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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1
管理番号 1347720 
審判番号 不服2018-9106
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-03 
確定日 2019-01-08 
意匠に係る物品 体組成計 
事件の表示 意願2017- 11511「体組成計」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月30日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。
平成29年12月22日付け:拒絶理由の通知
平成30年 2月19日 :意見書の提出
平成30年 3月29日付け:拒絶査定
平成30年 7月 3日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「体組成計」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年8月31日に受け入れた、株式会社タニタ発行の内国カタログ「健康器具カタログ BEST SELECTION 2012-2013」、第5頁所載の体組成計の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC24016812号)(以下「引用意匠」という。)であり、その形態を、同カタログに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「体組成計」であり、意匠に係る物品の説明には、「本物品は体組成計であって、被験者が4つの電極の上に乗ると、被験者の体重・体脂肪率等を測定することができる。」と記載されている。

イ 形態
本願意匠の形態は、主に以下の点が認められる。
(ア)全体の基本形状は、正面視略角丸正方形の板状である。
(イ)正面には、4つの電極と液晶表示部が配され、周縁部に帯状の縁取り部(以下「フレーム」という。)が成形されている。
(ウ)電極は略角丸縦長長方形状で、四隅近傍にやや余地部を残して配置されている。
(エ)液晶表示部は角丸正方形状で、電極のうち正面視上側(平面側)の2つの電極の間に配置されている。液晶表示部の縦幅は電極の縦幅と略同長である。
(オ)フレームは、正面視帯状で、周側面に向かって背面側に傾斜し、周側面の上端に極細幅の垂直面を形成している。
(カ)フレーム下方の周側面は、正面側から底面側に向かって二段階にすぼまる形状で、正面側から中央付近までの傾斜の勾配は僅かで、中央付近から底面側まで大きな勾配の傾斜によりすぼまっている。
(キ)背面には、四隅近傍に円柱形状の脚部が4つ配設されている。脚部周辺は円形に区画されている。
なお、請求人は審判請求書において、本願意匠の正面には、フレームの内側の縁から中央に向って緩やかなくぼみが形成されている旨主張するが、願書添付図面には、正面部の凹凸形状を示す断面図等がなく、「正面側から見た斜視図」をはじめとした各図においても、くぼみの存在を認定することはできないので、本願意匠の正面には、フレームの内側の縁から中央に向かうくぼみや段差はないものとして認定する。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、「体組成計」である。

イ 形態
引用意匠の形態は、主に以下の点が認められる。
(ア)全体の基本形状は、正面視略角丸正方形の板状である。
(イ)正面には、4つの電極と、下方に操作ボタンと推認される区画部を有する液晶表示部が配されている。
(ウ)電極は略角丸縦長長方形状で、四隅近傍にやや余地部を残して配置されている。
(エ)液晶表示部は角丸横長長方形状で、電極のうち正面視上側(平面側)の2つの電極の間に配置されている。液晶表示部の縦幅は電極の縦幅よりもやや短い。液晶表示部下方に、複数の小さな操作ボタンと推認される区画部が配されている。
(オ)周縁部は正面から周側面にかけて一体的に形成され、その縁部は丸みをもった曲面で構成されている。
(カ)周縁部を含む正面の表面には、電極部及び液晶表示部を除いて、ストライプ状の模様が施されている。
(キ)縁部を除く周側面の形状及び背面の形状は不明である。

2 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「体組成計」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「体組成計」であって、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)全体の基本形状が正面視略角丸正方形の板状である点につき、両意匠は共通する。
(共通点2)正面には、四隅近傍にやや余地部を残して略角丸縦長長方形状の同形の電極が4つ配置され、これら電極のうち正面視上側(平面側)の2つの電極の間に、四角形状の液晶表示部が配置されている点につき、両意匠は共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)液晶表示部につき、本願意匠は角丸正方形状で、液晶表示部の縦幅は電極の縦幅とほぼ同長であるのに対し、引用意匠は角丸横長長方形状で、液晶表示部の縦幅は電極の縦幅よりもやや短い点において、両意匠は相違する。
(相違点2)正面の周縁部につき、本願意匠は、フレームが周側面に向かって背面側に傾斜して設けられ、当該フレームの形状は正面視帯状で、周側面の上端に極細幅の垂直面を形成しているのに対し、引用意匠は、正面から周側面にかけて一体的に形成され、その縁部は丸みをもった曲面で構成されている点において、両意匠は相違する。
(相違点3)正面表面の模様につき、本願意匠は模様がみられないのに対し、引用意匠の周縁部を含む正面の表面には、電極部及び液晶表示部を除いて、ストライプ状の模様が施されている点において、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠は、液晶表示部下方に操作ボタン等の区画部は設けられていないのに対し、引用意匠は、液晶表示部下方に、複数の小さな操作ボタンと推認される区画部が配されている点において、両意匠は相違する。
(相違点5)周側面の形状につき、本願意匠は、フレーム下方の周側面が正面側から底面側に向かって二段階にすぼまる形状であるのに対し、引用意匠は、縁部を除く周側面の形状が不明である点において、両意匠は相違する。
(相違点6)背面の形状につき、本願意匠は、四隅近傍に円柱形状の脚部が4つ配設され、脚部周辺は円形に区画されているのに対し、引用意匠は、背面の形状が不明である点において、両意匠は相違する。

