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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1374983 
審判番号 不服2020-14419
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-14 
確定日 2021-05-28 
意匠に係る物品 ガス供給チューブ 
事件の表示 意願2019- 9588「ガス供給チューブ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)10月29日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権主張を伴う、平成31年4月26日の意匠登録出願であって、その後の主な手続は以下のとおりである。
令和元年(2019年)11月 7日付け 拒絶理由の通知(1回目)
令和2年(2020年) 2月 6日 手続補正書の提出
同 年 3月25日付け 拒絶理由の通知(2回目)
同 年 6月26日 意見書の提出
同 年 7月13日付け 拒絶査定
同 年 10月14日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「ガス供給チューブ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由(2回目)は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠であって、その形態を、以下のホームページに記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)。

引用意匠(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2014年 8月 5日
受入日 特許庁意匠課受入2014年 8月29日
掲載者 GEヘルスケアジャパン株式会社
表題 リユーザブル回路 - 麻酔/呼吸器 - アクセサリー & サプライ - Products - GEヘルスケア・ジャパン
掲載ページのアドレス http://www3.gehealthcare.co.jp/ja-jp/products/categories/accessories/ane/circuit_reuse
に掲載された「人工呼吸器用ホース」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26028759号)

第4 当審の判断
1 意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「ガス供給チューブ」である。

イ 本願意匠の形態
(ア)全体は、略細長円筒形状の管体の外周に細凸条が螺旋状に巻回してなる外観を呈する蛇腹状の管体(以下「蛇腹状管体」という。)とするものである。
(イ)蛇腹状管体の外周全体の構成比率は、
(a)細凸条と細凸条の間の谷部の径(以下「谷径」という。)と長さの比を約1:34とし、
(b)谷径と細凸条を含めた外径(以下「外径」という。)の比を約1:1.24とするものであって、
(c)細凸条の幅と高さの比を約9:6とし、
(d)細凸条のピッチは、細凸条の幅に対して約1.3倍に形成してなるものである。
(ウ)蛇腹状管体は、断面を略倒D字状とする巻芯及びその外側の略均一な厚みのシート材により構成され、
(a)断面略倒D字状の巻芯は、平坦面がチューブの内壁の一部をなし、略倒D字状の略半円部である膨出面が外側を向くように螺旋状に巻回してなるものであり、
(b)シート材は、略倒D字状の巻芯の略半円部である膨出面全面に接合し、残余の部分は、巻芯の平坦面により形成される内壁と面一となるように形成して、管体の流路を構成するものである。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、「人工呼吸器用ホース」である。

イ 引用意匠の形態
(ア)全体は、略細長円筒形状の管体の外周に細凸条が螺旋状に巻回してなる外観を呈する蛇腹状管体とするものである。
(イ)蛇腹状管体の外周全体の構成比率は、
(a)谷径と長さの比を約1:80とするものであり、
(b)谷径と外径の比は約1:1.42であって、
(c)細凸条の幅と高さの比を約9:5とし、
(d)細凸条のピッチは、細凸条の幅に対して約1.4倍に形成してなるものであり、
(ウ)蛇腹状管体の細凸条部は、外周面を断面を略半円状に膨出面を形成してなるものであり、当該細凸条部が螺旋状に巻回してなるものであるが、具体的な構成態様は不明である。
(エ)蛇腹状管体の両端には、管端コネクタを設けている。

2 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、本願意匠が「ガス供給チューブ」であり、引用意匠は「人工呼吸器用ホース」であるが、両意匠とも医療用機器に接続してガスを挿通する管体であり共通する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
両意匠は、全体を、略細長円筒形状の管体の外周に細凸条を螺旋状に巻回してなる外観を呈する蛇腹状管体とする点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)蛇腹状管体の外周全体の構成比率について、
(a)谷径と長さの比について、本願意匠が約1:34であるのに対し、引用意匠は約1:80である点、
(b)谷径と外径の比について、本願意匠が1:1.24であるのに対し、引用意匠は約1:1.42である点、
(c)細凸条の幅と高さの比について、本願意匠が約9:6であるのに対し、引用意匠は約9:5である点、
(d)細凸条のピッチについて、本願意匠は細凸条の幅に対して約1.3倍であるのに対し、引用意匠は約1.4倍である点で相違する。
(相違点2)蛇腹状管体の構成について、本願意匠は、断面を略倒D字状とする巻芯及びその外側の略均一な厚みのシート材により構成され、
(a)断面略倒D字状の巻芯は、平坦部がチューブの内壁の一部をなし、略倒D字状の半円部である膨出面が外側を向くように螺旋状に巻回してなるものであり、
(b)シート材は、略倒D字状の巻芯の略半円部である膨出面全面に接合し、残余の部分は、巻芯の平坦面により形成する内壁と面一となるように形成して、管体の流路を構成するものであるのに対し、引用意匠は、当該(a)及び(b)の点に係る具体的な構成の態様が不明である点で相違する。
(相違点3)蛇腹状管体の両端について、本願意匠は蛇腹状管体のみからなるものであるのに対し、引用意匠は管端コネクタを設けてなる点で相違する。

