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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1356009 
審判番号 不服2016-2658
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-22 
確定日 2016-10-07 
意匠に係る物品 マルチメディアプレーヤー 
事件の表示 意願2014- 29502「マルチメディアプレーヤー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)12月26日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「マルチメディアプレーヤー」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「実線で表した部分(画像等の表示領域)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

「この意匠登録出願前から,画像において,スクロールにより画像が表示部の下から上に移動することは広く知られています。また,矩形の画像等の表示領域が拡大することも広く知られています(例えば,引用画像1ないし4)。
そうすると,本願意匠は,縦長長方形の画像等の表示領域を表示部の下から上の方向にわずかに移動させつつ,拡大させ,マルチメディアプレーヤーに係る,画像等の表示領域として表した程度に過ぎないから,当業者が容易に創作することができたものと認められます。

・引用画像1(別紙第2参照)
特許庁普及支援課が2012年10月 2日に受け入れた
米国特許商標公報 2012年10月 2日
携帯情報端末機(登録番号US D668262S)の
意匠に表示された画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH24318149号)

・引用画像2(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2010-239206
図8,図26及び図29に表された画像

・引用画像3(別紙第4参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年 7月25日に
受け入れた
N906i 商品カタログ
第4頁所載
携帯電話機の意匠に表示された画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HC20014644号)

・引用画像4(別紙第5参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2012-174249
図5においてS11,S12として表された画像 」

第3 請求人の主張の要点
原審は拒絶理由通知書において,出願前公知の画像を4件摘示した上で,(イ)画像において,スクロールにより画像が表示部の下から上に移動することは広く知られているとし,(ロ)引用画像1から同4に基づき,矩形の画像等の表示領域が拡大することも広く知られているとの事実を認定して,結論において,本願意匠は,横長長方形の画像等の表示領域を表示部の下から上の方向に高さ中央まで移動させつつ,拡大させ,デジタルコンテンツ再生機に係る,画像等の表示領域として表した程度に過ぎないから,当業者が容易に創作することができたものであるとした。
これに対し意見書を提出し,本願の意匠登録を受けようとする部分は,「画像全体が縦方向にスクロール移動する中で,画像等表示領域部分がその動きに合わせて移動し,かつ,他の画像に被さることなく漸次拡大し所定の位置で最大となる」点で特徴的であり,これらの点に関し拒絶理由通知において何らの言及もされていないと反論したが,拒絶査定において更に3件の公知画像(参考画像1ないし同3)を追加的に指摘して,(ハ)引用画像1,参考画像1及び同2に基づき,「画像全体又はほぼ全体をスクロール移動させながらその一部を拡大させること」は「ありふれた手法」であるとし,(ニ)参考画像1ないし同3に基づき,「画像をその周囲の画像に重ならないように拡大させることは」,「ありふれた手法」であるとして,結論において,本願意匠は,やはり,拒絶理由通知書に記載したように,横長長方形の画像等の表示領域を表示部の下から上の方向に高さ中央まで移動させつつ,拡大させ,デジタルコンテンツ再生機に係る,画像等の表示領域として表した程度に過ぎないとした。
しかし,そもそも斯かる(イ)から(ニ)の事実認定のみに基づいて,本願意匠を創作容易であったとすることはできない。
原審は,具体的にどの画像(形態)とどの画像(形態)とを置換ないし組み合わせれば,本願意匠と同一又はほぼ同一の意匠が出来上がるのかという点について,一切の明確な言及を行っていない。
意匠法第3条第2項の適用にあたっては,公知画像中の一部画像を他の公知画像に置き換えたり,或いは,公知画像同士を組み合わせた場合に出願意匠が出来上がるか否かという基準に則った判断がされるべきところ,原審において指摘された全7の公知画像を如何に組み合わせ,また,如何に一部構成要素を置換しても,本願意匠と同一又はほぼ同一というような意匠は出来上がらないから,本願意匠は意匠法第3条第2項に規定する意匠には該当しない。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」ともいう。)が容易に創作することができたものであるか否か,について検討する。
なお,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,意匠に係る物品はもとより,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲,そして形態を認定し,それらを踏まえて検討する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品は「マルチメディアプレーヤー」であり,ゲーム,静止画像,映像,音楽,電子書籍,テレビジョン放送等,各種のデジタルコンテンツの閲覧,再生,実行に用いるものである。
(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は,本願意匠の正面に設けられた表示部(以下「画面」という。)に現れる画像の一部を構成する,静止画や動画を表示するための区切られた部分(以下「表示区画部」という。)に係るものであって,その表示区画部は,周囲(上部,下部及び左側部)のテキスト部とともに,スクロール操作により画面の下から上の方向へ移動しながら,テキスト部の構成を再編成しつつテキスト部に覆い被さることなく,「正面図」の状態から,「変化を示す正面図1」の状態へ,更に,「変化を示す正面図2」の状態へと漸次拡大し,所定の位置で最大(「変化を示す正面図2」の状態)となるものである。
(3)本願部分の位置,大きさ及び範囲
まず,正面図において,表示区画部の中心を,横方向は画面の右端から画面の横幅の約4.5分の1,縦方向は画面の下端から画面の縦幅の約5分の1の位置,つまり画面の右下寄りとし,テキスト部に割り込むように表れており,大きさは,縦幅を画面の縦幅の約5分の1,横幅を画面の横幅の約4分の1としたものである。
次に,変化を示す正面図1においては,表示区画部の中心を,横方向は画面の右端から画面の横幅の約3.8分の1,縦方向は画面の下端か画面の縦幅の約3分の1の位置,つまり画面の右下寄りとし,テキスト部に割り込むように表れており,大きさは,縦幅を画面の縦幅の約10分の3,横幅を画面の横幅の約5分の2としたものである。
そして,変化を示す正面図2においては,表示区画部の中心を,横方向は画面の右端から画面の横幅の約3.3分の1,縦方向は画面の下端か画面の縦幅の約2.3分の1の位置,つまり画面の右やや下寄りとし,テキスト部に割り込むように表れており,大きさは,縦幅を画面の縦幅の約5分の2,横幅を画面の横幅の約2分の1としたものである。
(4)本願部分の形態
全体の縦横比を約3対2とする縦長長方形としたものである。

