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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E3 |
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管理番号 | 1419376 |
総通号数 | 38 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2025-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2024-03-11 |
確定日 | 2025-01-15 |
意匠に係る物品 | 身体鍛錬器具 |
事件の表示 | 意願2022− 28183「身体鍛錬器具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、令和4年(2022年)12月28日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年(2023年) 8月30日付け 拒絶理由通知書 同年 9月14日 意見書提出 令和6年(2024年) 1月29日付け 拒絶査定 同年 3月11日 審判請求書提出 第2 本願の意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「身体鍛錬器具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 「この意匠登録出願の意匠と下記引用意匠を比較すると、略中央のフレームに設けられたクッションの形状に差異は認められますが、本願意匠のように横長長方形状のものは、例えば下記参考意匠に見られるように本願出願前からありふれており、格別特徴ある態様とは言えず、類否判断に与える影響が大きいとは認められません。一方両意匠は、その他特徴的な構成態様が共通し、その共通性は非常に顕著です。 したがって両意匠は類似するものと認められます。 引用意匠 以下の公報に掲載された身体鍛錬器具のうち、ベンチ部を除いた部分の意匠 公報発行官庁:中国国家知識産権局 文献名 :意匠特許公報 出願日 :2016年7月24日 出願番号 :201630340690.5 登録番号 :CN 303907408 S 授権公告日 :2016年11月9日 参考意匠 (当審注:別紙第3参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2022年12月21日 受入日 特許庁意匠課受入2023年 2月24日 掲載者 フォーカステクノロジー 表題 China Professional Fitness Body Building Gym Equipment Training Multi 掲載ページのアドレス https://tc-sport.en.made-in-china.com/productimage/NOJAvHjTXpUV-2f1j00GbQVIDJUHsuO/China-Pro fessional-Fitness-Body-Building-Gym-Equipment-Training-Multi-Function-Commercial-Exercise-Rack-P022.html に掲載された「身体鍛錬具」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第RJ04072852号)」 第4 審判請求人の主張 請求人は、令和6年3月11日提出の審判請求書において、要旨以下のとおり主張した。 1 本願意匠が登録されるべき理由 (1)本願意匠は、拒絶査定において「左右支柱中央部のアームグリップ部分について、引用意匠と非類似とするほど特徴的なものでない」と述べられているが、引用意匠については、肘置として機能することから太く前方へ突き出し、その先端に上方と先方へL字状にグリップ部が存在するのに対し、本願意匠は細い棒状体が前方へ突き出るのみの形状となっている。 当該形態部分は、高さ的に中央近傍位置で、かつ前方部分に存在し、位置的にも機能的にも確実に看者の目につく部分であること、に鑑みると、これらの差異が特徴的なものでないとの判断はあまりに短絡的であると考える。 (2)本願意匠は、拒絶査定において「プッシュアップバー部分の差異について、その部位のみ着目するものでない」と述べられているが、審査基準では、観察されやすい部分の形状等であれば注意をひきやすい部分として、その部分のみを着目するか否かに関わらず、差異を判断すべき旨が規定されている。 本願意匠の製品はトレーニングを目的とした製品であり、購入検討する上でプッシュアップ部分は、確実に観察されやすい部分となる。したがって本願意匠における「プッシュアップバー部分」は、審査基準に照らし、形態差異を判断すべき部位に該当するものである。 (3)本願意匠は、拒絶査定において「意匠全体として観察した場合には付加的な微差で類似判断を左右するものではない」と述べられているが、製品の機能上、確実に看者の目につく部分であり、意匠全体として観察した場合であっても、決して付加的な微差とはいえない。審査基準では、需要者が関心を持って観察する部位か否かを考慮すべき旨が規定されており、本願意匠も当該審査基準に照らせば、差異形態について単なる「付加的な微差」ではなく、故に「類似判断を左右するものではない」との判断は明らかに誤りである。 (4)引用意匠では、アームグリップを設置する部分の支柱が一直線になっているだけであるのに対して、本願意匠は下から支える棒を付けることにより、機能的にしなることを防ぐ設計になっており、視覚を通じて美感(機能美)を起こさせる形態といえる。 また、観察する上で確実に観察される部分となり、微差とはいえない。また、引用意匠では留め具を1つで固定されているが、本願意匠は2つで固定する設計となっている。 (当審注:図省略) (5)引用意匠では、中央に取り付けられている背中の支柱が真横についているが、本願意匠はU字に後ろについているため、ディップスを行う際に邪魔にならない機能的設計となっている。 (6)引用意匠では、土台部分からプッシュアップバーが取り付けされており、上から力を加えることでしなったり割れてしまうことが容易に想定される。本願意匠は、上部に一体溶接をすることで力が均等になる機能的設計を採用している。 (7)土台部分接地面について、本願意匠は接地面が円状の吸盤になっており、揺らしたりしても動かない機能的設計となっている。 (8)全体の構造を見直し、梱包サイズを160サイズ以内にしたことにより宅配便で送ることを可能にした機能的設計を採用している。 (9)本願意匠製品は十分に市場分析を行い、既存製品と比較した上で、多数にわたる個所を考え検討している。 2 以上の様に、本願意匠と引用意匠とは、形態が共に非類似であることは明らかであって、互いに充分に区別し得る非類似の意匠であることは明白である。したがって、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するものでないことは明らかであり、登録すべきものとする、との審決を求める。 