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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 N3
管理番号 1415348 
総通号数 34 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-10-02 
確定日 2024-09-03 
意匠に係る物品 Animated graphical user interface 
事件の表示 意願2022−500901「Animated graphical user interface」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:欧州連合知的財産庁、2021年11月23日)を主張する、令和4年(2022年)5月17日の国際意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年) 3月 9日付け 拒絶の通報
同年 4月 4日 手続補正書の提出
同日 意見書の提出
同年 7月11日付け 拒絶査定
同年 10月 2日 審判請求書の提出
同日 手続補正書の提出

なお、令和5年4月4日提出の手続補正書に係る補正(以下「第1回補正」という。)は、「意匠に係る物品の説明」を追加するものであり、同年10月2日提出の手続補正書に係る補正(以下「第2回補正」という。)は、「意匠に係る物品の説明」を変更するものである。

第2 本願の意匠
本願は、物品から離れた画像自体について意匠登録を受けようとするもの(以下「画像意匠」という。)で、願書の「意匠に係る物品」の欄の記載によれば、意匠に係る画像の用途を「Animated graphical user interface」(参考訳:「動画グラフィカルユーザーインターフェース」、以下参考訳で示す。)とし、その態様を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。

第3 各手続の具体的な内容
1 出願時の願書及び添付図面の記載
出願時の本願意匠は、画像の用途(「意匠に係る物品」の欄)を「動画グラフィカルユーザーインターフェース」とし、願書の「意匠の説明」及び「意匠に係る物品の説明」は空欄としたものである。
添付図面には、横長矩形状の枠の中に複数の区画線及び小さなボックス部が表され、図5.1〜図5.7にわたって本願意匠の一部が変化する態様が示されている。

2 令和5年3月9日付け拒絶の通報
原査定における拒絶の理由は、「意匠法の保護対象となる画像とは、意匠法第2条第1項において規定されているように、「機器の操作の用に供される画像又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」です。
この意匠登録出願の願書の「意匠を構成する製品又は意匠が使用されることとなる製品」の欄には「動画グラフィカルユーザーインターフェース」と記載されていますが、当該願書の記載及び願書に添付した図面を総合的に判断しても、画像の用途及び機能が不明確です。
画像は「機器の操作の用に供される画像又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」に該当する場合に限り、意匠登録を受けることができますので、画像の具体的な用途及び機能を明確に記載することが必要です。」というものである。

3 第1回補正
出願人は、第1回補正により願書の「意匠に係る物品の説明」を追加した。

「This animated graphical user interface includes sequential images of progress bar. Animation shows a completion area spans/extends to a right end of the progress bar. The animation indicates a current progress of a procedure to a user.(参考訳:この動画グラフィカルユーザーインターフェースは、プログレスバーの連続画像を含む。アニメーションは、完了領域がプログレスバーの右端まで広がる/拡張されることを示す。このアニメーションは、手順における現在の進行状況をユーザーに示す。)」

4 令和5年7月11日付け拒絶査定
原審は、第1回補正後の本願意匠に対し、当該補正により追加された説明では、いまだ本願の画像の具体的な用途及び機能が明らかになっていないものと認められ、先の拒絶の理由は依然として解消していないとして、拒絶の査定を行った。

5 第2回補正
審判請求人は、令和5年10月2日に審判請求書を提出し、同日に行った第2回補正により、願書の「意匠に係る物品の説明」を「This animated graphical user interface includes an upper box, a lower box and sequential images of progress bar. Animation shows a completion area spans/extends to a right end of the lower box. The animation indicates a current progress of a procedure associated with the lower box to a user.(参考訳:この動画グラフィカルユーザーインターフェースは、上段のボックス、下段のボックス及びプログレスバーの連続画像を含む。アニメーションは、完了領域が下段のボックスのプログレスバーが右端まで広がる/拡張されることを示す。このアニメーションは、下段のボックスに関連付けられた手順における現在の進行状況をユーザーに示す。(以下、参考訳で示す。))に変更した。

第4 当審の判断
1 補正の要旨変更の有無について
本願意匠が工業上利用することができる意匠に該当するか否かについて検討する前に、第1回及び第2回補正が、願書の記載又は願書に添付した図面の要旨(以下「願書の記載等の要旨」という。)を変更するものか(意匠法第17条の2第1項)について検討する。

(1)第1回補正
第1回補正によって追加された「意匠に係る物品の説明」は、第2回補正によって変更されているため、変更後の補正内容について、下記(2)で検討する。

(2)第2回補正
第2回補正によって、「意匠に係る物品の説明」は、下記の記載に変更された。
「この動画グラフィカルユーザーインターフェースは、上段のボックス、下段のボックス及びプログレスバーの連続画像を含む。アニメーションは、完了領域が下段のボックスのプログレスバーが右端まで広がる/拡張されることを示す。このアニメーションは、下段のボックスに関連付けられた手順における現在の進行状況をユーザーに示す。」

