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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1373835 
審判番号 不服2020-13992
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-06 
確定日 2021-05-11 
意匠に係る物品 手すり用笠木材 
事件の表示 意願2019- 17354「手すり用笠木材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

令和1年(2019年) 8月 2日 意匠登録出願
令和2年(2020年) 2月28日付け 拒絶理由通知書
同年 5月22日 意見書提出
同年 6月30日付け 拒絶査定
同年 10月 6日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「手すり用笠木材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。二点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1423712号
(意匠に係る物品、手摺り)の意匠における本願の「意匠登録を受けようとする部分」に相当する部分

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、ベランダやバルコニーに設置される手すりの頂部に取り付けて使用する「手すり用笠木材」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、バルコニー等に用いられる手すりの笠木として使用する「手摺り」であって、表記は異なるが、どちらも手すり用の笠木材であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲については、手すりを漏水等の腐食から守るための笠木であって、笠木内側(裏側)を除いた外側(表側)の部分であるから、一致する。

(3)両部分の形態
両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にも当てはめて対比する。

ア 形態の共通点
(共通点1)両部分は、正面視略「ヘ」の字状にやや左寄りを山折りに屈曲した略矩形帯状の天板と、その左右端から垂下した垂直板を一体状に形成したものであって、左側の垂直板は下端をごく僅かに内側に湾曲している点、
(共通点2)両部分は、平面において上下にのみ連続する点において共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)正面視における縦(高さ)横の長さの比率について、本願部分は、約1:4であるのに対し、引用部分は、約1:2強である点、
(相違点2)天板の頂部の内角について、本願部分は、約145°であるのに対し、引用部分は、約130°である点、
(相違点3)天板と両端の垂直板の内角について、本願部分は、左が約115°で、右が約96°であるのに対し、引用部分は、左が約120°で、右が約110°である点、
(相違点4)正面視における天板の頂部の位置について、本願部分は、左から約1/4の位置に配置しているのに対し、引用部分は、左から約1/3の位置に配置している点、
(相違点5)左右の垂直板の高さの比率について、本願部分は、約5:6であるのに対し、引用部分は、約9:5である点において相違する。

2 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。

(4)両部分の形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品である笠木材は、支柱の外側に突出して腰壁を取り付けた所謂「持ち出し手すり」において、支柱及び腰壁の上端全体を覆うように取り付け、雨水等から手すりの腐食を防ぐためのものであるから、需要者は、こうした使用時の設置態様を想定しつつ両部分の形態を観察するということができる。
したがって、使用時の設置態様に係る天板及び垂直板の長さの比率等の態様が需要者の注意を強く惹く部分といえる。

ア 形態の共通点
(共通点1)及び(共通点2)は、両部分の形態は、この種物品の分野においてごく普通に見られる態様であって、概括的に捉えた場合における共通点に過ぎないものであり、需要者に共通の美感を起こさせるものとはいえないから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 形態の相違点
(相違点1)は、正面視における縦横の長さの比率において、本願部分の方が引用部分より2倍程度横長であり、手すりを斜め上方から視認した場合において、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点2)及び(相違点3)は、本願部分の方がいずれも引用部分より角度が大きく、天板の左右の斜面が緩斜面であり、(相違点1)と相まって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点4)は、本願部分は、引用部分に比べて、正面視左側(手すりの外側)に寄った位置に頂部を形成しているため、手すりを斜め上方から視認した場合、(相違点2)及び(相違点3)とも相まって、手前側に長い緩斜面として表れる態様は、引用部分とは明らかに異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点5)は、本願部分は、左右の垂直板の高さを比較すると、右側の垂直板が左側よりもやや高いものであるのに対し、引用部分は、右側の垂直板が左側の半分程度の高さしかなく、(相違点2)及び(相違点3)とも相まって、引用部分とは明らかに異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、(共通点1)及び(共通点2)は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、(相違点1)ないし(相違点5)は、いずれも、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形態においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-04-20 
出願番号 意願2019-17354(D2019-17354) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 圭子清野 貴雄 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 渡邉 久美
内藤 弘樹
登録日 2021-06-08 
登録番号 意匠登録第1688499号(D1688499) 
代理人 川崎 典子 
代理人 水野 みな子 
代理人 三橋 真二 
代理人 青木 篤 

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