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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1
管理番号 1421432 
総通号数 40 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2025-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-11-29 
確定日 2025-03-28 
意匠に係る物品 カッターナイフ 
事件の表示 意願2023− 17926「カッターナイフ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、本意匠を意願2013−22216(意匠登録第1499393号)とした、令和5年(2023年)9月1日の関連意匠の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和6年(2024年) 2月 9日付け 拒絶理由の通知
同年 5月27日 意見書の提出
同年 8月28日付け 拒絶査定
同年 11月29日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「カッターナイフ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用の意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

「<引用意匠>
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1499393号
(意匠に係る物品、カッターナイフ)の意匠

両意匠を比較すると、主に、ストラップホール部の具体的な形状について相違する点がみられますが、その余の大部分の形状がほとんど共通していますので、両意匠を意匠全体として観察する場合においては類似の範囲を出ないものです。

なお、願書において意匠登録第1499393号を本意匠として記載されていますが、関連意匠として意匠登録を受けるためには、意匠登録を受けようとする部分同士の位置・大きさ・範囲やその用途及び機能が共通している必要があるところ、本願意匠はカッターナイフ全体に係るものであるのに対して、意匠登録第1499393号の意匠はカッターの刃を除いた筐体部分に係るものであり、カッターナイフと筐体とでは各々の用途及び機能が異なることから、両部分は類似しないものですので、本願意匠は意匠登録第1499393号を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることはできません。したがって、意匠法第10条第2項の規定は適用されず、引用意匠は新規性等の判断の基礎となる資料からは除外されません。」

第4 願書に記載した本意匠

願書に記載した本意匠(以下「本意匠」という。)は、平成25年(2013年)9月25日に意匠登録出願(意願2013−22216)され、平成26年(2014年)5月9日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1499393号)がなされ、同年6月9日に意匠公報が発行されたものであり、意匠に係る物品を「カッターナイフ」とし、その形状等は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本意匠部分」という。)を、「赤色に着色した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第2参照)。

第5 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の類否判断

(1)本願意匠と引用意匠の対比

ア 意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。また、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして認定する。)の意匠に係る物品は、いずれも「カッターナイフ」であるから、一致する。

イ 両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
(ア)共通点
a 基本的構成態様
全体は、平面視において、略横長扁平直方体形状のカッターナイフ本体(以下「本体」という。)の縦中央に、略横長扁平直方体形状のスライダーを左右に摺動可能に設け、スライダーの先端側の略横長長方形のブレード保持具を介して、略横長倒台形状のブレードを連結したものである点、

各部の具体的な態様として、
b 本体
(b−1)平面視において、全体を、両端が略半円状の略横長長円形状とし、縦中央に、先端側がやや丸みを帯びた略横長長方形状凹部と後端に向かって略倒「ハ」字状に拡幅する略扇状凹部とから成るスライド溝を形成している点、
(b−2)全体の平面視縦横の長さ及び高さの比率は、約5:18:2で、略横長長方形状凹部の縦横の長さは、全体の約3/7及び約2/3、略扇状凹部の縦横の長さは、全体の約5/6及び約1/5で、スライド溝の高さは、全体の約7/10である点、
(b−3)上面側周囲をなだらかで丸みを帯びた傾斜面状に形成し、左側面視略中央に略横長長方形のブレード用開口部を形成し、正面及び背面の先端寄りに正背面視左右方向に並んだ15本の細い縦溝を設けている点、
(b−4)スライド溝における略横長長方形状凹部の内周に、先端側がやや幅があり、平面視上下が細幅の、本体上面よりも一段低い先端側スライダーガイド部を設けている点、

c スライダー
(c−1)平面視において、全体を、両端が凸弧状の略横長長円形状とし、正面視において、両端寄りが略逆「へ」字状又は略「へ」字状に隆起し、中央が、両端よりも高さのある略平坦面となっており、両端寄りの斜面の略中央に、平面視左右方向に並んだ4本の細い縦溝を設けている点、
(c−2)平面視縦の長さは、本体の略横長長方形状凹部の縦の長さと略同一で、平面視縦横の長さ及び高さの比率は、約2:6:1で、中央の平坦面の横長さ及び高さは、スライダー全体の約1/4及び約3/5である点、

d ブレード保持具
(d−1)ブレード収納時において、スライダーガイド部の下部に位置し、先端がやや丸みを帯びた平面視略横長長方形状である点、
(d−2)ブレード収納時において、平面視横長さは、本体の約1/8で、ブレード繰り出し時においては、全体が本体の先端側の内部に位置して外部からは見えない点、

e ブレード
(e−1)ブレード収納時において、スライダーガイド部の下部に位置し、ブレード繰り出し時において、先端が丸みを帯びた平面視略横長倒台形状で、上下の斜辺に鋸歯状の刃を形成している。
(e−2)ブレード収納時において、先端寄りは本体の先端側の内部に位置して外部からは見えず、ブレード繰り出し時においては、平面視横長さは、本体の約1/4である点、
において共通する。