意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面等から総合的に判断されるものであるところ、本願意匠の画像の用途は、願書の「意匠に係る物品」の欄の記載によれば、「動画グラフィカルユーザーインターフェース」に係るものであり、図5.3から図5.7には、本願意匠の右上に配された上下2段のボックス部のうち下段のボックス部に暗調子のバーが左から右へ延伸する動きが見られ、当業者であればこれがアプリ等の画面の部品のひとつであるプログレスバー(コンピュータの操作画面の表示要素の一種で、処理や作業の進捗状況を棒状の領域の内部の色の変化によって表示するもの。(「IT用語辞典」より))であることは理解できる。
したがって、「この動画グラフィカルユーザーインターフェースは、上段のボックス、下段のボックス及びプログレスバーの連続画像を含む。アニメーションは、完了領域が下段のボックスのプログレスバーが右端まで広がる/拡張されることを示す。」までの記載は、本願意匠の画像が願書の「意匠に係る物品」に記載された「動画グラフィカルユーザーインターフェース」に係る用途のものである点と、願書に添付された図面から把握できるプログレスバーを備えているということを単に文章に記載して表したものであって、願書の記載等の要旨を変更するものではないと認められる。

また、「このアニメーションは、下段のボックスに関連付けられた手順における現在の進行状況をユーザーに示す。」との記載における「手順(procedure)」は、図面に表されたプログレスバーの説明を加えたにすぎないもので、「下段のボックスに関連付けられた」の記載も、プログレスバーは、下段のボックスに表れるのであるから、当業者であれば図面から推認できる範囲のものにすぎず、願書の記載等の要旨を変更するものではない。

よって、第1回補正により「意匠に係る物品の説明」を追加し、追加した「意匠に係る物品の説明」を変更する第2回補正を行っているが、第2回補正は、願書の記載等の要旨を変更するものには該当しない。

工業上利用することができる意匠に該当するか否か
本願意匠は画像意匠に係るものであるところ、意匠法は、保護の対象となる画像を、機器の操作の用に供されるもの(以下「操作画像」という。)又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの(以下「表示画像」という。)に限ると定義している(第2条)。
また、画像意匠が工業上利用することができるものであると認められるためには、(A)意匠法上の画像意匠と認められるものであること、(B)意匠が具体的なものであること、(C)工業上利用することができるものであること、を満たさなければならないとされる(意匠審査基準 第4部第1章6.1.1(以下、第1章まで共通するものは末尾の数字のみ表示する。)参照)。
これらの要件を満たしているか否かは、画像意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等から、意匠をどのように把握できるかによるため、まず、本願意匠について認定する。

(1)本願意匠の画像の用途の認定
本願意匠は、添付図面から、画像全体を横長矩形状の枠とするもので、上端部には細長区画部が2段連接し、その下の左側には大きな区画部を有し、大きな区画部の右側には、上端部の細長区画部の下段の高さと横幅が略同幅の縦細区画部を有し、その右側には同幅で高さの異なる(上段が高く、下段が低い)一対のボックス部(以下「一対のボックス部」という。)が収まる縦長区画部を有し、上方にそのボックス部を、下端部には、細長区画部の下段の高さと略同じ高さのボックスを3つ配し、縦長区画部の右側は、全体枠の右端部まで縦長区画部の略1/2の横幅の細幅区画部を配した態様とするものである。
本願意匠は、出願当初の願書の記載から、動画グラフィカルユーザーインターフェース、つまりGUIであることを考慮すれば、上端部の2段の細長区画部は、タイトルバーやメニューバー、左側の大きな区画部にはグラフや映像等の表示部、その右側の縦長区画はスクロール表示、下側の小さなボックス部は各種の情報やタイトル表示、あるいはインタラクティブなボタンなどが想定され、全体としてウィンドウの一種であり、ユーザーと機器が情報をやりとりする操作を伴う画像とも考えられるが、少なくとも機器に関する何らかの情報表示画像であることは推認できる。
また、一対のボックス部は、図5.1と図5.2は、略同じ図であり、図5.3で下段のボックスにプログレスバーが表示され、それ以降の図はプログレスバーが下段のボックスの右端にまで達する動きが示されている。この一連の図面から、下段のボックスは、なんらかの入力欄あるいは表示欄であったもの(図5.1)から、その内容に関する処理や作業の進行状況を示すプログレスバー表示部に切り替わった(図5.2)後、その進行状況を示す変化を伴う画像(図5.3から図5.6)の創作であるとみることができる。
本願意匠は、上記のとおり、動画グラフィカルユーザーインターフェースに係るものであり、そもそも「GUI」は、画面上にグラフィカル(図形状)に表示された画像に、ユーザーが入力したり選択することでリアクションを発生させる仕組であるから、この変化は、GUI画像が有する、ユーザーの入力等の操作に反応する機能に基づいて、画像がインタラクティブに変化したものと捉えられる。つまり、図5.1から図5.2、図5.3の変化は、ユーザーの入力等の操作によって下段のボックスがプログレスバー表示部になる変化を示しているのであるから、このプログレスバーが下段のボックスに関連する処理や作業(手順)の進行状況を示すものであることは、画像意匠の属する分野における通常の知識に基づいて十分推認可能なものと認められる。
以上のことから、本願意匠の画像の用途は、「GUI画像が有する、ユーザーの入力等の操作に反応する機能に基づいて、一対のボックス部の下段のボックスがプログレスバー表示に切り替わり、下段のボックスに関連する処理や作業の進行状況を示すプログレスバーとしての用途を有する動くGUI画像を備えた情報表示画像」と認定できる。

