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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) E2 |
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管理番号 | 1327961 |
判定請求番号 | 判定2016-600048 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2016-10-03 |
確定日 | 2017-05-11 |
意匠に係る物品 | 吸殻搬送用レール |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1491809号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | イ号意匠の図面及びその説明により示された「吸殻搬送用レール」の意匠は,登録第1491809号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨及び理由 本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,イ号意匠(判定請求書のイ号意匠の図面及び説明書により示された意匠)は登録第1491809号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求めると申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として,甲第1ないし3号証,及び添付書類として本件登録意匠の公報の写し及び原簿謄本を提出した。 (1)判定請求の必要性 請求人(株式会社細山田商事)は,当社のグループ会社「株式会社日本オゾン」に本件登録意匠「吸殻搬送用レール」の製品を製造,販売及び施工工事を委託し,実施させており,その製品のカタログなどに意匠登録表示をするよう努めている。 株式会社日本オゾンは,本件登録意匠「吸殻搬送用レール」の製品について,実際の製造,販売及び施工に際し,製造,組み立て,施工の簡略化,価格の低減化のために,本件登録意匠「吸殻搬送用レール」の一部を変更して実施している。この結果,請求人は,変更後の製品について意匠登録表示を行ってもよいものか迷っている。 また,同業者からの伝聞によれば,この種の「吸殻搬送用レール」において,カバーの正面側にシュートを取り付けた製品があると話しており,当社において確認できていないものの,将来の紛争を未然に予防するためにも,判定の結論は当社のみならず同業の他社でも有益である。 このような事情から,請求人は,変更後の製品(イ号意匠及びイ号意匠の説明書)に関して,本件登録意匠及び本件登録意匠に類似する意匠の範囲を確認し,判定の結論にもとづいて意匠登録表示や紛争の予防を行いたく,請求の趣旨通りの判定を求める。 (2)本件登録意匠の手続の経緯 出願日 平成25年1月31日(2013年1月31日) 出願番号 意願2013-001854 登録日 平成26年2月7日(2014年2月7日) 登録番号 意匠登録第1491809号 (3)本件登録意匠の説明 本件登録意匠「吸殻搬送用レール」は,添付の意匠公報に見られるように,物置台(膳板)の下面に固定されるレールと,レールの下開口面に嵌め込まれるU字型断面のレールカバーと,遊戯機毎に灰皿に対応する位置に形成され,レールカバーの正面側に設けられる吸殻案内用のシュートとからなる。シュートは平面的に見て上面にU字型の開口を有し,レールカバーの正面側の開口位置に取り付けられ,レールカバーと一体化している。 「吸殻搬送用レール」は,意匠公報の〔使用状態を示す参考正面図〕,〔使用状態を示す参考左側面断面図〕及び〔使用状態を示す参考左側面断面拡大図〕に見られるように,パチンコ機等の遊戯機正面に設けられている物置台の下に対して隣接の灰皿の間に製品の長さ寸法のまま,または隣接の灰皿の間隔に応じて適切な長さに切断し,連続するものとして取り付けられ,物置台の灰皿から落下した吸殻をシュートで受け,シュートの内斜面によってレールカバーの内部に滑り案内し,レールカバーの内部の吸殻搬送用のスクリュウ羽根の螺旋送りにより,吸殻を図示しない回収ボックスの方向に搬送し吸殻を回収するために用いられる。 このように,灰皿に投入された吸殻はシュートの内斜面を滑り下りてレールカバーの内部に案内され,レールカバーの内部で回転しているスクリュウ羽根の螺旋送りによって,図示しない回収ボックスの方向に搬送され,消火処理の後に回収ボックスの内部に回収される。 