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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1353222 |
審判番号 | 不服2019-1200 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-30 |
確定日 | 2019-06-25 |
意匠に係る物品 | 飲用グラス |
事件の表示 | 意願2017- 22798「飲用グラス」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年(2017年)10月16日の意匠登録出願であって,平成30年6月27日付けの拒絶理由の通知に対し,同年8月6日に意見書が提出されたが,同年10月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成31年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「飲用グラス」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,具体的には,本願意匠が本願の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似し,意匠登録を受けることができない意匠であるとしたものであり,当該拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである。 大韓民国意匠商標公報 2013年 7月31日13-23号 コップ(登録番号30-0703415)の意匠(特許庁意匠課公知資料 番号第HH25430146号)(別紙第2参照) 第4 両意匠の対比 1.意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,本願意匠が「飲用グラス」であるのに対して,引用意匠が「コップ」である。 2.形態 (1)共通点 共通点1:全体を,底部から上方(開口部)へ向けてやや径が広がった縦長の略倒立円錐台形状としたものである。 共通点2:断面図によれば,周壁部と底部は,外側面と内側面を有する中空の二重面としたものであり,外側面と内側面の肉厚は薄いものである。 共通点3:周壁部は,上端を外側へ広がる縁状(以下「飲み口」という。)としたものである。 (2)相違点 相違点1:全体の高さと直径の比率について,本願意匠は,約1.5対1としたものであるのに対して,引用意匠は,約1.2対1としたものである。 相違点2:飲み口の角度(周壁部に対して外側へ広がる角度)について,本願意匠は,約30度としたものであるのに対して,引用意匠は,約15度としたものである。 相違点3:飲み口下端の直径に対する飲み口の高さについて,本願意匠は,約100分の9としたものであるのに対して,引用意匠は,約100分の6としたものである。 相違点4:飲み口の内側面について,本願意匠は,直線状とし,飲み口の下端に稜線が表れているものであるのに対して,引用意匠は,緩やかな凸弧状としたものである。 相違点5:本願意匠は,内側面の周壁部下方に段差を設けず,内側面の底部を略曲面状としたものであるのに対して,引用意匠は,内側面の周壁部下方に僅かな段差を設け,内側面の底部を略半球状としたものである。 相違点6:本願意匠は,物品全体を透明とし,内側面の形態が透けて見えるものであるのに対して,引用意匠は,物品全体を不透明(金属の素材)とし,内側面の形態は透けて見えないものである。 第5 類否判断 1.意匠に係る物品について 意匠に係る物品については,本願意匠が「飲用グラス」とし,引用意匠が「コップ」としたものであり,どちらも飲用の容器に係るものであるから,共通する。 2.形態について (1)共通点の評価 共通点1は,全体に係るものであるが,形態を概括的に認定したに過ぎないものであり,この種物品において,ありふれた形態といえるから,共通点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点2は,中空の二重面とした点であるが,本願の出願前から,その存在は見受けられ,両意匠のみの特徴とはいえないから,共通点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,限定的である。 共通点3は,飲み口を設けた点であるが,両意匠のみに見られる特徴ではないし,形態を概括的に認定したものであって,具体的には相違点2ないし4の相違が存在するから,共通点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 (2)相違点の評価 相違点1は,全体の比率の相違であり,本願意匠はすらっとした印象を与えるのに対して,引用意匠はややずんぐりした印象を与えるが,飲用の容器の高さは様々なので,相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,限定的である。 相違点2ないし4は,飲み口に係る相違であり,この部分は,飲用する際に口が当たることから,需要者が注視する部分であり,本願意匠の飲み口が大きく目立ちシャープな印象を与えるのに対して,引用意匠の飲み口が小さく控えめでソフトな印象を与えるものであって,需要者に与える印象の違いは大きいといえるから,相違点2ないし4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,極めて大きい。 相違点5は,内側面の周壁部下方及び底部の相違であり,引用意匠に設けられた段差は僅かなものであるし,底部の形態はどちらも目新しいものではないから,相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 相違点6は,物品全体を透明としたか否かに伴う相違であり,この種物品において全体が透明で,内側面の形態が透けて見えるものは,本願出願前から知られており,本願意匠のみの特徴とはいえないが,内側面の形態が透けて見えるものと,そうでないものとでは,一見して異なる印象を与えるから,相違点6が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 (3)形態の類否 両意匠について意匠全体として総合的に観察した場合,上述の両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づけば,共通点はいずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,他方,相違点については,特に相違点2ないし4によってもたらされる印象は,本願意匠は,飲み口が大きく目立ったシャープな印象を与えるのに対して,引用意匠は,飲み口が小さく控えめでソフトな印象を与え,相違点6の物品全体が透明か否かに伴う相違点及びその他の相違点も合わさって,相違点は,共通点を凌駕し,両意匠について需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠の形態は類似しないものである。 3.両意匠の類否 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,その形態において類似しないものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第6 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-06-11 |
出願番号 | 意願2017-22798(D2017-22798) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 北代 真一 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-07-05 |
登録番号 | 意匠登録第1637535号(D1637535) |
代理人 | 永芳 太郎 |