓子層は、縦方向に2段で構成し、各段は2層から成り、上段の第1層は、層内の下側に、刻んだイチゴをちりばめて、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、上段の第2層は、粗めのざらつきのある素材を封入し、下段の第1層は、層内の下側に、複数のイチゴの断面を容器内壁に沿って横方向に一周するようにほぼ隙間なく貼り付けて配し、その上側に、きめの細かい素材を充填して成り、下段の第2はきめの細かい素材をのみを充填して成り、各層は、上下側は略直線状で、内壁までいっぱいに、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。また、さらに菓子層上面中心に断面を下に半切りにしたイチゴを1つ配している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約8.5:29.5:11.5:38:11.5である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は透明で、上段の第1層の充填層は略白色(明調子)でイチゴは赤色で(暗調子)で、上段の第2層は黄色がかった白色(明調子)で、下段の第1層の充填層は略白色で、(明るい明調子)でイチゴは中心が白みを帯びた赤色で(暗調子)で、下段の第2層は略白色(明るい明調子)で、ほぼ互い違いに上側が明調子で下側が暗調子の層と明調子が隣接して形成している。 (ウ)甲17意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲17意匠については、前記のとおり、動画投稿サイトYouTubeに(アカウント名 EUNGABI)が投稿した「ボトルケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2018年4月16日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には動画の投稿が行われたと認められる。 よって、甲17意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 タ 創作非容易性の判断 まず、本件意匠部分の形態のうち、透明な略有底円筒状の容器に、複数の菓子層を積層して複数段封入したものとすることは、容器付き菓子の物品分野において、ごく普通というべき形態であって、次に、容器の上縁寄り上方の周面を中胴より一周り小径に絞って形成し、上縁部は巻き締めて側面視で短く立設し、下端側角部は丸みを帯びた飲料缶様としたものも格別特徴的な形態とはいえず、ごく普通に見受けられるものであり、全体を明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けないものとすることも、特段の創作を要するものではなく、2段の菓子層から成るものとすることも、3段の菓子から成るものとすることも、1段1層から成るものも1段2層から成るものも本件登録意匠出願前に見受けられる(例えば、公然知られた形態の参考例として、後記、引用意匠2及び甲9意匠)から、「容器付き菓子」の物品分野における当業者においては、なんら格別の困難を要さず、公然知られた意匠などに基づいて、容易に創作することができたものと認められる。 そして、各菓子層の態様について見ると、おおむね均一な厚みの菓子層を形成すること、種々の明暗調子を施した菓子層を形成すること、フルーツなどと合わせてきめの細かい素材を用いて、菓子層を形成することも、様々な菓子層を積層して形成する菓子類(複数の素材を重ねて作成する、ケーキやグラススイーツや冷菓など)において、ありふれた手法といい得るから、当業者においては、想到するのに困難を要したということはできず、各層の縦方向の長さ比率に若干の変更を加えることも、また、当業者であれば、容易に想到できるものと認められる。 しかしながら、様々な態様を組み合わせて創出した、具体的形態においても、一定の創作性があると認められるところ、本件意匠部分の具体的な構成態様である、透明な飲料缶様の略有底円筒状の容器に、容器内壁に沿って周面を一周するように上側は略直線状で、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、その下に粗めのざらつきのある素材を封入した層を設けて段を形成し、上下にほぼ同様の構成で段を重ねて形成したものは、甲号証のうち、いずれにも現れておらず、引用部分1の形態に基づいて、明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けず、菓子層を1段2層からなるものに増減し、各層をおおむね均一な厚みのものとし、各層の縦方向長さに多少の変更を加えるなどしても、上記態様が現されていないこれらの意匠から本件意匠部分の形態を具体的に創出することは、極めて困難であると言わざるを得ず、また、置き換えなどの手法を用いて、フルーツなどの上側にきめの細かい素材を充填した層を形成し、その下に粗めのざらつきのある素材を封入して成る甲3意匠の菓子層の形態を利用したとしても、層の下側を互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、そのアーチ状部間に、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成る形態とすることについて、本願出願前に本件意匠部分のような形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。 したがって、引用部分1の形態に基づいて甲3意匠から甲17意匠に見られる公知形態を組み合わせるなどして容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできない。 