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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B2
管理番号 1420376 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2025-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-11-30 
確定日 2025-02-14 
意匠に係る物品 靴下 
事件の表示 意願2022− 26983「靴下」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、令和4年(2022年)12月15日の意匠登録出願出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年(2023年)4月17日付け 拒絶理由通知書
同年 5月29日 意見書の提出
同年 8月31日付け 拒絶査定
同年 11月30日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「靴下」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下、「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1622265号
(意匠に係る物品、靴下)の意匠

第4 本願意匠と引例意匠の対比

1 本願意匠と引例意匠の意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)は、共に、足先の甲の表面を確認することができる開口部を有する「靴下」に係るものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

2 両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。なお、意匠を認定する際には、本願意匠は使用状態を示す各参考図、引用意匠は装着時の各参考図も参酌する。

(1) 共通点
両意匠は、基本的構成態様として、
ア ハイソックスタイプの靴下であって、全体が、足指、甲、足裏、かかと、及び足首から膝下までの下腿の部位から構成して成り、足指、甲、足裏、かかとから成る足先の長手方向の長さは、靴下全体の長手方向の長さの約3分の1である点、

イ 足先の甲の表面を確認することができる開口部を有し、その開口部の大きさは、足の親指大の程度のものであって、その位置は、靴下の甲の前側(足指寄り)である点、

ウ 靴下のつま先及びかかとが、身生地よりも暗調子に表れている点、
が共通する。

(2) 相違点
具体的構成態様として、
カ 正面図において、本願意匠は、足首の付近は漸次細くなるように弧状を形成し、甲は凸弧状を形成し、つま先及びかかとは、足先の身生地に沿ってなだらかに表れているのに対し、引用意匠は、足首はおおむね直線状を形成し、甲は直線状を形成し、つま先及びかかとは身生地から膨出して成る点、

キ 開口部につき、本願意匠は、正面図において開口部が丸くえぐられ、装着時の上面視、だ円形状を表し、その周囲に身生地とは異なる織りの生地(又は、身生地とは別のパーツの生地)から成るリング状の細縁部を形成しているのに対し、引用意匠は、正面図においてV字状にえぐられ、装着時の上面視、両端がとがったアーモンド様の形状を表し、その周囲に身生地とは異なる織りの生地から成るリング状の細縁部を形成していない点、また、引用意匠にのみ、開口部の上半分を囲む暗調子の細線が施されている点、

ク 開口部の位置につき、本願意匠は、足指の上部付近に寄った位置であるのに対し、引用意匠は、甲の前側に位置している点、

ケ つま先及びかかとにおける暗調子の面積比につき、正面図において、本願意匠は、約1:1であるのに対し、引用意匠は、約2:1である点、
が主に相違する。

第5 類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価し、総合的に観察して、両意匠の類非を意匠全体として検討し、判断する。
なお、両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者(購買者を含む)、及び販売者等の取引者であって、当該需要者は、下肢における静脈瘤(りゅう)やむくみ等を軽減するための機能や、機能から生じる外観の特徴に注目して観察する者であるといえる。

1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両意匠の形状等
(1)共通点の評価
共通点ア及び共通点ウの形状等は、両意匠の基本的構成態様を成すものであるが、そのような特徴を有するものは、靴下の物品分野において、両意匠以外にも例を挙げるまでもなくごく普通に見られることから、共通点ア及び共通点ウが両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点イにおける開口部は、下肢における静脈瘤(りゅう)やむくみ等を軽減するために用いられる「靴下」の需要者が注意を払う部位であり、一定の共通感を生じさせるものの、両部分のように、靴下の甲の前側(足指寄り)に開口部を有したものは、例えば、本願の出願前に公然知られた登録意匠第1270801号の靴下(別紙第3参照)に表れているように、両部分以外にも見られることから、共通点イが両部分の類否判断に及ぼす影響は限定的である。

(2)相違点の評価
これに対して、
相違点カ及び相違点ケにつき、当該「靴下」の主たる需要者は、弾力性の機能や正しい装着のしやすさの機能をみるため、各部の具体的な形状等について高い関心を持って子細に観察する者であるところ、相違点カ及び相違点ケにおける形状等は、当該需要者が一見して看守できる相違であって、異なる印象を与えるものであるから、両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点キ及び相違点クにつき、需要者は、むくみ等について何らかの変化が起きていないかどうか確かめるために定期的に観察するための開口部に対して格別の注意を払うことから、開口部の孔の形状が、装着時の上面視、横長の略だ円形状である本願意匠と、両端がとがったアーモンド様の形状である引用意匠は、開口部のリング状の細縁部(本願部分)や上半分を囲む暗調子の細線(引用部分)の有無による相違も相まって、異なる美感を生じさせていることから、相違点キ及び相違点クが類否判断に及ぼす影響は大きい。

(3)形状等の総合評価
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、相違点は、両意匠の類否判断に与える影響が総じて大きいものであるのに対し、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が総じてもなお両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるから、相違点が共通点を凌駕している。

3 両意匠の類否判断
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、形状等においては、相違点が両意匠の類否判断に与える影響が共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。







審決日 2025-01-30 
出願番号 2022026983 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 富永 亘
特許庁審判官 渡邉 久美
松下 香苗
登録日 2025-02-21 
登録番号 1792455 
代理人 弁理士法人藤本パートナーズ 

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