レールカバーの正面寄りの位置,つまり遊戯者側の位置にシュートが設けられていると,「吸殻搬送用レール」は物置台の下面に対して背面寄りの位置,換言すると,遊戯者から離れた位置に取り付けられるため,遊戯者が長身者であっても,遊戯中に自身のひざをレールカバーに干渉することなく,物置台の下空間を広く自由に使えるようになる。 (4)イ号意匠の説明 イ号意匠は,株式会社日本オゾンの製品「吸殻搬送用レール」であって本件登録意匠「吸殻搬送用レール」と同じ物品であり,イ号意匠の図1ないし図4に見られるように,基本的な構成として,物置台(膳板)の下面に固定されるレールと,レールの下開口面に嵌め込まれるU字型断面のレールカバーと,遊戯機毎の灰皿に対応して,レールカバーの正面側に設けられる吸殻案内用のシュートと,付属部品として2つの抑えバンドとからなる。 イ号意匠の「吸殻搬送用レール」において,吸殻案内用のシュートは,図4に見られるように左右のレールカバーから分離しており,平面的に見て長方形型の樋状であって,左右の側壁の上端面に取り付けプレートを有し,滑り案内用の斜面の下辺でシュート幅とほぼ同幅で,左右のレールカバーと同断面形状のレールカバーの一部を構成している。 レール及びレールカバーは,本件登録意匠と同様,共にアルミニウム製の押し出し成形品である。レールカバーは,図3に見られるように,物置台の下面に固定されたレールに対して,レールカバーの背面側の係合をレールの係合溝に係り合わせながら,図1や図3のように,レールカバーの正面側の係合突片を,レールの正面側の係合突起にアルミニウムの弾性変形により係り止めることによって,レールに対して着脱自在に取り付けられる。 レール及びレールカバーは,それぞれ長手方向の押し出し成形後,標準の長さに切断される。これに対し,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部は,半円弧状のレールカバーの一部と平坦なシュートとをシュート一体のレールカバーの母線方向に押し出し成形し,その後にレールカバーの一部をシュート幅に見合う大きさに切断するとともに,平坦なシュートを展開図形にそって切断し,シュートの展開図形の曲げ加工によって,左右の立ち上がり側壁及び側壁の上端の取り付プレート,取り付プレートの孔加工などを行うことによって,物置台の下面に取り付け可能な状態となる。シュート一体のレールカバーの一部は通常,図4に見られるようにシュートの幅にほぼ等しく切断されるが,取り付け現場で取り付け長さに応じてシュート幅よりも大きく切断されることもある。 このように,イ号意匠の「吸殻搬送用レール」において,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部は,取り付け前の段階でレールカバーから分離し別体となっているが,その取り付けに際して隣接の灰皿の間隔に応じて適切な長さに切断され,左右のレールカバーの間に取り付けられて最終的にレール及びレールカバーと一体化する。 レールに対するシュート及びシュート一体のレールカバーの一部の取り付けは,レールカバーの背面側の係合をレールの係合溝に係り合わせてから,シュートの取り付けプレートのねじ孔を利用して,木ねじを物置台の下面にねじ込み,左右の取り付けプレートを物置台に固定することによって行われる。 作業者は,付属部品として2つのプラスチック製の弓形の抑えバンドを用いて,シュートの左右の位置で,シュート一体のレールカバーの一部と隣接のレールカバーとの接合に,抑えバンドをあてがい,抑えバンドを弾性変形させながら,抑えバンドの背面のフックをレールの係合溝の膨出に係り合わせ,次に,抑えバンドの正面側の係合片をレールの正面側の溝に係り止めることによって,接合に取り付ける。 このようにして,左右の抑えバンドはレールにはまり合い,接合を塞ぐとともに,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部をレールから外れ止め状態とし,それらを内面で段差のない状態として組み合わせている。 イ号意匠の「吸殻搬送用レール」でも,灰皿に捨てられた吸殻は,吸殻案内用のシュートを滑ってレールカバーの内部に案内され,レールカバー内部のスクリュウ羽根の螺旋送り回転によって,吸殻回収ボックスの方向に搬送される。イ号意匠の「吸殻搬送用レール」の取り付け状態によると,2つの抑えバンドがレールカバー間の接合を塞いでいるため,レール,レールカバー,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部は,観察者にとって見かけ上,長手方向に連続していてあたかも一体の物として看取される。 (5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 本件登録意匠「吸殻搬送用レール」において,レールカバー及びシュートは一体であり,シュートは平面的に見てU字型である。 これに対して,イ号意匠の「吸殻搬送用レール」において,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部は,取り付け前にレールカバーと一体ではなく分離しており,レールカバー間への取り付け後に,付加部品としての抑えバンドによってレールカバーと一体化する構成であり,また,シュートは平面的に見て長方形型である。 このように本件登録意匠とイ号意匠とは,レールカバーとシュートとの一体,分離の点,及びシュートの形状の点で相違している。 (6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 イ号意匠の「吸殻搬送用レール」において,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部は,取り付け前に分離しているが,取り付け後に,つまり最終的な取り付け状態で,シュート及びレールカバーは,抑えバンドによって一体化し,しかも,抑えバンドの遮蔽機能によって外観的にも一体の物として看取される。 したがって,イ号意匠は,いわゆる複合製品の意匠に関して,複合製品の構成の分解・組み立ての論拠と同様に,最終的な取り付け形態のときに本件登録意匠に類似の意匠の範囲にあるといえる。 この一体化の過程で,2つの抑えバンドが付加されるが,これらは文字通り単に付加されるものにすぎず,付加される前の本件登録意匠及び類似の意匠の範囲を大きく変更するほどの要素となっておらず,むしろ前記のように,レールカバー,シュート及びシュート一体のレールカバーの一部を一体物として観察者に印象付けるように作用している。 また,本件登録意匠とイ号意匠との比較において,それらのシュートの正面側の端縁部は,平面的に見て半円形か長方形型かの点で相違する。 イ号意匠のシュートが物置台に対し取り付け状態のときに,シュートは,物置台の存在によって平面的に観察できないことから,正面の方向から観察することになり,正面から見ると,左右の平行な直線状の2辺は,両者において共通であり,2辺間の正面側の端縁部が半円状の円弧か,曲げ加工による不完全な曲げ面からなる直線かの相違点は,「吸殻搬送用レール」に設けられたシュートの斬新さから見て大きな要素とならず,両者の外観について非類似となるほどのものとはいえない。 特に本件登録意匠の最も特徴的な視点,つまり正面から見たときに,シュートの正面側の端縁部は,半円形か直線形かの相違点に係わらず,正面からの観察者の視覚を通じて共にほぼ直線として映り,相違点として顕在化しないため,ほぼ同じ形状として認識される。 もともと完全な円形と完全な長方形とは,平面的な視点によると同一視できない形状であるが,それらの一部のみ,つまりシュートの平行な2側面間の端縁部での半円形と直線形との相違点は,観察方向から殆ど差異のない外形となっている。 (7)むすび 以上の理由から,イ号意匠は,取り付け前において複数の部品に分解されているが,その取り付け状態において基本的な構成を観察すれば一体物として認識され,本件登録意匠と視覚的な美感を共通にしているから,本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属する。 6.証拠方法 (1)甲第1号証;先行の周辺意匠として意匠登録第1178049号公報により本件登録意匠の出願前の登録意匠(煙草の吸殻搬送コンベヤ用レール)を例示。 (2)甲第2号証;先行の参考実用新案として実用新案登録第3112776号公報により本件登録意匠の出願前の考案(引出し型の灰皿付き吸殻投入口)を例示。 (3)甲第3号証;先行の参考特許として特許第5072073号公報により本件登録意匠の出願前の発明(シュートなしのスクリュウケース)を例示。 第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由 特許庁より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,請求人の申立及び理由に対して,被請求人からの応答はなかった。