(イ)相違点
a 本体
(a−1)平面視において、本願意匠は、後端寄りに湾曲トラック状の孔を設けて吊り下げ部とし、その底面側を段状に形成しているのに対し、引用意匠は、底面の後端寄りに右側面視略逆台形状の細幅の起立片の中央に略半円形状の孔を設けて吊り下げ部としている点、
(a−2)本願意匠は、上面の先端側に、平面視略「く」字状の二重矢印状凸部を形成しているのに対し、引用意匠は、該凸部がない点、
(a−3)引用意匠は、底面視右寄りに、略横長角丸長方形の浅い凹陥を形成しているのに対し、本願意匠は、該凹陥がない点、

b スライダー
本願意匠は、スライダーの平面視後端寄り約3/7の部分が、スライダーを固定するために後端方向に分離・スライド可能となっており、該後端寄りの中央側斜面中央に、平面視略逆「く」字状の二重矢印状凸部を形成しているのに対し、引用意匠は、後端寄り部分が後端方向に分離・スライド可能となっておらず、該凸部も形成されていない点、
において相違する。

(2)類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

ア 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

イ 両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
(ア)共通点の評価
(共通点a)は、基本的構成態様に係る共通点ではあるものの、両意匠の形状等を概括的に捉えた場合の共通点であり、この種物品分野では、ありふれた態様であるから、(共通点a)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点b)のうち、(共通点b−1)及び(共通点b−2)は、両意匠の大部分を占め、カッターナイフを特徴付ける本体全体の具体的形状や構成比率に関する共通点であり、両意匠の骨格を形成し、需要者が強い共通の印象を与えるものであるから、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
(共通点b−3)は、本体の上面及び正背面の具体的な態様に関するものであり、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が与える共通の印象をより強固にするものであるから、(共通点b−3)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(共通点b−4)は、スライド溝内部に位置し、意匠全体に占める大きさも小さいので、(共通点b−4)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点c)は、両意匠の中央に位置し、ブレードの出し入れ時に指で操作するスライダーの具体的形状や構成比率に関する共通点であり、(共通点b−1)及び(共通点b−2)と共に、需要者の強い注意を引くものであるから、(共通点c)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(共通点d)に係るブレード保持具は、ブレードの交換時を除いて、スライダーガイド部の下部に位置するものであり、意匠全体に占める大きさが小さく、格別特徴のあるものではないから、(共通点d)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点e)に係るブレードは、切断に用いるものであり 需要者が注目する部分ではあるものの、意匠全体に占める大きさが小さく、また、先端が丸みを帯びた平面視略横長倒台形状で、上下の斜辺に鋸歯状の刃を形成したものは、下記参考意匠にみられるように、引用意匠の出願前より既に見られる態様であり、両意匠のみが有する特徴ではないので、(共通点e)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠(別紙第3参照)
米国の非営利団体である「The Internet Archive」が運営するウェブアーカイブである「Wayback Machine」により、2013年5月9日付けで保存・公開されている下記ウェブページに掲載された「カッターナイフ」の意匠

(書誌的事項)
著者の氏名:The Internet Archive
表題:開封のこ カイちゃん:ダンちゃんシリーズ 商品ラインナップ|CANARYは岐阜県関市のはさみ・刃物の製造メーカー 長谷川刃物のブランドです
掲載箇所:ページ上部
媒体のタイプ:[online]
掲載年月日:2013年5月9日
検索日:2025年3月17日
情報の情報源:インターネット
情報のアドレス URL:http://web.archive.org/web/20130509030200/http://www.canary.jp/lineup/item_54.html

(イ)相違点の評価
(相違点a)については、意匠全体に占める大きさが小さく、(共通点b−1)から(共通点b−3)に係る本体の具体的態様が与える共通の印象を払拭するほどの顕著な相違ではないから、(相違点a)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点b)についても、(共通点c)に係るスライダーの具体的態様が共通する中での、部分的な相違に過ぎないから、(相違点b)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

