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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1325922 |
審判番号 | 不服2016-17324 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-21 |
確定日 | 2017-02-27 |
意匠に係る物品 | 組立家屋 |
事件の表示 | 意願2015-25242「組立家屋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成27年(2015年)11月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「組立家屋」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。「参考図」において,意匠登録を受けようとする部分に網掛けを付している。なお,重量物につき底面図は省略する。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1202706号(意匠に係る物品,組立家屋)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における本願実線部分に相当する部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.両意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「組立家屋」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「組立家屋」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)両意匠部分の用途及び機能 本願の図面の記載を,破線で表した部分を含めて参照すると,本願実線部分は,集合住宅用家屋の共用玄関ポーチとしての用途及び機能を有しているのに対して,引用相当部分は,戸建て住宅用家屋のビルトインガレージとしての用途及び機能を有しているから,両意匠部分の用途及び機能は相違する。 (3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲 両意匠部分は,いずれも家屋の正面に張り出すように位置し,家屋の2階までに及ぶ高さで,家屋全体の面積の略1/6ないし1/4程度の範囲を占める大きさ及び範囲の部分であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は共通する。 (4)両意匠部分の形態 両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 <共通点> 両意匠部分は,基本的態様として, (A)全体は,平面視前方に膨出する弧状の正面壁と,正面壁の左右端に連なる左右外壁で構成され,左右外壁のいずれかが家屋正面壁まで延びている点, 具体的態様として, (B)正面壁の左側に,縦長長方形状の開口が家屋の2階と1階の中間の位置まで設けられており,開口の左右に内壁が設けられている点, (C)正面壁の左右端は,袖壁状に突出している点, で共通する。 <相違点> 両意匠は,具体的態様として, (ア)本願意匠部分の正面壁の開口の内部には,家屋の正面壁よりも手前側に奥壁が設けられているのに対して,引用相当部分の正面壁の開口の内部には,家屋の正面壁よりも奥側に奥壁が設けられている点, (イ)正面壁の全幅に占める開口の幅の比が,本願意匠部分では略1:6であるのに対して,引用相当部分では略1:3である点, (ウ)引用相当部分の左外壁にはドアが設けられているのに対して,本願意匠部分の左外壁にはドアが無い点, (エ)本願意匠部分は,右外壁が家屋正面壁まで延びているのに対して,引用相当部分は,左外壁が家屋正面壁まで延びている点, (オ)本願意匠部分には,正面壁の右下に縦長長方形状に除かれた部分があるのに対して,引用相当部分には,そのような部分がない点, で相違する。 2.両意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)両意匠の意匠に係る物品の評価 両意匠の意匠に係る物品は「組立家屋」として一致するが,「組立家屋」自体はありふれた物品であるから,両意匠の意匠に係る物品が一致することによる両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 (2)両意匠部分の用途及び機能の評価 本願実線部分は,集合住宅用家屋の共用玄関ポーチとしての用途及び機能を有しているのに対して,引用相当部分は,戸建て住宅用家屋のビルトインガレージとしての用途及び機能を有しているところ,玄関は,家屋の出入り口の役割を果たす部分であるから,その機能は,家屋における最も基本的かつ重要なものというべきである。 そうすると,両意匠部分の用途及び機能が相違することは,組立て家屋における最も基本的かつ重要な機能が相違することになり,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるというほかない。 (3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両意匠部分は,位置,大きさ及び範囲が共通するところ,弧状の表面壁が家屋の2階までに及ぶ大きさのものは,両意匠部分のほかにはあまり見られないから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が共通することは,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるということができる。 (4)両意匠部分の形態についての共通点の評価 共通点(A)は,平面視前方に膨出する弧状の正面壁と,正面壁の左右端に連なる左右外壁で構成され,左右外壁のいずれかが家屋正面壁まで延びているというものであるが,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるし,平面視前方に膨出する弧状の正面壁は,両意匠部分のほかにも既に見られる形態であるから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,共通点(B)は,正面壁の左側に,縦長長方形状の開口が家屋の2階と1階の中間の位置まで設けられており,開口の左右に内壁が設けられているというものであるが,家屋の正面壁に縦長長方形状の開口を家屋の2階と1階の中間の位置まで設け,開口の左右に内壁を設ける形態は,積雪の多い地域の家屋の玄関等において既に見られる形態であるから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きなものとはいえない。 そして,共通点(C)は,正面壁の左右端が,袖壁状に突出しているというものであって,両意匠部分のほかには余り見られないものではあるが,正面壁の左右端という,ごく部分的な形態での共通点であるから,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も,大きなものとはいえない。 (5)両意匠部分の形態についての相違点の評価 これに対して,両意匠部分の具体的態様に係る相違点(ア)ないし(ウ)は,いずれも両意匠部分の用途及び機能に起因する形態上の相違であって,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きいというほかない。 まず,相違点(ア)を詳述すると,本願意匠部分の開口は,共用の玄関ポーチの入口に相当することから,共用の玄関ドアを設けるべき奥壁が,家屋の正面壁よりも手前側に設けられている。これに対して,引用相当部分の開口は,ビルトインガレージの入口であって,開口の内部には車両の長さに相当する空間が必要であることから,家屋正面から開口に至る範囲には奥壁が設けられておらず,家屋の正面壁よりも奥側に奥壁が設けられている。そして,組立家屋の物品分野(以下「この種物品分野」という。)の需要者の多くは,その購入者又は居住者であるところ,玄関は,それらの購入者又は居住者が日常的に接する部分であるから,高い関心をもって観察される部分というほかなく,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。 また,相違点(イ)は,開口の幅が,相対的に見て,本願意匠部分では小さく,引用相当部分では大きいというものであって,これも,本願意匠部分の開口が共用の玄関ポーチの入口に相当し,人間が行き交う程度の幅があれば十分であるのに対して,引用相当部分の開口がビルトインガレージの入口であり,車両を入れることができる程度の幅が必要であることによるものであるから,上記相違点(ア)と同様に,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。 そして,相違点(ウ)は,本願意匠部分の左外壁にはドアが無いのに対して,引用相当部分の左外壁にはドアが設けられているというものであって,これも,本願意匠部分の開口が共用の玄関ポーチの入口に相当し,開口のほかに玄関ポーチに入るための入口を必要としないのに対して,引用相当部分の開口がビルトインガレージの入口であり,玄関からガレージに入るための入口ドアを必要とすることによるものであるから,上記相違点(ア)と同様に,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいといわざるを得ない。 さらに,相違点(エ)は,本願意匠部分は,右外壁が家屋正面壁まで延びているのに対して,引用相当部分は,左外壁が家屋正面壁まで延びているというものであり,これにより,本願意匠部分の正面壁は,家屋の正面視左側に寄っているように見えるのに対して,引用相当部分の正面壁は,家屋の右側に寄っているように見えることになり,非常に目に付きやすい相違であるから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいといえる。 これに対して,相違点(オ)は,本願意匠部分には,正面壁の右下に縦長長方形状に除かれた部分があるのに対して,引用相当部分には,そのような部分がないというものであるが,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 (6)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,それによる両意匠の類否判断に与える影響は微弱であり,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が共通することによる両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あり,両意匠部分の形態についての共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも大きいものではない。 これに対して,両意匠部分の用途及び機能が相違することによる,両意匠の類否判断に与える影響は大きいというべきである上に,両意匠部分の形態についての相違点(ア)ないし(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も,それぞれ大きく,相違点(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱であるとしても,意匠全体として見た場合,両意匠が相違するという印象は,両意匠が共通するという印象を凌駕し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-02-10 |
出願番号 | 意願2015-25242(D2015-25242) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 純典、木村 恭子 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-03-10 |
登録番号 | 意匠登録第1573726号(D1573726) |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 山田 強 |