チ 小括 以上のとおり、本件登録意匠が、引用部分1に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできないから、無効理由2によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項の規定によって、無効とすべき理由はない。 (3)無効理由3について 本件登録意匠は、引用意匠2(甲第2号証の意匠)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。 甲第2号証の掲載画像には4つの同様の製品(が現れているから、左から2つめのものを引用意匠2として、形態等を認定する。また、本件意匠部分と対比の対象とする引用意匠2の部分を「引用部分2」とする。 具体的には以下のとおりである。 ア 引用意匠2(甲第2号証(別紙第3参照)) インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 noon.for.dessert)に掲載。 掲載URL: https://www.instagram.com/p/CJ8WNeUF-S2/?utm_source=ig_web インターネット掲載日:令和3年(2021年)1月12日 (ア)意匠に係る物品 引用意匠2の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。 (イ)引用部分2の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 引用部分2は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上縁部以外の上面、並びに、上寄りに内壁に沿って横方向に配したフルーツ(断面)及び、下寄りに略帯状に内壁に沿って横方向に配したフルーツ(断面)などを除いた全体にわたる位置及び範囲である。 (ウ)引用部分2の形態 基本的構成態様 A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。 具体的態様 B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、容器下端周縁部はごく僅かに弧状に面取りし、その下に薄い台部を設け、底面は不明である。 C 菓子層は、上段3層、下段2層から成る段を2段重ねて構成し、上段の第1層は、上側が略直線状で、下側は湾曲し、不規則に浅く波打って、きめの細かい素材をのみを充填して成り、上段の第2層は、細かいざらついた素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していない態様であって、上段の第3層は、容器内壁に沿って、上側が湾曲し、不規則に浅く波打ち、下側も容器内壁に沿って、周面を一周するように略等間隔の不揃いなジグザグ状で、層内上端から半ばまでにきめの細かい素材を充填して成り、下段の上方(第1層)は、上側が略直線状で下側は略山状あるいは円弧状の小刻みな凹凸を連ねて形成し、その層内上端から半ば過ぎまでにきめの細かい素材を充填して成り、下段の下方(第2層)には、上側が湾曲し、不規則に浅く波打ち、下側は、部分的に不揃いな略直線状であって、きめの細かい素材を充填して形成されている。また、上段の第2層以外の各段の各層は、内壁までいっぱいに形成している。 D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部、各菓子層(上1:上2:上3:下1:下2)の縦方向長さ(厚み)及び台部の比率は、全体の高さを99として、上から、約3.5:9:5.5:34:26:15:6である。 E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、上段の第1層及び第3層並びに下段の第1層及び第2層は、略白色(明るい明調子)で、上段の第2層及び台部は略黒色(暗調子)である。 F 容器上の中央に、略楕円形の中央に、一回り小さなやや左に傾けたピンク色の楕円形を略白色の余地を設けて配し、同方向に傾けた白抜きの「noon」との文字列を配した表示部を設けている。 イ 引用部分2が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 引用部分2については、前記アのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 noon.for.dessert)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、「2021年1月12日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。 よって、引用部分2については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。 ウ 本件登録意匠と引用意匠2の対比 本件登録意匠については、前記1に記載のとおり、引用意匠2については、前記アのとおりである。 (ア)物品について 本件登録意匠は「容器付き菓子」であって、引用意匠2は「缶ケーキ」であって、表記は相違するが、共に容器内に菓子を封入したものであるから、本件登録意匠と引用意匠2(本項目において、以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。 (イ)本件部分と引用部分2の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲について 本件部分と引用部分2(本項目において、以下「両部分」という。)