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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F1
管理番号 1375921 
審判番号 不服2020-16660
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-03 
確定日 2021-06-22 
意匠に係る物品 理美容技術練習用模型 
事件の表示 意願2019- 26064「理美容技術練習用模型」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
令和1年(2019年)11月25日 意匠登録出願
令和2年(2020年) 6月29日付け 拒絶理由通知書
令和2年(2020年) 9月24日付け 拒絶査定
令和2年(2020年)12月 3日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「理美容技術練習用模型」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表した部分(当審注:以下「本願部分」という。)が意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。
大韓民国意匠商標公報 2019年10月17日
顔マネキン(登録番号30-1027640)の本願意匠に該当する
部分(以下「引用部分」という。別紙第2参照。)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH31436119号)
なお、同公報の「意匠の説明」には、美容師を養成するなどの目的のために種々のかつらを脱着するのに使用されるとの説明が記載されている(別紙第2第4頁の仮訳参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、願書の「意匠に係る物品の説明」によれば理容師・美容師およびこれらを目指す者等が技術の取得・向上のための練習に用いる模型であって毛髪を植毛又は設置するものであり、また、引用意匠の意匠に係る物品も、上記公報の記載によれば美容師を養成するなどの目的でかつらを脱着するのに使用されるものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能がほぼ共通する。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、共に毛髪又はかつらを設置する点で用途及び機能が共通する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、共に人体頭部の毛髪が伸びる領域に位置しており、人体頭部自体の大きさはほぼ一定であるといえるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。

4 両部分の形態の対比
(1)形態の共通点
(共通点1)両部分は、人体頭部の毛髪の生え際を単線で区画した頭部側の領域であって、その区画線は、正面視左右対称に表されており、正面部ではおでこの生え際から左右両側のもみ上げの生え際に繋がり、側面部中央下部では耳を囲うように耳から少し離れて連続し、背面部の襟足の生え際に到っている。
(共通点2)側面から見た態様
側面から見て、もみ上げ部が下向き略鋭角三角形状に表されており、その上部が正面側に緩やかな弧状で張り出し、屈曲してからおでこの生え際に繋がっている。
(共通点3)背面から見た態様
背面から見て、襟足の生え際が水平状に表されている。
(2)形態の相違点
(相違点1)正面から見た態様
本願部分の頭部外形は、左右の曲線が中央で接合するように、頭頂部の中央が僅かに尖って表されており、本願部分のおでこの生え際が略扁平逆U字状であるのに対して、引用部分の頭部外形は、略半円弧状に表されていて頭頂部の中央は先尖り状ではなく、引用部分のおでこの生え際は僅かに略M字状に表されている。
(相違点2)平面から見た態様
おでこの生え際の区画線を除き、本願部分の頭部外形は、後頭部の曲率と左右の側頭部の曲率が一致しないために、後頭部の左右がやや角張っているのに対して、引用部分では、後頭部の曲線と左右の側頭部の曲線がスムーズに連続し、略卵形のように表されている。
(相違点3)背面から見た態様
背面から見た本願部分の最大縦幅:最大横幅の比は約1.1:1であり、最大横幅の上下方向の位置は本願部分を上から約1:1.1に内分する位置にあるのに対して、引用部分では、最大縦幅:最大横幅の比が約1.3:1であって、最大横幅の上下方向の位置は本願部分を上から約1:1.9に内分する位置にある。
(相違点4)側面から見た態様
(相違点4-1)後頭部の形状
本願部分の後頭部は、略弓状に膨らんでおり、中間部分に略垂直状の部分が形成されているのに対して、引用部分の後頭部は大きく弧状に膨らんでいる。
(相違点4-2)もみ上げ部と襟足端部の形状
本願部分のもみ上げ部は先尖り状であって顎の下の方向を向いているのに対して、引用部分のもみ上げ部の先端は略弧状であってのど元の方向を向いている。また、襟足の端部の形状が、本願部分では鋭角状であるのに対して、引用部分では緩やかな弧状である。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能がほぼ共通するから、類似する。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、前記第4の2で認定したとおり共通する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、前記第4の3で認定したとおり共通するので、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。

