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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5
管理番号 1356873 
審判番号 不服2019-3564
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-14 
確定日 2019-10-15 
意匠に係る物品 洗浄機能付き便座 
事件の表示 意願2017- 19301「洗浄機能付き便座」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は、平成29年9月6日の意匠登録出願であって、平成30年7月24日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月7日に意見書が提出されたが、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書の記載及び添付図面
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「洗浄機能付き便座」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶理由通知書記載の引用意匠は、日本国特許庁発行の公開特許公報に記載された、特開2018-27172の図1において、符号4中、便蓋部(符号12)を除いた状態の「洗浄機能付き便座」の意匠である。
なお、上記公開特許公報は、本願出願後の平成30年2月22日に発行された公開公報であるが、上記公開公報に記載された意匠は、本願出願前である、平成29年8月23日に発行された特許公報(特許第6183516号)に記載されている。そうすると、上記拒絶理由通知書では、引用意匠として、『日本国特許庁発行の特許公報に記載された、特許第6183516号の図1において、符号4中、便蓋部(符号12)を除いた状態の「洗浄機能付き便座」の意匠』と記載すべきであったところ、誤って記載したものと認められる。したがって、当審においては、拒絶理由通知書記載の引用意匠を、日本国特許庁発行の特許公報(公開日:平成29年8月23日)に記載された、特許第6183516号の図1において、符号4中、便蓋部(符号12)を除いた状態の「洗浄機能付き便座」の意匠であって、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)と認定し、以下、対比・判断を行う。


第2 当審の判断
1 本願意匠と本意匠の対比
(1) 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「洗浄機能付き便座」であり、用途及び機能が一致する。

(2) 形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体が便座部と機能部から構成され、機能部が便座の背面後方から便座部の底面側に略くさび状に入り込んだ態様である点で共通する。
(共通点2)両意匠は、便座部について、稜線部の丸みが小さな略板状で、側面視ほぼ等幅で中央付近で上方に屈曲する点、平面視の外形が略倒D状であり、中央やや下方寄りに略卵型の開口部を有し、便座先端に向かい着座面の幅が漸次が狭まる形状である点で共通する。
(共通点3)両意匠は、機能部について、側面視略くさび形で背面側に丸みを有する点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)両意匠は、便座部から機能部にかけての上面形態について、本願意匠は、側面視において便座後方から機能部上面にかけてせり上がり段差なくなだらかに形成されているのに対し、引用意匠は機能部上面に段差が形成されている点で相違する。
(相違点2)両意匠は、便座部と機能部上面部の接続部について、本願意匠は機能部上面部が平面視逆凸状で、機能部両側面が便座部の両側面部とほぼ面一に連続するのに対し、引用意匠は、平面視において機能部上面部横幅が便座部の横幅より狭く形成され、便座部から機能部にかけて段差を有する点で相違する。

2 両意匠の類否判断
(1) 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、意匠に係る物品は同一である。

(2) 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、局部洗浄機能が付いた便座であり、需要者は、使用時において、斜め上方より便座部及び機能部を観察する。また、清掃時においては、清掃のしやすさの観点より、便座部全体及び便座部と機能部の連結部分についても観察する。
したがって、両意匠の便座部及び機能部の上面の形状が需要者の注意を引く部分であるとともに、便座部全体及び便座部と機能部の連結部分の形態が需要者の注意を引く部分であるということができる。

ア 共通点の評価
(共通点1)は、全体の基本構成に係るものであるが、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通性にすぎないものであることから、(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)は、意匠全体の大部分を占め、需要者の注意を引く便座部の形状についての共通点であるが、両意匠の便座部の形状は、本願意匠出願前よりこの種物品において既にみられるものであり、本願意匠及び引用意匠のみにみられる特徴ではないため、(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度にとどまる。
(共通点3)は、意匠全体の中では限られた部分であって、使用時及び清掃時にもさほど目立たない部分の形態についての共通点であることから、(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)について、便座部から機能部にかけての上面形態は、使用時及び清掃時において需要者の注意を引く部分の形態における相違点であって、当該部分の段差の有無は顕著であることから、(相違点1)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点2)について、便座部と機能部上面部の接続部の形態は、使用時及び清掃時において需要者の注意を引く部分の形態における、段差の有無といった相違点であることから、(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。

(3) 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠の(相違点1)及び(相違点2)は、物品の使用時においても、清掃時においても、需要者の注意を引く部分の形態についての相違であって、これらの相違が顕著であるのに対し、(共通点1)は概括的な共通性に過ぎず、(共通点2)はこの種物品分野において本願出願前よりみられるものであって意匠全体の美感への影響は一定程度にとどまり、(共通点3)は意匠全体の中では限られた部分であって、使用時及び清掃時にもさほど目立たない部分の形態における共通点であることから、これら共通点を総合しても、相違点による視覚的効果は、共通点のそれを大きく凌駕し、需要者に別異の美感を起こさせるものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるが、その形態において、需要者に別異の美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。


第3 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


審決日 2019-09-30 
出願番号 意願2017-19301(D2017-19301) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小曽根 智成松下 香苗 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 江塚 尚弘
木村 智加
登録日 2019-11-15 
登録番号 意匠登録第1647540号(D1647540) 

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