ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
---|---|
管理番号 | 1416552 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2024-04-16 |
確定日 | 2024-10-15 |
意匠に係る物品 | 飲料容器用蓋 |
事件の表示 | 意願2023− 12611「飲料容器用蓋」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和5年(2023年)6月20日の出願であって、その意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであり、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年(2023年)10月11日付け :拒絶理由通知書 同年 11月17日 :意見書の提出 令和6年(2024年) 2月29日付け :拒絶査定 同年 4月16日 :審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「飲料容器用蓋」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、意匠登録を受けようとする部分(以下、「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。「側面部の参考縮小展開図」において、薄赤色に着色した部分は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を示している。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものと認められるため、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって、具体的には以下のとおりである。 「本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通し、本願の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠は、蓋部周面に当たる部分であるため、物品全体に対する位置、大きさ、範囲が共通します。 形態について本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠を比較すると、短い筒状であって、その上端は水平、下端は様々な幅からなる波形となっている点が顕著に共通します。これらは、意匠登録を受けようとする部分全体を占める骨格的な態様であるため、類否判断に与える影響は非常に大きいものと認められます。 他方、上記した周面下端の波形について、本願意匠は、大中小の3種の波を1単位として繰り返した形状であるのに対し、引用意匠は、様々な大きさの波からなる形状である点に相違が認められますが、本願意匠においても各面から見える波形はほぼ1単位ずつであり、不規則な波形であるという印象を与える点で共通しているため、両意匠の共通性を覆すほどの相違とはいえません。 したがって、本願意匠は引用意匠に類似するものと認められます。 (中略) 引用意匠: 下記ウェブサイトに掲載されたコップのカバーのうち、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分(蓋の周面部)の意匠 著者の氏名 Mee.nwp 表題 飲んでも使っても美味しい!!とてもかわいいコーヒーカップのデザイン 22 個 カフェインファンを喜ばせるために!! <3(タイ語による表題の仮訳) 掲載箇所 ウェブページ内、「5.」の項番の下に表示されている画像 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2016年 4月 7日 検索日 [2023年 10月 4日検索] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://www.girlsallaround.com/22-creative-mugs/」 なお、上記引用意匠は別紙第2を参照されたい。 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 以下、本願意匠と引用意匠(以下、合わせて「両意匠」という。)を対比する。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、伸縮性があり、飲料容器に密着して用いられる「飲料容器用蓋」であり、引用意匠は、飲料容器から容易に取り外しができ、コースターとしても用いることができる飲料容器の蓋であると認められ、飲料容器の蓋であることから、両意匠の意匠に係る物品は、類似する。 (2)本願部分と引用意匠において本願部分に対応する部分の用途及び機能 本願部分と、引用意匠において本願部分に対応する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能は、共に、飲料容器の周側面を覆う蓋体の周側部及び蓋体周側部の下端縁部にある波形の装飾部であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲 両部分の位置及び範囲は、いずれも蓋体上面の縁部から下方へ向かって延びる周側部であることから、両部分の位置及び範囲は、一致する。 一方、本願部分の大きさは、蓋体の側面視で、全幅と周側部縦幅の比率が約1:0.5であるのに対し、引用部分の大きさは、当該比率が約1:0.3であることから、両部分の大きさは、一致しない。 (4)両部分の形状等 両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (ア)上面の縁部から下方へ向かって延びる周側部の、上寄りは略筒状(以下、「胴部」という。)で、下寄りは下端縁部を略波形の垂下部(以下、「裾部」という。)を有する点、 (イ)裾部の下端縁部を大きさの異なる複数の波形で形成している点、において、共通する。 イ 相違点 (ア)周側部の胴部と裾部の縦幅比率が、本願部分は、約1:0.7であるのに対して、引用部分は、約1:2.3である点、 (イ)裾部の下端縁部の波形が、本願部分は、大中小の3種の大きさの垂下部が縁部に沿って環状に3回繰り返されているのに対して、引用部分は、大から小まで複数の大きさの垂下部が縁部に沿って環状に規則性無く配されている点、 (ウ)全幅と比したときの蓋体の厚みが、本願部分は、極薄いのに対して、引用部分は、写真が斜め上方向から見たものであるため、正確に測ることはできないが、厚みを見ることができる垂下部の左右両端寄りの部分を観察すれば、肉厚である点、 (エ)裾部の下端縁部が、本願部分は、周側部に対して直角の平らな面で形成しているのに対して、引用部分は、周側部の外面から内面にかけて略曲面で形成している点において、相違する。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 なお、両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者(購買者含む)及び販売業者等の取引者であって、当該需要者は、蓋体を飲料容器に被せて使用する際の外観特徴に注目して観察するものといえる。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、類似である。 (2)両部分の用途及び機能 両部分の用途及び機能は、同一である。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲 両部分の位置及び範囲は、同一である。 一方、両部分の大きさは、蓋体の側面視で、全幅と周側部の縦幅の比率が、本願部分は約1:0.5の大きさであって、飲料容器の開口部を周側面にかけて深く被う深型であるのに対し、引用部分の当該比率は約1:0.3の大きさであって、飲料容器の開口部を被う際に周側面も被っている程度の浅型であるから、両部分の大きさは相違している。この大きさの相違は、需要者の強い注意をひき、両意匠に相違感を与えるものといえるから、両部分の大きさの相違は、両意匠の類否判断に与える影響が大きい。 (4)両部分の形状等 ア 共通点の評価 共通点(ア)は、いずれも両部分の基本形状を概括的に捉えた際の共通点であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 一方、共通点(イ)は、大きさの異なる複数の波形という特徴のある装飾部であり、需要者が外観的特徴として認識し易いものと認められるから、類否判断に一定の影響を与える。 イ 相違点の評価 この種の物品の分野において、蓋体の周側部の態様については、飲料容器に蓋を被せる際や、飲用時に飲料容器を手に取る際に認識しやすい部位であって、特に、内容物がこぼれないようにするという使用目的からくる印象の違いは、需要者の注意を強くひくものであるから、胴部の縦幅が広く、厚みが極薄く端部が直角である本願部分に対し、胴部の縦幅が狭く、肉厚で端部が略曲面である引用部分とでは、需要者に異なる美感を起こさせるものであるので、相違点(ア)、(ウ)及び(エ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 さらに、裾部の態様については、波の大きさがパターン化された本願部分の波形と、ランダムな引用意匠の波形とで違いがあり、これは、下端部の全域に亘る装飾部に係るものであるから、相違点(イ)は、両意匠の類否判断に一定の影響を与える。 ウ 形状等の類否判断 上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、両部分の形状等について、共通点が類否判断に与える影響が小さいか、一定の影響を与えるものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は大きいか、一定の影響を与えるものであって、需要者に別異の美感を与えているというべきであるから、両部分の形状等は、類似しない。 (5)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は類似で、両部分の用途及び機能並びに位置及び範囲は同一であるものの、大きさが相違し、形状等については、共通点は未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 第5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2024-09-30 |
出願番号 | 2023012611 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
富永 亘 田中 寛人 |
登録日 | 2024-10-31 |
登録番号 | 1784145 |
代理人 | 弁理士法人牛木国際特許事務所 |