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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G1
管理番号 1419377 
総通号数 38 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2025-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-04-09 
確定日 2025-01-14 
意匠に係る物品 基板収納搬送用容器 
事件の表示 意願2023− 7569「基板収納搬送用容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和5年(2023年)4月12日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年) 8月 1日付け 拒絶理由の通知
同年 9月22日 意見書の提出
同年 12月19日付け 拒絶査定
令和6年(2024年) 4月 9日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「基板収納搬送用容器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用の意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

「特許庁発行の公開特許公報記載
特開2021−145008
「基板収納容器」の意匠
なお、主な類否判断の対象となるのは、【図14】にて表現された、本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分です(【図14】は筐体の左側面を表現したものですが、左右対称あるとの認定をしています。)。

本願意匠と引用意匠は、ともに半導体ウェーハ等の基板を収容する容器であり、物品の用途及び機能は、相互に共通するものと認められます。
本願意匠の意匠登録を受けようとする部分である右側面視における筐体右端部近傍の領域の部分、それに対応する引用意匠の部分とを比較すると、区分け線を含むその領域の輪郭形状が顕著に共通し、意匠登録を受けようとする部分全体として対比観察するうえでは類似の範囲を出ないものと認められます。」

以下、本審決では、本願の意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」、引用意匠のうち本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分を「引用部分」という。また、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして認定する。

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「基板収納搬送用容器」であるのに対し、引用意匠の意匠に係る物品は、「基板収納容器」であるが、いずれも、半導体ウエハ等の精密基板を内部に収納して、搬送や保管に使用される容器であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも、容器本体右側面の背面寄りにおける右側面視略縦長長方形の容器本体の表面部分であるから、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、一致する。

(3)両部分の形状等
ア 共通点
(共通点ア)全体を略平坦面とした点、
(共通点イ)右側面視やや右寄りに縦方向に延びる分割線(以下「縦線」という。)を形成し、上下端寄りに、縦線から左端まで延びる、やや内側に傾斜した分割線(以下「斜線」という。)を形成した点、
において共通する。

イ 相違点
(相違点ア)本願部分は、縦線を本願部分の上下いっぱいに形成し、斜線は縦線の上下端寄りで枝分かれ状となっているのに対し、引用部分は、縦線を全高の約10分の7として、上下中央寄りに形成し、その上下端が斜線の右端と接続している点、
(相違点イ)本願部分は、縦線の上端近傍から左方向に水平に延びる分割線(以下「横線」という。)を形成しているのに対し、引用意匠は、横線を形成していない点、
において相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は一致するから、同一である。

(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価と類否判断
ア 共通点の評価
(共通点ア)については、この種基板収納容器本体側面の背面寄りを平坦面としたものはありふれており、特に需要者が注意を引くものではないので、(共通点ア)が両部分の類否判断に与える影響は極めて小さい。
(共通点イ)については、斜線に注目すれば、一定の共通の印象を与えるものではあるが、後述する(相違点ア)及び(相違点イ)に係る分割線全体の具体的態様における相違がある中では、(共通点イ)が両部分の類否判断に与える影響は一定程度に止まる。

イ 相違点の評価
(相違点ア)について、本願部分は、縦線が上下端寄りで斜線と枝分かれして上下端まで達し、両部分全体に広がりをみせているのに対し、引用部分は、上下中央寄りに分割線が一繋がりで形成されているため、分割線全体が閉じた印象を与えている。そして、該相違点は、分割線全体の具体的態様に関わるものであるから、平坦面と分割線とで構成された両部分における骨格を形成し、両部分を特徴付けるものといえ、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、(相違点ア)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点イ)については、両部分の上端部近傍という限られた部分における相違ではあるものの、(相違点ア)とあいまった効果を考えると、本願部分の縦線が上下端寄りで枝分かれした印象をより強くさせるものであるから、(相違点イ)が両部分の類否判断に与える影響は一定程度ある。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分全体を総合的に観察した場合、(共通点ア)が両部分の類否判断に与える影響は極めて小さく、(共通点イ)が両部分の類否判断に与える影響は一定程度に止まるのに対し、(相違点ア)が両部分の類否判断に与える影響は大きく、(相違点イ)は、(相違点ア)とあいまって、両部分の類否判断に一定程度の影響を与える。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

3 小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分は、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても同一であるが、その形状等においては、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。





審決日 2024-12-19 
出願番号 2023007569 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 玉虫 伸聡
渡邉 久美
登録日 2025-01-23 
登録番号 1790275 
代理人 黒川 朋也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 

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