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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L6
管理番号 1416542 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-02-07 
確定日 2024-11-07 
意匠に係る物品 壁用出隅板 
事件の表示 意願2022− 20203「壁用出隅板」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和4年(2022年)9月21日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和5年(2023年) 5月30日付け:拒絶理由の通知
同年 7月 3日 :意見書の提出
同年 10月25日付け:拒絶査定
令和6年(2024年) 2月 7日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「建築用壁板」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願意匠は、正面視において、表面にランダムな凹凸模様のついた横帯状部とそれより一段下がった平坦な目地部を交互に複数縦に並列した壁用出隅板です。
この種物品分野では、横帯状部と平坦な目地部を交互に複数縦に並列した出隅板が本願出願前より公然知られており、その横帯状部と目地部の数は本願意匠と同じで、それぞれの太さの印象も近いです(意匠1)。また、建築物の構成物品の中には、その表面に本願意匠と同様のランダムな凹凸模様のある横帯状部とそれより一段下がった平坦な目地部を交互に複数縦に並列したものが本願出願前より公然知られています(意匠2)。この分野では、壁用出隅板の表面の模様を様々なテクスチャーを採用して仕上げることが一般的に行われているところ、本願意匠は、意匠1の出隅板の表面に意匠2のテクスチャーを採用して仕上げたに過ぎず、当業者にとって容易に創作できたものと認められます。

意匠1(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2009年10月15日に受け入れた
外壁材 総合カタログ 2009−10 一般地域用 2009年10月現在 第229頁所載
出隅板の意匠
(当審注:製品番号/EFD3504FKの意匠)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁意匠課が2002年12月3日に受け入れた
内・外装材 総合カタログ2002〜2003 第112頁所載
軒天井板材の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC14043384号)」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)本願意匠について
本願意匠の意匠に係る物品は、「壁用出隅板」である。

(2)本願意匠の形状等
ア 基本的構成態様
本願意匠は、正面視において、縦・横の長さの比率を約4.5:1とする略縦長アングル材形状の出隅材を基本として、表面にランダムな凹凸模様のある略横帯状かつ端面略台形のリブと、それより一段低い略横帯状の溝を、上下方向に等間隔で交互に複数配列して略横ストライプ状としたものであり、
具体的には、
イ 8本のリブと7本の溝を形成し、
ウ リブと溝の幅の比率を約1:0.4とし、
エ リブの表面に、凸部と凹部が滑らかに繋がる略柚肌状の凹凸模様を形成し、
オ リブの表面以外を、凹凸模様の無い面とし、
カ リブは、端面視において略偏平等脚台形状とし、
キ 上端及び下端に相じゃくりを設けたものである。

2 引用意匠の認定
以下、本願意匠の向きに合わせて意匠1及び意匠2の向きを認定する。

(1)意匠1
意匠1は、「出隅板」の意匠であって、その形状等は、略縦長アングル材形状の出隅材を基本として、略横帯状の上下角部がやや丸みを帯びたリブと、それより一段低い略横帯状の溝を、上下方向に等間隔で交互に複数配列して略横ストライプ状としたものであり、具体的には、リブと溝の幅の比率を約1:0.25とし、リブ及び溝を含む全体を凹凸模様の無い面としたものである。

(2)意匠2
意匠2は、「軒天井板材」の意匠であって、その形状等は、板材を基本として、表面にランダムな凹凸模様のある略横長細帯状かつ端面視略偏平等脚台形状のリブと、それより一段低い略横長細帯状の溝を、上下方向に等間隔で交互に複数配列して略横ストライプ状としたものであり、具体的には、リブと溝の幅の比率を約1:1とし、リブの表面に、平坦面に略虫食い状の凹みが施された様な凹凸模様を形成し、リブの表面以外を、凹凸模様の無い面としたものである。

3 本願意匠の創作性の検討
この意匠の属する分野において、略縦長アングル材形状の出隅材を基本として、略横帯状のリブと、それより一段低い略横帯状の溝を、上下方向に等間隔で交互に複数配列して略横ストライプ状としたもの(意匠1)や、リブの表面にランダムな凹凸模様を形成し、かつ、リブの表面以外を、凹凸模様の無い面としたもの(意匠2)は、本願の出願前に公然知られているものといえる。
しかしながら、出隅材を含むこの種の建築用外壁材(いわゆる「サイディング」)の分野において、表面に多種多様なテクスチャー(凹凸模様等)を施すことはごく一般的に行われているところ、当該表面テクスチャーは、デザイン性と機能性における様々な創意工夫がなされるものであるから、この種物品の意匠の創作の要部であるといえるが、本願意匠のリブの表面に形成された凸部と凹部が滑らかに繋がる略柚肌状の凹凸模様については、意匠2のリブの表面に形成された平坦面に略虫食い状の凹みが施された様な凹凸模様とは明らかに異なるものであるから、多少の変更を加えたとしても、意匠2の凹凸模様を採用して本願意匠の凹凸模様とすることができたということはできない。
また、この種の物品分野において、本願意匠のリブ部の表面に形成された凹凸模様と一致するものは、本願意匠の他には見られないものであるから、本願意匠は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
そうすると、本願意匠の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者がこれら公然知られた形状等に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2024-10-08 
出願番号 2022020203 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L6)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 松田 光太郎
渡邉 久美
登録日 2024-11-19 
登録番号 1785598 

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