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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1323564 |
審判番号 | 不服2016-14393 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-27 |
確定日 | 2017-01-18 |
意匠に係る物品 | 建物用手すり |
事件の表示 | 意願2015- 19712「建物用手すり」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)9月4日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「建物用手すり」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「緑色で着色した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年10月10日に受け入れた,『SHIROKUMA CATALOG No.2009 住宅用手すりカタログ 2008年9月』第23頁に所載の「壁取り付け用手すり」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20018074号)における本願部分に相当する部分(以下,本願部分に相当する引用意匠の部分を「引用部分」という。)としたものであって,引用意匠及び引用部分の形態は,同カタログに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「建物用手すり」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「壁取り付け用手すり」であるが,いずれも建物の壁面に設置される手すりであるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2.本願部分と引用部分の対比 (1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,3本の手すり棒を連結し支持するための手すり棒連結用のブラケット(以下「連結ブラケット」という。)及び手すり棒を支持するための端部のブラケット(以下「エンドブラケット」という。)であって,その位置,大きさ及び範囲は,手すり棒を略倒T字状に配した手すりにおける3方向分岐部分の連結ブラケット及び各手すり棒端部のエンドブラケットの部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (2)両意匠部分の具体的形態 両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。 まず,共通点として, (A)両意匠部分全体は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分ではない3本の手すり棒を略T字状に連結する連結ブラケット,及び連結された各手すり棒の先端部に取り付けられたエンドブラケットからなり,連結ブラケットを中心にしてエンドブラケットを上方及び左右側に配置した構成としたものであって, (B)連結ブラケットは,略円板状の台座(以下「台座部」という。)と,その台座部中央部分から立設する略円柱形状の支柱(以下「連結支柱部」という。)及びその上端部に形成された3方向分岐の手すり棒連結部(以下「手すり棒連結部」という。)を一体的に結合した形態の支柱からなる点, (C)エンドブラケットは,連結ブラケットと同様な形態の台座部と,その台座部中央部分から立設する略L字状の支柱(以下「L形支柱部」という。)からなる点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)台座部の態様について,本願部分は,フラットでやや厚めの円板状のものであって,六面図では正面側となる台座上面部の外周角部をR状に面取りし,上面から外周面にかけての手すり棒で隠れる位置に細幅スリットを一つ設け,その反対側の外周面に略細幅U字状のスリットを2つ並設し,六面図では背面側となる台座底面部に円形及び長円形状のノックアウト穴を複数設けた壁面取り付け部を嵌合したものであるのに対して,引用部分は,台座上面部分を外に向かって底面側に傾斜する傾斜面とした薄い略円板状のものであって,台座底面部の形態については不明なものである点, (イ)連結支柱部の態様について,本願部分は,連結支柱部の根元部分を台座部に向かうにつれて拡径するラッパ形状に形成し,連結支柱部と手すり棒連結部の接合部分をなだらかに接合して形成したものであり,この接合部の底面側表面部分に略三角形状の平坦部が表れているのに対して,引用部分は,支柱全体を略円柱形状に形成したものであり,連結支柱部と手すり棒連結部の接合部分に略円弧状の接合部境界線が表れている点, (ウ)手すり棒連結部の態様について,本願部分は,正面視において,3方向に分岐する各連結部の中心からの長さを同じものとし,水平方向の連結部中央部分に垂直方向の連結部をなだらかに接合して形成したものであり,この接合部分に略三角形状の平坦部が表れているのに対して,引用部分は,3方向に分岐する各連結部のうち垂直方向の連結部のみ長くし,水平方向の左右の連結部を短くして形成したものであり,水平方向の連結部中央部分と垂直方向の連結部との接合部分に略円弧状の接合部境界線が表れている点, (エ)L形支柱部の態様について,本願部分は,支柱の根元部分を台座部に向かうにつれて拡径するラッパ形状に形成したものであるのに対して,引用部分は,支柱の根元部分を台座部まで同径の略円柱形状に形成したものであり,連結支柱部と手すり棒連結部の接合部分に略円弧状の接合部境界線が表れている点, (オ)手すり棒連結部及びL形支柱部の手すり棒挿入部分の態様について,本願部分は,先端部外周部分を先端に向けて縮径したテーパー面となるように形成したものであるのに対して,引用部分は,先端部外周部分に断面視円弧状の凸条部を一周形成したものである点, が認められる。 3.両意匠部分の形態の評価 まず,共通点(A)の両意匠部分全体における共通点,共通点(B)の連結ブラケットの共通点,及び共通点(C)のエンドブラケットの共通点は,3本の手すり棒を略T字状に連結して形成した建物用手すりにおける連結ブラケット及びエンドブラケットの形態及びその配置態様を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通点(A)から共通点(C)の共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。 そして,これらの共通点(A)から共通点(C)によって生じる視覚的効果は,これらを全体としてみても小さいものであって,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)台座部の態様については,上面部外周角部をR状に面取りし,ラッパ形状のL形支柱部根元部分となだらかに接していることで全体に丸みを帯びているとの印象を与える本願部分の態様と,略円柱形状のありふれた形態のL形支柱部が台座部中央部分から単に立設しただけであるとの印象を与える引用部分の態様とは,台座部上面部分の傾斜の有無も含めて看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,相違点(イ)連結支柱部の態様については,手すり棒連結部となだらかに接合することで連結ブラケットが一体的に形成されたものであるとの印象を与える本願部分の態様と,連結支柱部の上部に手すり棒連結部を単に接合しただけのものとの印象を与える引用部分の態様とは,その根元部分の形態の相違も含めて看者に別のものであるとの印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 また,相違点(ウ)手すり棒連結部の態様については,3方向分岐の連結部の長さが同じために略T字状のものであるとの印象を与える本願部分の態様と,垂直方向の連結部に比べ水平方向の左右連結部が短いために,略I字状のものであるとの印象を与える引用部分の態様とは,それら連結部の接合部分の形態の相違も含めて看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 また,相違点(エ)L形支柱部の態様については,建物用手すりの各端部に配されたL形支柱部は,特に目に付きやすい部位であるから,この相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 さらに,相違点(オ)手すり棒連結部及びL形支柱部の手すり棒挿入部分の態様については,手すり棒挿入口部分全ての箇所に見られる相違であって,その形態も大きく異なるものであるから,この相違点(オ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 そして,これらの相違点(ア)から相違点(オ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。 4.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-12-19 |
出願番号 | 意願2015-19712(D2015-19712) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
神谷 由紀 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 意匠登録第1570526号(D1570526) |