2 引用した公知意匠の認定
(1)引用画像1
携帯情報端末機の意匠に表示される画像であって,長方形の表示区画部が,画面の左端から右方向へ移動しながら漸次拡大し,画面の右寄せで画面一杯に表れた状態となるものであり,使用態様によれば,大きく表示されている数字部分に覆い被さりながら漸次拡大するものである。
(2)引用画像2
電子情報機器の意匠に表示される画像であって,画面の縦横に一定の間隔を空けて整列した複数の長方形の表示区画部のうち,選択された一つが,他の情報に覆い被さりながら漸次拡大し,画面全体の大きさとなるものである。
(3)引用画像3
携帯電話機の意匠に表示される画像であって,画面の略中央右寄りに表れていた長方形の表示区画部が,中央寄せで,他の情報に覆い被さって拡大表示されるものである。
(4)引用画像4
携帯電話機の意匠に表示される画像であって,画面の右寄りに表れている長方形の表示区画部が,スクロール操作により,その周囲(上下両部及び左部)のテキスト部とともに画面の下から上の方向へ移動しつつ表示区画部のみが拡大するものであり,テキスト部に覆い被さって拡大表示されているものである。また,表示区画部の縦横比は,拡大前後で異なる(拡大後は拡大前より太めの縦長長方形である)。

3 創作容易性の判断
まず,マルチメディアプレーヤー等のデジタルコンテンツを表示する物品分野の画像の意匠において,表示区画部の形状を,縦横比を約3対2とする縦長長方形としたものは,証拠を示すまでもなく本願出願前にありふれた形状であるといえる。
それから,画面に表れている画像がスクロール操作により画面の下から上の方向へ移動するものも,やはり証拠を示すまでもなく本願出願前に広く知られたものであるといえる。
そして,表示区画部が拡大するものは引用画像1ないし4,表示区画部が左右方向に移動しながら拡大するものは引用画像1,表示区画部が上下方向に移動しながら拡大するものは引用画像4,がそれぞれ本願出願前に公然知られたものであるといえる。
特に引用画像4は,スクロール操作により,表示区画部がテキスト部とともに画面の下から上の方向へ移動しながら表示区画部のみが拡大するものであって,本願出願前に公然知られたものであるといえる。
しかしながら,引用画像4に基づいて,「スクロール操作により,表示区画部がテキスト部とともに画面の下から上の方向へ移動しながら表示区画部のみが拡大するもの」が本願出願前に公然知られたものであるといえたとしても,そのような表示区画部がテキスト部の構成を再編成しつつ周囲のテキスト部に覆い被さることなく拡大するものである点については,その余の引用画像や原審の拒絶の査定において示した参考画像(例えば,参考画像1として示した意匠登録第1430056号の意匠に表示されている画像)によっても,本願の表示区画部とはその配置や変化態様が異なっており,これらの公然知られた画像に基づいて容易に導き出すことができたものである,ということはできない。
そうすると,周囲(上下両部及び左側部)のテキスト部とともに,スクロール操作により画面の下から上の方向へ移動しながら,テキスト部の構成を再編成しつつ,テキスト部に覆い被さることなく漸次拡大し,所定の位置で最大となる本願の表示区画部は,その配置態様を考慮すると,引用画像1ないし4に基づいて当業者が容易に創作することができたもの,ということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原審の引用画像1ないし4によっては,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当しないので,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-09-21 
出願番号 意願2014-29502(D2014-29502) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
正田 毅
登録日 2016-11-04 
登録番号 意匠登録第1564628号(D1564628) 
代理人 五味 飛鳥 

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