3 両意匠の類否判断
(1) 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、本願意匠が「ガス供給チューブ」であり、引用意匠は「人工呼吸器用ホース」であって、医療用機器にそのまま接続可能か否かの点が異なるものの、両意匠とも呼吸補助用の医療用機器に接続して呼吸ガスを挿通する機能を有する管体であるから、類似する。

(2) 両意匠の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、ともに呼吸補助用の医療用機器に接続して呼吸ガスを挿通する管体であるから、両意匠に係る物品分野の需要者は、医療従事者であって、これに医療機器の開発技術者が含まれるものといえる。
そうすると、両意匠の意匠に係る物品分野における需要者は、患者に呼吸ガスが安定して供給されるように、可撓性と耐圧潰性、呼吸ガスの流れ抵抗への影響という観点等に関心を持って全体の形状を観察するものといえるから、そのような観点から、以下、両意匠の類否判断を行う。

ア 共通点の評価
共通点は、この種物品分野において、ごく普通に見られる態様であって、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、需要者に共通の美感を起こさせるものとはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)は、全体の構成比率に係るものであるが、(a)については、両意匠の属する物品分野においては、機器の設置場所や、患者の状態に応じて管体の長さを調整することはありふれて行われるものであるため、当該点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また、(b)ないし(d)については、それぞれ子細に観察して把握できる程度の相違点であって、本願意匠の態様も引用意匠の態様も、いずれの点も、両意匠の属する物品分野において、この出願前から公然知られる態様といえるから、これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(相違点2)について、(a)の巻芯の断面形状を略倒D字状とし、略倒D字状の平坦部を管材の内壁の一部とすることについては、引用意匠には、具体的態様が表れていないものであり、当該点は、患者に呼吸ガスが安定して供給されるように、可撓性と耐圧潰性に係るものであるから需要者の注意を大きく引く点であるから、相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。なお、巻芯の断面形状を略倒D字状とする態様については、この出願前、2017年10月12日公開された特表2017-529987の【図6A】及び明細書の関連する記載に見受けられるものの、巻芯断面の縦横比率が異なる当該先行事例のみをもって、相違点2が、この種物品分野においてありふれた態様ということはできないものである。
また、(b)の管材の内壁を、巻芯とシート材とで面一に表してなる点についても、引用意匠には具体的に表れていないものであるところ、当該点は、呼吸ガスの流れ抵抗への影響という観点から需要者の注意を大きく引く箇所であるといえる。そうすると、当該(a)及び(b)が相まってなる(相違点2)の態様は、この種物品の先行意匠に照らして本願意匠のみの特徴的なものであるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点3)について、蛇腹状管体の両端部に嵌合して表れる管端コネクタは、付け外しが自在に形成されるものの、そのまま医療用機器に取り付け可能かどうかについて明らかな差異があるから、相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

ウ 形態の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記3(2)の前文のとおり、患者に呼吸ガスが安定して供給できる態様であるか否か、すなわち、可撓性と対圧潰性に係る構造、及び呼吸ガスの流れ抵抗に係る内壁態様が需要者の注意を強く惹く部分であり、上記3(2)イの(相違点2)及び(相違点3)のとおり、蛇腹状管体の美感には大きな差異があり、需要者に異なる美感を与えるものである。そうすると、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第5 むすび
上記のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2021-05-12 
出願番号 意願2019-9588(D2019-9588) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
井上 和之
登録日 2021-06-25 
登録番号 意匠登録第1689929号(D1689929) 
代理人 朝倉 悟 
代理人 中村 行孝 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 副田 圭介 

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