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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1416546 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-02-26 
確定日 2024-10-10 
意匠に係る物品 バーチャルアシスタント装置操作用画像 
事件の表示 意願2022− 3842「バーチャルアシスタント装置操作用画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、本意匠を本願と同日に出願した意願2022−3841号とする、令和4年2月28日の関連意匠の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年12月27日付け 拒絶理由の通知
令和5年 2月16日 意見書の提出
同年 6月29日付け 拒絶理由の通知
同年 8月 2日 意見書の提出
同年11月29日付け 拒絶査定
令和6年 2月26日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る画像の用途を「バーチャルアシスタント装置操作用画像」とし、その態様を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、画像の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」(以下「本願画像部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の画像(以下、本願画像)は意匠に係る物品が「バーチャルアシスタント装置操作用画像」であり、その意匠登録を受けようとする部分の形態は、横長矩形の一点鎖線内部の左右幅ほぼいっぱいに3本の横罫線を表し、その罫線と罫線の間の左寄りに、隅丸矩形の操作ボタン1つを縦方向同位置に上下2段に配して構成されたものです。
また、当該操作ボタンは、意匠登録を受けようとする横長矩形部の左端から、ボタンの左右幅の約2倍の余白を取って配置されています。

しかし、画像表示領域の左右幅ほぼいっぱいに複数本の横罫線を表し、その罫線と罫線の間に操作ボタンを縦方向同位置に上下複数個配置して構成した態様は、本願出願前より公然知られています(引用意匠1)。
また、画像表示領域の左端から、操作ボタンの左右幅の約2倍の余白を取って隅丸矩形の操作ボタンを配置した態様も、本願出願前より公然知られています(引用意匠2)。
さらに、本願の願書の【意匠に係る物品の説明】には、「バーチャルアシスタント装置は、仮想的な補助者であるキャラクタを情報端末のディスプレイに表示させつつ情報端末から利用者に対して発話を行うような「疑似発話動作」を行うことで利用者を補助し得る装置である。」との記載がありますが、本願の画像は特にそのような用途及び機能のある画像ではなく、単にカレンダー内にイベント等を一覧、操作するための画像であって、本願に示された画像に【意匠に係る物品の説明】に記載された用途及び機能に係る創作上の特徴は認めらません。

そうすると、本願画像は、当業者であれば、引用意匠1の操作ボタンについて、その形状及び配置を引用意匠2のとおり変更して、意匠登録を受けようとする部分とした程度にすぎず、容易に創作できたものと認められます。

(中略)

引用意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1471480号の意匠
(意匠に係る物品:絶縁監視警報器)
表示部に表された画像(横罫線及び周囲を二重枠で囲んだ「履歴ボタン」の画像)

引用意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1635258号の意匠
(意匠に係る物品:医療用スキャナー機能付き電子計算機)
画像図に表された画像(操作ボタン左側に「Bed」「Gantry」「Detector」「Tube」と記載された4個の操作ボタンの画像)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)本願意匠の意匠に係る画像の用途
本願意匠の意匠に係る画像の用途は、「バーチャルアシスタント装置操作用画像」であり、仮想的な補助者であるキャラクタを情報端末のディスプレイに表示させつつ情報端末から利用者に対して発話を行うような「疑似発話動作」を行うことで利用者を補助し得る装置に用いられる画像であって、各ボタン画像(以下、「ボタン画像」を単に「ボタン」という。)のうち、いずれかを選択する操作がなされると、選択されたボタンに対応するコンテンツが提供されるものである。

(2)本願画像部分について
ア 本願画像部分の用途及び機能
本願画像部分の用途及び機能は、日単位で領域を分け、その日に行われる予定などをまとめた情報などのコンテンツを、各ボタンを押すことで表示させる操作を行うものである。

イ 本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分の位置、大きさ及び範囲は、全体の表示枠に対し、上下の余部をそれぞれ高さ幅の上から約1/4、下からは約1/2より僅かに短い高さ幅とし、全体の表示枠の左右幅ほぼいっぱいまでとするものである。

ウ 本願画像部分の態様
(ア)本願画像部分の構成
本願画像部分は、全体の表示枠に対し、横方向、左右端部にわずかな余部を設け、3本の罫線を均等幅で水平に配することで罫線間に2つの領域を構成し、各領域には複数の操作ボタンを水平に等間隔で配した態様とする中で、そのうちの左端に縦一列に表示される2つのボタンによる構成とするものである。

