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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1373818 
審判番号 不服2020-13321
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-24 
確定日 2021-04-23 
意匠に係る物品 加湿器 
事件の表示 意願2019- 13163「加湿器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年6月14日に出願された意匠登録出願であって、令和2年2月25日付の拒絶理由の通知に対し、同年3月25日に意見書が提出されたが、同年6月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするもので、その意匠は、意匠に係る物品を「加湿器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
そして、その引用意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2017年10月20日に受け入れた ESSOR BRAND NEW NEW Plus No.114 第F84頁所載 (特許庁意匠課公知資料番号第HC29015472号) の「加湿器」の意匠の内、本願意匠に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第1項第3号の該当性、すなわち、本願意匠が引用意匠に類似する意匠であるか否かについて検討し、判断する。
1 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「加湿器」であり、共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも水の入ったペットボトル等に挿通して給水する給水棒部、その給水棒部と加湿器本体との接合部、及び加湿器本体をペットボトル等の上部に突出させるための支え部に係る用途及び機能を構成するものであり、共通する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、いずれも加湿器本体下方の給水棒部、その給水棒部と加湿器本体との接合部、及び加湿器本体をペットボトル等の上部に突出させるための支え部をその位置、大きさ及び範囲とするものであるが、引用部分は、給水棒部と加湿器本体との接合部及び本体支え部が表れていないため、不明である点で、相違する。

(4)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、その形態には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
なお、本願意匠の図面の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
ア 共通点
加湿器本体下方の給水棒部の態様について
(a)正面視において、表出している給水棒部は、高さと横幅の比を約9:1とする細長い円筒状とし、複数の縦長トラック形状の給水孔を有している点。
(b)内部に棒状のフィルターを備えている点。

イ 相違点
(ア)本体下部の内側の態様(給水棒部と本体の接合部及び本体支え部)について
本願部分は、ペットボトル等の口部に螺合する螺合内壁部及び給水棒が貫通する底面視円形の本体内側天井部による構成(以下「螺合内壁部及び給水棒が貫通する底面視円形の本体内側天井部」を「本体内側支持部」という。)とするものであるが、引用部分は、本体下部の内側が表れていないため、本体内側支持部の態様が不明である点。

(イ)給水棒部の態様について
(a)本願部分は、正面側及び背面側に、縦長トラック形状の給水孔を上下に略均等に2つずつ配しているのに対し、引用部分は、縦長トラック形状の給水孔が中央より下側に2つと、本体の下に一部隠れるように半トラック形状の給水孔が1つ、正面側のみに表れている点。
(b)本願部分は、給水棒の底面中央に、円形の給水孔を有しているのに対し、引用部分は、底面側が表れていないため、不明である点。
(c)本願部分の給水棒の上部は、正面視において表出している給水棒部と同径のまま、本体内側支持部の天井部を貫通する態様としているのに対し、引用部分の給水棒の上部は、本体下部に隠れているため、不明である点。

2 類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、引用部分に表れていない部分があり、相違するが、本体下部の内側の限られた部分であることから、両部分の類否判断には、ほとんど影響を与えないといえる。

(4)両部分の形態の類否判断
ア 共通点及び相違点の評価
両意匠は、給水棒を水の入ったペットボトル等に挿通して使用する「加湿器」に係るものであり、需要者は、加湿器本体の外観の他、ペットボトル等と本体の支持態様や、給水態様等についても注視するものということができる。
(ア)共通点の評価
加湿器本体下方の給水棒部の態様における共通点(a)及び共通点(b)は、いずれもペットボトル等に挿通して使用する「加湿器」の分野においては、よく見られる態様であり、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。

(イ)相違点の評価
本体下部の内側の態様における相違点(ア)は、ペットボトル等への支持態様に係るものであることから、需要者が注視する点でもあり、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は大きい。
給水棒部の態様における相違点(イ)(a)は、使用時においても見える部分であり、また、給水態様に係るものでもあることから、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ)(b)も、給水態様に係るものではあるが、使用時には目に付きにくい底面の態様の相違であるため、類否判断に及ぼす影響は一定程度のものにとどまる。
相違点イ(c)における、引用部分の給水棒の上部が本体下部に隠れていることによって、不明である点は、ペットボトル等への支持態様に影響する可能性もあることから、この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きい。

イ 総合評価に基づく両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分の形態全体を総合的に観察し、判断する。

前記ア(イ)に説示したとおり、相違点(イ)(b)が両部分の形態の類否に及ぼす影響は一定程度にとどまるものではあるが、相違点(ア)、相違点(イ)(a)及び相違点(イ)(c)が類否判断に及ぼす影響は、いずれも大きく、需要者に両部分の形態を異なるものとする印象を与えるものと認められる。
これに対し、共通点は、前記ア(ア)に説示したとおり、いずれも当該物品分野でよく見られる態様にすぎず、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響が小さいものであることから、両部分の形態全体を総合的に観察した場合、両部分の形態が類否判断に及ぼす影響は、共通点よりも相違点の方が大きく、両部分の形態は類似しない。

ウ 小括
両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能も同一で、位置、大きさ及び範囲の相違は類否にほとんど影響を与えないものであるが、両部分の形態は類似しない。
したがって、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2021-04-07 
出願番号 意願2019-13163(D2019-13163) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松下 香苗 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2021-05-19 
登録番号 意匠登録第1687164号(D1687164) 
代理人 福島 三雄 

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