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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3
管理番号 1417687 
総通号数 36 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2024-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-02-26 
確定日 2024-11-19 
意匠に係る物品 スライドロック付きの二重カラビナ 
事件の表示 意願2022− 28094「スライドロック付きの二重カラビナ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、2022年7月13日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権主張を伴う、令和4年(2022年)12月28日の意匠登録出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年) 6月21日付け 拒絶理由通知
同年 9月11日 意見書の提出
同年 11月27日付け 拒絶査定
令和6年(2024年) 2月26日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「スライドロック付きの二重カラビナ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
米国特許商標公報 2021年11月 9日
ダブルカラビナ(登録番号US D935310S Double carabiner)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RH03329672号)

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「スライドロック付きの二重カラビナ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「ダブルカラビナ」であって、表記は異なるが、どちらも、ロッククライミングにおいて命綱とロープを連結するために使用したり、キーホルダー等として使用するカラビナであるから、一致する。

(2)本願意匠と引用意匠の形状等
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。

ア 共通点
両意匠は、正面視略縦長円環帯板状のフレームの左辺中央付近を開口し、左側面視略縦長円環針金状のワイヤーゲート(外ゲート)を取り付けたものであって、フレームは開口部の下側を内側斜め上方に延出し、その先端に上面視略横長円環針金状のワイヤーゲート(内ゲート)を取り付けたものである点において、共通する。

イ 相違点
(ア)スライドロック(外ゲートに取り付けた留め具をスライドすることで外ゲートが回動しないようにロックする構造)の有無について、本願意匠は、外ゲートに上面視略縦長円環ブロック状の留め具を挿通してスライドロックとしているのに対し、引用意匠は、スライドロックは有していない点、
(イ)フレームの開口部について、本願意匠は、(ア)の留め具を固定するため、フレームの開口部の下側を正面視略矩形状に切り欠いているのに対し、引用意匠は、フレームの開口部の下側に切欠きは形成していない点において、相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)形状等の共通点及び相違点の評価

ア 共通点の評価
この種物品の分野においては、正面視略縦長円環帯板状のフレームの左辺中央付近を開口し、左側面視略縦長円環状の外ゲートを取り付けた、いわゆるオーバル(長円形)型のカラビナにおいてフレームを開口部の下側を内側斜め上方に延出し、その先端に上面視略横長円環状の内ゲートを取り付けたものが、以下の参考意匠に見られるとおり、本願の出願前から公然知られていることから、この共通するとした態様は、両意匠のみに共通するものとはいえず、共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠(別紙第3参照)
米国特許商標公報 2021年11月 2日
ダブルカラビナ(登録番号US D934663S Double carabiner)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号:RH03329274)

イ 相違点の評価
相違点(ア)について、当該物品の分野において、スライドロック自体は、本願の出願前から公然知られているものであるが(例えば、特開2018−151074に掲載のロック式ダブルカラビナの意匠。)、本願意匠のようなオーバル型のカラビナにおいて、外ゲートに留め具を挿通してなるスライドロックは、本願意匠の他には見当たらず、また、外ゲートに取り付けた留め具は小さいものであるが、ゲートの開閉に関わる重要な部位であって、需要者の関心が高いものであり、意匠上の特徴となり得るものであるから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、本願意匠のフレームの開口部下側の切欠きはさほど大きいものではないが、スライドロックの留め具を固定する重要な役割を担うものであるから、需要者の注意を引くものといえ、相違点(ア)と相まって、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)及び相違点(イ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が両意匠の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2024-11-05 
出願番号 2022028094 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 富永 亘
特許庁審判官 内藤 弘樹
清野 貴雄
登録日 2024-11-28 
登録番号 1786329 
代理人 金高 寿裕 

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