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠(意匠登録第1491809号の意匠)は,平成25年(2013年)1月31日に意匠登録出願され,平成26年(2014年)2月7日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,その願書の記載及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「吸殻搬送用レール」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照) 本件登録意匠の用途及び機能は,パチンコ台等遊戯機の物置台(以下,「物置台」という)の底面に取り付け,物置台上面に設置された灰皿及び物置台の貫通孔から滑り案内用のシュート部(以下,「シュート」という)を介して落下した吸殻を,搬送用スクリュウの羽根の回転により搬送し,終端の回収ボックス内に排出するための,管体を形成するものである。 その形態は,全体の構成態様として, (A)物置台取付用の略丁字状断面のレール部(以下,「レール」という)と,レールの下開口面に嵌め込まれる略半円形断面の樋状のレールカバー部(以下,「レールカバー」という)から構成され,それらを係合することにより,略円筒形状で長手方向に連続する管体を構成している。また,レールカバーの正面には,平面視突出開口したシュートが遊戯台の灰皿に対応する位置に等間隔に形成されている。 また,各部品の態様として, (B)レールは,側面視略丁字状であり,物置台に接する水平面部(以下,水平面部という)と,遊戯台に平行な垂直面部(以下,垂直面部という)からなり,水平面部は,正面側には開口したコの字状の突出片(以下,「コ字片」という),遊戯台に接する背面側には鉤状の折り返し部が形成されている。 垂直面部は下方が正面側に湾曲して形成されており,上方に形成された断面視略三角形状の空洞部の,正面側のやや湾曲した斜辺と一体となって管体の略円筒形の一部を形成している。また,垂直面部の下端背面側にはレールカバーと嵌合するための2条の突出片が形成されている。 (C)レールカバーは,側面視略半円形の樋状であり,半円形の背面側の端部に,レールの下端と嵌合するための略Ω字状の嵌合部(以下,「Ω字部」という)が形成されており,半円形の正面側の端部には,略ヘの字状に折り曲げた先端に,レール上面のコ字片に嵌合するための略倒T字状片(以下,「倒T字片」という)が形成されている。 また,正面視長手方向において,平面視半円形に開口したシュートが等間隔に4つ,ドーム状に膨出形成されている。 2.イ号意匠 イ号意匠は,判定請求書に添付されたイ号意匠の写真(請求人が提出した添付書類:別紙第2参照)に現されたとおりのものである。 なお,本件登録意匠とイ号意匠とを同じ方向から観察するため,イ号意匠の取り付け状態の向きを本件登録意匠の図面の向きに合わせたものとする。 イ号意匠の意匠に係る物品は「吸殻搬送用レール」であり,その用途及び機能は,遊戯機の物置台の底面に取り付け,物置台上面に設置された灰皿及び物置台を貫通する滑り案内用のシュートを介してレール内に落下した吸殻を,搬送用スクリュウの羽根の回転により搬送し,終端の回収ボックス内に排出するためのものである。 その形態は,全体の構成態様として, (A)物置台取付用の略丁字状断面のレールと,レールの下開口面に嵌め込まれる略半円形断面の樋状のレールカバー,前面に平面視突出開口したシュートが形成されたレールカバー(以下,「シュート付きレールカバー」という)で構成され,シュート付きレールカバーの左右に略半円弧状の抑えバンド(以下,「抑えバンド」という)を配して全体を係合することにより,略円筒形状で長手方向に連続する管体を構成している。 また,各部品の態様として,各部品について, (B)レールは,側面視略丁字状であり,物置台に接する水平面部と垂直面部からなり,水平面部は,正面側に開口したコ字片,遊戯台に接する背面側には鉤状の折り返し部が形成されている。 垂直面部は下方が正面側に湾曲して形成されており,上方に形成された断面視略三角形状の空洞部の正面側のやや湾曲した斜辺と一体となって略円筒形状の管体の一部を形成している。また,垂直面部の下端背面側にはレールカバーと係合するための2条の突出片が形成されている。 (C)レールカバーは,側面視略半円形の樋状であり,半円形の背面側の端部に,レールの下端と係合するためのΩ字部が形成されており,半円形の正面側の端部には,略ヘの字状に折り曲げた先端に,レール上面のコ字片に係合するための倒T字片が形成されている。 (D)シュート付きレールカバーは,レールカバー同様,側面視略半円形の樋状であり,半円形の背面側の端部に,レールの下端と係合するためのΩ字部が形成されているが,半円形の正面側には,側面視略半円形の樋状部と一体連続して平面視矩形状に突出開口したシュートが形成されている。全長はシュートの幅と同程度である。 (E)抑えバンドは,正面及び平面視において略帯状に形成されており,正面側先端において,シュート付きレールカバーのシュート形状に合致するように切り欠かれている。