(イ)各構成の具体的態様
(a)罫線の間隔(高さ幅):罫線の長さは約1:11とするものである。
(b)ボタンは、縦幅:横幅を約2:3の横長矩形状とし、四隅をアール状とするもので、
(c)全体の表示枠の左端からボタンの左右幅の約2倍の余白を持って配置されたものである。
また、罫線全体の長さに対して、ボタンの中心部は、約2/9の位置となる。

2 引用意匠1(別紙第2参照)
(1)引用意匠1の意匠に係る画像の用途
引用意匠1は、電力設備の異常があれば警報等により漏電を警告する、絶縁監視警報器の表示部に表示された画像であって、各回路(CH)の計測データ及び警報等の履歴を含む情報を表示・設定変更等するための操作画面である。

(2)本願画像部分に相当する画像
引用意匠1の本願画像部分に相当する画像は、横罫線及び周囲を二重枠で囲んだ「履歴ボタン」の画像である。

ア 引用意匠1の用途及び機能
引用意匠1の用途及び機能は、各回路(CH)単位で領域を分け、過去の警報履歴などの情報を、ボタンを押すことで表示させる操作を行うものである。

イ 引用意匠1の位置、大きさ及び範囲
引用意匠1の位置、大きさ及び範囲は、全体の表示枠に対し、上下の余部をそれぞれ高さ幅の上から約1/7、下から約1/10と、上からの高さ幅より下からの高さ幅の方が短いものとし、全体の表示枠の左右幅ほぼいっぱいまでとするものである。

ウ 引用意匠1の態様
(ア)引用意匠1の構成
引用意匠1は、全体の表示枠に対し、横方向、左右端部にわずかな余部を設け、9本の罫線を均等幅で水平に配することで罫線間に8つの領域を構成し、各領域には複数の測定結果の表示部などを水平に配した態様とする中で、そのうちの、全体の表示枠の左右幅の中央やや右寄りに縦一列に表示される8つのボタンによる構成とするものである。

(イ)具体的態様
(a)罫線の間隔(高さ幅):罫線の長さは約1:14とするものである。
(b)ボタンは、縦幅:横幅を約3:5の横長矩形状とし、四隅はR状とせず、「履歴」の文字が現れる二重線で囲まれた態様とするもので、
(c)全体の表示枠の左端からボタンの左右幅の約7倍の余白を持って配置されたものである。
また、罫線全体の長さに対して、ボタンの中心部は、約3/5の位置となる。

3 引用意匠2(別紙第3参照)
(1)引用意匠2の意匠に係る画像の用途
引用意匠2は、医療用のスキャナー機能付き電子計算機においてスキャナー機能を発揮できる状態にするための操作画像である。

(2)本願画像部分に相当する画像
引用意匠2の本願画像部分に相当する画像は、操作ボタン左側に「Bed」「Gantry」「Detector」「Tube」と記載された4個の操作ボタンの画像である。

ア 引用意匠2の用途及び機能
引用意匠2の用途及び機能は、人体等を測定する医療用のスキャナー機器に対して、各種操作が割り当てられたボタンを押すことで各種操作を実行するものである。

イ 引用意匠2の位置、大きさ及び範囲
引用意匠2の位置、大きさ及び範囲は、全体の表示枠に対し、高さ幅の略上端部から縦幅の略中央までとし、全体の表示枠の左右幅に対して、中央やや左寄りとするものである。

ウ 引用意匠2の態様
(ア)引用意匠2の構成
引用意匠2は、全体の表示枠の左右幅ほぼいっぱいまでの横長矩形枠を縦に4つ並べ、各横長矩形枠の中に3つの同形のボタンを水平に等間隔で配した態様とする中で、そのうちの左端に縦に並んで表示される4つのボタンによる構成とするものである。

(イ)具体的態様
(a)横長矩形枠の高さ幅:横幅は約1:5.6とするものである。
(b)ボタンは、縦幅:横幅を約4:5の横長矩形状とし、四隅をアール状とするもので、各ボタン中央に記号が付され、
(c)全体の表示枠の左端からボタンの左右幅の約2倍の余白を持って配置されたものである。
また、横長矩形枠の横幅に対して、ボタンの中心部は、約9/20の位置となる。

4 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。

本願意匠に係る画像である「バーチャルアシスタント装置操作用画像」は、利用者に対して発話を行うような「疑似発話動作」を行うことで利用者を補助し得る装置に用いられる画像の1つで、日単位で領域を分け、その日に行われる予定などをまとめた情報などのコンテンツを、各ボタンを押すことで表示させる操作を行うものであることから、利用者の視認性、ボタンの押しやすさについては、創意工夫の大きな要素となる。