3 判断
(1) 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2) 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は「体組成計」であり、被験者の体重や体脂肪率等を測定してその結果を表示するという機能を有し、使用にあたっては背面側を床に接するように置いて、正面に設けられた4つの電極の上に乗り、液晶表示部に表示された測定結果を確認するものであるから、需要者は、正面視の形態に注目して両意匠に係る物品を観察するものということができる。また、収納時に立てかけて置かれる場合もあることから、需要者は周側面の形態にも注目して両意匠に係る物品を観察するものということができる。
したがって、測定及び測定結果の確認という観点からは、正面視の形態が需要者の注意を強く引く部分であるとともに、収納の観点から、周側面の形態についても需要者の注意を一定程度引く部分であるということができる。

ア 共通点の評価
共通点1は、体組成計において一般的にみられる形状であるから、意匠全体の美感に及ぼす影響は小さい。
共通点2については、同様の構成を有する体組成計の意匠が本願出願前より存在し、この種物品分野において一般的にみられる態様であって、両意匠の正面部を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないことから、意匠全体の美感に及ぼす影響は小さいといえる。

イ 相違点の評価
相違点1の液晶表示部の形状及び電極と液晶表示部との縦幅の差の相違は僅かで、全体の印象を大きく異なるものとするほどの相違ではない。相違点4は、引用意匠の液晶表示部下方に設けられた操作ボタンと推認される区画部は、正面全体に占める割合が小さいことから、全体の印象を大きく異なるものとするほどの相違ではない。相違点6の背面の形状は、流通時にも使用時にも需要者の目に触れにくい部分である。以上のことから、相違点1、相違点4、相違点6が意匠全体の美感に及ぼす影響は、いずれも小さい。
他方、相違点2について、本願意匠の正面周縁部は、フレームが設けられることにより明確に分割されており、また、当該フレームは表面が平面で構成され背面側に傾斜して設けられていることから、シャープな印象をもたらしているのに対し、引用意匠の正面周縁部は、正面から周側面にかけて一体的に形成されており、また、縁部が丸みをもった曲面で構成されているため、柔らな印象をもたらしている。両意匠の正面周縁部は、正面の全周にわたる部分であって正面視の形態の中で目に付きやすいことから、相違点2が意匠全体の美感に及ぼす影響は大きい。
相違点3は、引用意匠のストライプ状模様は周縁部を含む正面のほぼ全体に施されているため、意匠全体の美感に一定程度の影響を及ぼすといえる。
また、相違点5については、本願出願前より様々な周側面形状の体組成計の意匠が存在することから、引用意匠の縁部を除く周側面の形状を導き出すことができないこと、本願意匠のフレーム下方の周側面の形状は、体組成計において通常みられるごく一般的な形状とまではいえないことを考慮すると、意匠全体の美感に一定程度の影響を及ぼすといえる。

(3) 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、需要者の注意を強く引く部分である正面視の形態について、電極及び液晶表示部の形状と配置に共通点(共通点2)が存在するものの、この種物品分野において一般的な態様であるのに対し、周縁部の形状の相違(相違点2)が顕著であり、表面模様の有無についても相違(相違点3)するため、両意匠の正面視の形態は、需要者に異なる美感を起こさせるものである。両意匠は更に、需要者の注意を一定程度引く部分である周側面の形態についても相違(相違点5)し、需要者に異なる美感を起こさせるものである。そうすると両意匠は、意匠全体として観察した際に、需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決日 2018-12-10 
出願番号 意願2017-11511(D2017-11511) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
木村 智加
登録日 2019-01-25 
登録番号 意匠登録第1624813号(D1624813) 
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所 

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