は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部から成り、長めであるが片手で持てる大きさであるから、両部分の、用途及び機能並びに大きさは同一であり、位置及び範囲については、本件部分は、上縁部以外の上面、並びに、上寄り及び下寄りの内壁に沿って横方向に間隔を開けて配したフルーツなどを除いた全体にわたる位置及び範囲であって、引用部分2は、除く部分において、下寄りの内壁に沿って横方向に配したフルーツ部分が、略帯状であり、位置及び範囲が一部相違するものの、共に、上縁部以外の上面並びに上寄り及び下寄りの内壁に沿って横方向に配したフルーツなどを除いた全体にわたる位置及び範囲であるから類似する。 (ウ)両部分の形態について A 共通点 基本的構成態様について (A)全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである点、 具体的態様について (B)容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設したものである点、 (C)菓子層は下段は2層から成り、上段の第1層及び下段の第1層は、上側が略直線状で、きめの細かい素材を充填し明るい明調子である点、 (D)全体に明暗調子(色彩の明暗を含む。)が現れ、上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点 が共通する。 B 相違点 具体的態様について (A)本件意匠部分は明暗調子のみのものであって、引用部分2は色彩が現れている点、 (B)上縁部の厚み比率について、部分全体の縦方向長さを約99として(以下、当項目において、本件意匠部分及び引用部分2の部分全体の縦方向長さは約99とする。)として本件意匠部分は約2であるのに対し、引用部分2は、約3.5である点、 (C−1)本件意匠部分の菓子層について、上段は2層から成るものであるのに対し、引用部分2の上段は3層から成るものである点、 (C−2)本件意匠部分の上段は、すべての層が上下側略直線状のおおむね均一な縦幅(厚み)の層で、その上方(第1層)は、容器内壁に沿って周面を一周するように、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、厚み比率は約42であって、上段の下方(第2層)は、粗めのざらつきのある素材を封入し、層の上下側は略直線状で、厚み比率は約12で、明調子であるのに対し、引用部分2の上段の最も上側(第1層上側)及び最も下側(第3層下側)を除いて、他の層の上下側は、湾曲し、不規則に浅く波打っており、上方(第1層)は、きめの細かい素材をのみを充填して成り、厚み比率は、約9であって、第3層の下側は、容器内壁に沿って、周面を一周するように略等間隔の不揃いなジグザグ状で、層内上端から半ばまでにきめの細かい素材を充填して成り、厚み比率ついては、約34で、略白色で明るい明調子であって、第2層は、その間に挟まれ、細かいざらついた素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していない態様で、厚み比率ついては、約5.5で、略黒色の暗調子である点 (C−3)本件意匠部分の下段は、すべての層が上下側略直線状のおおむね均一な縦幅(厚み)の層で、上方(第1層)は、容器内壁に沿って周面を一周するように、下側に互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、厚み比率は約35で、下方(第2層)は、粗めのざらつきのある素材を封入し、厚み比率は約8で、明調子であるのに対し、引用部分2の下段の上方(第1層)は、下側は略山状あるいは円弧状の小刻みな凹凸が不規則に連なって形成し、その層内上端から半ば過ぎまでにきめの細かい素材を充填して成り、厚み比率は約26で略白色の明るい明調子で、下方(第2層)は、層の上側は不規則に浅く波打ち、下側は、部分的に不揃いな略直線状であってきめの細かい素材のみを充填して成り、厚み比率は約15で略白色で明るい明調子である点、 (D)菓子層全体の階調について、本件意匠部分は、明るい明調子と明調子を交互に形成しているのに対し、引用部分2は、上よりに配置された部分的な暗調子部(上段の第2層)以外は、ほぼ略白色の明るい明調子である点、 (E)本件意匠部分は、容器の下端周縁部は弧状に面取りし、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成しているのに対し、引用部分2は容器下端周縁部の面取りは、ごく僅かで、その下に厚み比率が約6の黒い台部を設けており、底面の態様は不明である点、 (F)引用部分2は、容器上の中央に、略楕円形の中央に、一回り小さなやや左に傾けたピンク色の楕円形を略白色の余地を設けて配し、同方向に傾けた白抜きの「noon」との文字列を配した表示部を設けているのに対し、本件意匠部分は、配していない点、 で相違する。 エ 本件登録意匠と引用意匠2が類似するか否かの判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 本件意匠部分及び引用部分2(本項目において、以下「両部分」という)の形態については、以下のとおり評価する。 (ア)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、具体的態様としてあげた共通点(B)は、この種の容器付き菓子の物品分野において、飲料缶様の略有底円筒状の容器を採用した事による、自明ともいうべき態様の共通点であるから両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(C)についてもこの種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通に見られる形態であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。