側面視においては,レールカバーの側面形状より一回り大きい略半円弧状に形成されており,背面側の端部は鉤状に折り返した係合部,及び正面側の端部は階段状に2段折り曲げ,その先端を鉤状に折り返した係合部が形成されている。抑えバンドは左右一対で,互いに対称に形成されている。 3.両意匠の対比 本件登録意匠とイ号意匠(以下,本件登録意匠とイ号意匠とを「両意匠」という。)を対比すると,いずれも「吸殻搬送用レール」に係るものであり,意匠に係る物品が一致し,用途及び機能も共通している。そして,両意匠の形態については,主として以下の共通点と差異点が認められる。 (1)両意匠の形態の共通点 全体の構成態様について, (a)レール,レールカバー等複数の部品を係合し,略円筒形状で長手方向に連続する管体を構成する点, (b)レールカバーの前面に,平面視突出開口したシュートが形成された点, また,各部品の態様について, (c)レールの形状が側面視略丁字状であり,物置台に接する水平面部と垂直面部からなり,水平面部は,正面側に開口したコ字片,遊戯台に接する背面側には鉤状の折り返し部が形成されている点, (d)レールカバーの形状が,側面視略半円形の樋状であり,半円形の背面側の端部に,レールの下端と係合するためのΩ字部が形成されており,半円形の正面側の端部には,略ヘの字状に折り曲げた先端に,レール上面のコ字片に係合するための倒T字片が形成されている点, において, 主に共通する。 (2)形態の差異点 全体の構成態様について, (ア)本件登録意匠は,レールカバーがシュートと一体に,遊戯台4台分の長さに形成されているのに対して,イ号意匠のレールカバーは,シュートのないレールカバーと,レールカバーがシュートと別体となった,シュート付きレールカバーに分割され,それらを合わせて遊戯台1台分の長さに形成されている点, (イ)係止の態様について,本件登録意匠は,レール及びレールカバーのみで嵌合及び係止するのに対して,イ号意匠は,レール,レールカバー及びシュート付きレールカバーを嵌合し,さらにシュート付きレールカバーの左右に,一対の抑えバンドを配して全体を係止する点, また,各部品の態様について, (ウ)シュートの形状について,本件登録意匠のレールカバーのシュートは,平面視略半円形に開口し,ドーム状に突出しているのに対し,イ号意匠のシュート付きレールカバーのシュートは,平面視略矩形状に開口し略倒三角柱状に突出している点, において,主な差異がある。 4.類否判断 そこで,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,本件登録意匠の出願前に存する公知意匠等を参酌し,新規な態様や需要者の注意を最も惹き易いかを考慮した上で,共通点と差異点が意匠全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,検討する。 両意匠は,意匠に係る物品が一致し,用途及び機能も共通する。 (1)形態の共通点の評価 まず,両意匠における形態の共通点が類否判断に及ぼす影響について検討する。 全体の構成態様の共通点について, 共通点(a)のレール及びレールカバー等複数の部品が係合し,略円筒形状で長手方向に連続する管体を構成する点について,同様の態様は,本件登録意匠の出願前に既に見受けられ(例えば,意匠登録第1284146号の煙草の吸殻搬送用レールの意匠(参考意匠1:別紙第3参照),及び実用新案第3112776号のタバコの吸殻回収装置の吸殻搬送用レールの意匠(参考意匠2(請求人提出の甲第2号証):別紙第4参照),実用新案登録第3115655号の吸殻回収装置の吸殻搬送用レールの意匠(参考意匠3:別紙第5参照)),スクリュウによる搬送を行う吸殻用搬送レールの分野においては,ありふれた態様といえるものであり,類否判断に及ぼす影響は小さい。 共通点(b)のレールカバー前面に平面視突出開口したシュートが形成された点は,前面開口したレールカバーに灰皿投入口を突設する態様(例えば,前記参考意匠2)がみられる他は,本願登録意匠の出願前にはほとんどみられない態様であるが,概略的な共通性にとどまり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度のものといえる。 