• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C7
管理番号 1416548 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-02-28 
確定日 2024-10-28 
意匠に係る物品 りん 
事件の表示 意願2023− 8801「りん」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和5年(2023年)4月27日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和5年(2023年) 7月25日付け:拒絶理由の通知
同年 9月15日 :意見書の提出
同年 11月28日付け:拒絶査定
令和6年(2024年) 2月28日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「りん」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠に係る「りん」の分野においては、物品全体を透明とすることは、例えば、下記の意匠1に見られるように、本願出願前よりごく一般的に見受けられます。
そうすると、本願出願前に公知となった、下記の意匠2の形状を、上記の通り一般的な手法により透明にしたにすぎない本願意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものと認められます。

意匠1
意匠登録第0986802号の意匠

意匠2
特開2010−005134
図1乃至図3で表された断面視略U字形状の中空回転体」

第4 審判請求人の主張

請求人は、令和6年(2024年)2月28日に審判請求書を提出し、要旨以下のとおり主張した。

「3.本願意匠が登録されるべき理由
(1)本願意匠は、創作容易性を根拠に拒絶されたことから、新規性は認められているものと思料されます。
しかし、公知意匠に基づいて、どのようにして本願意匠に至るのが容易か、そのプロセスの説明が不明です。

(2)そこで、創作容易性の判断内容について検討する。
(イ)引用意匠1は透明のおりんであり、参考意匠1〜3に示すように、この分野で物品全体を透明にすることは、本願出願前に一般的に見受けられると審査官は指摘するが、引用意匠1は底面が緩やかな凸面であり、外径:高さ=1.5:1と横に広いもので、一般的な湯呑み茶碗の高台がない形状となっています。

(ロ)これに対して本願意匠は、底面が球面に近く、深さが湯呑み茶碗よりも明らかに深く、形状そのものが引用意匠1とは相違し、公知意匠が開示するモチーフに基づくとは言えないものです。

(ハ)引用意匠2は、断面U字形状の中空回転体の骨格を開示していたとしても支柱に支持され、揺動するものではありません。
この点、参考意匠4も底面で支持されていて、揺動させることができないものであり、本願意匠が揺動しながら音が鳴るのと創作の趣旨が明らかに相違しています。

(ニ)これまでの判例によれば、公知のモチーフに基づいて当業者に容易に本願意匠に至るものでなければ、創作非容易性であるとされています。
りんの分野にて、底面が半球面形状で打りん時に大きく揺れるようにするという発想はこれまでに無く、ましてや音が鳴りにくいガラス材を用いるアイディアは存在していません。

4.むすび
したがって、引用意匠1、2を寄せ集めたとしても審査基準によるところのありふれた手法により創作されたと言えるものではなく、本意匠は登録すべきものとの審決をお願いいたします。」

第5 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、仏壇等に置き、りん棒等で叩いて音を出す仏具として用いる「りん」である。

(2)本願意匠の形状等
本願意匠の形状等は、全体を厚みの薄い略深椀形とするものであり、上部約4/7を上方に向かって僅かに拡径する略円筒状、下部約3/7を略球面状とし、底部中央はごく僅かな水平な面(載置面)をなし、高さと径の比率を約6:7とするものであって、全体が透明体からなるものである。

2 引用意匠の認定
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1は、「おりん(りん)」の意匠であって、全体が透光性を有するガラスからなる略偏平椀形であり、下方1/3を磨りガラス状とするものである。

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は、「りん」の意匠であって、全体がやや厚みのある略深椀形であり、上部約2/3は略円筒状、下部約1/3は略偏平球面状とし、底部中央は水平な面(載置面)をなし、高さと径の比率を約6:7とするものである。また、底部中央の内外に支柱及び可撓体(以下「支柱等」という。)が取り付けられている。

3 本願意匠の創作容易性の判断
この種の物品分野において、全体が透光性を有するガラス等からなる略椀形の「りん」は、意匠1に見られるように、本願出願前に公然知られているものである。また、全体がやや厚みのある略深椀形であり、上部約2/3は略円筒状、下部約1/3は略偏平球面状とし、底部中央は水平な面(載置面)をなし、高さと径の比率を約6:7とし、かつ、底部中央の内外に支柱等が取り付けられた「りん」も、意匠2に見られるように、本願出願前に公然知られているものである。
しかしながら、全体が厚みの薄い略深椀形であって、上部約4/7を上方に向かって僅かに拡径する略円筒状、下部約3/7を略球面状、高さと径の比率を約6:7とし、かつ、底部中央の内外に支柱等が取り付けられていない「りん」については、意匠1及び意匠2にはそのような態様は表されていない。
そうすると、本願意匠は、この種物品分野において、独自の着想によって創出したものであり、引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第6 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2024-10-16 
出願番号 2023008801 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
松田 光太郎
登録日 2024-10-31 
登録番号 1784144 
代理人 大谷 嘉一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