(ウ)両意匠の形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠全体を総合的に観察した場合、(共通点a)、(共通点b−4)、(共通点d)及び(共通点e)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きく、(共通点b−3)及び(共通点c)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいのに対し、(相違点a)及び(相違点b)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
そして、これら相違点が相俟って生じる視覚的効果を考慮しても、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから、両意匠の形状等は類似するものである。

(3)小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、その形状等も類似するものであるから、両意匠は類似する。

2 本願意匠と本意匠の類否判断

(1)本願意匠と本意匠の対比

ア 意匠に係る物品
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。また、本意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして認定する。)の意匠に係る物品は、いずれも「カッターナイフ」であるから、一致する。

イ 本願意匠と本意匠部分の用途及び機能
本願意匠と本意匠部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は、いずれも、本体を手で把持し、指でスライダーを摺動させて、ブレードを繰り出して使用するものであるから、おおむね一致する。

ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲
本願意匠の位置、大きさ及び範囲は、本体、スライダー、ブレード保持具及びブレードから成るカッターナイフ全体であるのに対し、本意匠部分の位置、大きさ及び範囲は、前記カッターナイフのうち、ブレードを除く部分であり、カッターナイフ全体におけるブレードの大きさは、ブレード繰り出し時の平面視において、カッターナイフ全体の約9%の面積であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は、相違する。

エ 両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
(ア)共通点
a 基本的構成態様
全体は、平面視において、略横長扁平直方体形状の本体の縦中央に、略横長扁平直方体形状のスライダーを左右に摺動可能に設け、スライダーの先端側に略横長長方形のブレード保持具を設けたものである点、

各部の具体的な態様として、
b 本体
(b−1)平面視において、全体を、両端が略半円状の略横長長円形状とし、縦中央に、先端側がやや丸みを帯びた略横長長方形状凹部と後端に向かって略倒「ハ」字状に拡幅する略扇状凹部とから成るスライド溝を形成している点、
(b−2)全体の平面視縦横の長さ及び高さの比率は、約5:18:2で、略横長長方形状凹部の縦横の長さは、全体の約3/7及び約2/3、略扇状凹部の縦横の長さは、全体の約5/6及び約1/5で、スライド溝の高さは、全体の約7/10である点、
(b−3)上面側周囲をなだらかで丸みを帯びた傾斜面状に形成し、左側面視略中央に略横長長方形のブレード用開口部を形成し、正面及び背面の先端寄りに正背面視左右方向に並んだ15本の細い縦溝を設けている点、
(b−4)スライド溝における略横長長方形状凹部の内周に、先端側がやや幅があり、平面視上下が細幅の、本体上面よりも一段低い先端側スライダーガイド部を設けている点、

c スライダー
(c−1)平面視において、全体を、両端が凸弧状の略横長長円形状とし、正面視において、両端寄りが略逆「へ」字状又は略「へ」字状に隆起し、中央が、両端よりも高さのある略平坦面となっており、両端寄りの斜面の略中央に、平面視左右方向に並んだ4本の細い縦溝を設けている点、
(c−2)平面視縦の長さは、本体の略横長長方形状凹部の縦の長さと略同一で、平面視縦横の長さ及び高さの比率は、約2:6:1で、中央の平坦面の横長さ及び高さは、スライダー全体の約1/4及び約3/5である点、

d ブレード保持具
(d−1)ブレード収納時において、スライダーガイド部の下部に位置し、先端がやや丸みを帯びた平面視略横長長方形状である点、
(d−2)ブレード収納時において、平面視横長さは、本体の約1/8で、ブレード繰り出し時においては、全体が本体の先端側の内部に位置して外部からは見えない点、
において共通する。

(イ)相違点
a 本体
(a−1)平面視において、本願意匠は、後端寄りに湾曲トラック状の孔を設けて吊り下げ部とし、その底面側を段状に形成しているのに対し、本意匠部分は、底面の後端寄りに右側面視略逆台形状の細幅の起立片の中央に略半円形状の孔を設けて吊り下げ部としている点、
(a−2)本願意匠は、上面の先端側に、平面視略「く」字状の二重矢印状凸部を形成しているのに対し、本意匠部分は、該凸部がない点、
(a−3)本意匠部分は、底面視右寄りに、略横長角丸長方形の浅い凹陥を形成しているのに対し、本願意匠は、該凹陥がない点、

b スライダー
本願意匠は、スライダーの平面視後端寄り約3/7の部分が、スライダーを固定するために後端方向に分離・スライド可能となっており、該後端寄りの中央側斜面中央に、平面視略逆「く」字状の二重矢印状凸部を形成しているのに対し、本意匠部分は、後端寄り部分が後端方向に分離・スライド可能となっておらず、該凸部も形成されていない点、

c ブレード
本願意匠は、ブレード保持具の先端側に、先端が丸みを帯びた平面視略横長倒台形状で、上下の斜辺に鋸歯状の刃を形成したブレードを設けているのに対し、本意匠部分は、ブレードを含まない点、
において相違する。

