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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1344887 |
審判番号 | 不服2015-5813 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-30 |
確定日 | 2015-10-09 |
意匠に係る物品 | 振動センサー |
事件の表示 | 意願2014- 6021「振動センサー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成26年(2014年)3月20日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「振動センサー」としたものであり,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのもので,「一点鎖線と実線で囲んだ部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示している。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び本意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願当初の願書に記載した本意匠,意願2014-6016号(意匠登録第1515383号)(以下,「本意匠」という。)に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。 その理由として,本願意匠は,登録を受けようとする部分の形状が前記本意匠と相違する,としたものである。 本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年(2014年)3月20日に出願されたものであって,平成26年(2014年)年12月12日に意匠権の設定の登録がなされた意願2014-6016号(意匠登録第1515383号)の意匠であって,その意匠は,意匠に係る物品が「振動センサー」であり,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本意匠実線部分」という。)としたものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 そこで,本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)とが類似するか否かについて,以下検討する。 (1)意匠に係る物品 両意匠を対比すると,両意匠は,いずれも,例えばテニスラッケットその他の運動用具に取り付け,球が当たった際などの振動を感知する「振動センサー」に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分と本意匠実線部分(以下,「両部分」という。)は,いずれも振動センサーのラケットへの嵌合部分であって,この部分の用途及び機能は共通している。 また,共に略きのこ形状の振動センサーの下方の軸部(以下,「軸部」という。)の周側面の正面側又は背面側の1箇所に設けられた嵌合凹部(以下,「嵌合凹部」という。)を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分としたものであるから,両部分の位置も共通する。 しかしながら,本願実線部分は,略逆コの字状の嵌合凹部のうち,その上側の水平方向の凹部と垂直方向の凹部を一点鎖線と実線で囲んで略倒L字状とした嵌合凹部の一部分であるのに対して,本意匠実線部分は,略倒L字状の嵌合凹部全体であり,両部分の大きさ及び範囲には,差異が認められる。 (3)形態 両部分の形態については,主として,以下の共通点及び差異点が認められる。 (3-1)共通点 部分全体を下方の軸部の周側面の上下に僅かに余地部を残してほぼ軸部の上下一杯に設けられた嵌合凹部であって,略倒L字状に切り欠いて形成し,倒L字の内側の壁を斜めに切り欠いている点, において主に共通する。 (3-2)差異点 (ア)嵌合凹部の垂直方向の凹部の右辺の態様について,本願実線部分は,倒L字の内側の壁を斜めに切り欠いた部分の右側内側面下方に垂直方向の厚み部分が僅かに表されているだけであるのに対して,本意匠実線部分は,右側内側面下方に垂直方向の厚み部分が嵌合凹部の下端まで略三角形状に表されている点, (イ)嵌合凹部の垂直方向の凹部の横幅について,本願実線部分は,軸部の全体を正面視した最大の横幅に対する垂直方向の凹部の横幅の比が約1:0.14で幅が狭いのに対して,本意匠実線部分は,約1:0.26で幅が広い点,(ウ)嵌合凹部の水平方向の凹部の横幅について,本願実線部分は,軸部の全体を正面視した最大の横幅に対する水平方向の凹部の横幅の比が約1:0.37で幅が狭いのに対して,本意匠実線部分は,約1:0.45でやや幅が広い点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能は,共通する。 両部分の位置は,本願実線部分は正面側にあり,本意匠実線部分は背面側にあるが,いずれも軸部の周側面の正面側又は背面側の1箇所に設けられたものであるから共通するが,嵌合凹部の大きさ及び範囲は,嵌合凹部の全体であるか,その一部分であるかといった,差異が認められる。 (3)形態 (3-1)共通点 そこで両部分の形態について検討するに,前記共通点については,部分全体の基本構成であるが,両部分は,部分全体を下方の軸部の周側面に設けられた嵌合凹部とし,軸部の上下に僅かに余地部を残してほぼ軸部の上下一杯に設けたもので,略倒L字状に切り欠いて形成し,倒L字の内側の壁を斜めに切り欠いた態様について共通しているが,両部分が使用される運動用具の分野においては,例えばゴルフクラブのグリップエンドにセンサーユニットを取り付けることやテニスラケットにセンサーユニットを取り付けるために,センサーユニットに嵌合凹部を設けることは,既に行われているところであり,両部分においても嵌合のため,同様の嵌合凹部の形状を象ったに過ぎず,嵌合凹部を設けたことが両部分のみの格別の特徴のある態様とはいえず,嵌合凹部を有するからといって,振動センサーの嵌合凹部の実線部分の面積や範囲,つまり,部分の大きさや範囲が大きく異なるものまで含めた,全ての態様が共通するものであるとまではいうことができず,この共通点が両部分の類否判断に与える影響は微弱なものに過ぎないものである。 そうして,この共通点が全体として両部分の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (3-2)差異点 これに対し,差異点(ア)の嵌合凹部の垂直方向の凹部の右辺の態様の差異については,倒L字の内側の壁を斜めに切り欠いた部分の右側内側面下方に垂直方向の厚み部分が僅かに表されているだけの本願実線部分と,右側内側面下方に垂直方向の厚み部分が嵌合凹部の下端まで略三角形状に表されている本意匠実線部分とでは,それだけでは格別目立つものとはいえないが,需要者が本願のような振動センサーを運動用具に取り付けて使用する際には,取り付け時や取り外しの際には注意を払う部分に係るものであるから,実線部分の面積が狭く下端の厚み部分のない本願実線部分と実線部分の面積が広く下端の厚み部分まで含む本意匠実線部分とでは,需要者に与える印象が明らかに異なるものであるから,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 また,差異点(イ)の嵌合凹部の垂直方向の凹部の横幅の差異についても,それだけでは格別目立つものとはいえないが,需要者の注意を惹く嵌合凹部のプロポーションに係るもので,垂直方向の凹部の横幅が狭い本願実線部分と,やや広い本意匠実線部分とでは,需要者に与える印象を異ならせるものであり,差異点(ア)と相俟って,無視できない態様といえ,その差異は,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 そして,差異点(ウ)の嵌合凹部の水平方向の凹部の横幅の差異についても,細部に係る差異で目立つものとはいえないが,水平方向の凹部の横幅が狭い本願実線部分と,やや広い本意匠実線部分とでは,需要者に与える印象を異ならせるものであり,軸部の周側面において部分全体の印象に影響を及ぼすものであるから,前記差異点(ア)及び差異点(イ)と相俟って需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 そうすると,両部分の形態における共通点は,その視覚に訴える意匠的効果としては格別の評価ができないものであるのに対し,両部分の形態における差異点は,需要者の注意を強く惹き,別異の美感を起こさせるものであり,その視覚に訴える意匠的効果を無視することができないものであるから,差異点が共通点を凌駕し,両部分は,類似しないものと認められる。 (4)小括 以上のとおり,本願意匠と本意匠は,出願人及び出願日に関して意匠法第10条第1項の要件を満たし,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能並びに位置が共通するものであるが,両部分の大きさ及び範囲が異なり,また,両部分の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 (5)請求人による補正 なお,請求人により提出された平成27年9月7日付の手続補正書によって,本願の「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされた。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当せず,本願意匠は,本意匠を意願2014-6016号(意匠登録第1515383号)とする関連意匠としては意匠登録を受けることができない。 しかしながら,請求人により提出された手続補正書によって,原審の拒絶の理由は既に解消しており,この理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-09-24 |
出願番号 | 意願2014-6021(D2014-6021) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2015-10-30 |
登録番号 | 意匠登録第1538932号(D1538932) |
代理人 | 五味 飛鳥 |