各部品の態様の共通点について, 共通点(c)のレールの形状が側面視略丁字状であり,物置台に接する水平面部と垂直面部からなり,水平面部は,正面側に開口したコ字片,遊戯台に接する背面側には鉤状の折り返し部が形成され,垂直面部は下方が正面側に湾曲して形成されており,上方に形成された断面視略三角形状部の正面側のやや湾曲した斜辺と一体となって略円筒形状の管体の一部を形成しており,垂直面部の下端背面側にはレールカバーと係合するための2条の突出片が形成されている点については,この種の吸殻搬送用レールの分野において,各片の内部形状に差異がみられるものの,同様の構成態様を有するものが本件登録意匠の出願前に既に見受けられ(例えば,前記参考意匠3),両意匠のみに共通する特徴とはいえず,類否判断に及ぼす影響は格別大きいものとはいえない。 また,共通点(d)のレールカバーの形状が側面視略半円形の樋状であり,半円形の背面側及び正面側の端部に,レールの下端と係合するためのΩ字部と,レール上面のコ字片に係合するための倒T字片が形成されている態様は,細部の折り曲げ形状に若干の差異がみられるものの,やはり同様の構成態様を有するものが本件登録意匠の出願前に既に見受けられ(例えば,前記参考意匠3),この点も両意匠の特徴を形成するほど顕著なものとはいえず,類否判断に及ぼす影響は格別大きいものとはいえない。 (2)形態の差異点の評価 次に,両意匠の形態における差異点が類否判断に及ぼす影響について検討する。 全体の構成態様の差異点(ア)について,吸殻搬送用レールの施工時や分解清掃等の維持管理時において,レールカバー及びシュートを主体とした管体の構成態様にも,施工業者や遊技場管理従事者等を含む需要者の注意が払われるものと認められ,また,レールカバーが遊戯台4台分の長さか,複数で1台分の長さかという点によっても,遊戯台毎の繰り返しのピッチに変化が現れることから,この差異点は両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 また,差異点(イ)の係止の態様については,本件登録意匠は,設置後も目に触れやすい前面側が一体に構成され,全体にすっきりした印象がもたらされるのに対して,イ号意匠は,レール,レールカバー,及びシュート付きレールカバーからなる管体を係止する抑えバンドが,遊戯台1台毎に2箇所ずつ表れ,全体に繁雑な印象がもたらされるものと認められる。この種の吸殻搬送用レールは,遊戯台の下側に配設されるとはいえ,この係合箇所は管体の前面側に表れて比較的観察されやすい位置にあり,この差異点は両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 各部品の態様の差異点(ウ)については,シュートはレールカバーの前面側に位置し,その形状も突出していることから,比較的目につきやすいものであり,また,シュートの形状によって吸殻の滑り案内を行うための傾斜にも変化がもたらされることから,略半球形のドーム状か,略倒三角柱状かという点は,需要者の注意を強く惹くものと考えられ,この点における差異が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (3)小括 そうして,これらの形態の共通点と差異点を総合すれば,形態の共通点(a),共通点(c)及び共通点(d)に係る態様は,公知意匠を参酌すると両意匠のみに共通する特徴的な態様とはいえないものであり,また,共通点(b)は,他の公知意匠にほとんどみられないものの,レールカバー前面のシュートの存在という概略的な共通性にとどまるのに対して,形態の差異点(ア)ないし(ウ)の態様は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといわざるを得ず,両意匠は,類似するものとはいえない。 したがって,本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠の用途及び機能は共通するが,両意匠の形態については,イ号意匠は本件登録意匠の特徴的な態様を有さず,共通点よりも差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果の方が両意匠の類似性についての判断に与える影響が支配的であるから,両意匠は,全体として需要者に与える美感が異なるものであって,類似するということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2017-04-27 |
出願番号 | 意願2013-1854(D2013-1854) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(E2)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
正田 毅 神谷 由紀 |
登録日 | 2014-02-07 |
登録番号 | 意匠登録第1491809号(D1491809) |
代理人 | 中川 國男 |
代理人 | 中川 貴志 |