そして、共通点(D)の上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点については、この種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通の態様であり、全体に明暗調子が現れたものである点は、図面代用写真及び画像で現されたものの、当然の態様であるといえるから、両部分の類否判断に与える影響は微弱である。 よって、共通点(A)から共通点(D)は、類否判断に与える影響がいずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (イ)相違点の評価 これに対して、両部分の各相違点を見ると、本件登録意匠に係る物品である「容器付き菓子」は、菓子の購入者などを主な需要者とし、容器を食器として、スプーンなどを用いて食すものであるから、需要者は、食べやすさはもちろん、各菓子層の味わいの相違や食感などに関心を持ち、外観から観察される各層の色調や層の厚さによる量のバランスや素材感などを注目するところ、両部分各層の縦方向長さ比率(厚み)は、各々相違し、まず、相違点(C−1)は、両部分の上段の菓子層数の相違であるから、菓子層の構成に関わり、両部分の類否判断に一定程度の影響を与え、次に、相違点(C−2)は、両部分の上段の菓子層についての相違であるが、特に、引用部分2に見られる細かいざらついた素材の略黒色で暗調子の層の有無、並びに、粗めのざらつきのある素材の層の有無、及び、上段下側の態様が互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成して成るものか、不揃いなジグザグ状に形成してなるものかの点は、一見して看取できる相違であって、また、アーチ状部間に、略柱状に、層の上下方向全幅にわたり、きめの細かい素材を充填して成るものか、上下方向上端から層の半ばまでに、きめの細かい素材を充填しなるものかの相違も容易に看取できるものである。そして、相違点(C−3)は、両部分の下段の菓子層についての相違であり、下段においても上段と同様に、粗めのざらつきのある素材を封入した層の有無、上方層の下側の態様が互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成して成るものか、略山状あるいは円弧状の小刻みな凹凸が連なるように形成してなるものかの点は、一見して看取できる相違であって、また、アーチ状部間に、略柱状に、層の上下方向全幅にわたり、きめの細かい素材を充填して成るものか、上下方向上端から層の半ば過ぎまでに、きめの細かい素材を充填しなるものかの相違も容易に看取できるものである。さらに、全体として、引用部分2は、上段第2層によって、上方寄りに素材感及び明暗調子による強いアクセントが生じており、それ以外の層は、下側もしくは上下側が、不規則に浅く波打つなど、態様が一様ではなく、きめの細かい素材を充填したことにより、みっちりとしつつも全体として、不揃いな視覚的印象を与えているのに対し、本件意匠部分の、粗めのざらつきのある素材の層を上下段の下方に間隔を置いて配置した態様は、その余にきめの細かい素材を充填して成る中で、全体に一定のアクセントを繰り返し与えており、きめの細かい素材によるしっとりした質感の中で密に詰まった凹凸によるやや乾燥した触感を想起させるような層の視覚的印象は、需要者に両部分は別異のものであるとの印象を強く与えるから、これらの相違が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。そして、相違点(D)の菓子層全体の階調については、明るい明調子と明調子を交互に配した穏やかな明暗調子からなる態様と、引用部分2の上寄りに暗調子と明るい明暗調子のコントラストがある態様である点で相違し、上記の相違点(C−2)及び相違点(C−3)を補強し、この点は両部分の類否判断に与える影響は大きい。そして、相違点(A)の明暗調子のみで表したものか色彩を現したものかの点は、出願に際し、色彩を表さない図面代用写真としたものか、実製品の色彩が現れた画像であるかの相違であって、双方ともにありふれた態様であって、相違点(B)の上縁部の厚み比率の相違についても、さほど需要者も注目しない上縁部の厚み比率の多少の相違であり、相違点(E)は、黒い台部の有無においては多少の印象差はあるものの、底面の緩やかな凹部を及び外縁寄りに円形溝については、底面側の目につかない部分の、この種容器付き菓子の物品分野において、よく見られる形態について、表れているか不明かの相違であって、これらの両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(F)については、実製品に店名や商品名のロゴなどの文字を施すことは、ごく普通に行われており、これらの文字列等の有無が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 そうすると、相違点(A)、相違点(B)、相違点(E)及び相違点(F)が両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(C−1)の両部分の類否判断に与える影響は一定程度であって、相違点(D)は両部分の類否判断に与える影響が大きく、相違点(C−2)及び相違点(C−3)は両部分の類否判断に与える影響が極めて大きく、総合すると、相違点が総じて両部分類否判断に与える影響は大きく、共通点は両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象づけるものであるから本件意匠部分が引用部分2に類似するということはできない。 オ 小括 以上のとおり、両部分の相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似するものではない。 