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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1294809 
審判番号 不服2014-3128
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-19 
確定日 2014-11-11 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2013- 1941「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)1月31日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成22年(2010年)7月20日)に掲載された,意匠登録第1392929号(意匠に係る物品,自動車用タイヤ)の意匠(以下,本願実線部分に相当する引用意匠の当該部分を「引用相当部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに自動車用タイヤであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

2.本願実線部分と引用相当部分の対比
(1)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)は,いずれも全体が環状体をなす自動車用タイヤの,トレッド部中央部分におけるトレッドパターンを構成する左右のブロック及び各ブロック間の溝部の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
なお,対比のため,引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の「正面図」を右に180°回転させ「正面図」とし,引用意匠の「左側面図」を引用意匠の「右側面図」とし,その他の図面もこれらに準じて表されているものとする。)

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,正面視を右に傾斜した略撥形簪の頭部分の形状とした左側ブロック(以下,「左ブロック部」という。)の上辺右端部寄りの部分と,左に傾斜した左ブロック部と左右対称形の右側ブロック(以下,「右ブロック部」という。)の左辺部分を,僅かな隙間を設けて対向させ,略V字状となるよう配設し,この左右ブロック部を,僅かな隙間を空けてタイヤ周方向に上下に列設している構成としている点,
(B)左右ブロック部は,左ブロック部においては,上辺を右傾斜の略円弧状と右傾斜の直線状からなる形状とし,下辺を右傾斜の略円弧状とし,右辺を略く字状に突出した形状とし,左辺を直線状とし,ブロック部の上辺略中央部分からタイヤ周方向に沿って下辺近傍まで略直線状の切れ込み溝(以下,「切込み溝部」という。)を1つ形成し,この切込み溝部のブロック部左側部分を略平行四辺形状とし,同溝部の右側部分を撥先端部中央部分が略く字状に突出した略三味線撥状となるように形成し,ブロック部表面部分に一部がジグザグ状の左傾斜のサイピングを12条形成している点,
なお,右ブロック部においても,左ブロック部と左右対称であるため,左ブロック部における共通点と同様の共通点が認められる。
(C)交互に噛み合うように上下方向に列設した左右ブロック部の左右間に,略ジグザグ状の細溝(以下,「略ジグザグ状中央溝部」という。)がタイヤ周方向に表れている点,
(D)上下方向に隙間を空けて列設した左右ブロック部の上下間に,左から右にかけて,タイヤ中心側に向かって下に傾斜した上に凸の略円弧状の太溝部,右上がりの直線状細溝部及びタイヤ中心側に向かって下に傾斜した上に凸の略円弧状の太溝部からなる略V字状の横溝部(以下,「略V字状横溝部」という。)が表れている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)略V字状に配された左右ブロック部のなす角度について,本願実線部分は,左右ブロック部のなす角度がほぼ直角となるよう配設しているのに対して,引用相当部分は,左右ブロック部のなす角度が約110°の鈍角となるよう配設している点,
(イ)左右ブロック部における切込み溝部外側部分の態様について,本願実線部分は,ブロック部外側の辺を垂直な直線状とし,切込み溝部外側部分の外側下角部及び内側上角部を略円弧状に形成しているのに対して,引用相当部分は,ブロック部外側の辺を内側に向かって下に急傾斜する直線状とし,切込み溝部外側部分の外側下角部及び内側上角部を鈍角な角部に形成している点,
(ウ)左右ブロック部における切込み溝部の態様について,本願実線部分は,先端に向かって漸次細くなる直線状の切込み溝部としているのに対して,引用相当部分は,先端部分が外側に向かって略く字状に折曲した略同一幅の切込み溝部としている点,
(エ)略V字状横溝部の左から右にかけての態様について,本願実線部分は,下方に向かって漸次細くなる略円弧状の太溝部の左切込み溝部やや内側付近から,左切込み溝部の約1/2の長さで僅かに右上がりの直線状細溝部が分岐し,その細溝部右端部からタイヤ外側に向かって漸次太くなる略円弧状の太溝部が連続する形状としているのに対して,引用相当部分は,短手方向が同幅の略円弧状の太溝部のタイヤ中心線付近から,左切込み溝部と略同じ長さで右上がりの直線状細溝部が分岐し,その細溝部右端部からタイヤ外側に向かって短手方向が同幅の略円弧状の太溝部が連続する形状としている点,
が認められる。

3.両意匠部分の形態の評価
両意匠部分の形態における上記共通点(A)ないし(D)における,略平行四辺形状と略三味線撥状の形状からなる全体が略撥形簪の頭部分の形状となる左右対称なブロック部を略V字状となるよう左右に配設し,この左右ブロック部を略V字状横溝部を挟んで上下に列設し,左右ブロック部の間に略ジグザグ状中央溝部が周方向に1条表れているものは,本願出願前より既に見受けられる態様(参考意匠1:欧州共同体商標意匠庁が発行した欧州共同体意匠公報(発行日:2009年8月7日)に所載の「タイヤ(登録番号001599085-0001号)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH21206787号),別紙第3参照)であるから,両意匠部分のみに共通する特徴的な態様とは言えず,この共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)略V字状に配された左右ブロック部のなす角度,及び,相違点(イ)左右ブロック部における切込み溝部外側部分の態様については,左右ブロックの外側寄りの部分を曲線的な柔らかな印象の略幅広披針形状とし,その外側のブロックとの間をタイヤ周方向に形成された幅広の縦溝で区切られた本願実線部分の態様と,左右ブロックの外側寄りの部分を角張った略平行四辺形状とし,その外側のブロックとの間をタイヤ周方向に連続しない急傾斜の細溝で区切られた引用相当部分の態様とは,その左右ブロックのなす角度の違いも含め,看者に与える印象が全く異なるものであるから,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(ウ)左右ブロック部における切込み溝部の態様については,切込み溝部の先端部における相違であり,また,折曲部の有無についての相違であるが,タイヤ中心部付近における目に付く部分におけるものであるから,この相違点(ウ)は,各溝部の相違点とともに,両意匠部分の類否判断に一定の影響を及ぼす。
また,相違点(エ)略V字状横溝部の態様については,左右ブロック部の間に表れるタイヤ周方向の略ジグザグ状中央溝部が,サメの歯のようなギザギザな形状に表れる本願実線部分の態様と,略正三角形からなる三角波状に表れる引用相当部分の態様とは,看者に与える印象が全く異なるものであるから,この相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。
そうすると,これらの相違点(ア)ないし(エ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる視覚的効果は,両意匠部分の類否判断を左右するものである。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については,一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても,共通しているが,両意匠部分の形態については,上記のとおり,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,両意匠部分全体として別異の印象を与えるものである。
したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 結び

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-10-30 
出願番号 意願2013-1941(D2013-1941) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉虫 伸聡 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 斉藤 孝恵
江塚 尚弘
登録日 2014-12-19 
登録番号 意匠登録第1516085号(D1516085) 
代理人 杉村 憲司 

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