(2)画像意匠が工業上利用できる意匠に該当するか否かについて
(A)意匠法上の画像意匠と認められるものであること
「意匠法においては、全ての画像を保護するのではなく、その保護対象を「操作画像」又は「表示画像」に限っている。画像意匠は少なくともこのいずれかに該当する必要があり、「操作画像」と「表示画像」のいずれにも該当する画像についても、この要件を満たすものと判断する。これらのいずれにも該当しない画像は、意匠法にいう意匠に該当しない。「操作画像」とは、対象の機器が機能にしたがって働く状態にするための指示を与える画像であり、特段の事情がない限り、画像の中に何らかの機器の操作に使用される図形等が選択又は指定可能に表示されるものをいう。画像意匠は物品から離れたものであるので、ここでいう機器が特定されている必要はなく、操作対象となる用途や機能(例えば、写真撮影用画像)が特定されている場合でも本要件を満たしているものと認められる。「表示画像」とは、何らかの機器の機能と関わりのある表示を行う画像であり、画像の中に機器の何らかの機能と関わりのある表示を含むものをいう。ただし、単に画像を表示する機能のみによって表示された画像は「表示画像」に含まない。」とされる(意匠審査基準6.1.1.1参照)。

一対のボックス部に着目すると、GUI画像が有する、ユーザーの入力等の操作に反応する機能に基づいて、一対のボックス部の下段のボックスにプログレスバーが無い状態からプログレスバー表示部に切り替わる点において、機器の操作の用に供されるのであるから、操作画像であり、下段のボックスに表示されるプログレスバーは、それ自体、機器がその機能を発揮した結果として表示されるものであることから、一対のボックス部は、機器がその機能を発揮した結果として処理や作業の進行状況を表示する画像、つまり表示画像でもある。
一対のボックス部は、表示画像を備えた操作画像ということができ、画像全体としても情報表示の用途を有するものと推認できるのであるから、本願意匠は、「操作画像」と「表示画像」のいずれにも該当する画像である。

上記のとおり、本願意匠は関連機器の操作性や視認性を高めるべく開発された画像であって、映画やゲーム等のコンテンツの画像など、機器との関連性を有さない、単に画像を表示する機能のみによって表示されるものではない。
よって、意匠法上の画像意匠と認められる。

(B)意匠が具体的なものであること
「出願された画像意匠が具体的なものと認められるためには、画像意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等から、(a)画像意匠の用途及び機能、(b)画像の一部について意匠登録を受けようとする場合は、意匠登録を受けようとする部分の(画像意匠全体に対する)位置、大きさ範囲及びその他の部分との境界、(c)形状等の具体的な内容が直接的に導き出されなければならない」とされる(意匠審査基準6.1.1.2参照)。
本願意匠は、画像の一部について意匠登録を受けようとするものではないため(b)は該当せず、出願当初の願書添付図面から、(c)は特定できるため、(a)における画像意匠の用途及び機能が、画像意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等から把握できるか否かが問題となるが、この点については(1)で認定したとおりであるから、本願意匠は、具体的なものである。

(C)工業上利用することができるものであること
本願意匠は、その画像を表示する機能を有するプログラム等により同一のものが大量に作成し得るものであるから、工業上利用することができるものである。

(3)小括
以上のとおり、本願意匠は、意匠法が規定する画像意匠に該当し、画像の用途は具体的であり、工業上利用することができる意匠に該当する。

第5 むすび
本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当し、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2024-08-20 
出願番号 2022500901 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 北代 真一
渡邉 久美
登録日 2024-09-18 
登録番号 1780937 
代理人 五十嵐 貴裕 
代理人 笛田 秀仙 

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