そうすると、前記イのとおり、引用意匠2は本件登録意匠の出願前に公然知られたものであると認められ、意匠に係る物品も同一であって、両部分の用途及び機能並びに大きさは同一で、位置及び範囲についても類似するが、形態について、両部分は類似しないから、本件登録意匠は、引用意匠2に類似する意匠ということはできない。 したがって、無効理由3によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。 (4)無効理由4について 本件登録意匠が引用意匠2に基づき、当業者が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであるか否かについて検討し、判断する。 本件登録意匠は、前記1に記載のとおり、引用意匠2は、前記(3)ア(ア)から(ウ)に記載のとおり、甲3意匠から甲17意匠は、(2)アからソのとおりである。 ア 創作非容易性の判断 まず、本件意匠部分の形態のうち、透明な略有底円筒状の容器に、複数の菓子層を積層して複数段封入したものとすることは、容器付き菓子の物品分野において、ごく普通というべき形態であって、次に、容器の上縁寄り上方の周面を中胴より一周り小径に絞って形成し、上縁部は巻き締めて側面視で短く立設し、下端側角部は丸みを帯びた飲料缶様としたものも格別特徴的な形態とはいえず、ごく普通に見受けられるものであり、全体を明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けないものとすることも、特段の創作を要するものではなく、2段の菓子層から成るものとすることも、3段の菓子から成るものとすることも、1段1層から成るものも1段2層から成るものも本件登録意匠出願前に見受けられる(例えば、公然知られた形態の参考例として、前記、引用意匠1及び甲9意匠)から、「容器付き菓子」の物品分野における当業者においては、なんら格別の困難を要さず、公然知られた意匠などに基づいて、容易に創作することができたものと認められる。 そして、各菓子層の態様について見ると、おおむね均一な厚みの菓子層を形成すること、種々の明暗調子を施した菓子層を形成すること、意匠登録を受けようとする部分以外の部分と合わせてきめの細かい素材を用いて、菓子層を形成することも、様々な菓子層を積層して形成する菓子類(複数の素材を重ねて作成する、ケーキやグラススイーツや冷菓など)において、ありふれた手法といい得るから、当業者においては、想到するのに困難を要したということはできず、各層の縦方向の長さ比率に若干の変更を加えることも、また、当業者であれば、容易に想到できるものと認められる。 しかしながら、様々な態様を組み合わせて創出した、具体的形態においても、一定の創作性があると認められるところ、本件意匠部分の具体的な構成態様である、透明な飲料缶様の略有底円筒状の容器に、容器内壁に沿って周面を一周するように、上側は略直線状で、下側は互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、上方は左右方向にひとつながりに、アーチ状部間は、略柱状に層内の上端から下端まできめの細かい素材を充填して成り、その下に粗めのざらつきのある素材を封入した層を設けて段を形成し、上下にほぼ同様の構成で段を重ねて形成したものは、甲号証のうち、いずれにも現れておらず、引用部分2の形態に基づいて、明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けず、菓子層を1段2層からなるものに増減し、各層をおおむね均一な厚みのものとし、各層の縦方向長さに多少の変更を加えるなどしても、上記態様が現されていないこれらの意匠から本件意匠部分の形態を具体的に創出することは、極めて困難であると言わざるを得ず、また、置き換えなどの手法を用いて、フルーツなどの上側にきめの細かい素材を充填した層を形成し、その下に粗めのざらつきのある素材を封入して成る甲3意匠の菓子層の形態を利用したとしても、層の下側を互いに間隔を設けた6つの略角丸尖頭アーチ状部を略等間隔に形成し、そのアーチ状部間に層内の上端から下端まで略柱状に、きめの細かい素材を充填して成る形態とすることについて、本願出願前に本件意匠部分のような形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。 したがって、引用部分2の形態に基づいて甲3意匠から甲17意匠に見られる公知形態を組み合わせるなどして本件意匠部分の形態が容易に創作できたということはできない。 イ 小括 以上のとおり、本件登録意匠が、引用部分2に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできないから、無効理由4によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項の規定によって、無効とすべき理由はない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1から無効理由4に係る理由によっては、本件登録意匠の登録は無効とすることはできない。 審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 |
審決日 | 2024-08-14 |
出願番号 | 2021011162 |
審決分類 |
D
1
113・
121-
Y
(A1)
D 1 113・ 113- Y (A1) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 前畑 さおり |
登録日 | 2022-02-04 |
登録番号 | 1707466 |
代理人 | 太田 清子 |
代理人 | 寺島 英輔 |
代理人 | 佐川 慎悟 |
代理人 | 永井 利幸 |
代理人 | 江部 陽子 |
代理人 | 高橋 隆二 |
代理人 | 大窪 智行 |
代理人 | 川野 陽輔 |
代理人 | 藤尾 将之 |