本願画像部分のように、全体の表示枠に対し、横方向、左右端部にわずかな余部を設け、複数の罫線によって罫線間の領域に操作ボタンを配した態様とするものは、引用意匠1に現れている。

また、複数のボタンを水平に等間隔で配した態様とする中で、そのうちの、左端に縦に並んで表示される一列のボタンによる構成とする点、そのボタンの配置について、全体の表示枠の左端からボタンの左右幅の約2倍の余白を持ったものとする点も、本願画像部分と同様とするものは、引用意匠2に現れている。
さらに、ボタンを横長矩形とし、四隅をアール状とするものも引用意匠2に現れている。

しかしながら、引用意匠1における罫線は、9本で、罫線間の領域に8つの操作ボタンを配するものであって、この「履歴ボタン」を、引用意匠2のボタンに変更したとしても、到底本願画像部分にはなり得ず、仮に引用意匠1の罫線について、本願画像部分と同様の位置及び範囲に相当する罫線3本を抜き出したとしても、引用意匠1の罫線の間隔は狭く(罫線の間隔(高さ幅):罫線の長さは約1:14)、引用意匠2のボタンは、縦幅:横幅を約4:5とするものであり、本願画像部分のように、全体の表示枠に対し、上下の余白部をそれぞれ高さ幅の上から約1/4、下からは約1/2より僅かに短い高さ幅の位置、大きさ及び範囲に、全体の表示枠の左右幅ほぼいっぱいまでに罫線を3本配して罫線間を比較的幅広のものとした態様(罫線の間隔(高さ幅):罫線の長さは約1:11)とし、その罫線間の領域に、縦幅:横幅を約2:3とするボタンを配した態様としたものは、引用意匠1及び引用意匠2のいずれにも現れていないため、これらを組み合わせても本願意匠を導き出すということはできない。
本願意匠のように、利用者の視認性、ボタンの押しやすさについての創意工夫が大きな要素となる画像において、この相違は、軽微な改変にとどまるものとすることはできない。

また、全体の表示枠の左端からボタンの左右幅の約2倍の余白を持って配置されたものである点が、引用意匠2に現れているとしても、引用意匠2は、罫線間の領域ではなく高さ幅:横幅を約1:5.6とする横長矩形枠に配されたものである点で異なる。また、この矩形枠での配置とすれば、中央やや左側の配置とみることもできるが、引用意匠1の罫線間に引用意匠2のボタンを、左端からの余白のみ切り出して配したとしても、表示枠全体の中での右端からの余白など、全体の中でのバランスが異なるため、いずれの点においても、本願意匠を直接導き出すことはできない。
上述のとおり、利用者の視認性、ボタンの押しやすさについての創意工夫が大きな要素となるような画像の分野において、本願意匠は、罫線や操作ボタン各要素の全体の表示枠の中での位置や間隔、ボタンの態様などの工夫に独創性が見られるものであって、引用意匠1と引用意匠2を組み合わせた画像から、本願意匠を創作することが、当該分野のありふれた手法によるものとすることはできない。

よって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

5 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は、本願と同日の出願に係る自己の意匠登録出願である。さらに、関連意匠である本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)は、意匠に係る画像の用途が共通し、意匠登録を受けようとする部分(以下「画像部分」という。)の用途及び機能も共通する。そして、画像部分の態様も、複数の罫線及び罫線間の領域に配したボタンの態様が共通する。一方、本願意匠は、罫線3本による罫線間2つの領域にボタンを2つ配したものであるのに対し、本意匠は、本願と同じ位置から下方に罫線を2本加えてできた罫線間の領域に2つのボタンが追加された態様とするものであるが、両意匠は、ともに罫線間の領域を日単位で分けるものであるから、同様の態様が下方に繰り返されて現れているにすぎないものであり、両意匠の画像部分の位置、大きさ及び範囲の相違はありふれた範囲といえ、その態様も類似するものであるから、両意匠は類似する。
したがって、本願は、意匠法第10条第1項に規定する要件を満たしている。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

そして、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当するから、本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができる。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2024-09-30 
出願番号 2022003842 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 前畑 さおり
特許庁審判官 清野 貴雄
北代 真一
登録日 2024-10-18 
登録番号 1783313 
代理人 弁理士法人グランダム特許事務所 

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