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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1418289 |
総通号数 | 37 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2025-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2024-02-08 |
確定日 | 2024-12-17 |
意匠に係る物品 | センサモジュール |
事件の表示 | 意願2023− 5958「センサモジュール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和5年(2023年)3月27日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和5年(2023年)10月12日付け:拒絶理由の通知 同年 11月21日 :意見書の提出 同年 12月22日付け:拒絶査定 令和6年(2024年) 2月 8日 :審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「センサモジュール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「破線で表した部分を除き、実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠に係るセンサモジュールの分野において、センサモジュールの正面部を隅丸正方形としたもの(例えば、下記の意匠1)は本願出願前より一般的に見受けられ、また、正面部の角部内側付近に小円貫通孔を配置したもの(例えば、下記の意匠2及び3)、当該小円貫通孔を1つとしたもの(例えば、下記の意匠2)や2つとしたもの(例えば、下記の意匠3)等、その数を増減させることは本願出願前より一般的に見受けられるところ、センサモジュールの正面部を隅丸正方形とし、かつ、正面部の角部内側付近に小円貫通孔を単に4つ配置した程度に過ぎない本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、上記の本願出願前より一般的に見受けられる手法により、当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められます。 記 (意匠1) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2006年12月5日に受け入れた INDUSTRIAL EQUIPMENT NEWS 2006年12月1日12号 第24頁所載 デジタル出力式大気圧センサの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HA18030840号) (意匠2) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2016年10月21日に受け入れた センサカタログ Vol.2.1 第9頁所載 気圧センサの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC28015500号) (意匠3) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年12月19日に受け入れた Product overview 2008/2009(日刊工業新聞H20.10.17写真あり) 第17頁所載 気圧センサの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HD20004394号)」 第4 請求人の主張 請求人は、令和6年(2024年)2月8日に審判請求書を提出して、要旨以下のとおり主張した。なお、添付資料の参考図1から参考図4については省略する。 「【本願意匠が登録されるべき理由】 1.はじめに 本件意匠登録出願人は、上記拒絶理由を承服することができませんので、その理由を以下に示します。 2.添付資料の説明 参考図1は、本願意匠の「正面図」および「斜視図」を並べた図です。 参考図2は、引用意匠1,引用意匠2、および、引用意匠3を並べた図です。 参考図3は、引用意匠2を線図化した図、および、引用意匠2の変形例を示す図です。 参考図4は、引用意匠3を線図化した図、および、引用意匠3の変形例を示す図です。 3.検討 (1)本願意匠の特徴 本願意匠は、隅丸正方形の角部内側付近に小円貫通孔を4か所配置した形態を有しています。全体として観察した場合には、正面の全体面積に対して比較的小さく感じる小円貫通孔を角部に4か所設け、さらに、小円貫通孔は、角部から比較的内側に入った位置に配置されています。 (2)非創作容易性の判断 本願意匠の形態は比較的シンプルな形態ですが、シンプルなデザインの中の特徴的部分を保護するため、創作者の創作の意図を汲みつつデザインの内容を検討する必要があると考えます。そうとすれば、シンプルであるから創作が容易なのではなく、シンプルであるからこそ、形態を構成する個々の要素の創作の重みを考慮し、従来から単に貫通小孔が設けられている先行意匠が存在することのみをもって意匠の非創作容易性を判断するのは不十分であり、貫通孔の大きさ、配置位置、数量を細かく評価して、出願意匠の非創作容易性を判断する必要があると考えます。 (3)意匠審査基準に基づく創作非容易性の検討 (3−1)意匠審査基準の「第III部第2章第2節創作非容易性」には、「4.2ありふれた手法と軽微な改変」として、(a)置き換え、(b)寄せ集め、(c)一部の構成の単なる削除、(d)配置の変更、(e)構成比率の変更、(f)連続する単位の数の増減、(g)物品等の枠を超えた構成の利用・転用が挙げられ、さらに、軽微な改変として、(a)角部及び縁部の単純な隅丸化又は面取り、(b)模様等の単純な削除、(c)色彩の単純な変更、区画ごとの単純な彩色、要求機能に基づく標準的な彩色、(d)素材の単純な変更によって生じる形状等の変更、が挙げられておりますが、いずれの手法を、引用意匠1から引用意匠3に適用したとしても、本願意匠の非創容易性を判断する基礎にはなり得ません。 (3−2)引用意匠1には、隅丸正方形の中央部に小円貫通孔が設けられている意匠であることから、本願意匠の非創作容易性を判断する基礎にはなり得ません。 (3−3)引用意匠2には、斜視図しかなく、正確な意匠の形態を読み取ることができませんが、仮に引用意匠2を、隅丸正方形の一つの角部内側に小円貫通孔が設けられているとし、全体として観察した場合には、小円貫通孔は、正面の全体面積に対して比較的大きく感じ、角部に1か所設けられています。この引用意匠2の形態を、上記審査基準の(d)配置の変更の手法に基づき、小円貫通孔を仮に対称となる位置に合計4か所となるように小円貫通孔を配置したとしても、以下の参考図3中の引用意匠2の変形例のような形態になると仮定され、本願の意匠とは印象が異なる意匠となることから、本願意匠の非創作性を判断する意匠の基礎にはなり得ません。 (3−4)引用意匠3も引用意匠2と同様に斜視図しかなく、正確な意匠の形態を読み取ることができませんが、仮に引用意匠3を、隅丸横長長方形の対向する2つの角部内側に小円貫通孔が設けられているとし、全体として観察した場合には、小円貫通孔は、正面の全体面積に対して比較的小さく感じるとともに、角部近接する位置に1か所設けられています。この引用意匠3の形態を、上記審査基準の(d)配置の変更の手法に基づき、小円貫通孔を仮に対称となる位置に合計4か所となるように小円貫通孔を配置したとしても、参考図4中の引用意匠3の変形例のような形態になると仮定され、本願の意匠とは印象が大きく異なる意匠となることから、本願意匠の非創作性を判断する意匠の基礎にはなり得ません。 (4)拒絶査定について (4−1)審査官殿は、拒絶査定の中で、「(A)小円貫通孔が4つ設けられた意匠が存在しなかったとしても、本願出願前より、隅丸正方形の角部内側に小円貫通孔を配置したものが既にあり、かつ、角部内側の複数箇所に配置したものが既にあるとすると、小円貫通孔を増減させる手法自体は本願出願前より公然知られていると言えるので、(B)隅丸正方形の角部内側の何れかに小円貫通孔を配置することや、単に全ての角部内側に小円貫通孔を配置することは、当業者あれば容易に想到可能な極めて単純な手法であると言わざるを得ず、また、(C)貫通孔の大きさや位置についても、隅丸正方形の角部内側の小円貫通孔という中での僅かな変更に過ぎず、かつ、小円貫通孔を1つから2つ、2つから4つに分散配置した場合、例えば、当該貫通孔の合計の大きさを保つためには、1つあたりの小円貫通孔の大きさを小さくしていくことは当然考えられることであるので、これもまた、当業者であれば容易に想到可能な程度であると言わざるを得ません。」との見解を示されています。 (4−2)上述の審査官殿の見解(A)において、『小円貫通孔を増減させる手法自体は本願出願前より公然知られていると言えるので』に関しましては、引用意匠1は、「1個」、引用意匠2は「1個」、引用意匠は「2個」であり、審査官の『小円貫通孔を増減させる手法自体は本願出願前より公然知られていると言えるので』の見解には、何ら根拠がありません。 引用意匠に基づき、1個または2個の小円貫通孔を3個以上に増加させるためには、動機付けとなる引用意匠(証拠)が必要であると判断致します(知財高判平成30年(行ケ)10181ご参考)。 (4−3)次に、審査官殿の見解(B)において、『隅丸正方形の角部内側の何れかに小円貫通孔を配置することや、単に全ての角部内側に小円貫通孔を配置することは、当業者あれば容易に想到可能な極めて単純な手法であると言わざるを得ず』に関しましては、特許法における進歩性の判断においては、確かに、極めて単純な手法であると言えるかもしれません。 しかしながら、意匠法における保護対象は、物品の形状等であり、つまり、貫通孔の大きさ、配置位置、および、数量に意匠の着想の新しさ、および、その独創性が保護されるべき対象であり、本願意匠の創作においては、隅丸正方形の角部内側に小円貫通孔を配置する場合には、貫通孔の大きさ、配置位置、および、数量については、多様なデザイン面での選択肢から、創意工夫して創作されたものであると考えることができることから、本願意匠の出願前より、隅丸正方形の角部内側に小円貫通孔を1個または2個配置したものが既にあるとしても、市場に存在する形態は、引用意匠1−3を鑑みても「2つ」までであることから、これを4か所に増加し配置した本願意匠は創意工夫を施して創作されたものであると判断致します(知財高判平成19年(行ケ)10209ご参考)。 また、上述の「意匠審査基準に基づく創作非容易性の検討」で示した引用意匠2の変形例および引用意匠3の変形例に当業者が想到できたとしても、本願意匠の形態に想到することはできません。 (4−4)次に、審査官殿の見解(C)において、『貫通孔の大きさや位置についても、隅丸正方形の角部内側の小円貫通孔という中での僅かな変更に過ぎず、かつ、小円貫通孔を1つから2つ、2つから4つに分散配置した場合、例えば、当該貫通孔の合計の大きさを保つためには、1つあたりの小円貫通孔の大きさを小さくしていくことは当然考えられることであるので、これもまた、当業者であれば容易に想到可能な程度であると言わざるを得ません。』との見解についても、小円貫通孔を2つから4つに分散配置する場合についての動機付けについては、何ら根拠の指摘がなく、さらに、1つあたりの小円貫通孔の大きさを小さくしていくこと、に関しても、どの程度の大きさにするについては、上述したように、多様なデザイン面での選択肢から、創意工夫して創作する必要があり、審査官の見解には何ら根拠がありません。 4.結論 本願意匠は、センサモジュールの形態に関し、図面に現れるように、貫通孔の大きさ、配置位置、および、数量に、意匠の着想の新しさ、および、独創性があります。よって、本願意匠は、引用意匠1から引用意匠3に基づいて容易に創作できたものではなく、意匠法第3条第2項の規定に該当するものではないと確信致します。」 第5 当審の判断 以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願の意匠に係る物品は、「センサモジュール」であり、その用途及び機能は、ケース内部に圧力センサ等を収容し、大気圧を検知するセンサとして使用するものである。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分は、ケース内部の圧力センサを感圧させるための空気孔を備えたセンサモジュール上面部であり、圧力センサを保護し、同時に空気孔により圧力センサを感圧させるための通気を行うという用途及び機能を有している。 (3)本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分は、センサモジュールのケース上面中央の位置で、正面視において、ケースの縦幅の約87/100、横幅の約87/100の大きさ及び範囲とするものである。 (4)本願部分の形状等 本願部分は、センサモジュールのケース上面の正面視隅丸正方形の板状部表面であって、当該板状部表面の正面視4か所に空気孔として貫通小円孔がある。当該貫通小円孔は、いずれも本願部分の正面視の縦幅及び横幅の約8/100の直径であり、孔と正方形部の角の間に正方形部の対角線の約1/8の余白を取って四隅に配置されている。また、意匠登録を受けようとする部分は、板状部表面であって貫通孔の内周面は含まれていない。 2 引用意匠 原査定における拒絶の理由で引用された意匠1から意匠3の意匠に係る物品及び形状等は、概要以下のとおりである。 (1)意匠1(別紙第2参照) 意匠1は、ケース内部に圧力センサ等を収容し、大気圧を検知するセンサとして使用される「デジタル出力式大気圧センサ」である。本願部分に相当する部分の形状等は、ケース上面の隅丸正方形の板状部表面であって、その中央に貫通小円孔が1つ配置され、当該貫通小円孔は隅丸正方形部の縦幅及び横幅の約1/8の直径である。 (2)意匠2(別紙第3参照) 意匠2は、ケース内部に圧力センサ等を収容し、大気圧を検知するセンサとして使用される「気圧センサ」である。本願部分に相当する部分の形状等は、ケース上部の隅丸正方形の表面であって、その1つの隅に貫通小円孔が1つ配置され、当該貫通小円孔は隅丸正方形部の縦幅及び横幅の約1/7の直径であり、孔と隅丸正方形部の角の間に隅丸正方形部の対角線の約1/6の余白を取って配置されている。 (3)意匠3(別紙第4参照) 意匠3は、ケース内部に圧力センサ等を収容し、大気圧を検知するセンサとして使用される「気圧センサ」である。本願部分に相当する部分の形状等は、ケース上部の隅丸矩形部の表面であって、隅丸矩形部の縦幅及び横幅の比率は約2:3である。当該隅丸矩形部の対角線上の二隅に2つの貫通小円孔が配置され、当該貫通小円孔は隅丸矩形部の縦幅の約1/6、横幅の約1/10の直径であり、孔と隅丸矩形部の角の間に隅丸矩形部の対角線の約1/20の余白を取って配置されている。 3 本願部分の創作性の検討 この意匠の属する分野において、センサモジュール上面を隅丸正方形の板状部としたもの(意匠1)や、当該板状部の隅に小円貫通孔を1つ配置したもの(意匠1及び意匠2)、または、当該板状部の対角線上の二隅に小円貫通孔を2つ配置したもの(意匠3)は、本願の出願前に公然知られている。 しかしながら、センサモジュール上面の板状部の四隅に4つの小円貫通孔を設けたものは本願部分の他には見られず、また、当該小円貫通孔が、本願部分の正面視の縦幅及び横幅の約8/100程度の直径であるものや、孔と矩形部の角の間に矩形部の対角線の約1/8の余白を取って配置されているものは本願部分の他には見られないから、これらの点において、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。 そうすると、本願部分の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者がこれら公然知られた形状等に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-12-04 |
出願番号 | 2023005958 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
山永 滋 富永 亘 |
登録日 | 2025-01-08 |
登録番号 | 1789255 |
代理人 | 弁理士法人深見特許事務所 |