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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1415357 
総通号数 34 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-12-22 
確定日 2024-09-19 
意匠に係る物品 靴 
事件の表示 意願2022− 22203「靴」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和4年(2022年)10月14日(パリ条約による優先権主張 2022年8月23日 アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年) 3月24日付け:拒絶理由の通知
同年 6月30日 :意見書の提出
同年 9月14日付け:拒絶査定
同年 12月22日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「靴」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする部分を「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、底面図及び右側面図を除く、各図に示される砂状の点は立体表面の形状を表すものである。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1685184号
(意匠に係る物品、Shoe)の意匠
引用意匠の本願意匠が意匠登録を受けようとする部分に対応する部分

以下、本審決では、本願の意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」、引用意匠のうち本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分を「引用部分」という。

第4 当審の判断

以下において、本願意匠と引用意匠が類似するか否かについて検討し、判断する。なお、本願意匠の略ライン状パターンの下端とソールとの間に表された形状線は、面積を持たないため、当審の判断において、本願意匠の構成要素から除外する。

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「靴」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「Shoe」(参考訳:「靴」、以下日本語訳で示す。)であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも靴の甲皮外側面部に施された、装飾、補強等のためのパターンであるから、用途及び機能が一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、甲皮外側面部において、つま先側からかかと側に向かって、甲皮部全長の約2/12から7/12までの位置、かつ、鳩目の下やや間隔を空けた位置から甲皮部の下端までの位置における、略ライン状パターンで表された領域を占めるのに対し、引用部分は、甲皮外側面部において、つま先側からかかと側に向かって、甲皮部全長の約4/12から9/12までの位置、かつ、鳩目のすぐ下の位置から甲皮部の下端までの位置における、略ライン状パターンで表された領域の占めるものであるから、両部分は、大きさ及び範囲は概ね一致するが、位置は一致しない。

(4)両部分の形状等
ア 共通点
両部分は、甲皮外側面部において、略縦長逆「U」字状に形成されたラインを、前傾約70度の角度で等間隔に複数本並べて、略ライン状パターンを形成した点において、共通する。

イ 相違点
(ア)ラインの形状について、本願部分は、やや幅狭のラインであるのに対し、引用部分は、やや幅広のラインである点、
(イ)ラインの本数について、本願部分は11本であるのに対し、引用部分は7本である点、
(ウ)略ライン状パターン全体の輪郭形状について、本願部分は、つま先側が先細り(つま先側高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1:1.8:5)の略弓なり様であるのに対し、引用部分は、つま先側が僅かに先細り(つま先側の高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1.8:2:4.5)で下辺にうねりがある略平行四辺形様である点において、両部分は相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、総合的に観察して、両部分の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能
両部分の用途及び機能は一致するから、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分の大きさ及び範囲は概ね一致するから、類似する。

一方、両部分の位置について、本願部分は、甲皮部全長の約2/12から7/12までの位置であって、鳩目の前端より約4本分前方から略ライン状パターンを配置しているのに対し、引用部分は、甲皮部全長の約4/12から9/12までの位置であって、鳩目の前端から後端までの間に略ライン状パターンが収まっているから、両部分の位置は一致せず、また、本願部分は、真横からみた場合だけでなく、前方からみた場合においても、略ライン状パターンの前端付近を容易に視認することができる点において、引用部分とは別異の印象を需要者の視覚に生じさせており、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(4)形状等
ア 共通点の評価
両部分は、略縦長逆「U」字状に形成されたラインを、前傾約70度の角度で等間隔に複数本並べて、略ライン状パターンを形成した点において、一定程度の共通感を生じさせているが、概括的なものであって、格別需要者の注意を引くものではないから、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
相違点(ア)について、本願部分は、細紐により略縦長逆「U」字状に輪郭形成されたやや幅狭のラインであるのに対し、引用部分は、略縦長逆「U」字帯状に形成されたやや幅広のラインであり、両部分の形状は明らかに異なるものであり、かつ、本願部分のラインの形状は、この種物品分野において、ごく普通にみられるありふれたものということはできないから、相違点(ア)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、本願部分は11本のラインであるのに対し、引用部分は7本のラインであり、本数の差は1.6倍程度であって、その差は小さいものではなく、需要者に異なる美感を与えているものであるから、相違点(イ)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、本願部分は、つま先側が先細り(つま先側の高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1:1.8:5)の、高さが低く横に長い、略弓なり様の輪郭形状であるのに対し、引用部分は、つま先側が僅かに先細り(つま先側の高さ:かかと側の高さ:全体の横の長さの比率は、約1.8:2:4.5)で下辺にうねりがある、高さが高く横に短い、略平行四辺形様の輪郭形状であって、両部分は明らかに異なる輪郭形状を呈し、かつ、本願部分の輪郭形状は、この種物品分野において、ごく普通にみられるありふれたものということはできないから、相違点(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)から(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

(5)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能が同一であり、大きさ及び範囲が類似するが、位置は相違するから類似せず、形状等においては、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲


審決日 2024-09-04 
出願番号 2022022203 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
松田 光太郎
登録日 2024-09-30 
登録番号 1781669 
代理人 笹野 拓馬 

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