(2)類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

ア 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

イ 両部分の用途及び機能
両部分の用途及び機能はおおむね一致するから、おおむね同一である。

ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置及び範囲は、ブレードを含むか否かで相違するが、カッターナイフ全体におけるブレードの大きさは、ブレード繰り出し時の平面視において、カッターナイフ全体の約9%の面積に過ぎず、部分全体に占める大きさが極めて小さいから、この相違は、両部分の類否判断を左右するほどのものではない。

エ 両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
(ア)共通点の評価
(共通点a)は、基本的構成態様に係る共通点ではあるものの、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点であり、この種物品分野では、ありふれた態様であるから、(共通点a)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点b)のうち、(共通点b−1)及び(共通点b−2)は、両部分の大部分を占め、カッターナイフを特徴付ける本体全体の具体的形状や構成比率に関する共通点であり、両部分の骨格を形成し、需要者が強い共通の印象を与えるものであるから、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。
(共通点b−3)は、本体の上面及び正背面の具体的な態様に関するものであり、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が与える共通の印象をより強固にするものであるから、(共通点b−3)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(共通点b−4)は、スライド溝内部に位置し、部分全体に占める大きさも小さいので、(共通点b−4)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点c)は、両部分の中央に位置し、ブレードの出し入れ時に指で操作するスライダーの具体的形状や構成比率に関する共通点であり、(共通点b−1)及び(共通点b−2)と共に、需要者の強い注意を引くものであるから、(共通点c)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(共通点d)に係るブレード保持具は、ブレードの交換時を除いて、スライダーガイド部の下部に位置するものであり、部分全体に占める大きさが小さく、格別特徴のあるものではないから、(共通点d)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(イ)相違点の評価
(相違点a)については、部分全体に占める大きさが小さく、(共通点b−1)から(共通点b−3)に係る本体の具体的態様が与える共通の印象を払拭するほどの顕著な相違ではないから、(相違点a)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点b)についても、(共通点c)に係るスライダーの具体的態様が共通する中での、部分的な相違に過ぎないから、(相違点b)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点c)に係る本願意匠のブレードは、切断に用いるものであり 需要者が注目する部分ではあるものの、部分全体に占める大きさが小さく、また、先端が丸みを帯びた平面視略横長倒台形状で、上下の斜辺に鋸歯状の刃を形成したものは、前記参考意匠にみられるように、本意匠の出願前より既に見られる態様であり、本意匠のみが有する特徴ではないので、(相違点c)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(ウ)両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分全体を総合的に観察した場合、(共通点a)、(共通点b−4)及び(共通点d)が両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、(共通点b−1)及び(共通点b−2)が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きく、(共通点b−3)及び(共通点c)が両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、(相違点a)から(相違点c)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そして、これら相違点が相俟って生じる視覚的効果を考慮しても、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから、両部分の形状等は類似するものである。

(3)小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分は、用途及び機能がおおむね同一で、位置、大きさ及び範囲は相違するものの、両部分の類否判断に与える影響は小さく、その形状等も類似するものであるから、両意匠は類似する。

3 本願意匠が意匠法10条1項の規定に該当するか否かについて

本願意匠は、前記1のとおり、引用意匠と類似するものである。しかしながら、前記2のとおり、本願意匠は、引用意匠の公知日(2014年6月9日)より出願日が先行する本意匠(2013年9月25日出願)にも類似するものであるから、意匠法10条1項に規定する本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たすものである。

また、本意匠は、本願の出願前の自己の意匠登録出願であるから、本願は、意匠法10条1項に規定する出願時期及び出願人に係る要件を満たしている。

したがって、本願意匠は、意匠法10条1項の規定に該当する。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似するものの、前記のとおり、意匠法10条1項の規定に該当するものであるから、引用意匠は、意匠法3条1項3号に該当するには至らず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲





審決日 2025-03-27 
出願番号 2023017926 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 玉虫 伸聡
渡邉 久美
登録日 2025-04-02 
登録番号 1795838 
代理人 副田 圭介 
代理人 朝倉 悟 
代理人 宮嶋 学 
代理人 猿山 純平 

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