第5 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、どちらも、腕立て伏せや懸垂などができる「身体鍛錬器具」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。 (2)形状等 ア 共通点 (ア)基本的構成態様 上端を正面側に湾曲した2本のパイプを左右に配置して支柱部とし、支柱部を連結するように下端寄りに横のパイプを取り付けて接続部とし、2本の略横長棒状の部材を2本の支柱とそれぞれ直交するように前寄りに取り付けて脚部とし、支柱部の上端に横長のパイプを両側が突出するように取り付けて懸垂バーとし、支柱部の真ん中付近に正面側にクッションを設けた横長のパイプを取り付けて背もたれ部とし、左右の支柱の正面の真ん中付近に水平に突出するパイプを設けてアームグリップとし、左右の支柱の正面の下端寄りで接続部より若干下側と脚部の上面のやや先端寄りを連結するように側面視略角丸鈎状に曲げたパイプを取り付けてプッシュアップバーとしている点、 (イ)支柱部 支柱部は、真ん中付近で上下に伸縮して高さ調整できるよう上下で分割し、下側のパイプ内に上側のパイプを挿通してなる点、 (ウ)脚部 脚部は、正面側の先端をやや外側に屈曲している点、 (エ)懸垂バー 懸垂バーは、両端をやや下方に屈曲している点、 において共通する。 イ 相違点 (ア)支柱部 本願意匠は、左右の下側のパイプの上端寄りの両横に略円板状のツマミを縦に2つずつ合計8個取り付けているのに対し、引用意匠は、下側のパイプの上端寄りの背面に略短円柱形のツマミを1つずつ取り付けている点、 (イ)脚部 引用意匠は、背面側の先端を正面側と同様にやや外側に屈曲し、支柱部のやや正面寄りに左右の脚を繋ぐ横のパイプを設け、各先端に滑り止め用のキャップを取り付け、上面の正面寄りに略角丸「L」字状に屈曲したハンドルを取り付けているのに対し、本願意匠は、背面側は屈曲しておらず、左右の脚を繋ぐパイプは設けておらず、各先端の底面に滑り止め用の略円盤状の吸盤を取り付け、上面にハンドルは取り付けていない点、 (ウ)背もたれ部 本願意匠は、左右の支柱の背面に略角丸「コ」の字状に屈曲した略円柱形のパイプの先端を取り付け、クッションは略横長角丸長方形厚板状であるのに対し、引用意匠は、左右の支柱の内側の正面寄りに、略角丸「コ」の字状に屈曲した略角丸四角柱形のパイプの後端を両側が前方に突出するよう取り付け、クッションは上方を略アーチ状に形成した略縦長長方形厚板状である点、 (エ)アームグリップ 本願意匠は、略横長円柱形で、背もたれ部のやや下側に取り付け、底面に斜めのブラケットを取り付けているのに対し、引用意匠は、略角丸四角柱形で、背もたれ部の両側の外側に密着状に取り付け、先端に側面視略角丸「L」字状に屈曲したハンドルを設け、上面に略横長長方形厚板状のクッションを取り付けている点、 (オ)プッシュアップバー 本願意匠は、プッシュアップバーの正面の下端寄りに略短円柱形のハンドルを水平に取り付けているのに対し、引用意匠は、ハンドルは取り付けていない点、 において相違する。 2 両意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。 (2)形状等の共通点及び相違点の評価 ア 共通点の評価 この種物品の分野においては、共通点(ア)上端を正面側に湾曲した2本のパイプを左右に配置して支柱部とし、支柱部を連結するように下端寄りに横のパイプを取り付けて接続部とし、2本の略横長棒状の部材を2本の支柱とそれぞれ直交するように前寄りに取り付けて脚部とし、支柱部の上端に横長のパイプを両側が突出するように取り付けて懸垂バーとし、支柱部の真ん中付近に正面側にクッションを設けた横長のパイプを取り付けて背もたれ部とし、左右の支柱の正面の真ん中付近に水平に突出するパイプを設けてアームグリップとし、左右の支柱の正面の下端寄りで接続部より若干下側と脚部の上面のやや先端寄りを連結するように側面視略角丸鈎状に曲げたパイプを取り付けてプッシュアップバーとしたものが、以下の参考意匠に見られるとおり、本願の出願前から公然知られており、両意匠のみに共通する態様とはいえないことから、格別、需要者の注意を引くものではなく、また、共通点(イ)から共通点(エ)についても、当該物品の分野において、本願の出願前より、ごく普通に見られる態様のものであることから、いずれも、需要者の注意を引くものではなく、これらの共通点が相まっても、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1678755号 (意匠に係る物品、身体鍛錬鍛錬器具)の意匠 イ 相違点の評価 まず、相違点(ウ)及び相違点(エ)について、背もたれ部とアームグリップは、当該器具の中心部の最も目に付きやすい位置に形成されているところ、背もたれ部を左右の支柱の背面に取り付け、そのやや下側にアームグリップを別々に取り付けてなる本願意匠と、背もたれ部を左右の支柱の内側の正面寄りに両側が前方に突出するよう取り付け、その外側にアームグリップを密着状に取り付け、さらに先端に側面視略角丸「L」字状に屈曲したハンドルを設けた引用意匠とは、大きく異なるものであり、需要者に別異の美感を与えているものといえるから、相違点(ウ)及び相違点(エ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。また、相違点(イ)の脚部の態様の相違についても、背面側の屈曲の有無、脚を繋ぐパイプの有無、滑り止めの相違、上面のハンドルの有無(本願意匠は、相違点(オ)のとおり、プッシュアップバーの正面にハンドルを取り付けている。)は、これらが相まって、両意匠の脚部全体の視覚的印象を大きく異ならしめるものとなっており、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、相違点(オ)と相まって、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 一方、相違点(ア)については、部分的な相違であって、意匠全体として見た場合においては、微弱なものであるから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)から共通点(エ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(イ)から相違点(オ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が両意匠の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。 (3)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-12-05 |
出願番号 | 2022028183 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(E3)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
富永 亘 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 清野 貴雄 |
登録日 | 2025-02-06 |
登録番号 | 1791241 |