4 両部分の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、共に美容師などが毛髪又はかつらを設置して練習を行う模型であるから、このような模型を選定して購入する需要者は、主として美容師などであって、特定の技術を向上させるために模型の外形形状や毛髪が設置される頭部及び生え際の形状を子細に観察するということができる。したがって、両部分の形態の類否判断を行うに当たっては、これらの形状を細かく評価すべきである。
(1)形態の共通点の評価
両部分の毛髪の生え際を区画した頭部側の領域が正面視左右対称に表されている共通点は、人体頭部の毛髪が正面視左右対称状であることがありふれていることを踏まえると、需要者がこの共通点に特に注目するとはいえず、また、その区画線がおでこの生え際からもみ上げの生え際に繋がって、耳を囲うように耳から少し離れて連続して襟足の生え際に到っている共通点も、もみ上げや襟足が人体頭部の毛髪として不可欠な要素であって、耳から少し離れた生え際もありふれているから、需要者がこの共通点に特に注目するとはいい難い。したがって、共通点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、もみ上げ部が下向き略鋭角三角形状に表されて、その上部が正面側に張り出し、屈曲している点や、襟足の生え際が水平状に表されている点は、両部分に共通する形状特徴であって、生え際の形状を子細に観察する需要者が注意を払うというべきである。したがって、共通点2及び共通点3が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(2)形態の相違点の評価
両部分の形態の相違点2、すなわち、平面から見た頭部外形について、本願部分では後頭部の曲率と左右の側頭部の曲率が一致せず、後頭部の左右がやや角張っているのに対して、引用部分では曲線がスムーズに連続して略卵形のように表されている相違は、人体頭部の形状の相違として需要者が一見して気付くものであり、需要者はその形状を特に注目するということができる。そして、相違点3についても、背面から見た引用部分が本願部分に比べて縦長であること、及び引用部分の最大横幅の位置も本願部分に比べて上方にあることから、頭部の外形形状が大きく異なる。したがって、相違点2及び相違点3が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また、側面から見た後頭部の形状に係る相違点4-1について、略弓状に膨らんで中間部分に略垂直状の部分が形成されている本願部分は、大きく弧状に膨らんだ引用部分とは形状が大きく異なっており、本願部分がいわゆる絶壁の頭部形状を模したものであるのに対して、引用部分が絶壁ではない頭部形状であるから、毛髪又はかつらを設置する需要者は、両部分のこのような頭部の形状の相違に対して特に注目するといわざるを得ない。したがって、相違点4が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、正面から見た態様の相違点1は、本願部分の頭頂部中央の尖り方は僅かであり、引用部分のおでこの生え際の略M字状も僅かであるから、両部分の美感を大きく異にしているとまではいい難い。また、もみ上げ部と襟足端部の形状に係る相違点4-2も、もみ上げ部の先端形状及び方向の相違と、襟足の端部の形状の相違であって、両部分を全体として比較した際に異なる視覚的印象を与える程の相違であるとはいい難い。したがって、相違点1及び相違点4-2が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまる。
(3)両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分全体を総合的に観察した場合、共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいか又は一定程度にとどまる。これに対して、相違点2、相違点3及び相違点4-1が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きく、その余の相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまるとしても、相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいから、両部分の形態は類似しない。

5 小活
両意匠は意匠に係る物品がほぼ共通し、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も共通するが、両部分の形態は類似しないから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-06-02 
出願番号 意願2019-26064(D2019-26064) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 宗久良 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
井上 和之
登録日 2021-07-21 
登録番号 意匠登録第1692279号(D1692279) 
代理人 特許業務法人サカモト・アンド・パートナーズ 

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